ファイナルファンタジー8


対応機種プレイステーション
発売日1999/02/11
価格7800円
発売元スクウェア

(c)1999 SQUARE
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フェイウォンの「アイズオンミー」が主題歌となり大変な話題となった、ファイナルファンタジーのシリーズ8作目。
CD-ROM4枚組という特大ボリュームで送る超大作タイトル!

ファイナルファンタジーは、シリーズを重ねてメジャーになるにつれ、ストーリー重視の路線になり、ゲームとしては、ライトユーザーに配慮した親切設計でどっぷりぬるま湯のゲームバランスに傾倒していった。
特に前作の7でこの傾向が顕著で、続編の8でも、この大衆向け路線だけは外さないだろうと思っていた。

ところがその予想は裏切られ、超大作ゲームにもかかわらず、恐ろしく挑戦的なゲームシステムを採用してくるのである。

ゲーム・システムは、独特の様相を呈しているので、この作品が意図しているものだろう、観念的なものだけ説明する。

RPGというジャンルのゲームは、戦闘を繰り返して経験値を集め、キャラクターがレベルアップし、各種パラメータが上がって(数値上)強くなることで、先に進めるようになる。
この、RPGで当たり前に使われてる常識的な部分、戦闘を重ねて経験値を集めるというプロセスを事実上廃止し、戦略とか戦術といった純粋なテクニックだけを要求しているのがこのFF8のゲーム・システムの最も特徴的な部分である。

長所として挙げられるのは、単純に数値稼ぎだけを目的とした、言ってみれば無駄なザコ戦闘で時間をつぶされる必要がなく、極端な話、まったくザコ敵と戦わなくても最後まで進めてしまう点である。
ゲームの攻略に有用なアビリティを見極め、優先的にそのアビリティを取ってさえいれば、あとはその組み合わせの戦略だけでなんとかなる。そういうゲームである。

短所は、パーティメンバーのレベルに合わせて、敵モンスターの出現レベル(強さ)が決まるので、いわゆる、レベル上げをして力押しで攻略するという、RPGの基本的な攻略方法が通じないことだ。
おまけに、パーティキャラクタは、レベルアップしても、ほとんど能力値が成長しない。でも、出現する敵は、レベルが上がるとどんどん強くなっていく。

それじゃあ、敵を倒しても見返りがほとんどないじゃないかと思われるだろうが、経験値と一緒に手に入るアビリティポイントでG.F(召喚獣)がアビリティを覚えるので、それを装備することで強くなっていく。
また、敵が落とすアイテムを素材に、武器を改造して強化することが出来たり、出現する敵のレベルが高いと、強い魔法をドロー出来るようになったり、とうぜんながらメリットも多い。

このゲーム・システムをまとめると、RPGお決まりの無意味なザコ戦闘の繰り返しを排除し、単体ではまるで効果のないものでも複数の要素を組み合わせることでパーティの戦力を爆発的に強化できて、
そして一定のルールに則った戦闘シーンで、有効な戦術を編み出して切り抜けていく、という、大作ゲームとしてはかなり敷居の高いものとなっている。

当然ながら、ゲームバランスも歯ごたえのある位置に置かれており、適当にやっていてもクリアできないものになっている(極端に難しいゲームというわけでもないが)。

前作で、ミニゲームが本編のRPGと乖離しているという意見を受けて反省したのか、今回ミニゲームのメインとなるカードゲームは、やればやるほどゲームを進めるのが楽になる工夫が施されている。
町の住人ほぼすべてと□ボタンで話しかけることでカードゲームで対戦することが出来るのだが、作りこみがとにかく凄い。
地域ごとにルールがあって、対戦を繰り返すことで、複数あるうちの別のルールが広がったり、プレイヤーの行動次第で、全く異なった状況が生まれていく。
このシステムは、ミニゲームごときにここまで凝ってしまうと、複雑さを感じて遊ばれなくなってしまうのではないかという危険を伴う。
だが、ここにもプレイヤーの工夫次第で有利な状況に持っていくことが出来る余地を持たせている。

このように、このゲームは、すべての局面において、プレイヤーのテクニックを試すように作られていて、かなり考えぬかれたゲーム・システムになっていて面白く出来上がっているのだ。

しかし、巷ではこのマニアックなゲーム・システムがやはり受け入れられておらず、あまり評判がよろしくないようだ。
それは一理ある。

マニアックなゲーム・システムな上に、不親切な部分も多く、とてもじゃないが万人向けの内容になっていない。

G.F(召喚獣)と魔法を装備するという概念のジャンクションが、とんでもなく取っ付きづらい代物になっていること。
普通のRPGだと、適当にやってても勝手に強い装備が手に入って、勝手にキャラクタが強くなっていくものだが、このゲームでは、自発的にやらないとキャラクタは強くならない。
そのためにG.Fを装備して、アビリティを覚えさせ、魔法を強化したいパラメータに装備させるというカスタマイズをするのだが、
序盤はG.Fの数が少ない上に、ジャンクション出来るパラメータも少ない。おまけに序盤でとれる魔法では、限界数の100個まで溜めて装備させても大した強くならないので強くなった実感が沸かない。
つまり、最初からいろいろ出来ると混乱するだろうという過保護さが、逆にとっつきを悪くしている。
G.FごとにHPJ(ジャンクション)とか力Jとか、ジャンクション出来る場所が決まっているが、個人的には、最初から好きな場所(パラメータ)に魔法をジャンクション出来るようにして、同時にジャンクション出来る数を増やしていく感じにしたほうが良かった気がする。

また、魔法を装備品とする概念もなかなか面白いのだが、どの魔法がどのパラメータにセットするのが効果的なのかがわかりづらいし、パーティキャラがどの魔法を何個持っているのかというのが見づらくて管理しづらいインターフェイスになっている。
今回複雑なシステムを採用したためなのか、メニュー画面の構成を刷新しているのだが、アイテムリストのウィンドウが狭くてとにかく使いづらい。
一般的なゲームと比べてインターフェイスは決して悪くないのだが、FFシリーズにしては、イマイチといった印象だ。

ストーリー展開に応じて、パーティメンバーの入れ替わりが激しく、そのたびに魔法、G.Fの付け直しをしなければならない。面倒くさい。
戦闘は発生しないからG.F装備はしなくていいと教えてくれる時もあるが、大半は教えてくれないので、当てにならない。
これだけ入れ替わりの頻度が激しいと、せめて1回目の戦闘に入る前に、強制的にメニュー画面に入るぐらいの鬱陶しい対策を施してくれたほうが遊んでいる方は嬉しいと感じた。
どれほどの人が、G.Fジャンクションし忘れて、「たたかう」しか選べない丸腰戦闘で泣きを見たか気になるところである。

そもそも、7のマテリアや、今回のジャンクションシステムは、キャラクタ自体に強さを付けるのではなく、主戦力を装備品と言った物にすることで、普段使わないキャラも気軽に使えるようにするためだと思う。
ストーリーの強制で、これだけパーティメンバーを入れ替えられると、さすがにつらい。7は装備品とマテリアだけだったからあまり気にならなかったのだが、今回はG.Fつけて、魔法交換&装備して、コマンドつけてという作業量も膨大である。
ちょっと難しい処理かもしれないが、入れ替わったメンバーと、G.F、魔法、コマンドの設定を紐付けして、ジャンクションの設定をそのまま他人に移せる機能があるとだいぶ楽になると感じたのだが。

ゲームバランスも、独特の味付けで好みの分かれそうなチューニングである。
とりあえず、HPが減っている状態で出すことができる「特殊技(いわゆる必殺技)」が強すぎると思う人が多いかもしれないが、意図的なものだろう。
というか、いかにして「特殊技」を出せる状況に置くかというのも立派な戦略の一つだろう。
そうじゃなけりゃ、△ボタンのコマンド飛ばしを連打して、特殊技がコマンドに入ってきた時、一瞬の間だがボタン入力を無効にする処置をわざわざいれたりしない。

他にも、取り逃したら二度と取れないG.Fや説明不足のイベントシーン(特殊操作のミニゲーム型イベントシーン)などがかなり目立って見られた。
ディスク4に入ってしまうと、容量の都合なのか、町に入れなくなる、つまりはカードゲームやったり買い物をしたりできなくなる。後戻りも出来ない。こういった配慮が足りない部分が非常に多いのだ。
超大作RPGのファイナルファンタジーという名前を背負っているゲームにしては、ちょっと不親切といった印象を残す所だ。

他には、お金は給料制で、敵を倒して手に入れるものではないことや、宝箱をなくして代わりに魔法が手に入るドローポイント(一定時間経つと再度入手できるようになる)になっていることなど。
RPGで古くから使われている慣習をぶち破ろうという強い意志は伝わってくるのだが、その意思が全て良い方向に作用しているとはとても思えなかった。むしろ、リアルさを追求して犠牲になっている部分のほうが多いと感じた。

次に、グラフィック周りについて触れる。

7では統一感のなかった映像だったが、2作目でさすがにこなれてきたためか、ムービーの画質はさらによくなり、CGの質感や絵柄も全体的に統一されて綺麗にまとまっている。
キャラクターは8等身になり、精細なテクスチャーがついて、ディテールがグッと上がっている。マップはカプコン「バイオハザード」のような感じに近くなっている。

これまでFFシリーズは主人公キャラのみがフィールドを徘徊していたが、なぜか今回は3人全員がフィールドマップに表示され、先頭キャラの後ろをついてくる。
ただ、後ろをついてくるだけで、それ以外になにも意味はない。なんだか、「ウチは3人動かせますよ」って言うような、カプコン「バイオハザード」に対抗しているみたいで、好きになれなかった。
このように、画質があがったせいでデータ量が増えたために、マップ暗転のロード時間が長くなってしまったのも残念。

また、映画っぽさを意識したシリーズの宿命だったのかもしれないが、ハリウッド映画を意識しすぎて、なんだかFFらしくない別物になってしまっているのも気になる。
良い意味でのゲームっぽさがなくなっちゃって、変にお洒落になりすぎちゃって、ムービーシーンではたしかに衣装や表情とか決まってるんだけど、リアルタイムのシーンでは、浮いてしまってて違和感のほうが凄いのだ。

劇中歌として主題歌がゲーム中に流れたり、華やかなのはいいんだけど、FFシリーズのダサかっこいいいつものセンスがなくなっちゃって、寂しい。

ウィンドウカラーも伝統の青色を廃止してしまって、戦闘シーンがアクティブタイムバトルなのと、指カーソルとメニュー画面の効果音で、かろうじて「ああ、FFか…」と思わせる程度になってしまっている。
つまりは、本作は、FFの名前を名乗る必然性がほとんどない。あまり固執しすぎるのもよくないが、もうちょっとシリーズ物なら、それらしい内容を踏襲して欲しいと思う。
なんか、売れることがわかってるから大金を注げた、大作映画みたいな、美味しいというかあざといというか、とりあえずあまり気持ちのよいポジションではない。

恋愛映画をテーマにしたそうなのだが、シナリオに関してもイマイチ...。いいムードと雰囲気を醸し出していたのもディスク1が終わる辺りまで(この辺までは本当に綺麗にまとまっていたと思う)。
ディスク2以降は、学園物と恋愛物という序盤ことさら強調されていた路線は薄れていき、だんだんと支離滅裂な内容になり、駆け足のようにエンディングを迎えてしまう。

核となるパーティキャラに魅力的なキャラがいない、特に恋愛物なら魅力的に描かなければならない主人公とヒロインがさっぱり描けていないというのが問題となっている。
無口なイケメン主人公は、7の主人公と通じるものがあるが、今回の主人公は、最後までプレイしてもイマイチ掴みどころがわからない性格で、ヒロインのリノアの方は、ヒロインの割に出番が少ない。
だから、訳のわからないうちにくっつけさせられていて、流れについていけず「なんで?」っていう話になる。圧倒的に描写不足。
影の主人公と呼ばれるラグナ編は、対称的にちゃんと面白かっただけに、本編の方もバランスを取って面白いシナリオに出来なかったのだろうか(ライターの力量不足とかではないと思う)。

全体的に高い水準のゲームであるのは紛れも無い事実なのだが、一歩引いて見るような人がいなかった、あるいは機能してなかったためか、かなり多くの部分で独りよがりさを感じるゲームだった。
作りたいゲームのアイディアを好き放題詰め込んで、それでもそれなりに面白いゲームに仕上がるのだから、それは凄いことなのだが、商品として冷静に見ることが出来ていなかったことでかなり損している印象を受けた。
相変わらず、魔法演出がもっさりしていて長くテンポが悪いこと、マップの歩ける場所歩けない場所、出入り口といった決まりごとがわかりづらいことにストレスが溜まるのが気になった(2作目なのだから改善して欲しい)。

すでに似た路線のゲームは、「サガ」でやっていて、あっちはシリーズを重ねて試行錯誤してだいぶ遊べるシリーズになっているだけに、いまさらFFでサガっぽいことやってもしょうがないと思った。そこで結論。

人を選ぶゲーム。詰めが甘い。





[2012/03/28]
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