龍が如く 極


対応機種プレイステーション4
発売日2016/01/21
価格5900円
発売元セガ

(c)2016 SEGA
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シリーズの原点「龍が如く」の一作目を、最新作「龍が如く0 誓いの場所」のシステムエンジンでフルリメイク。それが「龍が如く 極(きわみ)」だ。
10年の時を経て、新たに化粧直しされた第一作目の出来映えを探る。

本作は「龍が如く」シリーズ10周年記念作品として開発されたリメイク作品だ。
一作目は、2012年に2とセットで、HD版が発売されたので、リメイクに手を付けることはないのかと思っていた。
しかし、10年という節目の時期に、シリーズ最新作の進化したシステムと、大幅にグレードアップしたグラフィックという衣をまとってリメイクされることになった。

これは、ファンにとっては嬉しい事だろう。
以前から、PS3以降高精細になったグラフィックでシリーズ初期のPS2で発売された「龍が如く」を遊びたいという声が多かっただけに、それが実現した形になる。

ゲームとしては、「龍が如く0」からの使い回しが多く、新鮮さや見どころといった観点から言えば、正直イマイチと言わざるをえない。

新しいことは特に何もしてなくて、ゲームシステムも「龍が如く0」からの流用。グラフィックも使いまわしている部分が多い。悪い言い方だが“安く仕上げた”と言う作りがひしひしと伝わってくる。
(言うまでもないが、安く仕上げることが悪い意味で使っているのではない。コストパフォーマンスを考えてゲームを作り提供するのはとても大切なことだ)

例えば、PS2のオリジナル版では存在したパチスロのミニゲームがない。これは、「龍が如く0」ではパチンコ系のミニゲームがなかったためだ。その代わり、カラオケ、将棋等、
オリジナル版ではなかったが、今の「龍が如く」ではお馴染みになっているミニゲームはしっかり収録されている。

安く仕上げたといっても、手を抜いているわけではない。
イベントシーンは新しく作りなおされており、(主に)錦山視点の追加エピソードが付け足されている。
リメイクとはいえ、様々な部分でプレイ済みのプレイヤーでも楽しめるような配慮が施されている。

最近の「龍が如く」と比べると、ストーリーがあっさり目で非常にテンポ良く進んでいく。
アクションゲームのストーリーとして考えると、まだやや冗長かとも感じるが、これぐらいがゲームとしては丁度良いと思う。ここ最近のこのシリーズはシナリオに力入れすぎて、逆に空回りしているように感じてしまうぐらいだ。

また、ゲーム全体の尺としても、(このシリーズにしては)ボリュームとしては薄めで、物足りなさを感じる人も多いかもしれない。しかし個人的には、今作ぐらいが綺麗にまとまってていいと思う。
ちょっと寄り道してると、ゲームとしての終わりが見えるぐらいの分量のほうが、遊んでやろうという気持ちになるものだ。
最近のこのシリーズは、とにかくやり込み要素があまりにも膨大過ぎて、クリアした時に「そういえばあれ一度もプレイしなかったな...」というコンテンツ(ミニゲーム)が出てきてしまうぐらい、過剰供給だった。

その点、今作は「ポケットサーキット」「甲虫女王メスキング」「キャバクラ」「どこでも真島」「コインロッカーの鍵探し」「ギャンブル系」と、すっきりと的を絞っており、好感を持てる。
毎回、脇道のミニゲームとしては手が込みすぎていて、「ちょっとそれもういいよ...」と思ってしまうものが出てきていたのだが、今回はそういうものが見受けられなかった。
ゲーム全体の無駄が少なく気持ち良くプレイすることが出来た。“安く仕上げる”ことがいい方向に作用したと言えないだろうか。

「どこでも真島」は、文字通り、町を歩いてたらいついかなる時でも真島の兄さんに襲われるという、なかなかにぶっ飛んだ内容になっている。
一応、逃げたりも出来るのだが、不意打ちを食らうこともある。
こんな、ライバルにストーカーされるような仕掛けはいかがなものかと思ったのだが、これがなかなかダラダラと冗長になりがちなゲームプレイに、適度な緊張感を与えることに成功している。
この遊びを入れた関係なのか、公衆電話でセーブするだけでなく、好きな時にメニューからセーブできるようになっている。

真島の兄さんも、ゲーム序盤から全力で襲ってくるのではなく、何度も蹴散らしていくうちにランクが上がっていき強くなっていくという作りになっているので、ただただ理不尽というものではない。
そして、この戦いをこなしていくことでしか強化できない「堂島の龍」というスタイルがあるのも、実に良い仕組みとなっている。

ただ、このイベントの問題点としては、ランクを上げ過ぎると、当然真島の兄さんも強くなり、絡まれる度にちょっとしたボス戦を“やらされる”ようになるのが、正直な所辛かった。
ランクが上昇する境目にはイベントが仕込まれており、指定された場所に行かないかぎり、真島とはエンカウントしなくなるので、戦いたくない場合、そこでわざとストップさせれば良い。
だが、進めてしまった場合、否応なくエンカウントの恐怖にさらされるので、そこで、ちょっとうざったいと感じてしまうのだ。

バトルは、相変わらずスタイルチェンジを採用している。
強化育成方法はファイナルファンタジー10「スフィア盤」のような強化盤で、欲しい能力を取っていく形は変わらないが、今回は満遍なく強化することを半ば強制されているような形になっている。
そのため、育成の自由度という点では、ほとんど考える余地がなく面白味が薄れてしまったが、反面、どのスタイルもしっかり強くなって使えるようになる。
スタイルチェンジというシステムを生かすためには、この方が妥当だと感じた。
おそらく「龍が如く0」でも、そのような意図があったのだと思うが、あちらは経験値ではなくお金を使って強化していたので、そのへんのバランスがどうしても付けられなかったのだと思われる。

バトル中に4つのスタイルを切り替えて戦うのは、戦闘の幅が広がって面白いのは確かなのだが、単純に爽快感という一面で見ると、何も考えず痛快に敵を吹き飛ばす気持ちよさというのが薄れてしまったように感じる。
これは、贅沢な悩みとしか言いようが無いのだが、好きなスタイルで戦うというよりは、状況に合わせて切り替えて戦うようなチューニングになっているところがあり、そのへんでどうも“やらされてる感”を受けてしまうのだ。
この辺は、シリーズが育ってきたからこその弊害と言えるだろう。
シンプルに先祖返りすれば物足りないし、複雑にすれば逆の問題が発生する。実に難しい課題だ。

色々と書いてしまったが、一作目であるがゆえに、まだ粗削りなところが多かった作品を、“今の”洗練されたゲームシステムで包み込みリメイクしたという意義は非常に大きい。
当時は目新しさが評価された「龍が如く」の一作目も、10年の時を経て、今の目線で遊ぶと明らかに厳しい部分が多く存在していて、素直に楽しめたものではない。
それを、遊びやすい今風の形にリメイクされることで、安心して楽しめるようになった。
2000年以降、ゲームの進化は頭打ちになったと感じていたものの、年月が経つことで着実に、見えない部分や細かい手触り感が進歩していることを実感させられる。

ゲーム内容もさることながら、ストーリーもシリーズ化されることが納得の、綺麗なまとまりを見せているのも注目すべき点だ。
そこで結論。

とても意義のあるリメイク作品。漢は黙って遊べ!!





[2016/01/25]
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