龍が如く5 夢、叶えし者


対応機種プレイステーション3
発売日2012/12/06
価格8800円
発売元セガ

(c)2012 SEGA
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5人の主人公、日本5大都市を舞台にした壮大なボリューム。まさにシリーズ集大成にふさわしい作りこみが「龍が如く5」だ。

ファミ通のクロスレビューで40点満点を獲得したことでちょっとした話題になった。
実際最後までプレイしてみて、雑誌のクロスレビューの点数で満点評価をつけたのは納得できる内容ではある。しかし、ゲームとして完璧で面白いかというと話はまた別だ(この辺の話は後述する)。

各パートがとても作りこまれていて、手抜きがなく、かつ、総じてクオリティが高い。そして、ゲームとしてのボリュームも凄まじく、「セガ本当に大丈夫か!?」と心配になるほど金をかけて作られたことがうかがい知れる超大作である。
おまけに、お決まりの採算を取るための有料ダウンロードコンテンツの予定もなく、これまで同様、無料アップデートで機能拡充をするというサービスっぷり。

つまり、機械的に点数をつけるとすれば、満点をあげたくなる隙のない完成度の高さを確かにこのゲームは持っている。

巨大なゲームになると陥りがちな、整合性のなさや、ゲームとしての一貫性のなさ、人海戦術で作るから起こる、各パートのクオリティの差。
しかし「龍が如く5」では、これまでのノウハウを上手に活かしながら、すべての要素を一定以上の完成度でまとめあげている。

これは実に凄いことだ。雑誌の満点評定というのは、この辺を見て評価しているのだと感じたし、とても理にかなっていると思う。

アナザードラマ(力の入ったサブストーリーのようなモン)、サブストーリー(クエスト)を9割方体験しながらゲームクリアしたが、クリアまでのプレイ時間は実に約50時間もかかった。
通常このシリーズはよっぽど極端な寄り道をしなければ、20時間前後で終わる。
これでも、キャバクラや修行など、遊びきれてない要素が沢山残っているので、そこら辺も凝り始めると、相当なプレイ時間になるだろう。

この50時間のプレイ時間のうち、退屈になったり飽きたりということも基本的になかったので、確かに凄いゲームと言える。

いつもの喧嘩バトルは磨きがかかって、遊びやすさや爽快感を追求してさらなる改良を重ねられている。本編で戦うことになるバトル時の敵エントリや構成も手慣れたもので、面白く出来上がっている。
間口を広げるために、続編が出るごとに難易度を落として、例えば連戦時や厳しいところでは回復アイテムを置いたり、ストレスを与えない方向に作られていっている。
今回も当然そういう安定感のある作りなのだが、終盤のボス戦で、「ここに回復アイテム置かないと厳しいんじゃないかなあ」って思うところがいくつかあったのが気になった。

アナザードラマは、各キャラごとにそれぞれ与えられた、通常の喧嘩バトル以外の「ちょっと作りこまれたミニゲーム」をプレイする。ストーリーもあてがわれているがそっちは声もついてないし本当にオマケと思ったほうが良い。
いくら作りこまれててレベルが高くても所詮ミニゲーム。好き嫌いの分かれそうな要素だ。でも基本的に、遊ばなくても先にすすめるように作られている。

しかし、遥編は事実上、このアナザードラマのパートを強制的にプレイさせられる格好になるので、賛否両論出るところだろう。もちろん、製作者サイドとしても、この辺はどうするか非常に悩んだところだと思われる。
しかも、アナザードラマの中でも、最もはっちゃけている「アイドルマスター」を物真似したようなゲームだ。これまでも、カラオケなど横道にそれた部分で、本編のノリとかけ離れたユーモラスな冒険は見られたが、
こういった冒険を、本編に乗せてしまうというのは、かなり危険な賭けだ。

個人的には、「龍が如く」は任侠や喧嘩バトルが全てではないと思うので、こういう冒険はどんどんやって欲しい。

ムービーの多いシリーズだったが、今回は力みすぎちゃったのか前にもまして多い。リアルタイムシーンでも、(本筋のイベントシーンは)フルボイスなために、とにかく見ているだけの時間が多く長い。
ブルーレイディスクで容量をあまり気にしなくて良いせいか、全体的に台詞が饒舌になってて、ゲーム展開も冗長でダラダラしている。
とても気合いが入っているのは伝わってくるのだが、ゲーム本編だけでも結構なボリュームになっていて、ムービーシーンでプレイ時間を水増ししてごまかす必要も無いんだから、もっとバッサリまとめるべきだ。
ゲーム的には退屈しなかったが、個人的に、このゲームの最もダメな点というのが、このイベントムービーの多さ、長さによるテンポの壊滅的な悪さである。
一度ムービーが始まってしまったらセーブして中断することもなかなかできなくて困ってしまうほど頻度が多い。

テキストの量が膨大になったせいなのか、誤字脱字が目立ったり、漢字の使い方に違和感を感じる部分も多く見られた。

なんていうか、セガ、頑張りすぎ!!

このゲームが発表された時、進化や変化を訴えていたので、もっと抜本的にゲームシステムが作り変えられて、フィールドをタクシーで爆走するような、グランドセフトオート化するんじゃないかってぐらい、
ゲーム内容がガラリと変わるものだと思っていたが、意外と芯の部分はそのままで変わっていない。変わっていないが、フィールド上のリアル感やライブ感の演出は明らかにグレードアップしているし、
ゲーセンの中に入れば、本物の「太鼓の達人」や「バーチャファイター2」を遊べるようにしている。街の看板や店のタイアップも作品を出すごとに増えに増え、かなり本物感が出ているのも凄いと言える。
見た目やシステムを変えれば簡単に驚きを与えることはできたかもしれないが、中身の作り込みで魅せていくっていう手法は、地味ながら評価したい所だ。

ただ一方で、これまで些細なことと目をつむってきたシリーズの慣習的な不満点や改善して欲しいと感じたことを指摘する。

全般的にイベントシーンが饒舌で長いことは既に書いたが、加えて言うと、テキストメインのサブクエストなどで、メッセージ送りのテンポが悪いこと。
キャラのモーションが終わらないとメッセージ送りが出来ない(進行を止められる)。後、そろそろメッセージ表示速度に「一括表示」を加えて欲しい。
「!?」など、短い台詞も多いので、台詞表示中に○ボタンを押して一括で表示させようとすると、こういう短い台詞を結構な頻度で飛ばしてしまうことがあるのだ。

それから戦闘シーンについて。
これは、「龍が如く」が悪いというわけではないのだが、そろそろ体力を回復させる手段が主に「メニューを開いて回復アイテムを使う」という方法を一新させて欲しかった。
上手い人は、回復アイテムを使わずにクリアできる難易度ではあるが、多数のプレイヤーは使わざるをえない状況になるはずである。
本当に些細なことなのだが、爽快感あるバトルで気分がノってる時に、体力が少なくなったからってメニューを開いて回復させるっていうプロセスが入ると、なんとも一気に気分が冷めてしまうのだ。

出来れば、スキルで「ヒート中は徐々に体力が回復する」というような、「回復アイテムを使う以外に体力を回復する手段」を増やして欲しかったってところだ。
例えば、普通のアクションゲームのように、取るだけで一瞬で体力が回復するとかでもいい。ゲームの流れを寸断するシステムを使い続けているということにメスを入れて欲しいというだけだ。

このゲームが出るちょっと前に、マイナーなゲームになるが「スリーピングドッグス(トゥルークライム)」というオープンワールドのアクションゲームが出たのだが、「龍が如く」を参考にして作られているふしが多く見られ、しかもこれの出来が結構良い。
グランドセフトオート系だが、ストーリーが極道系で結構熱く、格闘戦もあり、ガードボタンが無いが、カウンターが出しやすく、ヒートゲージがありオブジェクトを利用したヒートアクションまである。

比べるつもりもないし、「龍が如く」を安易に洋ゲー路線に乗せることは本意では無いのだが、今書いた“ヒート中は徐々に体力が回復する”というシステムは「スリーピングドッグス」で採用されていてかなり良かったので、他のゲームの良い部分はどんどん勉強して取り入れていくぐらいのことはやってほしい所だ。

過剰過ぎるチュートリアル、スキル成長画面の見づらさ、シナリオや世界観が続いているので単体ではついていけない部分がある等、細かい不満点をこれ以上探していくときりがないので触れることはしない。

かなり力の入ったゲームで、どの要素もクオリティが高く、ボリュームもあって、文句の付け所のない完成度だが、ゲームシステムは意外と旧来的で、地味な作り込みで高い完成度を目指したといった感じだ。
その結果が、ストーリーパートの、イベントムービーの過剰な長さにあらわれていて、このパートは、(ゲームとしての立ち位置や目的が明確でない状態で)頑張れば頑張るほど、視聴時間だけが長くなり、テンポが悪くまとまりの悪いゲームになってしまう。
ゆえに、言われているほどの進化や変化は見られず、各要素を極限まで作りこんだ結果生まれたのがこの「龍が如く5」と解釈できる。

だから、期待してたほどでないとか、そういう感想ではなく、しっかり面白いのだが、今ひとつ絶賛できない理由となっている。

さすがにプレイステーション3で外伝も含めると4本も作ってきたら、色々と勝手がわかってきて作り慣れたゲーム内容に安定感がある。そこで結論。

まさにシリーズ集大成的作品。本当に変革を求められるのは次だ!





[2012/12/15]
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