黄金の太陽 漆黒なる夜明け


対応機種ニンテンドーDS
発売日2010/10/28
価格4800円
発売元任天堂

(c)2010 Nintendo / CAMELOT
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ゲームボーイアドバンスの立ち上げ期に発売され話題となったのがこの「黄金の太陽」だ。
新作が発売されるのがなんと8年振りと言う、実に長い期間寝かせていたタイトルである。実はこれには事情がある。

開発元のキャメロットが、突如として任天堂から離脱したのである。これが2005年頃だったと思う。確か、当時ゲームキューブで「黄金の太陽」の続編を作るという話も雑誌なんかにさらっと載っていた記憶があるが、これによって立ち消えになった。
色々やんごとなき事情があったのだろうが、離脱後は得意のスポーツゲームを武器に、ブラウザゲーなどの分野に挑戦していたようだ。が、いい噂はさっぱり聞かなかったので、そういうことなのだろう。
そうしてまた、任天堂へと戻ってきて、今に至る。

この会社は、かつてはセガハードで「シャイニングフォース」シリーズを制作し、それは一躍セガの看板ロールプレイングゲームとなり、RPGに弱いセガの屋台骨としてずっと支えていた。
しかし、ソニーや任天堂で仕事するようになってからは「みんなのゴルフ」がヒットして、どちらかというとスポーツゲームの開発が得意なメーカーになっていった。なので、また「黄金の太陽」がこうして発売されるとは思ってもいなかった。

まず、このゲームを購入したほとんどの人が、旧態依然としたゲームデザインに面食らったのではないだろうか。
簡潔に書くならば、このゲームは「仲間と会話するコマンドがなく、袋どころか預かり所すら無いドラゴンクエスト」だ。
これは、ゲームボーイアドバンス版からそうだったので、全く成長していないことになる。10年前だと、ハードスペックの関係もあって、SFCライクなちょっと古風なRPGで売り通せただろうが、さすがにあの頃とは事情が違う。
ではなぜ、土台が古臭いままでゲームが作られていったのか。それは、この会社は、それしか出来ないからだ!

というか、昔はこの会社も意欲的なゲームを作っていたことがあるのだ。それは時を遡ること1995年。「スーパー連打ブラザーズ」(※勝手に命名)と言う、2本のRPGを発売し、話題作となった。
西(セガサターン)の「シャイニングウィズダム」、東(プレイステーション)の「ビヨンドザビヨンド」である(東西は勝手につけているだけなので意味はない)。連打すればするほど強くなる!!とでかい触れ込みで仰々しく宣伝されたのだが、これがどちらもなかなかに辛いゲームであった...
だから、この会社にRPG作らせるときは逆に暴走させちゃイカンのだ!!とんでもないことになりかねない。
「黄金の太陽」は、任天堂チェックという素晴らしいお目付け役が付いたことで、インターフェイスやシナリオ演出が古臭いというのを除けば、ツボを抑えた遊べるゲームになっている。

このシリーズの面白さは「ジン」と「エナジー」の2つに尽きる。
「ジン」は、精霊で、ファイナルファンタジーで例えれば召喚獣のようなものだ。ジンを集めてキャラクタに装備させることが出来て、沢山つければつけるほど能力値や魔法が増えていって強くなる。
ジンはダンジョンや町といったあらゆるところに散らばっているので、探し出して集めることで、ゲームが有利に進むし、コレクター心もくすぐるニクイ作りだ。
戦闘シーンでは、ジンを解き放って強力な攻撃を繰り出すことが出来る。解き放つので装備から外れることになる。つまり、ジンによって底上げされていたパラメータが犠牲となる。
解き放ったジンはすぐに装備し直すことが出来るが、はずれた状態のままのジンを使って強力な召喚獣を呼び出して攻撃することも出来る。この場合召喚のためにジンは力を使い果たすので、再び装備できるようになるには、ジンの回復を待たねばならない。
このリスクとリターンのルールがかなり良く出来ている。これを下手にいじってしまってはいけないのだ。

先進的なゲームシステムに聞こえるかもしれないが、基本的にこのゲームのバトルバランスはかなりヌルく、そこまで意識して遊ぶことはまず無い。バトルの作りも、ドラゴンクエスト的で、単純で古臭い作りだ。

「エナジー」は、他のRPGで言う魔法だが、一部の魔法はダンジョンの仕掛けを解くための役割も果たしている。例えば、「ファイアーボール」のエナジーで燭台に火を灯して扉を開くといった使い方をする。
GBA版では、謎解きに使うエナジーの種類が少なく、それに対応するギミックも少なかったため、作業的になりやすかった。
今回のDS版では、大幅にエナジーの種類が増え、それに対するギミックも増えており、マップがフルポリゴンになったことで、立体的な仕掛けを組むことが容易となり、かなり面白くなっている。
謎掛けの難易度も絶妙で、たまに「ん?」と迷うぐらいの歯ごたえを与えている。ちなみに、頭を使うエリアでは敵が出現しないなど細かい配慮も行き届いており、ストレスを感じる部分は徹底的に排除されている。

DS版で、目新しくなったのは、グラフィックがフルポリゴン化されている(カメラ操作は出来ず固定視点)。キャラクタもポリゴンで表現され、戦闘画面もフルポリゴンになった。
GBA版では、全てドットだったが、バトルシーンがスプライト処理でありながら(フルポリゴンの戦闘シーンのような)立体感がウリの一つであった。本作ではただポリゴン化しただけである。しかもこれといって突出した技術的な見所はない。この点ではグレードダウンしたと言わざるをえない。
せめて、今回もハード初期にこのクオリティで出せれば、かなり話題になっただろうに、出すのが2,3年は遅かったと言える。

しかしそれを引き換えに、インターフェイスやキーレスポンスは良い(ポリゴンをここまで使ったDSのゲームにしてはという条件がつくが)。フィールドマップはキャラクタも全てポリゴンで、一見きつそうな処理をしていても、どのタイミングでも軽快に動く。
戦闘画面も、敵が最大で5体まで出現するが、派手な攻撃エフェクトなどが入ってもまったく処理落ちしない。ポリゴンになったからといって戦闘のテンポが悪くなったりもない。これらはハード性能を引き出した円熟期だからこそ出来る後発の強みだ。

また、2画面になり、インターフェイス周りも大きく変わったのも特徴的だ。タッチパネル操作に全面対応するために、下画面にマップやキャラクタ、メニュー画面等が表示され、上画面はレーダーマップの表示などサブ的な使われ方しかしていない。
メニュー画面は全てアイコンで表現されるが、この会社は元々アイコンを使ったインターフェイスづくりを昔から行っていたので、無理矢理感がなくこなれた作りで良く出来ている。勿論ボタン操作でも遜色ない出来上がりである。

この他に本作で強化されたところは、ジン辞典なるものが追加され、ジン一体一体のデザイン画と解説が見られるようになり個性が増した。
武器に秘められた必殺技の種類が大幅に増えていて、単調になりがちな戦闘シーンを派手に彩っている。前作まではレア扱いの武器ひとつにつき一種類だけしかついていなかった。

ストーリーは前作のパーティキャラの子孫が主役となり、世界観も同じであるが、前作からこれだけ時間が経っているのだから完全新規でも良かったろう。同じ世界といっても内容的にはほとんど別物といっていいものになっているが。
ただ下手に昔の設定を引きずったりしているところがあるのが気になった。GBA版を遊んでいないと楽しめない内容ではない。というか、GBAで遊んでいた人でも時間が空きすぎて忘れている。絵本などで過去のストーリーを振り返らせたり工夫が見られるが、そこまで工夫するぐらいなら全部舞台を新しくして作ればいいわけで。

固有名詞や説明的な台詞が多く、メッセージテキストのレベルは低い。あまりにひどいせいか、本文中にハイパーリンクを張って、そこをタッチ(ボタン操作でも可能)することで上画面に解説が挿入されるという配慮がある。それをもってしても、理解しづらい。
これはこの会社の長年続いている悪習である。ここの社長がいつも直々に脚本を書いているが、シナリオライターの才能はないのだから、いい加減別の人間を立てるなりして任せるべきだ。最初の方で、またRPGを作らせてもらえるとは思ってなかったというのは、こういった問題点が存在するからである。

戦闘シーンがフルポリゴンだが、モーションブラーでもかけてるのかぼやけて表示されるのが不自然に感じる。
ただ、武器を変えるときちんと戦闘シーンで反映されるのはちゃんとしていて良い。

このゲームは、一言でまとめるなら、良いところも悪いところもほとんどそのまんまで作られているということだ。つまり、このゲームには進化がない。見た目は大きく変わって、ダンジョンのギミックなど洗練された部分もあるが、本質は変わらない。
本質的な部分で、このシリーズの面白い部分は完成されているから変える必要はないと書いたが、改善させるべき点は結構ある。

いわゆる古臭さに関してだが、バトルの底が浅いだとか、預かり所すら無いだとか、そういう不便さについては、そこまで欠点に思っていない。
預かり所はないが、消費アイテムはひとまとめに出来るし、レアアイテムは捨てたり売却しても、お店の掘り出し物コーナーに陳列されるので、消滅するということがない。なので、そこまで致命的な欠点としてつつきまわすほどのものではないだろう。
また、戦闘が簡単で歯ごたえがないといった点についても、必ずしも歯ごたえのあるゲームでなければならないのか?という話になってくる。
このゲームの戦闘は実にオーソドックスで単純明快で、遊びやすいとも言える。レベルアップすればしっかり強くなり、小難しいことを考えず楽に先へ進める親切設計だ。キャラクターデザインのセンスも良い。

全体的に非常に古風な作りで、期待に添えない面も目立つかもしれないが、決して遊べないゲームではない。個人的にはこれぐらい軽い作りのロープレもあってしかるべきだと思う。最近のRPGは独自要素が多すぎて付いていくのが大変だ。
エナジーを駆使して仕掛けを解き、ド派手な演出が炸裂する戦闘シーン、全体的に軽快にテンポ良く進むゲームデザイン。時代錯誤な古臭いRPGと安易に批判するのは早計だ。そこで結論。

良くも悪くも昔のRPG(個人的にこの独特の気持ち良い手触り感はキャメロットの伝統芸だと思う)。





[2010/11/01]
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