クイズマジックアカデミーDS 二つの時空石


対応機種ニンテンドーDS
発売日2010/02/11
価格5000円
発売元KONAMI

(c)2010 KONAMI / Konami Digital Entertainment
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ゲームセンターで稼働している人気オンラインクイズゲーム「クイズマジックアカデミー」DS版の2作目となる。
詳しい内容は前作のレビューで触れているので、ここではその辺りは省略する。

前作でもかなり良い評価を与えたのだが、致命的なバグが次々発覚し、勢いが沈静化してしまった。
予習の星が一定数超えるとフリーズするというバグも辛かったが、個人的にはトーナメント対戦で出題される問題が組によって固定されていることが辛かった。
上位の組に上がると、より難しい問題が出題されるようになるが、本来は出題範囲が広がるだけで、難しい問題しか出ないという訳ではなかった。

この辺の出来具合を見ると、どうにも現物を知らない人間が突貫工事で作ったんじゃないかっちゅう風なところが気になって仕方なかった。
しかし、そんな細かいところまで重箱の隅つつきをしたところで、オタクの我が儘でしかない。多少の我慢だって必要だ。

そんな不安感を残す前作だったが、今回はかなり良く出来ている。前作から2年経ったということもあるだろうが(実際2008時点では良く出来ていた)、再現度が非常に高い。
細かい演出まで無理しなくていいのに…と思わせる部分まできっちり再現している。ただ、個人的には演出がゴテゴテしすぎ。これは元となったゲームがそうだから仕方のないことでもあるが。

プログラムレベルは1から作り直したのか非常に高まっている。今まで触れてきたDSタイトルの中でも一、二を争うクオリティと断言してもいい。
ハードスペックを底まで叩いてかなりの性能を引き出している。

一見きつそうな処理をしていても、処理が破綻することは無く、操作レスポンスもしっかりしている。凄い。
ただ、頑張りすぎたのが画面切り替えの暗転がやや長く感じられるのは残念。

やはり、アーケードと同じように、マッチング中に、予習が出来るようになったことは大きい。
裏で接続処理をさせておいて、それを予習をやりながら待つことが出来るのである(前作ではただ待っていることしか出来なかった)。
予習中どのタイミングで対戦画面に切り替わっても、バグることが無い。このシステムを組み入れるのに相当苦労したはずである。

というか、Wi-Fi通信に関しては、ほぼ完璧と言える出来で、同期もちゃんととれているし、よっぽどのことがない限り、回線落ちとかはしない。

随分出来がいいなと思っていたら、スタッフロールを見てはっきりした。ハドソンが開発しているのである(前作はコンパイル系のエイティングという会社)。
ハドソンと言えば、ゲーム黎明期に数々の良作を生み出し、自らハード設計もおこなうなど、技術屋としても名をはせた会社である。
今では、華々しい家庭用ゲームの市場ではあまり活躍してはいないが、早い段階から携帯電話に目を付け、事業を展開したり、コナミに吸収合併されるものの、手堅い収益を上げている決して侮れない会社である。
特に対戦ゲームに関するノウハウが非常に強い。今回も、このゲームを開発するに当たって、その強みを発揮出来たと言えるのではないだろうか。
個人的にはそんな老舗メーカーが、ゲームを立ち上げた時に社名ロゴすら出ず、下請けのような扱いになっているのが非常に悲しいが。

はっきりいってコナミ本気出し過ぎ!!これじゃ一層ゲームセンターに人が来なくなるぞ!!

このように、ゲーム自体のできあがりは非常に良いのだが、惜しいのは「マジックアカデミー6Extra」に準拠した内容になっていることだ。
大まかなゲームシステムは4で確立(DS版の前作は4を元としている)しており、結局後続の5や6ではただ上辺だけを焼き直しただけで、シリーズとして続いている割に、中身に変化が無いのである。
とりわけ、6は、変にシステムをいじったせいで、5以上になじめず、ほとんどゲームセンターでは遊ばずに終わってしまった。
ちなみに、本作でもアーケード版とリンクさせたメニューがあるが、それは6ではなく、近々稼働予定の7に対応させた物である。

○×や四択といった出題形式が多すぎたものを4つに統合したのは、最初から色々な形式が遊べて良いかもしれないが、その分遊びの幅が狭まってしまったし、
魔法石(経験値のような物)を稼いで階級を上げて、予習の時に遊べる出題形式がどんどん増えていくというやり甲斐も奪われてしまった。
この形式統合は相当不評だったらしく、多くのプレイヤーが決勝戦で使っているランダムクイズ(出題ジャンルをさらに細かく選べる形式)を後からとってつけたように入れるほどである(このDS版でも不自然な位置に追加される)。

予選を前半戦と後半戦に分けたのは、ただ「1プレイ長く遊べます」という目先の理由だけで変えただけであって、前半に苦手なジャンルが来ても後半で逆転出来る可能性などとあおっていた物の、
これまでの1回ごとに下位が脱落する方式と異なり、総合的に強い人が勝ち残るわけで、番狂わせが起こりにくい。実力主義になったことはある意味正しいかもしれないが、その分意外性が薄れてしまい面白味が無くなってしまった。
勝てないメンツとぶち当たってしまって、勝てないのがわかっているのに、長く遊べてもそれは面白くないのである。

DS版では、この6の方式が採用されたことで、前作と比べ一回のマッチング対戦時間が長くなり、気軽に遊びにくくなってしまった(本作の場合、8人対戦で予選で2人、準決勝で2人落ちる)。
魔法石も、トーナメント対戦以外の、実力テストや検定試験などでも十分効率よく取得出来る手段があるために、時間がかかって不安定なトーナメント対戦をわざわざ遊ぶメリットがあまり無い(勿論勝てる人ならWi-Fi対戦の対人戦の方が効率は良い)。
個人的には、一人で黙々とプレイする実力テストや検定試験で魔法石はあげなくて良かった気がする。少なくともDS版では。

組変動の条件も、個人的には上がりにくく下がりにくい4の方が好き。
というのも、上の組に上がれば上がるほど、ゲームの幅が広がっていく訳で、長時間プレイしてもさっぱり勝ち上がれない、何度も自分の身の丈にあった組を行ったり来たりするのは、ぶっちゃけ気持ちよくない。
難しい問題が出題されて解けないかもしれないが、それは対戦相手だって同じなのである。
いつまでも簡単な問題しか出てこない組が適正だからと、そこにいつまでも滞留させられると、だんだんと飽きてきてしまう。
挙げ句の果てには、やればやるほど階級だけは上がっていくので、やり始めの人に煙たがられる可能性も。

こういうガチガチのゲームバランスはコナミらしいと言えるが、もっとゆったりと遊ばせて欲しい物だ。

6は、対戦場所(背景)や音楽も変わらないのも寂しい。これまではルート選択があって、雰囲気が変わるだけでもクイズゲームの単調さが払拭された物だが。

しかも使用キャラの立ち絵を無くしてしまったのは大きなマイナスといえる。
このゲームはキャラクターで売ってきたところが大きい。なのに、なぜか荒いローポリゴンのアバターキャラを前面に押し出した方針に変更した。
シリーズならではのアドバンテージを自ら封印したとも言える迷走っぷりだ。ちなみによほど失敗を自覚したのかDS版ならびにアーケードの続編では復活している。

ゲームメニュー画面のインターフェイスも非常に悪い。見づらい。使いづらい。困った物だ。

総合的に見て、「マジックアカデミー5」の方が、家庭用向けのゲームデザインだった気がするが?無料でオンライン対戦出来るのだから、昇格試験を譲ってもらってパスしたり、フレンド登録して手伝ってもらったり。なんとももったいない話だ。
そういや、検定試験が登場したのも5が最初だった。
何より音楽も凄く良かった。まあ、あれをDSの内蔵音源で再現するのはかなりきつそうだが。

アーケードの話とごっちゃになってしまい、わかりにくくなってしまったが、上に書いてある話で6に相当する部分がそのまま本作に適用していると思っていい。

他のモードに関しても触れていく。
アーケード版「6Extra」にもあった、実力テストと検定試験も今回のDS版で収録されている。
実力テストは好きなジャンルを選び、その中からさらに出題されるクイズのカテゴリを選択し(たとえば芸能ジャンルを選んで、その中からさらに音楽関係の問題だけ出題されるカテゴリを選ぶといった話)、全18問を解いてハイスコアを目指す物だ。
検定試験も似たような物で、1980年代検定、1990年代検定、2000年代検定というテーマに即した問題を解いて同じくハイスコアを狙っていく。
他にも検定試験の種類はあるのだが、どうやらWi-Fi通信でつないで、時期を見て段階的に追加(解放)する予定のようで、いわゆる中古対策である。こういったやり方は好きになれない。ま、オンライン対戦メインのゲームでもあるので、集客のためにどうしてもこういう仕掛けを取り入れないといけないのだろうけど。

アカデミーモードは前作にもあった物語を見ていく物だが、前作では昇格試験のタイミングでシナリオが進行したが、今回は具体的にいつ何をすればいいか言われないので、非常に混乱する。
一応、階級名が変わると(昇格)、イベントが進むようにしているようだが、この辺りの情報の与え方が曖昧なのでわかりづらい。しばらくはずっとWi-Fiトーナメントで魔法石稼ぎばかりやっていた。

このゲームは、前作もそうだったのだが、ゲームモードが非常に多く、煩雑すぎて何をどう遊べばいいのかわからなくなってしまう欠点がある。
しかも説明書も説明不足な節があり、ちゃんと解説されてなかったりする。
ちなみにお馬鹿な話だが、前作ではアカデミーモードはオフライン用の物だと思っていて、ひたすらコンピュータ相手に魔法石を集めるという間抜けなプレイをしていた。

とりあえず、アカデミーモードとクイックモードのデータを共通化したことは褒めたい。変な混乱をすることが無くなった。

ダンジョン攻略モードなどと銘打って大々的に紹介しているが、なんてことはない、前作のWi-Fi討伐をちょっと変えたぐらいの物で、これといった目新しさは無い。
ただ、戦闘に参加させた仲間が徐々に賢くなっていくというシステムは中々面白いと感じた。

前作の不満点としてあった、「ア」と「ァ」といった文字の判別のしにくさについて、色分けをすることで解決している。しかし、文字フォントは変わっていないので、相変わらず複雑な文字は読みにくい。
こういったユーザーの意見をしっかり聞く一方で、全くもって必然性の無かった、「書き取り」クイズが残っている。DS版の売りにしたいのはわかるが、売りになっていない。バッサリ切り捨てるのも時には必要だ。

アカデミーモードではボタンの操作を受け付けるので、このモードに限り、選択肢を選ぶ時も十字キーなどに対応させて欲しかった所だ。
タッチパネルを使わせるのはクイズモードに入った時でも良いぐらい。

クイズゲームらしからぬゲームシステムの巨大さ、前作からさらに1万問増えた8万問という問題収録数は、クイズゲーム売り上げナンバーワンの冠にふさわしい作り込みを誇る。
問題は、結構入れ替わっており、前作をやりこんだ人でも、また、新たな気分で遊べる物と思う。

問題の質に関しては、前作よりもバリエーションが広がり、やや厳しくなっている印象を受けた。
逆を言えば、それだけマニアにも耐えうるボリュームということだ。
難しい問題ばかりになったという意味ではない。このシリーズは問題の質も良くできていると思う。

ゲーム自体は、クイズゲームのオンライン対戦というものだけでは、そろそろ通用しなくなってきていると思う。数年前はそれだけでも珍しく楽しめた物だ。
結局やってることは一緒なわけで、同じことをずっと続けていても、いつか飽きが来る。
「ドラゴンクエスト」の堀井雄二氏だって、同じことを続けているようで、毎回新しいことにチャレンジしている。
個人的にはこれからは「対戦」よりも「協力」が流行るのではないかと見ている。というか既に7では協力モードを搭載しているのだが、なんだか滑っている気がしないでもない。
普通にDS版の討伐クエストをうまくアーケード向けに作り替えるだけでいいと思うのだが。家庭用とは違うアプローチを求められるだけに難しいところだ。

Wi-Fi通信が前提のような面もあるものの、環境が無くても楽しめる工夫がふんだんに盛り込まれており、好感が持てる。
Wi-Fi通信に対応していないモードもあったり、統一性のなさが気になるのが残念。ゲームそのものが巨大すぎて対処しきれなかったのだろう。

しかし、久しぶりに“本気”のゲームを見た気がする。そこで結論。

まだこの対戦ツールに飽きてない人は、間違いなく買い。遊べ。





[2010/02/14]
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