リッジレーサーズ


対応機種プレイステーションポータブル
発売日2004/12/12
価格4800円
発売元ナムコ

(c)2004 NAMCO
戻る

ナムコの看板レースゲーム、リッジレーサーが
約5年間の沈黙を破り、新携帯ゲーム機プレイステーションポータブルと共に、遂にやってきた!!

(どうやら、2003年11月に発売されたR:Racing Evolutionは「無かった事」にされているようだ)

毎回リッジシリーズは、PSとべったりで、丁度10年前のPS本体同時発売以来、数々の作品を出し、
2000年のPS2の時も本体と合わせて発売。今回のPSPでもやっぱり同時発売に当ててきた。

やはり、本体に合わせて出すということは、開発側に取ってみれば相当重荷になっているはずで、PS2のリッジ5の時は、苦しい箇所が幾つも見られる出来だったのだが、
今回、それを踏まえて、やはりじっくり開発期間を取れないであろう本作も、さほど期待の出来る代物ではなかった。

特に、企画自体から手抜き感バリバリで、これまでのリッジシリーズの良いところを寄せ集めてみたというコンセプトには、安っぽさを感じざるを得なかった。
そもそも、そんな安易な考えで面白いゲームが作れれば、苦労はしないよ、という捻くれた印象しか持てなかったのだが、
困ったことにこれが面白くまとまっているのである。

コースは24個。全て過去作品の物を現在の技術で細かなところまで綺麗に描き直している。
構造そのものは一緒だが、造形は殆ど別物と言っていいほどリメイクされている。細かなディテールまで、リッジ5のデザインを基準に新たに直しが入っていて、その力のいれようは相当な物だ。
ただ、24コースとはいえ、逆走コースも数えているから、実質12コースである。これでも、多いと感じる。
というのも、12コースのほぼ全てがロングコースで、ボリュームに関しては申し分ないぐらい。とにかく、覚え切れない。従来の2倍近くはあるかもしれない。

グラフィックは、たまらん綺麗。僅か10日前に出たニンテンドーDSがおもちゃに見えてしまうぐらい高性能なマシンである。
高精細な液晶画面に、PS2相当の演算処理を載っけている(PS2よりやや劣る)。パッと見、殆どPS2用のゲームと変わらない水準。
それにしても、もの凄い液晶映りの良さである。これは、コマーシャルなど他の媒体を通して見ると味わえないほど
実機での映りは凄いものがある。恐らく、実際はそれほど綺麗ではないんだろうけど、携帯ゲーム機らしからぬプレイ環境の高さがそれをかなり補っていると思われる。

しかも、このクオリティが完全60フレームで動く。個人的には「レイジレーサー」と「R4」のコースが綺麗になって、60フレームで走れることに感動を覚えた。

リッジの魅力の半分を占めるのが、高い出来のテクノ系サウンドであるが、本作では、既にナムコを退社した人までをも再び集め新曲を作らせて、更に過去作品のリミックスに、過去の人気の高い原曲を幾つか入れてしまうほどの、至れり尽くせりっぷり。
初代リッジのコースを当時の楽曲で走る…という、粋な遊び方も出来る。新曲自体も、昔作曲していた人を呼んでやらせているので、妙な偏りが無く
雑多なジャンルが入り乱れて収録されており、かなりお得な気分を味わえる。

肝心のゲーム部分に関しても、凄く良く出来ている。

まず、車の挙動。理不尽さを感じさせないようにかなり細かいところまで手直しがなされていて、例えば、壁にぶつかった際の減速が緩められたり(ぶつかる角度によって不自然さが無いようになった)
今回、後述するニトロシステムの関係で、リッジのキモであるドリフトが、かなり簡単に出せて、なおかつ制御出来るように敷居を下げられており、遊びやすくなっている。

今回、大きな目玉として追加されたシステムに「ニトロシステム」がある。
ドリフトを行うとニトロゲージが貯まっていき、ゲージが満タンになると使えるようになって、効果は、一定時間速度が上昇するという物。(F-ZEROのブーストと似たような物)
これにより、今まで急カーブをよけるためでしかなかったドリフトに、大きな意味を持たせ、積極的にドリフトをしてゲージを貯めて、ニトロで大加速という、現実離れしたかなり派手なレース展開を楽しめるようになった。
今までリッジといえば、ある程度ライン取りが定まったら、そのレールにのっかるように走り込むようなゲームだったが、今回は、この要素によって、とにかく幅のある走りが堪能出来る。
人によって全く違う走りになるうえに、安定した走りをキープする方が難しく毎回違った走りになってしまうほどの、意外性まで与えている。

変化のある走りが出来るから、CPU相手に順位を競そうモードでも単調な走りになりづらく、順位争いが劇的に面白くなった(勿論、敵もニトロを多用してくるためである)

リッジを知っている人ほど、こんなシステムは野暮に思えるだろうし、実際自分も、思いつきで入れたようなニトロは余計な物にしか思えなかったのだが、これが、実にゲームを面白くすることに一役買っている。
過去作のコースを使いまわしているとはいえ、きちんと本作なりのバランス取りがなされているので、びっくりするほど破綻してない、というか上手く組み込まれている。

ニトロを発動した時の、「キューン」という飛行機の離着陸時のような演出もグッとスピードが出ている感触を得られる(同時にかかるモーションブラーの効果演出もいい感じ)

R4から用意されたツアーモードに当たる「ワールドツアー」というモードが本作にも入っているのだが、今まで、一つクリアするためには幾つかのコースを連戦しなくてはならなかった。
しかも、途中で残機が尽きると最初からやり直しという辛い代物であった。
今回は、体裁として連戦するスタイルを取っている物の、コンテニューし放題、途中抜けOK、おまけに車種の変更も可能という親切っぷりを発揮していて、
これにより、実質初代同様1ステージクリア方式と一緒になったと言っていい。この仕様は、携帯ゲーム機で出さなかったら、絶対にこの手軽さは戻ってこなかっただろう。

ツアーを一つクリアするごとに新しい要素が開放されていくスタイルなのだが、ちょっとこのツアー数が多いように思う。
24個(実質12)のコース数と、基本性能が違う7つまで分けられたクラスの車を使って、遊ばせるに十分な数だと踏んだのだろうが、ちょっと買い被りすぎである。
半分ぐらいツアーをクリアすると、大体のコースをそれなりの車で走ってしまい、後半は(一部奇を衒ったステージもあるが)似たり寄ったりでかなりだれるのである。
また、ちょっと難易度にバラツキがあり、説明文では「最高難度」と書いているくせにたいした難しくなかったり、
苦労してクリアしたわりに特典がイマイチ嬉しくない(設定資料集)ものだったりと、この辺りの調整がまだ今ひとつだったように思う。

せっかく、ゲームそのものを面白い物になっているのだから、ゲームプレイに意味を持たせるのはそこそこにして、あとは好きに遊ばせるようにツアー数を減らして、ゴールラインを短くしたほうが良かった。
リッジシリーズのメインの購買層は、ある程度筋道を立ててやらないと遊んでもらえないという危惧なのだと思うが、確かに投げっぱなしにすると物足りないと言われるし、難しい問題である。

画面デザインが全体的にセンスが良く、かつ押しつけがましくない。見やすく使い勝手もいい。
しかし、ナムコのデザイナーは、年々驚くほどの勢いで成長していくのを感じる。

画面下部に表示されるヘルプメッセージも、なかなか洒落た文章になっていて、ちょっと長いのだが思わず読んでしまう。
残念ながら、画面サイズの関係か、右から左にスクロール表示されるのだが、これがLボタンで早送りしても読み切るのに少々時間を取られる。
もう少しスクロールを早めても良かったかもしれない(せっかくRボタンで、スローにすることが出来るのだから)

残念なのは、レースに移行する際のローディングが長い。PS2のリッジ5より若干長い気がする。UMDという媒体の短所かもしれない。

初代リッジがPSに移植されて10年。ようやく、初期のクレイジーな感覚が戻ってきた。

企画コンセプトのずるさはあるものの、リッジの何が面白いか、ファンが何を求めているか、新作として何を入れるべきか
いずれも、全てきちんと分かっていて、とてつもなく高いクオリティでできあがっている。
そもそも目新しい物を!という向きに惑わされていたのが今までリッジシリーズでの欠点だったように思う。

シリーズの遺産を高いレベルで昇華した作品。





[2005/01/06]
戻る

inserted by FC2 system