マインドジャック


対応機種プレイステーション3/Xbox360
発売日2011/01/27
価格7800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2011 SQUARE ENIX / feelplus
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他人の意識を操り、味方にしたり乗り移ったりして戦っていく風変わりなサード・パーソン・シューティング。
「ロストオデッセイ」のフィールプラスが開発している。

一言で書けば無味乾燥なゲーム。
なんら魅力のないSF設定の世界観と薄味の物語に沿って展開するキャンペーンモード。舞台は似たり寄ったりの風景が続き、その風景も薄っぺらい良くある近未来テイストで、まったく面白味がない。
一人用モードと対戦モードを分けて作らず一緒にしてしまったので、キャンペーンモードでいくらシナリオ上の演出があったとしても、結局最初から最後まで敵を全滅させる(戦いに勝利する)ことが目的だとプレイヤーに悟られてしまう意外性のない展開にマンネリを覚える。

それでもTPSとして基本的な部分が出来ていれば遊べたものだが、残念なことにすべてが及第点に届いていないと言える。
武器の威力がおかしい。連射力と威力を半比例させているらしく、ハンドガンの一発が最も強く、アサルトライフルの一撃が最も低い。ヘッドショットしても一発で倒れない。汎用武器では最高威力に設定されているハンドガンでないと一発で倒れない。武器も一通り揃っているのだが種類が少ない。
CPUの行動ルーチンが馬鹿すぎてリアリティが全くない。地形は無個性で面白くなく、敵のエントリは非常識でありえないところから増援がやってくる。そもそも、敵の種類が少ない。敵が堅く中々倒れないくせに、このゲーム自慢のシステムを駆使して欲しい&対戦用に作ったのか、敵の数が多すぎてだれる。
操作性も融通がきかず、思い通りに動いてくれない。近接攻撃が思ったように出せないのは致命的だし、カバー状態でもこんなに銃弾を食らうゲームも珍しい。装備している武器と同じ種類の弾が落ちていたら上を通るだけで最近のゲームは自動で補充してくれるが、わざわざ拾うボタンを押さないと取らない。わざわざ拾うモーションが入る。カバー状態で拾うと勝手にカバー状態を解除して拾う。
チェックポイントがなくやられるとステージ最初からやり直しってのも厳しい。音楽も曲数が少なく聴き飽きるなど、不満点は多い。

このゲームは、独特なゲームバランスとシステムで成り立っており、それに理解できなければ入り込めないと言える。一般的なシューターゲームとはズレた感覚で作られている(はっきりいって研究不足と言える)。
瀕死状態にした敵兵の脳を乗っ取ることで味方に引き入れることができるが、近づいて乗っ取るボタンを押さないと駄目で、オーバーキル(完全に殺す)してしまうとダメ。面倒くさい割にこの要素を使うことが前提でバランスが組まれている。
自分の意識から離脱して、他の味方や優位な位置にいる民間人、ロボットに乗り移って操作キャラを変えることが出来るが、これは同社「The 3rd Birthday」とかぶっているが、こちらのシステムは残念ながら使い方が下手と言わざるをえない。
まず、いったん離脱して憑依するキャラを探す(探してくれる機能も付いているが今度は現在地が分からなくなる)という一手間がテンポを削いでいる。一瞬で切り替えられるだけでだいぶ違うのだが。
地形の作りも悪く、乗り移れるキャラがどこにいるかわかりづらいからなかなか有効活用できない。こういったゲームは任天堂辺りが作ればもっと有効活用したゲームが出てきそうなものだが、これははっきりいって面白いとは思わなかった。

キャンペーンモードに介入できるっていうのも、フロムソフトウェア「デモンズソウル」みたいなのをやりたかったのだろうが、協力してくれるってならまだしも対戦モードまで混ぜちゃったモンだから、用途がハチャメチャ。
ホストとなるプレイヤーが先へ進みたいのに、腕のよいプレイヤーに邪魔されるとなりゃあ、一周目に関してはネットワーク機能を切って遊ばれてしまうだろう。素直にマルチプレイモードも作ればいいのに、この辺は手を抜いたとしか思えない。

グラフィックは、そんなに綺麗な水準でもないのに30フレームというのもなんだかねぇ。どこのゲームもテクスチャはそれなりなモンを吐き出してくるのだが、大体モデリングで化けの皮がはがれる。
四角張ったブロックのような地形で、ステージ構成に魅力がない。

あまりネタバレになるので書けないが、シナリオはゲームとストーリーの融合が上手く出来た!!と満足気なスタッフの表情が透けて見えてくるシロモノだが、それ以前にキャラも世界観も全く魅力がないので、つまらない。
というか、日本人が洋ゲーかぶれのゲームを作るってのがまず間違っている。ヒロインのねーちゃんはケバいだけだし、英語音声だけってのも、日本人をはなから楽しませる気が無い感じで好きになれない。演技力もあまり気にしない人間でも気になるほど「ひどい」(安上がりな人間を使ったのだろう)。
カプコン「バイオハザード5」みたいのをやりたかったのだろうが、見事に滑って失敗している。

しかし、この会社から出るモンは、字幕を極限まで小さくするのが好きだなあと感じた。背景と色がかぶって見辛かったりして、全然映像が見れなかった(見やすくするために縁取りするなんて気のきいたこと当然してくれない)。映像を見せたくて文字を小さくするのだろうが、見にくいから逆に見られないという本末転倒さである。

洋ゲーの真似事をやっている割に、間の悪いタイミングで操作できないイベントムービーが入って、ボスキャラのトドメはムービーで刺してしまうし、スペクタクルシーンが入って「おっ動かせるのか」と思ったら見事にムービーだけで終了するという肝心なところは和製的な作りでがっかりさせられる。
バランスの付け方も、最近の洋ゲーのように作ったアトラクションを如何に楽しませるか!?というより如何に困難に立ち向かわせるか!?という日本的なもので、ただ堅いだけの巨大ボスとの戦闘などまるで面白味が感じられない場面も目立つ。

この会社は「フロントミッションエボルヴ」でも似たような失敗をやらかした(まああれは海外メーカーに外注した物だが)。結果的に面白いものを出してくるなら構わないのだが、元々RPGしか作れないところが流行についていこうと無茶やって失敗している印象しかない。
個人的にはもうこの会社は、自社制作からは撤退してしまうのが一番だと思っている。買収したアイドス(トゥームレイダーを代表作に持つイギリスのゲームメーカー)の手綱をしっかり握ってやるのと、せっかく手に入れたアクティビジョン(世界最大規模の米ゲームメーカー)製品の日本販売権を大切にして、海外製品のローカライズに専念した方がいい。
FFとかDQはまぁ、機会を見て慎重に出せばいい。出版だの流通だの手広く商売するようになったのだから、そこで細々とキャラグッズやら漫画でも作らせてればいい。無理にゲーム本編を作る必要はない(ゲームファンとしては悲しいが無理矢理出来の悪いものを作られるよりはずっと良い)。
そこで結論。

遊ぶ価値のない駄作(全く遊べないわけじゃないが同ジャンルで他にもっと出来の良いゲームはある)。





[2011/02/05]
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