龍が如く6 命の詩。


対応機種プレイステーション4
発売日2016/12/08
価格8190円
発売元セガ

(c)2016 SEGA
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シリーズのナンバリング作品としては実に4年ぶりとなる「龍が如く」シリーズの第6作目。
このシリーズの顔とも言える、主人公、桐生一馬が主役となる物語はこれが最後となり、また、今作のために新たに制作された「ドラゴンエンジン」の完成度も気になる所だ!
このように、ある種の一区切り的な作品とも位置付けられる本作の出来栄えはいかほどか!?

「龍が如く5」発売後の4年間の間も、年1本ペースでスピンオフ作品が発売され続けていた。そこでも様々な実験、新要素の追加や試行錯誤が行われていた。
だが、対応ハードが、プレイステーション3/プレイステーション4だったこともあり、見違えるような進歩、進化は無かった。
このあたり、今作はプレイステーション4専用タイトルとなったことで、一段上の映像表現や技術力を駆使できることとなった。

「龍が如く5」が、それまでのシリーズ集大成的位置付けであるとすれば、「龍が如く6」は、さながら、桐生一馬の物語の最終章でありながら、次の可能性を指し示した作品であると言えないだろうか。
(内容的には、今回が完結編のような様相を呈しているが、つぎは出続けるだろう)

フィールドマップを中心に、ゲームが大きく進化している。
屋内、屋外の画面切り替えがなくなりシームレスとなり、1つの空間として表現されている。
これにともなって、これまで入ることのできなかったビルの中、店の奥にある事務室、ビルの裏側につながる廊下といった、細かいところまで歩けるようになり、よりリアリティが増した。
一つの店の出入り口も一つだけではなく、現実と同じようにちゃんと複数作られていたり、構造的に細かい部分まで破綻せずに描かれている(描こうとしている)。

それだけではなく、バトルへの切り替わりもシームレムで、同じマップで行われる。
これは、これまでの作品でもシームレスに戦闘に入っていたが、一度戦闘に入ってしまうと、人垣など壁に阻まれてしまい、決められたバトルエリアの中だけで戦わされるような作りだった。

今作では、この垣根を取り払われていて、バトルエリアという区切りがなくなった。
つまり、戦闘態勢に入った後でも、その場から逃げ去ったり出来るし、決められた空間だけで戦わされることがないので、路上での戦いが、そのまま派手に近くの建物の窓ガラスを突き破り、喫茶店やコンビニの中にまで火種が飛んだりする。
(店の中で乱闘騒ぎを起こすと、店員が「出て行けー!」と言って、入店拒否する反応も作り込まれてて良い)

このように、これまでは別々に存在していた要素(屋内フィールド、屋外フィールド、バトル)を、シームレスにつなぎ合わせることで、圧倒的な現実感と臨場感を演出することが出来ている。素晴らしい!!

舞台は、お馴染みの神室町、そして、広島の尾道の2箇所。「龍が如く5」では日本5大都市が舞台だったから、スケールダウンしたように感じられるかもしれない。
しかし、今作の製作にあたって、マップのクオリティを上げるために、ほとんど作り直ししているようで、さらにそれを前述したシームレスバトルに対応させていることを考えると、密度としてはこれでも十分といえるだろう。

次に、ゲーム内容について。
毎度、遊びきれないほどのミニゲームやイベントがつぎ込まれてくるシリーズだが、ここらへん今回は取捨選択を行って、シェイプアップしているようだ。

まず、ミニゲーム関係。
ゴルフや卓球など1作で打ち切られたものやパチンコ・パチスロのように途中でなくなったものもたくさんあるが、基本的には一度登場したものはそのまま定番ゲームとして、ずっと無批判に採用され続けていた。
シリーズ初期は、それでも良かったのだろう、しかし、11年という節目を迎える長寿シリーズとなった現在、いくらリアルな町並みを表現すると言っても、それらが必ずしも効果的か?というと、そうでもない状態になってきていた。
初期の頃は、町の中にある店に入れて、そこでそのままギャンブルなどのミニゲームが出来たり、ゲーセンなら置いてあるUFOキャッチャーを実際に遊べたりするだけで「凄い!」と驚けるものだった。
だが、これだけ沢山の作品が発売されてきて、同じことを再現されていても、それはウリにはならなくなってくる。

おそらく、アンケートでも取って、不人気だったものをバッサリと切り捨てたのだろう。かなり大胆に多くのものを捨て去っている。
パッと思いつくものだけでも、UFOキャッチャー、地下闘技場、ボウリング、ギャンブル全般、将棋、が、無くなっている。

個人的には、「そこまでしなくてもいいだろう」と思ったが、シリーズおなじみの外せないものを頑なに入れ続けるより、数を絞って面白い遊びを入れ替えていくというやり方は、妥当な判断だと感じた。

それに、ゲームをやり込む人からしてみれば、こんなミニゲームが入っていて遊べるという親切心で入れたものが、いつの間にか(トロフィーコンプリートや達成率コンプリートのために)やらなければならないものになりつつある。
そういう背景や、プレイスタイルの事情を考えると、数が少なくなっても質が高いミニゲーム、イベントを提供していくべきというのは実に理にかなっていると言えないだろうか。

その方針に切り替えたおかげもあってか、数は絞られたものの、ミニゲーム、イベント関係は、どれも非常に質の高いものとなっており、本編をほっぽりだして思わず夢中になってしまうものばかりだ。

射撃ゲームとしても本格的な「素潜り漁」、パワプロのサクセスモードを彷彿とさせる最強チームを目指し選手育成する「草野球」、
血気盛んな若者を集め最強の組を作り上げRTSバトルで戦う「クランクリエイター」(ネット対戦に対応)。

これら3つは、凝ったストーリーもあてがわれ、非常に豪華な作りとなっている。

他にも、ネットの生配信動画で若い女の子とエッチを楽しむ「ライブチャット」は、細かいところまでの再現度が非常に高く、雰囲気が良く出来上がっているため、思わず唸ってしまった。

ゲームセンターは、セガ往年の名作「ファンタジーゾーン」「スーパーハングオン」「アウトラン」「スペースハリアー」に加え(ここまで「龍が如く0」で初収録されたもの)、
「バーチャファイター5 Final Showdown」「ぷよぷよ」までもが遊べるようになり、とうとう本当のゲームセンターになってしまった。

お馴染みの「バッティングセンター」「カラオケ」「キャバクラ」などもテコ入れが施されていて、別物と言ってもいいぐらいクオリティが上がっている。
もはやただの貧相なミニゲームという領域を飛び越え、一本一本がそれこそゲームとして売ってもいいぐらいの芯のしっかりした作りとなり、どれもかなり遊べるものになっている。

よくこのシリーズは「ミニゲーム集」などと(皮肉を込めて)揶揄されていることもあるが、
結果的に、数を絞って一つ一つのミニゲームを作り込むことで、それぞれが存在感を持ち、ゲームを構成する上でどれもが必要不可欠な存在になっている。素晴らしい!!

次にストーリーについて。

メインシナリオのみフルボイスだったが、遂にサブストーリーも含め、(多分)すべてのイベントシーンがフルボイス化されている。
これに関しては、本当に凄いという他ない。
勿論、フルボイス化したからサブストーリーのボリュームが落ちたということもなく、これまでどおりの水準を維持している。
こうすることで、イベント視聴の時間が増えてしまい、間延びした感覚は否めないものの、それでもまずはこの豪華さに感動するところだ。
(ちなみに、ムービーシーン以外の場面では音声を飛ばすことが可能)

メインストーリーについてだが、今回は本当に力が入っている。

現実の日本を舞台にしていることもあって、説得力をもたせる展開を作ることが非常に難しい。そしてこれはゲームである。
良い物語を描くということに関しては、ことさら難しい。

例えば、「龍が如く5」では、遥をゲームで活躍させたいとアイドルになるストーリーを導入したが、ゲーム的に面白くても、ストーリーとしては結構突拍子がなかったりしたものだ。
また、これまでは、重要なシーンでも、あっさりと笑いに走ったりして、そのギャップと勢いで楽しませるようなごまかしが多く見られたが、さすがにここ最近はその流れも苦しくなってきていた。

「龍が如く6」では、この辺をシリアスでハードボイルドな路線で統一させつつ、かつ、過去作から連続して続くストーリー設定を、適度に引用して、適度に切り離すことで、今作だけでも楽しめる独立したストーリーを描くことが出来ている。
具体的には、シリーズでレギュラー出演しているようなキャラを思い切って外したり、過去作で存在した設定を敢えて今作では存在すら無かったように(わざと登場させないように)作っている。
シリーズファンからすれば、「あれっあのキャラは?」とか「あいつがいればいいじゃん」的な印象を持たれがちだが、同時に、過去作の設定や遺産に頼ることで一気に展開が安っぽくなってしまう。

そこら辺は、今回、相当慎重なようで、シリーズファンなら少し見れば理解できるけど、あまりこのシリーズを遊んだことのない人でも問題ないという絶妙なラインで常に物語が進行するようになっている。
(タイトル画面から、過去作のあらすじが読めたり、ゲーム中でも用語集的なフォローがあり、深く知りたい人はそれらを活用すれば、今作だけでも十分楽しめる配慮がある)

少々地味めな展開が多いものの、シリーズ初期の、一作目のような重厚な雰囲気が戻ってきた感じで、個人的には好みな作りで良かった。

もう一つ、「龍が如く6」のストーリーの見所としては、メインキャストのほぼ殆どが、芸能人(お笑いタレント、俳優)で占められている点だ。

これまでもこのシリーズは、一作目から積極的に声優ではなく、有名芸能人、俳優を起用してきた。

ゲーム・アニメの世界で、敢えて声優ではなく、俳優を起用するのは、ギャラの高さや知名度などから、話題性が一番であることが多い。
演技力は二の次で、本職の声優の演技と噛み合わないために、せっかく起用しても、その部分だけ浮いてしまったり、声からキャラの先にいる芸能人(俳優)の顔、姿が透けて見えてしまうほど
合ってないというか、うまく使いこなせてないことが多かった。

その問題は「龍が如く」でも、当然ながらあった。

しかし今回は、誰もが思いついてもやらないだろう、思い切った解決策を取ったのである。

それは、メインキャストの殆どを芸能人で埋め尽くすということだった。

中途半端に二流三流の人たちで固めるのではなく、巨匠ビートたけしを筆頭に、藤原竜也、宮迫博之、小栗旬、等。日本に住んでいれば一度は聞いたり見たことのあるだろうというクラスの有名人を
良く“たかがゲームで”ここまで集めたなと、ただただ驚くばかりだ。
勿論、考えなしに一流芸人ばかりではなく、ドロンズの石本みたいに、スタッフロールを見て初めて気づくような、そんなところから!?と思うような人まで、キャスティングはかなり考え抜かれたものだろう。

どうやら、演技力の関係から、あまり声優を使いたくなかったみたいで、サブストーリーで出て来るキャラクタなんかにも、敢えて声優ではなく、新日本プロレス所属のプロレスラーを起用するなどしている。
(こっちは素人感バリバリだが(笑))

実際に演じるキャラは、(全員ではないが)芸能人本人をモデルにしたものを使っており、この存在感がまた凄い。
滑舌の悪さや、演技の乏しさが、やはりどうしても気になってしまう部分はあるのだが、本人のフェイスモデルと、メインキャストの殆どが芸能人であることから、(声優と比べた)演技力の弱さはそれほど気にならず
「これもアリだな」と納得させられてしまう。全くもって困ったものだ。

バトル関係について。

毎回、実は最も試行錯誤している感のあるバトル(特にプレイヤー性能)だが、昔の桐生チャンのキレがありクセのない動きが戻ってきた感じで、気持ちよく動かせる。
ここ最近は、スタイルチェンジや、複数主人公制の導入で、覚えることが多くて大変だったのだが、今回は久々に1キャラクターのみ操作する形に戻ったので、だいぶ遊びやすくなった。

普通に遊んでいるとあまり気づかなかったことなのだが、攻撃の当たる部位、角度などで挙動が変わるなど、新しい仕組みを入れているようだ。
階段など傾斜のある所で戦っていると、普段と違う動きをするので、そういうことも想定した作りをしなければいけなかったのだろう。

今回は大勢のキャラクターを戦闘に出せるようになったため、味方として戦ってくれるNPCがいたり、それに合わせるように大勢の敵キャラクターが一斉に襲ってくるなど、
プレイステーション4の性能を発揮した、大人数ケンカバトルが展開する。

1vs1で戦う熱いバトルも存在するのだが、全体的には大味な作りになった感じがある。
ただ、このシリーズはストイックな戦いよりも、ゲームとしては多少大雑把でも、手軽に爽快感を得られることがコンセプトとしては正しいと思うので、悪くない調整だと思う。

しかし、敵の本拠地に殴り込みをかけるシーンは、いつもと比べると凝った演出が少なく(全く無いというわけではないのだが)、少々物足りなかったのが残念ではあった。

不満点について述べる。といっても、ほとんどあってないレベルのものなのだが。

オートセーブ機能がついているのだが、出来れば設定でオンオフを切り替え出来ると良かった。
手動でもどこでもセーブが出来るのと、今作の場合はオートセーブされても困ることはあまりないのだが、やはり勝手に上書きセーブをされてしまうと辛い。
セーブされる頻度もかなり高く、メニュー画面で選択間違ったけど、やり直したいなと思っても、その時点ではもうオートセーブされてしまっていたりすることがある。

それから、このシリーズでは最近、毎回書いているのだが、アクションゲームとしてはイベントムービーがかなり長い。この長さは、下手なRPGより同等かそれ以上に長いと言うとその長さがわかるだろうか。
今作では、ムービーシーンとプレイアブルシーンの差異がほとんどなくなっており、長時間のムービーでも退屈を感じさせない工夫はされているのだけども、それでも全体的に拘束時間が長い。
それに加えて、今回からはサブストーリーもすべてフルボイスとなっているので、ちょっと移動している間に、サブイベントに“捕まってしまう”ことがあり、なかなか苦しい。
豪華な作りが、逆に仇となっている格好だ。
ただ、ストーリー自体はかなり濃密なので、単純に短縮しろというのも難しい話だ。個人的にはもう、そういうものとして割り切って遊ぶことにしていた。

デフォルトの移動速度が遅い。というか、能力強化のスキルラインナップに水増し感がある。
初期状態はどの場所でも歩きで、×ボタン押しながらで走り状態になる。走り状態はスタミナを消費する上に、プレイヤーはそのスタミナゲージを見ることが出来ない。
能力強化でこのスタミナ上限を上げることが出来て、最後には無限になる。
他にも経験値獲得量アップなどがあるのだが、各項目が5段階まで強化できるようになってるのだが、こういったスキルを用意するために逆に初期状態を弱体化して不便にしているようにしか思えなかった。
全部なくせとは言わないが、5段階強化を3段階に減らすとかして、代わりに初期状態を底上げしてほしかった。
能力強化でスキルを獲得して強化するのが本来の目的であるはずなのに、中盤くらいまでは、こういったスタミナ量強化とか経験値獲得強化みたいな基礎能力を強化することばかりにポイントが飲まれて、
プレイヤー自身を気兼ねなく強くしていくことが出来ないもどかしさに長い間苦しめられる。なんとかして欲しい。

後は細かいことだが、既に一度注文した料理が、飲食店のメニュー一覧では確認できず、達成目録からしか見れなくなったことぐらいか。

長々と書いてしまったが...。
今作は、ゲーム内容を根底から見直し、新しいことをやってやろう!!という気概溢れる作りとなっていて、非常に良かった。
「龍が如く」一作目が作られたときのような、極道や日本の裏社会を真っ向から描こうとした、あのときの情熱や気合を再びこのシリーズから感じられた。

細かいことだが、スマホを模したメニュー画面のクオリティは、実に自然で、十字キーのワンボタンでSNSやメールが開けて操作ができる。ゲーム画面との一体感もあり、絶妙と言わざるをえない。
また、各地に設置された自販機から飲み物を買って飲めるというのは、かつてセガが作った「シェンムー」を思い起こさせる描写であり、約17年経って、「シェンムー」の申し子はここまで進化したという証明のような感覚で、
実に感慨深いものがあった。
そして、現実時間と連動して描かれた桐生一馬の11年間の最終章という物語も、リアルタイムにプレイしてきたファンであればあるほど、今作は感動する内容になっていることと思う。

ここまで凄いものを作ってしまうと、次を作るのは大変だろうが、ぜひ「龍が如く」が続くことを願うばかりだ。そこで結論。

「龍が如く」は11年間でここまで進化した!!ファンじゃなくても遊べ!





[2016/12/17]
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