ピカチュウげんきでちゅう


対応機種ニンテンドウ64
発売日1998/12/12
価格9800円
発売元任天堂

(c)1995 1996 1998 Nintendo / Ambrella(Marigul) / Creatures / GAME FREAK
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ピカチュウとたわむれるゲーム。ただそれだけ。

アンブレラという特殊なメーカーが特殊な経緯を経て開発された、まさに化学変化の連続でできあがったようなゲーム。

今作には必ずN64専用マイクセットが付いてくる。そして、これがなければプレイもままならない。
音声認識を軸に据えた実験作品である。

誤認識も多いしお世辞にも認識言語が多いとも言えない。しかし勘違いしてはいけない。
このゲームはピカチュウとおしゃべりをするゲームではない。ピカチュウという動物(ポケモン)と遊ぶゲームである。
認識する言葉は基本的にゲーム上で全て教えてくれるし、それ以外のもので反応するものは逆に言えば無いと言える。
ゲームを遊ぶ上で必要最低限のものしか入っていないのである。

当然ながら会話をする物では無いので、コミュニケーションを成立させるためには、一つ一つが単語でなくてはならない。
犬に「おすわり」「おかわり」というのと同じペット感覚と考えた方がよい。
ゲーム的には、リアルタイム性の強いコマンド入力型アドベンチャーと同じ仕組みといえる。

こちらの意図するものが伝わらない行き違いも多い。認識する言葉が少ないのは、意外にも違和感が無く受け入れることが出来た。
これは、ピカチュウというキャラクターを選んだことに起因する。相手は意思疎通が円滑にいきづらいものを使っているので、それも含めてゲーム性となっている。

認識するまでのラグをゲーム上の設定でうまく誤魔化している点も評価したい。
基本的にぼそぼそとした小声でも認識してくれるが、一部演出上少しトーンを上げないと駄目なところもあり、なかなか面白い。

完全に一人称視点で、ゲーム画面とプレイヤーの一体感もしっかり表現出来ている。
グラフィックは、特にピカチュウの描写に異様に力が入っている。下手をするとアニメ以上の可愛さだ。
あまり興味の無かった人でもこのゲームでやられる人が絶対に出る。

3Dのプログラミング技術は、だいぶ高い位置にあるのだが、それ以上に見苦しい点も多く全体的に貧弱な荒っぽい印象を受けた。
操作性が劣悪で、移動の挙動がくるっており、マップによってはやたら引っ掛かってイライラする場所もある。
いくら音声認識のやりとりがメインとはいえ、この酷さはないだろう。
マップの造形もいい加減なモデリングだし、なんだか、中堅企業が初めて64で開発したかのような水準である。力の入っているところは良くできているのだが…。
一応、任天堂が関わっているのだから技術的なサポートをするべきではなかったのだろうか。
数週間前に64の「ゼルダ」を体験してしまうと、この落差にはがっかりさせられる。

また、締まりのない作りなのも減点対象。
既存のゲームの文法を破りたいという心意気は分かるのだが、「攻略」や「目的」をゲームから外してしまうと、遊びどころが分からなくなってしまう。
ましてや、音声認識デバイスというコンシューマではあまり見ない新しい試みである。なにをすればいいのか、どこを楽しめばいいか迷う人続出の可能性大。
もう少し、ゲーム内での誘導はあっても良かったと思う。

ボリューム不足なのもなんだかねぇ。ピカチュウと遊ぶいわゆるミニゲームのバリエーションが少なく、
ステージ数全部合わせても(使い回しは省く)、片手で足りてしまうというのはどうかと。
しかも、根底の内容(マイクでピカチュウに指示をする)に大きな違いがないし。これでは熱心に遊んでもすぐに飽きてしまう。

ゲームを普段遊ばない人や、幼稚園児などにも配慮したのか、操作関係は相当気を使っていて、ゲームを進めていかないと使えない機能があるほどだ。
進めるごとに、新機能として追加されていくのだが、ピカチュウ注目モードや見回しの操作は序盤からあって欲しかった。
便利な操作なのに、使えるようになるのが中盤以降というのは、それまでのプレイがストレスになる。

想定している購買層から大きく外れているのは分かるのだが、画面に向かってマイクで声を発するという行為は、やはり抵抗がある。
任天堂という会社は、ゲーム機を玩具として扱っていることから低年齢層に力を入れているのだが、大人にももうちょっと目を向けて欲しい。
少し前に出した「ゼルダ」をやってくれってことなんだろうが、せっかくいい大人でも興味を持ってしまうような技術を組み入れているのだから、そこら辺に配慮が欲しかった。
多人数プレイをウリにした内容ならばギリギリ納得出来るのではあるが、このゲームは、ゲーム自体は完全に一人用である。やはり一人で遊ぶだろう。

ゲーム内容も、ゲームとしては見所が無く、イマイチと言わざるを得ない。そこで結論。

ピカチュウが三度の飯よりも好きな人ならッ!!





[2004/05/09-2005/11/09]
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