メタルギアソリッド PEACE WALKER


対応機種プレイステーションポータブル
発売日2010/04/29
価格4980円(UMD)/4700円(PlayStation Store)
発売元KONAMI

(c)2010 KONAMI / Konami Digital Entertainment
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最新作から約2年、音沙汰の無かったステルスアクション「メタルギアソリッド」待望の新作が、プレイステーションポータブルで登場だ。
プレイステーションポータブルでは外伝作品がずっと発売され続けていたが、今回はナンバリングタイトルとして作ってきたと小島監督は断言しているが、まぁ、リップサービスだろう。

UMD版とダウンロード版両方が出ているが、ダウンロード版の価格が高い。ほぼ定価と変わらない。
UMD版は、店頭販売で値引きされるので、ダウンロード版より遙かに安く買える。
手元に大容量のメモリースティックを持っていれば、PlayStation Storeからダウンロード購入して、メモリースティックに保存しておける。
ギガクラスの大容量メモリースティックをPSPに入れておけば、それだけでPSP用ソフトを何本も入れておけて、一々遊ぶゲームを変えるたびにディスクをとっかえひっかえしなくていいし、ディスクアクセスがないからロード時間も早い。
この便利さからはもう戻れない。店頭に足を運んで買うのも面倒だし、渋々ダウンロード版を購入した。

しかし、やっぱり納得いかない。市場原理から言って、原価分を考えると、ダウンロード版の方が何百円も高いというのはおかしい。
ケースだの説明書だの後々邪魔になると思っているぐらい執着しない人間なので、それらがついてこない上に、売却処分出来ないデメリットなんかも考えると、せめて店頭販売と同じか少し安いぐらいにして欲しい。
同社「ときめきメモリアル4」は、後出しとはいえ、割と棲み分けの出来た価格設定だったのだが。

ゲーム内容は、以前発売された「メタルギアソリッド PORTABLE OPS」をベースに、それをさらに洗練させ、面白くなりそうな要素を取り入れている。
また、「メタルギアソリッド4」のシステムも積極的に導入しており、銃を構えたまま移動出来る肩越しカメラの操作も出来る。

「PORTABLE OPS」から4年経ったこともあり、ハードウェアを底まで叩いて、性能を限界まで引き出すことに成功している。
特にポリゴン演算、グラフィック周りが見違えるほど強化されており、プレイ感覚はかなりいい。
「PORTABLE OPS」では、形にするだけで精一杯なところがあったが、本作では余裕のある作りで、PSPだから…という引け目を感じさせない。

本編のように、連続した物語をプレイするのではなく、ステージが区切られており、ステージ選択→攻略→クリア→ステージ選択という流れになっている。携帯機ということも考慮に入れているのだろう。
ステージごとに行ける場所にも制限がかかり、目的地まで迷うことはないが、仕様上自由に探索が出来ないので、終始やらされ感が強い。

ゲームバランスはかなりいい。特にシリーズ初プレイの人を意識したような優しい(把握しやすい)構造や敵配置が秀逸に感じた。
逆に、熱心なシリーズファンにとっては物足りなさを覚えるだろう。かなり近寄っても見つからないし、敵兵士の数も少ない。難易度選択も出来ない。
だが、これまでの同シリーズのゲームバランスがマニアック過ぎたとも言えないだろうか。「メタルギアソリッド3」では、序盤の博士を保護するマップが最初の割に厳しかったし、4なんかも、割とマニア向けのチューニングだった。
この間口の広め方は正解だと思う。

ただ、ボス戦が逆に難しく面倒くさい印象を受けた。
倒し方がわかりづらかったりするし、全体的に巨大メカばかりで、避けて撃つというワンパターンな攻略ばかりだったように感じた。
「避けて撃つ」というのは、この手のFPS、TPSのジャンルを否定する言葉に聞こえるかもしれないが、「メタルギアソリッド」のボス戦は、もっと変化に富んだ戦闘だったと思うのだが。

ボス戦が難しいというのは、バランスそれ自体ではなく、煩雑な操作性の方が原因になっている。
PSPでは、どうしてもボタン数が足りず、どこかで不便な操作割りをしなくてはならない。アナログスティックは一つしかないし、L、Rボタンは据え置きのゲームパッドのようにもう一個ずつ欲しい。
視点の操作や、武器の切り替えが非常に不便で、ボス戦のような機敏な操作を要求されるところでは、かなりストレスが溜まってしまう。

ボタン操作のタイプを3つ用意しているが、「メタルギアソリッド4」タイプは、「PORTABLE OPS」タイプを左右逆にしただけで論外(いくらなんでも視点操作を○×□△というのは無理がありすぎだろう)だし、モンスターハンタータイプは、一部の操作ができない。
結局は、「PORTABLE OPS」が一番クセが無く扱いやすい(勿論これには好みが出るため一概には言えない)。

一応、こういったインターフェイスに配慮したようなバランス取りをしている節はあるのだが、やりづらいものはやりづらいのである。その根本的な部分を解決しない限り、快適性に関しては及第点を与えられない。
しかし、何度も言うが、ステルスステージに関しては、この操作性を考慮に入れたバランスの良さがある。

部隊編成パートがあり、覚えることが多い複雑なパートだが、基本的にプレイヤーに負担をかけさせないように作っており、部隊はオートで適正な配置を勝手に決めてもらえるし、武器装備品開発も、メニューからちょっと選択するぐらいで後は全部自動でやってくれる。
「メタルギアソリッド4」のように、称号や装備品を集めてコレクションしていくのが楽しい。ほぼ手間暇かけずにプレイヤーはミッションステージをやり続けるだけで、勝手にどんどん基地が成長し発展していく。

このゲームのもう一つの目玉としてCo-ops(協力)プレイがある。通信機能を用いて、メインストーリーも含めて2〜4人でミッションをプレイ出来る。Co-opsならではのシステムをかなり盛り込んでおり、気合いの入れっぷりが確認出来る。
「メタルギアソリッド」を多人数で…なんて思うかもしれないが、前述のボス戦に関しては、協力プレイ前提のような所があるし、逆に本作はシングルプレイではなくマルチプレイで遊んで欲しいのだと思う。
PSPは、PS3の「アドホックパーティ」を使えば、ネットワークを介して離れた見知らぬ人とも遊べるし、非公式ながらPS3が無くても、Kai Linkでも同様のことが出来る。作り手もPSPはネットワークにつなげれることを意識してゲームを作っている。
なんだか、全体的にモンスターハンター色が強い。マップ移動のレイアウトや、ボスを倒して素材を集めるシステム、友好度なんかはモロだし。
「PORTABLE OPS」では、自前でサーバーを用意して、オンライン対戦が出来たが(無料)、今回はゲーム側でそういった対応は無く、ハードウェアの対応に頼っている。
こちらとしても、面倒くさい手順を踏んで登録作業などを行うことなく気軽に多人数プレイを出来る。導入の知識は必要だが、わかってしまえば問題はない。
ちなみに、アドホック通信を使って3vs3の対戦モードも付けられている。

モンスターハンターとのコラボレーションなど、新規プレイヤーを意識した作りのいっぽう、ストーリーは、「メタルギアソリッド3」と密接なつながりがあり、単体でも問題無いように作ってはいるが、やはり「メタルギアソリッド3」を遊んでいることが前提のような内容で、正直厳しい。
イベントムービーは、「PORTABLE OPS」同様、アシュレイウッドによる動く絵だ。分量もかなり多い。
今回無線通信に当たるブリーフィングが復活していて、しかも台詞の全てに声を当てていて、中々頑張っている。ミッション開始前に聞くことが出来る。
ブリーフィングで、キャラクタの生い立ちやサイドストーリーを描かれている。
これまでは、全パターンを聞くには、ゲーム中に何度も無線通信をCALLする必要があったが、会話のやりとりがメニューに表示され、自分で選べるようになった。かなり便利になった。

本編で挿入されるムービーだけでも、結構長く批判されがちだが、より深くシナリオを知りたい人はブリーフィングでキャラ同士のやりとりを任意で楽しめばいい。良い棲み分けが出来ている。このように棲み分けをしてもなお、本作のムービーはアクションゲームとしては長い。
ただ、アーティストポイントというムービー中にボタン操作を要求させるシステムを組み込むことで、緊張感を持たせている。
セガ「シェンムー」のクイックタイマーイベントや、寧ろ、カプコンの「バイオハザード4」がすっかり有名だろうか。メタルギアシリーズでは初めての導入となる。
ともすれば、ただうざったいものになりがちだが、入力タイミングがそれほどシビアではないので、イライラすることはない。

スネーク以外のキャラクターは、ポリゴンCGで登場することは無い。しかし、ブリーフィングなど会話シーンで使われる顔グラフィックはなぜかCGである。これは非常に強い違和感を感じる。
ムービーもイラストなので、どうせなら新川洋司の存在感のある絵を使って欲しかった。プレイステーション2に移行してから、すっかりゲーム上では使われなくなってしまった。悲しい。

しかし今回、声優のキャスティングが若い。勿論ただ好きだからという理由で選んでいるわけではなく、演技力に関してもきちんと実力のある声優を使っている。いつものメタルギアより女性の割合が多いような。
ユニークなやりとりも多く、小林ゆうの収録なんかは、監督絶対楽しんでやっているだろ?と思わずにいられなかった。ただ、それだけに菊地由美の演技力が浮いて見えてしまう。狙ってやっている気もするが。
今回は声優ファンに傾倒した傾向が見られる。

本編ムービーでは抑えられているが、ブリーフィングの会話シーン自体は、ほとんどが聞いていてあまり面白い内容ではなかった。声優おたくとかなら楽しいと思うのだが…。
まず、ここでしか自己主張できないせいか、キャラクターが雄弁すぎるのだ。それに加えて、蘊蓄を垂れ流すだけの部分も多く、聞いていて説教くさく感じられる。ゆえに、つまらないと感じた人は、全部聞こうとしない。全く意味を持たない要素となってしまう。量だけは多い。
シナリオも、小島監督おきまりのパターンだ。そろそろ監督は脚本家を引退して、若い別のスタッフに任せるべきじゃないかと思う。歳を食ったのか説教くさい台詞も随分と目に付くようになってきた。

携帯機ということもあり、残虐性が抑えられている。近接武器がナイフではなく電磁ロッドになっていたり、敵を殺すのではなく、気絶させてフルトン回収して、味方の部隊に入隊させることを推奨している。しかし、タバコは吸う(GB「ゴーストバベル」ではタバコに相当するアイテムが発煙筒に変えられていた)。流血表現も無い。

モンスターハンターとのコラボレーションなど、硬派なメタルギアのイメージを崩すような要素を積極的に投入していて、賛否両論あるだろうが、個人的にはこういうユニークな路線の方が好き。
「メタルギアソリッド4」でもなんか色々試みていたようだが、影に埋もれてしまっていた印象がある。メタルギアは元々遊び心満載のゲームだった。

メディアインストールに対応していて、インストールしてもなおロード時間が長い。また、スリープモードにしてしまうと、インストール機能が無効になり、基地に戻った時でないと有効に出来ない。機会があまりにも少なすぎる。
ダウンロード版は最初から全データがメモリースティック内に入っているので気にせず遊べる。
ゲーム自体は、ナンバリング作品に匹敵する巨大さとクオリティで、その意気込みは伝わってくるし実際面白いが、操作性の悪さなどハード性能の越えられない壁がもどかしさを感じさせる惜しい作品だ。ただちょっとPSPのモンハンブーム意識しすぎな気が?
そこで結論。

PSPの限界に挑戦した一作。





[2010/05/03]
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