龍が如く OF THE END


対応機種プレイステーション3
発売日2011/06/09
価格7980円
発売元セガ

(c)2011 SEGA
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一口に言うならば、「龍が如く」のシステムエンジンで「バイオハザード4」をやってしまった作品。

発表当時、それまでとはぶっ飛んだ内容に「大丈夫か!?」という声が湧き上がった。
今まで任侠ものとしてやってきたものが、いきなりゾンビを倒していくガンシューティングに変貌したギャップにはやはり戸惑いは隠せない。

しかしである、このシリーズは早い段階でシステムが完成してしまい、マンネリ化が指摘されていた。
プラットフォーム変更により、グラフィックの強化や、新たな舞台として沖縄を入れてみたり、主人公を4人用意するなど、内容面で目新しさを出そうと努力をしていたが、抜本的な解決には至らなかった。

同じスタイルで作り続けるのにも限界があった。特にストーリー。一貫してシナリオが続きものなので、前作までのダイジェストムービーや解説モードなどでフォローしていたが、それにも限界が来ていた。

それでも、売り上げや注目度は決して悪くないし、せっかく年一本ベースで発売できる環境が整っているのに、敢えて変革させる必要はあったのかと感じる人が大多数だと思う。
個人的には、絶妙なタイミングでのチャレンジだと感じた。
落ち目になるまでダラダラ同じ路線を続ける方向性もありだと思うが、続編ものだとしても、やはりゲームというものは、目新しさや驚きがあってこそだろう。
そういう意味では、安易に1や2のリメイクに手を出さなかった点も評価したいところだ。
最近はすっかり保守的になってしまったセガだが、こういったゲームが突然出てきてしまう辺り、やはりセガらしいと感じて嬉しくなってしまう。

肝心のゲーム内容だが、いつもの「龍が如く」にガンシューティングをねじ込んだ感じで無理矢理感が強い。

まず、核となるゲームシステムをリニューアルしているのに、基本的なシステムは旧作を踏襲している点が気になる。

敵を倒すことで経験値が溜まりレベルアップする要素や、キャバクラを筆頭にお馴染みのミニゲーム、サブストーリーといった従来の要素もほぼ全て入っている。
だが、レベルアップといっても、体力ゲージがアップする程度で、スキルを取得するシステムは、アイテムの持てる数が増やせるようになる、出来るアクションが増えるといった最初から出来てていいようなものばかりだ。
ガンシューティングアクションで成長要素を入れられても違和感がある。

ゲーセンやボウリングというミニゲームも健在だが、今回は舞台となる神室町が戦場になるために町がどんどん封鎖され、ちょっとそれどころじゃない状況である。
クリア後に選べる「プレミアムアドベンチャー」では平和な神室町を体験できる。

このように、従来作と異なりゲーム展開が強制的なのに、これまでどおりのシステムを入れている。伝統を守ることが「龍が如く」足りえるのかもしれないが、神室町が舞台でお馴染みのキャラクタが主人公として出てくる時点で「龍が如く」らしさが十分出ているとも思える。
だから、それ以外の要素もバッサリ見直して、今作に合ったものに取り替えるぐらいの冒険をして欲しかった。

ウリであるガンシューティングアクションも、なんとも中途半端な出来だ。

新規マップもあるが、いつもの「龍が如く」の平坦で、狭い通路と小部屋、大部屋で構成されたマップが殆どで、駆け引きの面白さがない。
敵の配置やドラム缶など爆発物の配置もイマイチで、ただたくさん出てくる敵を片付けて先に進むだけの単調な作業になりがちである。

ザコの中にはゾンビだけでなく、変異体という強化モンスターも存在するが、すばしっこい上に耐久力も高く、攻撃してもひるまないために、非常に苦労させられる。この辺のバランス調整はもっと丁寧にやって欲しかった所だ。

操作性は、コナミ「メタルギアソリッドシリーズ」に近い。三人称視点では敵の方向に銃口を向けるだけで攻撃が当たり、動きながら射撃が出来るが、主観視点の狙い撃ちは移動ができない。
「メタルギアソリッド」では、敵を倒すことが主目的ではなかったからあまり気にならなかったが、やはり実際に照準を敵にあわせて戦うのと比べると、爽快感に乏しく、淡白でかなりつまらない。
自分は、多少不便さはあったが、そうせざるをえない状況以外は、なるべく主観視点で倒しながら進めた。

1,2箇所厳しい箇所はあるものの基本的に難易度は低い。ボス戦も拍子抜けするほど簡単である。ステージクリア時にランク評価があるが、この評価基準もかなり甘く、ゲーム慣れしている人なら簡単にSランクが取れるだろう。

恐らくコテコテのサード・パーソン・シューティングに仕上げることも出来ただろう。が、「龍が如く」は色んなユーザーが遊ぶシリーズとなった。そのため、多くの人に楽しめるようにするために良い着地点を探した結果がこのような形になったのだと思う。

ただ、残念なことに既に似たような方向性のゲームで、カプコン「バイオハザード4」という今作より遥かに優秀で有名なゲームが出てしまっている。実に惜しい。

とにかく詰めの甘いところが目立つ。
敵のエントリの悪さなどもそうなのだが、一番目立つのは操作性の悪さだろう。
カメラワークの仕様がガンシューティングアクションと噛み合ってない感じがした。
ゾンビの挙動も今一つで、追跡がちとしつこいし、近づいても棒立ちのままだったり、場所によっては地形が良く無いのか引っかかってハマってたりする。リロード時間も他のゲームと比べ長すぎる気がする。

いっぽうストーリーの方も、そもそもコンセプトが無茶だったせいか、中身がなく雑で盛り上がりに欠けている。とりあえず人気キャラを出しておけば良いやという浅はかさが目立っていた。

「龍が如く」開発チームは、完全新作である「バイナリードメイン」というシューターゲームの製作発表をした。
思うに今作は、そのゲームを作るための練習台だったのではないだろうか?

色々と惜しい点が目立つ本作だが、この手のゲームで日本を舞台にしたものは無いに等しいため、それだけで価値があったと言えないだろうか。
また、カット演出が長くテンポが悪いものの、ヒートスナイプ(必殺技)の演出などは面白く、ユーモアに溢れていて良い。
敵のルーチンがイマイチと書いたが、10体以上の沢山の敵が処理落ちすることなく画面上を動きまわっている様は単純に凄いと言える。

ただ、日本人がこの手のゲームを作ると、小奇麗にまとまっている反面、迫力がなく、間の悪いタイミングでイベントシーンが入るなど、悪い面も目立ってみえたのは残念だった。
このへん、ゲームを止めずに台詞を挿入したりして極力ゲームを中断させないように工夫しているものも多いだけに余計ダメさが際立って見えた。

題材も安直でオリジナリティに乏しく、全般的に一昔前といった感じの作りで、なんとも残念なゲームである。そこで結論。

冒険したものの変わりきれてないゲーム。





[2011/06/11]
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