桃太郎伝説


対応機種プレイステーション
発売日1998/12/23
価格5800円
発売元ハドソン

(c)1998 HUDSON SOFT
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人気シリーズ「桃太郎伝説」待望のプレイステーション版。

スーパーファミコン「新桃太郎伝説」以降、パッタリと途絶えていた「桃太郎“伝説”」。
実に5年振りの登場となる。

内容的には、続編というよりはPC-E「桃太郎伝説2」をベースとしたアレンジ移植といった感じだ。
ストーリーも、過去作品の続き物といった要素は完全に排除しており、初代の「鬼ヶ島にえんま大王を懲らしめに行く」ものになっている。

これは、5年という空白期間が出来たことで、「桃太郎電鉄」は知っていても、「桃太郎伝説」は知らない世代をメインターゲットに据えたためだろう。
それから、かつてプレイしていた人に対しても、昔を懐かしみながら遊ぶには丁度良い時期と言う意図があるのだろうと思われる。

CGムービー、ポリゴンが全盛のこの時代に、全編2Dのドット絵で貫き通している。この潔さは評価したい。
変にPSのハードウェアの性能を誇示するようなことはなく、ゲームのコンセプトありきで作られている。
ただ、デュアルショックの振動機能に対応させてるところだけは、流行りの誘惑に乗っかってしまった感じで惜しい。
設定でオフに出来るが、出来ることならここも非対応を押し通して欲しかった。

戦闘シーンは、当たり前のように背景が付き、敵はアニメパターンが豊富で良く動く。

だが、冒頭にも書いたのだが、あくまでもこのゲームはPC-E「桃太郎伝説2」をベースとした“移植作品”なのである。
申し訳程度に、新しい村やダンジョンが追加されBGM等演出が強化され、「新桃太郎伝説」のネタがうまいこと入っていたり(絶好調システム等)、様々な箇所で余裕のある作りがかいま見えるが、それでもこれは8年前のRPGをそのまま移植してきた作品だ。

雑誌の画面写真なんかを見て落胆した人も多かろうが、見た目通りの、言っちゃ悪いが、古風な、いわば古臭いRPGなのだ。

さすがに全くそのまんまだと辛かろうと、ダッシュ移動の機能や便利ボタン(話す、調べる等)を追加したり、道具を選んでわざわざ説明コマンドを選択しなくてもカーソルを合わせるだけで同時に道具の効果が表示してくれるなど、
テコ入れをしている部分はあるが、それでも、なぜ今更ここまで律儀に昔のRPGをそのまま移植したのだろうと、言いたくなるほど。

ちょっと断っておくと、元となったPC-E「桃太郎伝説2」は、シンプルでオーソドックスなRPGで、今の目線では色々辛いところも目立つものの、それさえ除けば、なかなか面白く遊べる作品だ。

だが。
そんな優秀な作品を、なるべく忠実に移植しているにもかかわらず、「一体全体ハドソンどうしたんだ!?」と言いたくなるほど、このPS版は、肝心の中身の出来が悪い。

まず、「桃太郎伝説2」は、ゲームバランスがとてもいいRPGだった。
少々エンカウントが高いとか、バランスがシビアな位置にあるのだが、それも込みで、ゲーム全体の構成が非常に練り込まれており、とても良く出来たRPGであった。

ところが、このPS版に関しては、最も大事とも言える、その絶妙なプレイ感覚が再現されていない。

とにかく、エンカウント率が異常に高い。せっかくダッシュ機能が付いているが、基本の遅い移動速度に合わせたエンカウント率なので、使えない。
そもそもこのシリーズ自体、一般的なRPGと比べると「良く出てくるなあ」と言ったエンカウント率だった。それを見込んだ上でマップ、バランスが作られていた。

しかし、今回のPS版では、度を越えたエンカウント率で、もうとにかくウンザリする。
そのくせ、ダンジョンは起伏がなく単調でメリハリのないマップが長々と続く。
その高いエンカウント率を見据えたバランス調整をしているわけでもないので、お金も経験値もガンガン溜まって全然緊迫感がない。
なので必然的に作業になる。ダルい。まるで罰ゲームでもやらされてるような気持ちになってくる。これで投げた人も多かっただろうと予想。

一応、エンカウント率の高さを救済する措置として、弱い敵とエンカウントしたとき、敵が「かなわない」といって戦闘に入った直後すぐに逃げて、その敵が持つお金と経験値は戦わずもらえるというのがある。
だが、どうせなら任天堂「MOTHER2」のように、そのような相手とエンカウントしたら一瞬で終わるようにして欲しかった。結局エンカウントで一手間かかるので、かったるさはそれほど軽減されてないのだ。

それでも序盤から中盤位までは、多少シビアではあるのだけども、それは毒や病気などの状態異常を回復する手段が乏しかったり、序盤から結構広いダンジョンを攻略させれられるなどの
配慮不足から来るもので、とてもじゃないが狙ってやっているようには思えない。

また、ハドソンは、PCエンジンで、他社に先駆けてCD-ROM媒体でゲームを沢山開発してきた。
このゲームも、そのノウハウを活かしているはずで、ディスクアクセスは早い方ではあるのだが、それでもバトルの切り替わりのたびにロードを挟むために、テンポが悪い。
他の会社だったらここまで厳しく言わないのであるが、ハドソンはPS参入が遅かったせいなのか、どうにもハードを使いこなせていない印象がある。
ハドソンなら、戦闘の切り替えぐらいノーアクセスでやってくれるぐらいだと思っていただけに実に残念でならない。

バトルバランス全般、このシリーズにしては調整が荒い。
割とかっちりとした調整をしているシリーズだったが、バトルの計算式を変えたせいなのか、ダメージのバランスが非常に大雑把。
ボス戦も、つまらなくて、ほとんど力押しに頼って倒すようなものになってしまっていて、全く楽しくない。
終盤になると、金もかなり溜まりすぎて、貴重であるはずの「打ち出の小づち」「こんろんの玉」等、買い放題だし、宝箱からも大量に手に入る。それこそ持ちきれなくなるぐらいに。

細かいことだが、PSのゲームにしては操縦性が今ひとつ良くない。なんだかもっさりしているというか、ボタンを押しても反応しない微妙な間があったりする。
見た目の処理速度こそ早くなってるものの、PC-E「桃太郎伝説2」の操縦性をそのままスライドしてきているような感じだ。

「桃太郎伝説2」のインターフェイスは当時としてはかなり良い方なので、それならそれで、そのまま持ってくればいいのに、細かい部分を変えていて、特に道具や術の表示窓を1行にして狭くしたりして、微妙に改悪しているのもどうかと思う。
特に気になったのは、下取り時に、現在装備している装備の性能と、買い換えようとしている装備の性能を見比べることが出来たのにできなくなったこと。これ、凄い便利だったのに、何故なくしてしまったのかと疑問。

それからいちいち、装備品の店を、武具屋、防具屋、履物屋など、細分化してしまっていて、ご丁寧に持ち物を売る場合も、武器は武具屋じゃないと買いとってくれないようにしていること。

これと関連して、村で誰もいない民家が非常に多いこと。8割位は人のいない民家だった。本当は人を置く予定だったんじゃ?と勘ぐりたくなる。
それと厳しいようだが、村自体がごちゃごちゃと広いのも、どうにも好きになれなかった。

それ以外だと、戦闘時、×ボタンでバトルメッセージを自動送りしながらやっている場合、状態異常や補助魔法の効果が切れた時のメッセージが一瞬で飛ばされるのが不満。
「桃伝2」など、これまでの作品だと、ボタン押しっぱなしでメッセージ送りしっぱなしでも、ある程度読めるように配慮されていたが、今回はそれがない。

ダメージが表示されるところではちゃんと止まるようにしているものの、フォローされてない部分もある。戦闘演出のテンポがぎこちないのだ。

敵が攻撃するときのエフェクトに目障りなフラッシュが多かったり、味方が攻撃する度に一々ズームしたり、力を入れているのはわかるのだが、チトくどい。
これらはただ力を入れて派手にすればいいというものではない。全体の流れを見て、バランスを考える必要がある。
術を使った時のエフェクトなどが、なんとなくダサくなっているのも気になった。ハドソン開発力落ちた?
思うに、「桃鉄」の開発スタッフが、練習がてら作ったという感じがするのだけども、どうなのだろうか?

さて、厳しめのことばかり書いてきたが、PS版「桃太郎伝説」で、全く新しく追加された要素としてカード集めというものがある。
敵を倒すと一定確率で、カードを落とすのだが、これをコレクションしていくというものだ。
ザコ敵のカードだけでなく、村の中にいる村人からもらえるカードなんかもある。

この、カード集めが非常に面白い。
特に、ザコ敵がカードを落とす確率がかなり良く、なんとか全部集めてやろうという気持ちにさせてくれる。
それ以外に、イベントで手に入るカードを探すのも楽しい。カード道場なる施設もあり、そこではカードをトレードしたり出来るようになっており、なかなか凝っている。

ポケモンブームの影響を受けているのだと思うが、ポケモンのゲームシステムをほぼそのままパクるゲームが珍しくない中、このゲームのやり方は、実に上手いと感じた。

新規の客(桃伝を知らない子供など)を意識しながら、時代錯誤もいいところな、古いゲームシステムを全面採用しているところ。
ちょっと目指していることがちぐはぐな印象が拭えない。一体誰に遊んで欲しかったのか。そこで結論。

桃太郎伝説はもっと面白かったはずだ!





[2016/02/10]
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