ネクタリス


戦争系シミュレーションゲームでは、恐らく最高峰を誇る。

この手のゲームは非常に敷居が高く、遊ばれる前から設定などの要素が
マニアックで、一部の興味のある人間以外は、パッケージを手に取るところにすら行かないという
非常に手厳しいジャンル。
これはちょっと問題で、ゲームから興味を持たせることも必要であり、
そういう努力を一切しなかったから、現在では淘汰されてすっかりこの手のゲームは出なくなってしまった。

ネクタリスは、見た目は似ているが、世界設定は全てフィクションで構成されている。
だから、ユニットの性能だとか見た目が、そういう史実に縛られること無く、おおらかに描かれている。
名称、形状、性能と、一目見ただけで印象に残るそれらは異常なほど絶妙。
初心者にも配慮してか、コマンドの中に「性能」という物があって
ユニットを選択したとき、常にユニットの解説文を読むことが出来る。
1988年のゲームに於いてこれは驚異的な親切っぷりである。
驚くべきことに、チュートリアルモードも搭載して手取り足取り
それこそシミュレーションゲームの基礎からみっちり解説してくれる。

任天堂もこの手のジャンルに挑戦したが、残念ながらさほど良い出来とは思わなかった。
レトロゲーム支持者には評判が良いファミコンウォーズだが
先にこのネクタリスを経験していた俺にとって、あれは全然革新的な物が見受けられなかった。

本作は初心者向けSLGというコンセプトで開発されたこともあって、
とにかく間口の広さではこれに勝る物が無い。
しかし、いたずらにバランスが易しいといった付け焼き刃な作りでは無くて
例えSLG上級者であっても、下手をすると苦戦することがある絶妙なゲームシステムに完成度の秘密がある。

戦争系SLGに必ずついて回る要素が「生産」だが、本作ではそれが無い。
つまり、用意されているユニットだけで進めていくようになっている。
従来のSLGは資産運用をし、如何にユニットを生産し、という
物量作戦にも似た、実際のフィールドの位置取りやルート選択と合わせて、この二段構えの戦略は、
敷居を非常に高めていた上に、一戦一戦が長く決着が付きにくい傾向があり、煩雑であった。

ゲームシステムも秀逸と書いたが、基本的なSLGの要素がきっちり入っていること、
そしてそれを初心者にも分かりやすく咀嚼したのが、本作で、とにかく直感的に戦略が立てやすく
非常に遊びやすい。
全16ステージ(マップ使いまわしの難易度を上げた裏ステージも16個ある)で、難易度の付け方やゲームへの慣らし方(誘導の仕方)が上手いことも
理由の一つに挙げられるが、それも基本的なシステムが良ければこそだ。

ZOC方式で、敵を取り囲むことで有利に戦闘を行うことが出来る支援システムは勿論入っているし
生産が出来ない以上、嫌でもこのようなシステムを活用して上手く立ち回っていく
プレイヤースキルを求められる代物になっている。
そして、このゲームでは、そのプレイヤースキルが高められるような作り方になっている。
こういう配慮こそが本当の意味での親切なゲームといえる。

生産システムは無いが、収容所があり、ここに格納することで消費したユニットを補うことが出来る。
(昔の戦争系SLGを知っている人なら常識のことだが、フィールドの1ユニットは8機で構成されていて、全て撃墜されると消滅する)
ゲーム後半になってくると、中立の収容所があって、この中には予めユニットが格納されており
後半のマップでは如何にこの収容所を占拠するかが重要な物になっている。
敵を取り囲むことで優位にことが進むこともあって、ユニットの数はそのまま生命線となるため
手数は非常に重要である。

やはり高評価をあげたいのは、デモ画面で挿入されるオープニングストーリーと
ユニットの絶妙な配置と、ギミックの数々である。
プレイヤーは連邦を動かし、ガイチ帝国を壊滅に追い込むのだが、
ガイチ帝国の支配下の惑星で戦うこともあって
先に進めれば進めるほど、敵の方が優位な状態で始まったり、
機動性も攻撃力も高い驚異的な飛行ユニット、ジャビィ、ハンターが敵側に沢山配置され
強烈に襲いかかってくる。
大抵、新らしく登場するユニットは、敵側が先に配置されていて
次のステージへ進めると、それらがこちら側に配置されていたりするところがまた上手い。
序盤を除き、多くのステージはこちらが不利な状態からスタートすることが多く
そこをなんとか切り抜けていく。
ある一点、例えば敵勢力の要となるユニットを撃破することによって、
雪崩式に勝利へと持ち込む流れになっていて、
この形成が逆転する一瞬がステージそのものをクリアすることよりも、堪らない瞬間だ。

全体的にグラフィックや音楽も質が高く、それは今でも十分に耐えうるクオリティだ。
中でも戦闘時の構成が素晴らしく、ユニットを破壊した時された時の、爽快感と絶望感は
この初代が最も端的に味わうことが出来る。
PCエンジンでの続編や、PS版GB版は、この初代に比べるとちょっとお話にならないレベル。
それだけ、この時点で高品質な物を作り上げているのだ。

発売元ハドソンのご厚意により、自社ホームページで、この初代ネクタリスを
無料でダウンロードして遊ぶことが出来る。
内容は全く一緒で、再現度も高く、エディットモードまで付いている。
PCエンジン版では不満点としてあった、敵の移動範囲の表示や、移動後のキャンセル機能まで付けるという
改善も施してくれている。
後半になるとワンプレイに30分〜1時間かかる割に、パスワードコンテニューのため中断機能が無かった不満も
このPC版では改善されている、まさにいたれりつくせりだ。

同ジャンルのSLGでの無駄な部分を全て取り払われている、素晴らしくシンプルで奥の深いゲーム。
テンポも良く、詰め将棋感覚で気軽に遊ぶことが出来る。
マップも最大4画面とさほど広くなく、分かり辛い要素も何一つ無い。
強いて言えば、これ単体ではやり込んでいくとボリューム不足に感じるぐらいか。
しかしそれも、大量生産では無く1ステージ1ステージ丹念に作られた裏返しと取れば好感が持てる。
恐らく、相当バランス取りに検証を重ねたはずで、
GBやPSではここら辺ボリューム感ばかり出そうとしてどうやらステージ一つ一つの質が悪いようだ。




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