龍が如く0 誓いの場所


対応機種プレイステーション4
発売日2015/03/12
価格8190円
発売元セガ

(c)2015 SEGA
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1988年、昭和の終わり、バブル景気の日本を舞台に、若かりし頃の桐生、真島の生き様が描かれる。
龍が如くの原点がかいま見える作品。それが「龍が如く0 誓いの場所」だ。

相変わらず、安定した高い完成度を見せるが、当たり前のところを褒めちぎっても仕方がない。
そこで、重箱の隅つつきや揚げ足取り、ないものねだりになることを前置きした上で、少し気になった点を中心に指摘していく。

街の雰囲気は、かなり良く出来ていると思う。
確かに細かい部分を突っ込みたくなる余地はある。しかし、全体的な空気感みたいなものは、この上なく良く出来ている。
特に町のネオンと、歓楽街らしい小汚い道路やゴミゴミした感じなど、細かい部分がとても作りこまれている。

その中でもセガのお膝元とも言えるゲームセンターの凝りっぷりは相当なもので、まさに昔のゲーセンにタイムスリップしたかのような錯覚さえ覚えるほどだ。
壁にはられた当時のポスターから始まり、実際に遊べるゲームが「スペースハリアー」「ファンタジーゾーン」「アウトラン」「スーパーハングオン」の4種類という大盤振る舞い。
どれもミニゲームというにはあまりにも豪華だが、しかし、2015年現在の観点から言えば、これらレトロゲームの1つ1つがミニゲームとして丁度良く収まってしまうことに悲しささえ覚える。
リアルタイムを知っている人間からすれば、相当感動する粋なはからいと言える。
ぜひ、当時を知らない人は、これらが現役だった時代を噛み締めながら楽しんで欲しいと思う。

コンビニの雑誌コーナーに行けば、当時の雑誌の表紙とともに(当時の雑誌の)解説が流れたりするほど、時代の演出にこだわっている。
しかし一方で、「龍が如く」の名物ミニゲームの一つであったパチンコが入っていないことが残念であった。

個人的には、パチンコはミニゲームとして優れたものだと思っていないし、どちらかと言うと無くていい派だ。
大体、ただでさえギャンブル系ゲームが多すぎるので、減らしてもいいと感じているぐらいである。
だが、大人の遊びの一つにパチンコは切っても切れないし、ましてや昔の日本だとなおさらだ。
この時代のパチンコが再現されていることを期待する客もいるだろうと思われる。
再現するにあたって色々と大変で苦労するからバッサリ切り捨てたのだろうが、プレイヤーにそれを悟らせるのはとても寂しいものだ。

ゲームは、桐生(東京の神室町)、真島(大阪の蒼天堀)が交互に切り替わりながら進んでいく構成になっている。
ストーリーは、割と極道、ヤクザの存在感を強く持たせた硬派で無難な路線にまとめた感じだが、その代わり少々地味になってしまった感がある。
ネタバレになってしまうから具体的に書けないが、ヤクザ以外のキャラクターの作りがチト雑なのが、久しぶりにここまで硬派、現実寄りの作風を目指したのだから、非常に勿体無く感じた。
(まあ今回も多少ケレン味の強い、というか、そういうシーンもあるのだが、フィクションゆえのご愛嬌といった所だ)

操作するキャラクタが頻繁に切り替わるために、バトルの操作に慣れてきたぐらいの頃に、キャラを変えられて...ということが最後まで続くため、なかなかゲームにいれこむことが出来なかった。
桐生、真島、ともに、キャラクター性能が違っており、さらに「龍が如く 維新!」のスタイルチェンジシステムを採用していて、3つのスタイルを切り替えて戦えるため、なおさら操作を習熟するのが大変なのだ。

バトル周りのチューニングは、意図的なものなのかかなり変わっており、シリーズファンは「あれっ?」と違和感を覚えることだろう。
これまでの超人的性能が見直され、どのスタイルも一定のクセというか、性能差が付けられている。
全体的に攻撃のスキが大きくなり、R1のロックオンも多少馬鹿になった気が?ただ、慣れるとそれほどでもないので、一概にダメになったという話ではない。
基本的には、難易度は従来よりかなり下がっていて簡単になっている。

しかし、スタイルチェンジのシステムは面白いが、今ひとつこなれていない感が漂う。
1人に3つのスタイルがあるのだが、明らかに強いスタイルと弱いスタイル(使えるスタイルと使いづらいスタイル)が存在すること。
桐生で言えば、壊し屋はデメリットを背負い込む割になかなか使える場面がない。ラッシュとチンピラは好みがわかれるだろうが、カウンターで割り込み攻撃ができるチンピラのほうが使いやすく感じた。
もっと深刻なのは真島で、スラッガースタイルが飛び抜けて強く、しかも特定のコンボが強力過ぎてボスですらそれだけの力押しで通用してしまうほどの強さを持つ。
個人的には、スラッガーだけだと同じことやってるだけで倒せてしまうので、喧嘩師と使い分けていたが、やはり拳で殴りあったり、フィールドに置かれてるものでヒートアクション決めたりするのが「龍が如く」らしい戦闘で楽しいものだ。

もう一点は、育成周りについての問題点だ。
スタイルごとに能力強化していくのだが、これがどうにも「そのスタイルを使っている時の強化」なので、どうしても取捨選択しなければならない。
そして強化しなかったスタイルは、より使われにくくなっていく…という格好だ。
どのスタイルで戦うかわからず、どういう方向性で振り分ければいいかを決めにくいために、育成強化に自由度をもたせたところで、それが逆にストレスになっているのだ。

これに関しては、今回はキャラクター強化もお金を使わせることで、ある程度の解決を図ったようである。

このシリーズは、経験値の入り方がイマイチわかりにくかった。敵を倒しても具体的にどれぐらい経験値入ったのかがわからないし、食事やサブストーリーで増えたことが実感できる程度である。
それを今回は、経験値というものを完全になくし、それすらもお金に一本化した。

最初はいかがなものかと感じたが、これがなかなか合理的で良く出来ている。

敵を倒した時に、一々いくら入ったか表示されるためにわかりやすくなったし、バブル時代の羽振りの良さというものを上手に表現できている。
実際は、いくらバブルと言っても、一個人が簡単に数千万といった大金を手にできるわけではないのだが、そこは、裏社会に生きるヤクザという身分によってなんとなく納得することが出来てしまう。
とにかく金不足にならないので、今までお金を使うことを渋っていた人でも、思わず使いたくなる。ちょっと横道にそれてギャンブルをやってみたり、大人の遊びを堪能できる。

いわゆる「龍が如く5」で言うアナザードラマに位置する「シノギ」がイマイチだった。
桐生編では「マネーアイランド」、真島編では「水商売アイランド」があてがわれている。
どちらも一言で説明すると、お金儲けをテーマにしたシミュレーションゲームといった所だ。
とても作りこまれているが、サブゲームとしては凝りすぎていて覚えることが多すぎる気がする。
強制的に挟まれるチュートリアルでウンザリする人も多数出たのではないだろうか。
やりこんでみると面白いのだろうが、あまりに本格的過ぎて、アクションゲームのミニゲームとしては合ってないように感じる。
武器探索のサブゲームもそうなのだが、クリア後のプレミアムアドベンチャーで遊ぶことを前提とした作りのように思える。
この辺は「龍が如く5」のアナザードラマが絶妙だっただけに、実に残念と言わざるをえない。

それから、毎度書いてきていることだが、イベントムービーが多い上に長い。
元々ムービーの多いシリーズだったが、最近はこの辺りも力が入りすぎて、イベントが始まる度にアクションゲームとしては異例といえるほどの長話に付き合わされて、それだけで疲れる。
単純にムービーを減らせといいたいのではない。しかし、「龍が如く5」から感じ始めた不満が続いて、今作で3本目。さすがに何とかして欲しい。特にエンディングはあまりに長すぎてだれてしまった。
途中でポーズできるものの、この頻度と長さはつらいものがある。
また、テキストの誤字も少しばかりだがあり、特にムービー中の字幕でそれを見つけてしまった時は興ざめしてしまった。

色々手厳しいことばかり書いた内容になってしまった。
「龍が如く5」があまりに力作だったために、どうしてもそれと比べてしまって、物足りなさを感じてしまう。
比べなければ、というか、比べても相変わらず豪華でクオリティの高い出来だが、細かいところでのもう一歩の惜しさがどうしても気になって素直にハマれなかったのも事実。

最後になるが、桐生編はイマイチだが真島編はかなり良い。真島ファンが遊ぶとそれだけで納得の内容かもしれない。そこで結論。

些細な不満点はあるものの、安定した出来栄え。





[2015/03/18]
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