ロボティクスノーツ


対応機種Xbox360
発売日2012/06/28
価格6800円
発売元MAGES.

(c)2012 MAGES. / 5pb. / Nitroplus
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「シュタインズゲート」によって一躍有名となった科学アドベンチャーシリーズ3作目が「ロボティクスノーツ」だ。
ロボット工学をテーマに、5pb.とニトロプラスのタッグによる他では見られないアツくたぎるシナリオが見所だ!

この手のビジュアルノベルというジャンルは低予算で作られる世界だが、「シュタインズゲート」が当たったせいなのか、制作規模が拡大しているのが見て取れることにまず驚く。
例えば、短いながらもオープニングムービーにプロダクションIGを起用したアニメを使ったり、劇中ではロボットのCGムービーが挿入されたり、一枚絵の枚数も非常に多く贅沢だ。
また、キャラクタのバストアップはフルポリゴンで表現され、それに合わせてか背景はほとんどが3D化されている。

ビジュアルノベルにおいて他と大きく違っている点は、立ち絵と背景の3D化である。

キャラクタのポリゴン化の利点は、2D絵と比べて細かいディテールまで表現できること、きめ細かくなめらかなモーションを実現できる、横向き、後ろ姿といったモデリングの回転動作が容易であること。
それにともなって、存在感や臨場感が段違いになることだ。
本作ではあまり使われていないが、背景も3Dになっているので、カメラワークを駆使して、別の視点から見せることも可能であることも大きな利点だ。

デメリットも多くあり、ポリゴンモデルやテクスチャー、モーションデータの作成など、作業量が大幅に増えてしまうことや、2Dの立ち絵よりも高い技術力を要求されること。
致命的なのが、原画を完全再現できず、違和感のある絵面になってしまうこと。これについては、ポリゴン化を前提にしたキャラクターデザインをしたようで、本作では違和感は少ない。
しかし、ポリゴン化によってビジュアル面での無個性化は避けられない。

また、利点でもあるモーションにもデメリットが多く、よっぽど工夫しないと嘘くさいモーションになって、説得力がなくなってしまうこと。バリエーションを増やさないと同じモーションばかりになってつまらないこと。
さらにはテキスト進行とモーション進行の同期を取るのが難しく、長いモーションが入ってゲームの進行が間の悪い瞬間で遮られたり、逆に、モーションの処理が追いつかずスキップされて別のモーションデータに不自然に切り替わってしまうことが挙げられる。

とはいえ、まだ違和感も多く残っていて大きな難題を抱えながらもビジュアル面での挑戦は高く評価すべきだと思う。

肝心のストーリーについて。
キャラの顔見せと導入部がはっきりいって壊滅的につまらない。
体験版も配信されたようだが、そこで見限った人も多数出たんじゃないかというぐらいもったいない。
このつまらないというのが、序盤の1時間2時間というだけならまだここまでひどく言わない。
面白くなってくるのが中盤以降、まともにやっていたら10時間か15時間程度やらないと盛り上がってこないのだから問題だ。

ちょうど「シュタインズゲート」では“鳳凰院凶真”が序盤を盛り上げてくれたが、今作ではゲームにしか興味がなく周りのことに全く干渉しようとしないキャラが主人公ということもあって感情移入を妨げてるのも原因の一つだ。

加えて、ツイぽ(ツイッター)を使ったシナリオ分岐の条件をクリアしなければ、その面白くなってくる場面にすら進めない。

このシナリオ分岐の仕方というかゲームの仕組みという一番肝心の部分が、ゲーム上どころかなんと説明書にもまったく書かれてなくて、どうやれば続きのシナリオが読めるのかがわからず困った有様になる。

個人的にも、長くやっても面白くなる予兆が全然見られなかったので、中盤に迎えるエンディングの時点で一度は辞めようかと考えたぐらいだ。
なんとか気を取り直して分岐条件を探し当てて自力でクリアーまで持っていった。

ストーリーは、なんというかギャルゲーというよりは、完全に熱血ロボットアニメなノリで、冒頭にも書いたが非常にアツい!
大衆受けを狙ったのか王道をかたくなに貫き通し過ぎてて、物足りない気もするのだが、非常に優等生な出来でちゃんと面白い。

中盤までのつまらなさを覆すほど評価しているのは、いわゆるフィクションの作り物の世界だからと都合の良い解釈でストーリー展開するのではなく、しっかり科学アドベンチャーという看板通り、現実的に物語を構築しているからだ。
アニメならロボットアニメ、ドラマなら刑事ドラマ。これらは、創作物としての面白さを重視して現実感を捨ててストーリーを描かれている物が多い。自分はそういう暗黙の了解を求めてくる作品よりも、できる限り現実感を重視したものを評価する。

中盤までがつまらないというのは、この現実感をしっかり描こうと、見た目ばかりの派手さやインパクトのある面白さを捨ててまでして、段階的にロボットとは何か?どういう仕組みで動いているのか?を見せていくためにそういうエピソードを組み込んでいるからである。
逆にこの作品は、王道展開を貫き通そうとするために、その方向で多少ご都合主義な展開は見られる。

とりあえず、クライマックスまで見た感想としては、盛り上がりが頂点に達するのが本当に終盤も終盤で、エンディングもあっさりしていて、もう一波乱(あるいはエピローグが)欲しかったなあと感じた。
だが、小難しい台詞や設定が結構飛び交っている割に、筋はシンプルで勢いで見せていくタイプなので、多少ご都合主義が混ざっていても気にならず、すっきり楽しめたのも事実である。

「シュタインズゲート」のフォーントリガーをさらに進化させたポケコン(アンドロイド型端末)は、面白いが一長一短といったところだ。
メニューにいくつか表示されてはいるが、実質使えるのはツイぽ(ツイッターを見るアプリ)と画面上をポケコンを動かして調べることが出来る「居る夫」という2つのコマンドのみ。
後者の「居る夫」はアドベンチャーゲームで言う虫眼鏡と同等の機能を持っていると考えていいが、使う局面がほとんどないし、調べてコメントが表示される場所もほとんどない。寂しい。
通話したりメールを送受信したりといった機能はなくなっている(主人公が勝手に使うようになっている)。

かわりにツイぽ(ツイッター)でキャラクタとやり取りが出来るものの、当然ながら返事が来ても通知されないので頻繁にタイムラインをチェックしなければならないのは寂しいし最初はうっとうしく感じた。
だが、慣れるとゲームを中断してタイムラインをチェックするのも悪くないとも感じた。ちなみにツイぽのタイムラインが更新されるのはディスクアクセスのタイミングなどでわかるようになっている。

基本的に非常に手堅い作りで、最後までやればちゃんと面白いのだが、全体的に優等生といった作りで、意外性のある面白さがなかったのは残念。発売前からアニメ化も決めてて変わったことが出来なかったんだろう。
恒例のファンディスクも出しやすいような無難な終わり方で、確かに面白かったのだが、今ひとつ物足りなさを一方で感じているのも事実だ。

また、かなりもったいない欠点として、ゲーム構成の下手くそさである。
面白くなってくる中盤以降の展開を見るために、ある一定条件をクリアしてなければならないことや、さっぱり続きが気にならない前半のストーリーのダラダラ感は無視できない。
これだけ悪条件が重なると途中で放り出されても無理は無い。

ちなみに、科学アドベンチャーシリーズ恒例のネットスラングの多用は、初期はそれだけで強烈な個性となったが、今ではテレビドラマですら女子高生をさしてJKと言ったりする時代となり、珍しくなくなってきた。
前2作では、通常の台詞にむりやりネットスラングを取り入れたような感じがしたり、発売時には微妙に古くなってたりして、なんとももどかしい滑稽さが残っていたが、
今回はよくまあここまで勉強してきたなというか、ライターの趣味というべきなのか、ある意味ちょっとやそっとじゃ真似できない領域まで染まった“キャラ”が盛り上げてくれる。

個人的には、大人の事情とか売るための事情とかあってしょうがなかったんだろうが、これでもかなり丸くなった作りに感じてしまって寂しい限りだが、基本を外さない作りで良く出来ている。そこで結論。

騙されたと思ってまずは最後までやってみるべし。





[2012/07/07]
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