武蔵伝2 ブレイドマスター


対応機種プレイステーション2
発売日2005/07/07
価格6800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2005 SQUARE ENIX
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刀で敵を斬り付ける痛快チャンバラアクション「武蔵伝」が7年の時を経て復活。
プレイステーション2というハードウェアを纏ってどのような進化を遂げたのか。

北米で先行発売され、その後日本向けに再調整を施されて発売される珍しいスタイルを取っていることから分かるように
メインとしている市場は北米で、ゲーム内容も完全にそっち向きに作っている節がある。
日本版の違いは難易度を下げているのだが、当初極端に易しくしすぎるのでは?という心配があったが
それは杞憂で、なかなか良い位置に持ってこれたのではないかと思う。
ちなみに一度クリアすると字幕から音声まで全てがまるまる一緒の北米版が遊べるようになるのだが、
こっちは敵がしぶとくなっており、すぐに違いを実感出来る。
ただゲーム後半に覚えることが出来る「無敵」というアビリティが強力すぎて、特にボス戦ではMPが続く限りどんな攻撃もやりすごせるし
MP切れになるまえに倒せてしまうので緊張感も何もあったものではなく、このおかげでバランスが完全に崩壊してしまっている。

前作はポリゴンフィールドで3Dアクションという謳い文句でありながら、実際は2Dアクションの延長程度の内容であった。
さすがに本作ではキャラクター背面にカメラを置き臨場感溢れる3Dアクションゲームになっている。
同社の「キングダムハーツ」の影響を強く受けていて、だいぶプレイ感覚が似通っている。

オープニングデモでは、「新世紀エヴァンゲリオン」でお馴染みGAINAXによる綺麗なアニメ映像が流れるのだが、
同社「半熟英雄」シリーズに似過ぎてる気がする。もうちょっと差別化を図っても良かったように思う。
バックに流れるTHE SURF COASTERSの音楽は本編でも使われており、他のゲーム音楽と比べても違和感が無く入り込めている。
北米を意識してか音楽は全体的に刺激的なものが多く、ゲームコンセプトのバッサリ感や雰囲気ととてもマッチしている。
楽曲の完成度も高くなかなか聴き応えがあって良い。

世界観やデザイン、ストーリー設定など、前作より一回り大人びた風味になっていて、これはターゲット層に合わせたものと思われる。
前作と同じく野村哲也がキャラクターデザインを担当しているが、どうも一部の層に媚びたような感じが好きになれない。
こういうのは好きずきと思う。だが、絵のデザインの幅が狭くいまいち面白くない。まだ一作目のすちゃらかな感じの方が意外性があって良かった。
また、極端に女性キャラが多く、いわゆる萌えアニメ臭さが強いのもなんだかねぇ。
パッケージには豪華声優陣と書かれているが、面子は言うほどのものでもなく、一作目ほどの豪華さは無い。
イベントではもちろん喋ってくれるのだが、喋る時と喋らない時がある。
テンポを優先した面もあると思うが、もっと喋らせても良かったと思う。

トゥーンシェードのグラフィックはもはや珍しくない手法だが、意図的に輪郭を太く描く(マンガシェーディングというらしい)処理は
アメコミらしさが出せていて面白いものと思う。
表情の変化も豊富で、他のPS2タイトルでトゥーンシェードを使ってるものと比べ頭一つ抜け出たクオリティを実現している。

具体的なゲーム内容としては、前作の大筋の枠組みを引き継いで今風のものに上手く昇華させている。

可変フレームでオブジェの数によってフレーム数が上下するのだが、
モーションデータを60フレームで作っているらしく、レートが下がるとスローがかってスピード感が無くなってしまう。
実のところ60フレームで動くときというのはイベント以外は少なく、敵が画面に入るとすぐにスローモーションがかかってしまう。
敵の数もそれほど多くなく、これらを派手なエフェクトで誤魔化してる感じ。
実際、敵を切り倒していく快感はそれなりにある。
攻撃の当たり判定から察するにどうやら一体との戦いしか想定してないらしく、
密集して配置された場所では対応策が極端に少なくえらく苦労する。
画面隅に周辺のマップが表示されるが敵はそこに表示されないので位置関係が分かり辛く
突然画面外から攻撃を受けたり、カメラもかなりプレイヤーに寄っている上に悪質なダメージトラップも多く、ますます厄介。
さらに物語上、特定のキャラをダッコして運ぶという局面があり、大きく行動制限がかけられる。
この状態でもそれなりに強力な攻撃を出せるのだが、ゲーム後半になるといやらしく密集している敵の通路を横断させられるように仕向けられ
ただただ鬱陶しいばかり。

ボス戦では、自動ロックオンされないし、ロックオン出来ないことが多く、忙しいなかせっせとカメラ操作しながら
相手との状況をつかまねばならないのは今時のゲームとしては不親切。
あと、ほとんどのボスの倒し方がいまいち把握しづらく、結局は強力な攻撃をしたあとに出来る隙を見つけて攻撃するだけというつまらなさ。
ボスによっては「なんだかわからないうちに倒してしまった」というものもいて、この辺りもっと工夫をして欲しかったところだ。

敵の能力を覚えて進むというシステムは今作ではそれらが蓄積されていくようになり、
ゲームを進めるごとに様々な技を習得することが出来る。
しかし、敵の数自体がそれほど多くなく、それに伴ってアビリティの数もコレクションするほどの数ではない。
極端に(パラメータが足りず)覚えづらいレアものとそれ以外と分かれていて、意外に自由度が無い。
数が少ない代わりに、一つ一つに存在感はあるが、結局似たり寄ったりの技ばかりなのであまり意味がない。
あと、攻撃以外のものはなかなか敵が使ってこず、それを出すまで耐え続けるのはひたすら苦行であった。

ゲームが進行すると新たなアクションが使えるようになって、それを使って新しいエリアを攻略していくというのは
任天堂の「ゼルダの伝説」に似ている。
ただ、突然何をしたらいいか分からなくなってしまうことも若干あり、もう少し上手くフォローを入れて欲しいところが見受けられた。
独特で(独りよがりな)クセのある操作&システムなど慣れるまで苦労するところなどから、スクウェア風ゼルダみたいな感じがする。

拠点となる村は目印となるものが無く、地図を開かないと行きたいところに辿り着かない。
あと、移動速度との兼ね合いから、もっと小さくしても良かったんじゃないかとも思う。ややうろちょろするのに時間がかかる。

意味ありげなわりにたいした意味のないアイテム、ゲーム後半に強いられる長時間プレイなど作りが雑なところを感じられた。
ストーリーや台詞も、一部大雑把な箇所も少々気になった。いくら北米ベースとはいえ、しっかり作って欲しい。

ゲーム自体はそれほどボリュームはないし、クセのあるところが多いが、基本的には丁寧に作られている。
コロシアムでの腕試しやアクセサリ、カード集めという脇道要素も適度な分量で用意されており、それなりには遊べる。

派手さと豪華さは一級品、ゲームとしては三流品。





[2005/07/11]
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