ニーア レプリカント / ゲシュタルト


対応機種プレイステーション3/Xbox360
発売日2010/04/22
価格7800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2010 SQUARE ENIX / cavia
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退廃的な世界観と狂気のストーリーが売りで話題を呼んだ「ドラッグオンドラグーン」のスタッフが再集結して作られたのがこの「ニーア」である。
プレイステーション3では「レプリカント」が、Xbox360では「ゲシュタルト」版が発売されたが、同一内容なので、一緒くたにして扱う。

機種によって2つのバージョンが発売されているが、主人公と音声が日本語/英語吹き替えの違いだけで、ゲーム内容自体はまったく同じ物だ。
「レプリカント」は、日本語ボイスで、主人公が十代の若者になっているのに対し、「ゲシュタルト」は、英語ボイスで、主人公が筋肉ムキムキのおっさんである。
つまりこれは何を意味しているのかというと、「レプリカント」が日本国内向け、「ゲシュタルト」が国外向けとして売り出しているのだ。

海外では、若い細身の青年が主役だと失笑される傾向にあるということで主人公だけ差し替えたのだろうが、露骨すぎて呆れてしまうほどである。
マーケティング結果などに惑わされずにもっと自信を持って一本のゲームを作り上げて欲しい物だ。

また、バージョンの違いをもっと明確に伝えるべきだ。パッと見ただけだと、まるで別々のゲームのような印象を与える。
いきなり調べもせず両方買う人間はいないだろうが、主人公が違って、ギミックは同じでもストーリーが違うのか、ジャケットの裏にでも、その辺の違いをきちんと記載した方が良い。
と思って、Googleで検索してみれば、案の定、「違い」のキーワードがヒットした。

ゲーム内容は、一言で書けば真・三國無双のスクウェアエニックス版といった所だ。
ファンタジーの世界観で、魔法を使ったり、武器をカスタマイズ出来る、町でクエストを受けることが出来るなどRPG要素も強い。

武器の種類は、剣、大剣、槍の3種類だが、ゲーム中盤までは剣しか使えない。敢えて剣しか使わせないメリットはあまりないので、最初から全種類の武器を使わせて欲しかった。
そして、3つのなかでは槍が突出して強い印象がある。好みの問題だったかもしれないが、大剣なんかはもっと使える局面があると良かった。バランスをもっと取って欲しかった。

「ドラッグオンドラグーン」でもそうだったのだが、本家「真・三國無双」シリーズと比べると、アクション部分は実に地味な仕上がりだ。
今回、仲間が2人一緒に戦ってくれるが、このAIがかなり馬鹿すぎる。なんならいなくても違いがわからないぐらいの存在感だ。
仲間と距離が離れると、突然目の前にワープして来るというのも、実にお粗末な処理に感じた。プレイステーション2時代のゲームならばまだ許容出来たのだが。

爽快感に乏しいからといって、戦略性で面白さを補っているかと言えばそうでもなく、大抵強攻撃でガードブレイクしてのけぞらせて倒すぐらいのありきたりな物で、せっかく売りである魔法の存在価値が薄い。
せいぜい、ボス戦で強制的に使わされるぐらいである。

そのボス戦も、ほとんどの戦闘で、戦闘中にイベントが発生し、やたら形態変化する。その都度倒し方も変わってくるのだが、独りよがりでかなりうざったい。
せっかく盛り上がって手に汗握る戦いを楽しんでいるのに、途中途中で手を止めさせられる。これほど興ざめするものはない。性質が変わるたびに、対応を考えないといけないのも、面倒に感じた。

クリーチャーも無機質なデザインで魅力が無い。ファンタジーなのだから、質感を作り込んだ中世世界ならではの敵を出して欲しかった。

ワードウェポンシステムが中々面白いと思ったのだが、結局の所、やり込み要素の一つになってしまっているのが残念。
敵を倒すと、武器や魔法に付けることが出来るワードが手にはいることがある。それを武器や魔法に装備させてやると攻撃力が上がったりガードブレイク値が上がったりする。
しかしこのシステムも、数の割に効果のバリエーションが無く、似たり寄ったりの装備になりがちである。「おすすめ装備」の機能が付いているのだけが救いと言ってもいい。正直自力でセッティングさせられていたら、かなり面倒な代物になっていただろう。

町の人からクエストを請け負ったり、武器を強化したり、本編を進める以外に色々な要素があるが、大体が素材を集めることに直結している。
ひたすら敵を倒し続けたり、採取ポイントで目的の素材が手にはいるまでルーチンワークを繰り返すのがほとんど。これはかなりつまらない。
せめて、武器に関しては「ドラッグオンドラグーン」がそうだったように、使い込むことで成長するようにした方が良かったと思うのだが?
やり込み要素を売りにしているのに、ストーリー進行度で出来なくなるクエストがあるというのも何とも…。セガ「龍が如く」にあった、クリア後は自由に遊べるモードなんかが欲しい。

ストーリーは、紋切り型だが、中々出来が良い。型破りな演出も多く、「おっ」と思わせてくれる。ただ、有名ゲームのパロディが多すぎないか?
大きく分けて二部構成になっており(ゲーム中で具体的に分けられているわけではない)、大体同じロケーションを二度行かされるのが後半若干だれる原因になっていた。
容量の問題もあったのかもしれないが、後半部でも新しいエリアを舞台に盛り込む工夫が欲しかった。
しかし、ストーリーの見せ方に統一性に乏しく、完全なムービーになってみたり、テキストをボタンで読み進めていくものになったり、バラバラである。
ボイスを当てている所も、当ててないところもごちゃごちゃで、突然喋らなくなったり、なんか荒っぽい。最後まできちんと整合性がとれなかったような作りに見える。

以前発売された「ドラッグオンドラグーン」と、世界観のつながりを持たせているが、知らなくても問題ないし、寧ろ、変に関連づけてしまったことが、本作の魅力を落としてしまっている気がしてならない(なぜファンタジー世界なのに鉄橋があるのかなど)。

グラフィックは、まぁあまりレベルは高くない。遠くにいるオブジェクトが端折られていたり(近づくと表示される)、自然な物理演算が当たり前になってきた時代に、havokの物理エンジンが搭載されていなかったりなど(まあ不要なゲームって言われちゃそうなんだが)。

インターフェイスに関しては、正直もうちょっと文字が大きくてもいい気が?操作中にキャラ同士がしゃべり出したりするのだが、台詞が左上に小さく表示されるが、正直忙しい時だと会話の内容を追い切れない。というかフォントが良くないんだと思う。
操縦性も、ややクセがあり、取っつきが良くない(=駄目という意味ではない)。他に代表的な看板タイトルがあるのだから、出来る限り第一印象を良くして間口を広める必要はあるのでは?という意味だ。
特にボタンがふさがっていてカメラリセット(プレイヤーの背面にカメラを回り込ませる操作)がやりづらいのがなんとも…。オプションで自動的に回り込む機能も付いているが、やはりこれは自分で操作したい。

同じ場所の行ったり来たりやマップやボスキャラの使い回しが目立ったり、気になる点が多い。以前出した「ドラッグオンドラグーン」同様、やはり中堅のラインを抜け出すことの出来ないゲームという感じで、色々と惜しいところが目に付く作品だ。
この手のゲームを遊びたいと思っていても、敢えてこれを選ぶ意味に乏しいというか。そこで結論。

作り込みが甘く中途半端なゲーム。





[2010/04/29]
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