RPGツクール3


対応機種プレイステーション
発売日1997/11/27
価格5800円
発売元アスキー

(c)1997 ASCII / 空想科学 / SUCCESS / Reiji Matsumoto
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スーパーファミコンで二作発売された「RPGツクール」のシリーズ三作目。
プラットフォームをプレイステーションへと移し、飛躍的な進歩を遂げた内容に期待が高まる!

まず、供給媒体がROMから、CD-ROMになったことで、低価格化が実現。5800円とは思えないほどの多彩な機能の充実っぷりには、ただただ驚嘆されるばかりだ。
また、カセットではなくなったことで、RAM(保存領域)を積む必要がなくなったのは、本作に於いては非常に大きいメリットとなる。

スーパーファミコンで発売していた時は、供給がカセットであるために、RAMをカセット側に積む必要があり、それがコスト増の負担になっていた。
それに、SFCのカセットのバッテリーバックアップというのは、飽くまでゲームの進行途中の状態を保存する程度のデータ量を想定したものである。
ゲーム1本作るほどの、膨大なデータ量を扱うことを考えられた作りではない(当たり前の話だが)。この観点からすると、とてもじゃないが実用的な環境とは言えなかった。

いっぽう、今作はメモリーカードにデータを保存する。
1つのファイルに付き、メモリーカード約15ブロック分のデータしか保存できないが、複数のファイルを使ってゲームを作ることが出来るようになっている。
その場合、しょうがないことなのだが、引き継ぎの処理が煩雑で面倒ではあるものの、メモリーカードさえ用意できれば、残り容量の制限という呪縛から解き放たれたと言っても過言ではない。

システムデータ(マップ、アイテム、モンスター等のデータ)と、イベントデータの2種類のファイルがあり、これが組み合わさって1個のゲームを構成している。
両者とも、1つのファイルで扱える容量は約12万程度(ツクール独自の数値)と、過去作とは比べ物にならない保存領域までしっかり対応している。

ただ、注意すべきなのは、データ量が増えていくとメモリーカードの使用ブロック数が増えていくことと、イベントデータは引き継ぎできるが、システムデータは引き継ぎに対応していないということだ。

これには理由があって、システムデータというのは、ゲームを構成するべき動かせない要素を保存しており、イベントデータのように簡単に差し替えることは出来ないからである。
一応、別のシステムデータに強引に引き継ぎさせることの出来る作りにはなっているのだが、データの扱いに気をつける必要があり、正常に引き継がせることは難しい。

本作のアドバンテージは、このような容量的な部分だけではない。
ゲーム制作時にやれること、命令文も増えており、自由度が格段に広がっている。

テキストメッセージに、漢字が全面採用され、漢字かな交じりの文章を入力できるようになったこと。
ただ、キーボード対応していないので、文字入力は相当な地獄を見る作業になっている。
ひらがな+カタカナ+記号を探して一文字ずつ入力していくことに加え、漢字を音読み+訓読みから探して入力していく作業が増えた。
入力インターフェイスは、練り込まれており、慣れればなかなか快適に操作できるものの、それでも凄く手間がかかる。

マップ作成では遂に、1タイル単位でマップチップを置けるようになった。前作までは、ある程度の大きさのマップパターンを組み合わせてマップを作っていくものだった。
他には、SFCのRPGのように背景に1枚絵のBGを設定することが出来て、臨場感のある(見栄えのする)マップを作れるようになった。
それから、「場面」マップという、予め用意された1枚のマップがあり、それを組み合わせるだけでも、それなりのマップを作ることが出来る。
イベントシーンなどに格好いいマップを使う目的の他に、おそらくだが、1タイル単位でマップチップを置けるようにしたことに対しての作業負担に配慮したものだろう。

マップ周りはかなりパワーアップした印象だが、CD-ROMになった弊害なのか、いわゆるフィールドマップのシステムが変更されている。
スクウェア「ロマンシングサガ」のように、地図上から行き先を選択するようなシステムに変わっている。
これには賛否両論あるかもしれないが、合理的な選択をした結果だろうと思う。
CD-ROMでは巨大なフィールドマップを表現したり、そのマップで2みたいに飛空船に乗ってマップがラスタースクロールするような処理は苦手だからだ。

強いて苦言を呈するなら、フィールドマップ作成時の操作が、他と比べるとイマイチ洗練されておらず、作りづらかったというのが気になった所だ。
コピーが出来なかったり、それ以外でも他の項目と操作が微妙な所で統一されてなくて、正直ここをいじるのはかなり辛かった。

イベントの命令文を中心に、とにかくやれることが爆発的に増えており、それを1つ1ついちいち取り上げているとキリがないので、主だったもの以外は割愛する。
タイトル画面を設定できるようになった、パラメータの名称を変更できるようになった、任意のタイミングでゲームシステムを変更できるようになった(エンカウントをなしにしたり出来る)、
パラメータの上げ下げが自在になり「力の種」のようなアイテムも作れる、「はい/いいえ」以外の選択肢を自分で入力して作れる&三択選択肢が作れる、
ランダムで結果が分岐する命令文が作れるようになり賭博のようなミニゲームが作れるようになった、
バトル方面で言えば、職業&転職システム、3すくみの属性要素、モンスター配置を範囲で設定できる、ダメージ値に乱数が加わり固定値ではなくなった、等々、挙げていくと本当にキリがない。

何より今作が一番すごいのは、色々と高度なことが出来るようになっているものの、基本的なインターフェイスは「RPGツクール2」を踏襲している点だ。
とにかく分かりやすいが第一に来ていて、迷わない、使いやすいというのが、実際に使い出してみて感じた一番の印象だ。

プラットフォームが変わったとはいえ、シリーズ物である利点をしっかり活かしていて、前作を触っているプレイヤーなら、まず間違いなくすんなり入っていける感覚というのが本当に素晴らしい。
もちろん、今作が初めてというプレイヤーであっても、しっかり馴染める。

そしてCD-ROMになって危惧されるのがディスクアクセスなのだが、タイトル画面でのデータアクセスが長いぐらいで、そこを抜ければ、待たされる場面は全く無い。
実際もう殆どプレイ感覚は「RPGツクール2」に結構近くて、びっくりするほど違和感がない。

ここまでだけでも、前作と比べると、相当な進歩を遂げたことがわかるだろうが、「RPGツクール3」が凄いのはこれだけではない。
アニメティカというモードがあり、そこでは、モンスターのグラフィックとフィールド上のキャラクタのグラフィックを自分の手で作ることが出来るのだ。

このモードでは、それ以外にも、RPGツクール3本編では一切使えないが、アニメーション作成という機能があり、正直何を目的として作られたのかはわからない。

ただ、実際にドットを打って、グラフィックを作成できるツールまで入っているのは凄いのだが、こちらに関しては本格的なツール止まり(しょうがないのだが)
マウスにも対応しているが、操作性やユーザーインターフェイスに関しては、かなり劣る。

他には、「音楽ツクールかなでーる2」の作曲データに対応していて、読み込ませることで本編のBGMとして使うことが出来る。

さてここからは、不満点を述べる。

マップは「外部」「内部」の2つのカテゴリから選択しなければならないのだが、「外部」のマップチップの使い勝手が悪い。
これは前作の2でもそうだったのだが、イマイチ応用が利かず、使いづらいバリエーションになってしまっている。
いっぽう、「内部」のマップチップは、2で言う内部マップ(氷、木、土など)のすべてを組み合わせて使えるので、ぶっちゃけ「内部」マップを使って外マップを作れてしまうぐらい万能だ。

つぎに、バトルのエンカウントの設定で、一番低い設定にしても、まだエンカウント率が高い。
もともと、この「RPGツクール3」自体が、それほど大きなマップを作れないから、サイズを考えると丁度良いとも言えるのだが、もうちょっと融通の効く調整はできなかったのかと思う。

イベントの命令文に「変数」の機能を入れて欲しかった。「RPGツクール Dante98 2」では、ユーザーの要望に応える形で導入されていた。
コンシューマー版ということで、そこまで本格的なものを入れることに抵抗があったのかもしれないが、実現可能であれば、せっかく本格的な命令文が沢山採用されていただけに入れて欲しかったものだ。

これだけ手の込んだゲームでなぜ?と思ってしまうのが、装備のシステムで、武器、盾ではなく、右手、左手という仕様になっていること。
両手に武器を持たせて二刀流に出来てしまって、しかもこれを実質的に封じ込めることが出来ない。一応、ゲームシステムの設定で片手の装備だけに制限できるのだが、苦し紛れという感じが否めない。
特殊能力で二刀流が出来るという形ならまだしも、武器を2つ付けることが出来るのが標準仕様となっているのは、いかがなものか?

使用データ量が増えていけばいくほど、セーブ&ロード時のメモリーカードへのアクセス時間が莫大になってしまう。
これはプレイステーションでやっている以上、どうしようもないことなのだが、1ファイルのブロック数が10を超えたりすることもあり、それを読み込む場合、凄まじく時間が掛かる。
ゲームを作るとき、そして、遊ぶ時も、立ち上げる度にデータの読み込みが必要になるので、その都度待たされる。一度読み込んでしまえば、リセットするなど再度読み込みが必要にならない限り、不必要に読み込みは発生しない。
そういう点では優秀といえるのだが、いかんせん本体とメモリーカードとのデータのやり取りが、これまたSFCと同様に、所詮ゲームの進行状況を記録する程度を想定した作りなので、それが足かせになってしまっている。

後は重箱の隅つつきみたいになってしまうのだが、収録素材(絵、音楽)のクオリティは、「RPGツクール2」と比べると、なんとなく一段落ちた感じがする。
具体的には書けないのだが、全体的に色遣いが暗く華がないせいかもしれない。音楽も、もうちょっと変化球気味の、変わったものが欲しかった。
それと、ゲームプレイ時の画面のレイアウトが、どうにも無機質で面白そうに見えない。
ウィンドウが黒を半透明にしたもので、縁が角ばっていて、文字も内蔵フォントのせいで画面から伝わる雰囲気がイマイチ固い。

あと、これは本当にしょうがないことなのだが、3Dのポリゴンを駆使したゲームが流行りになってきた時期に、2Dのドット絵のRPGが作れる!!というのは、時代的にもう、魅力が薄れてきてしまっていたことは否定出来ない。
ドット絵の色遣いもなんとなく他のゲームと比べても古臭くて地味なのも今更感を強めていた。

色々厳しいことも書いてきたが、本格的なRPGが作れる開発ツールとしてはかなり出来が良いというのは間違いない。
しかし、本格的なRPGが作りたいのであれば、そもそもPC版の「RPGツクール」を使うほうが快適であり、コンシューマー版のRPGツクールシリーズで、ここまで本格派に寄る必要はあったのだろうかという疑問も残る。

前作までは、凝ったRPGを作りたくても制約が多くて作れなかったが、今作はやろうと思えばかなりの大作を作ることが出来る。
だが、重要なのは“手軽にRPGを作れる感覚”では無いだろうか。
コンシューマー版のRPGツクールに求められるのは、どちらかと言うとそっちの方で、“ゲームを遊ぶような感覚で完成させられる”ことが最優先ではないかと思う。
ちょっと「RPGツクール3」は、本格的なRPGを作れることに力を入れすぎて、お手軽にRPGを作ろう!!という初期の構想からブレはじめているところがある(勿論全員が満足できるよう精一杯のフォローは心がけたのだろうが)

かなりいいツールではあるのだが、PC版の「RPGツクール」と比べても先鋭化した内容で、人を選ぶものになってしまっている感じがした。そこで結論。

高品質のツールだが、コンシューマーにおけるRPGツクールは本当にこの路線でいいのかを考えさせられた一本。





[2016/01/11]
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