対応機種 | プレイステーションVita |
発売日 | 2016/12/15 |
価格 | 6800円 |
発売元 | スクウェアエニックス |
ねんがんの「サガ」シリーズの、完全新作!!
完全新作は2002年のPS2「アンリミテッドサガ」以来、14年ぶりとなるのだから驚きだ。
その間、過去作品のリメイクが発売されており、中には新作並みの規模の内容だったPS2「ロマンシングサガ ミンストレルソング」もあったが、完全新作の話は本当になかった。
(同社では、近いシステムのRPGで2008年にXbox360「ラストレムナント」が発売されているが、あれを正当なサガシリーズと捉えるのはまたちょっと違う感じ)
制作体制としては、河津秋敏(企画・ゲームデザイン)、伊藤賢治(サウンド)、小林智美(イラストレーション)の、サガに欠かせない3人がトップに立ち、
実作業は外部の開発会社と組んで行われたようだ。
開発ツールは、Unityを採用している。
Vita用ソフトを、Unityを使って開発するのは、相当に難産であるはずで、開発が想像以上に長引いたのも、パッケージソフトとして発売する以上、
安定動作するレベルまで持っていく所で、このゲームもおそらくそこに一番苦労したのではないかと思う。
ゲーム内容は、RPGの中でも、バトルの要素にクローズアップした作りとなっている。
プレイ時間の殆どは戦闘を遊んでいると言っても過言ではないぐらい、ゲーム上でやることが戦闘シーンに集約されている。
とはいっても、戦闘だけ遊ぶゲームではなく、ワールドマップを歩いて自分で目的地まで移動していったり、イベントを探したり、町で装備を強化したり、
勿論、あてがわれたストーリーを追っていくといったRPGには外せない要素はしっかり残されている。
サガシリーズの生みの親とされる、河津秋敏が優れている点というのは、ゲームのコンセプトと照らし合わせて不要な要素はバッサリ切り落としてしまうことだと思っている。
例えば今作では、ダンジョン探索、マップ探索という、RPGでは外せないシステムの一つを思い切って捨て去ってしまっている。
がしかし、ワールドマップだけでも、しっかりゲームとして成立させることが出来ている。
他のRPGと比べると、豪勢なCGムービーも無く、声優に台詞を読ませることもない。一見すると、こんなので大丈夫かと心配になるほどあっさりしている。
だが、実際プレイしてみると、質素で最低限なテキストだけで、じゅうぶん世界観とシナリオを構築できている。
河津氏がメインだった(はず)FF2から、そういう作風が出ていて、無駄なところの作り込みはせず、無駄なアイテムも作らない。同じように、不要だろうマップや敵も(なるべく)一切作らない。
特にこの作風が強くなっていったのが、WSC「ワイルドカード」と、賛否両論となったPS2「アンリミテッドサガ」である。
(両方の作品とも、非常に人を選ぶゲームだが、ゲームの濃さという観点で言えば、両方とも濃密という部分だけは共通している。それも、少ない素材で完成させるという点が凄い)
少ない素材と、限られた制約での中で、いかにゲームとして成立させて、面白く作り上げていくのかという所が非常に優れている。
(かといって重点を置いた部分はしっかり作り込んでいる)
同社の看板タイトル「ファイナルファンタジー」とは全く真逆を行く方向性なのが、本当に信じられないというか、旧スクウェア時代の人材は、本当に逸材というか面白い人間が集まっていたんだなあと思う。
独特に見えるだろうゲームシステムを簡単に説明する。
まず、主人公選択制は健在で、4人の主人公が存在する。
ゲーム開始時に、性格診断テストのようなものを受けて簡単に質問に答えることで、それに沿った主人公が選ばれる(2周目以降は自分で選ぶことが出来るようになる)。
主人公ごとに、全く異なるストーリーが展開するようだが、一周クリアするのに、プレイ時間の表示がないから具体的にはわからないが、かなり長い。
インタビューなどでは30時間から50時間と述べているが、体感的には非常に長く感じた。
インタビューでは「もっと削ればよかったかな」と語っているが、本当にその通り。これを4人分遊ぼうとはとてもじゃないが思えなかった。
裏を返せば、一周遊ぶだけで、大作RPGと同等の満腹感というか、満足感が得られるぐらいの骨太な内容となっていると言える。
ただ、プレイ時間が長ければいいと自分は思わない。
ただでさえ、詰め込みがちなRPGというゲームジャンルで、せっかくコンセプトをバトルに絞って、各要素を限界までシェイプしたのだから、当然それに合わせてプレイ時間もシェイプされているはずである。
なんというか、このゲームの場合は、間違いなく戦闘は面白く出来上がってるのだが、後半になってくると、バトルにも慣れ、パーティも育ちきってしまい、そうなると、作業感がとたんに強くなってしまうのだ。
また、プレイ時間の大半がめまいのするようなパズル的な戦闘をひたすら繰り返しているため、ちょっと遊んでいるとすぐに疲れてしまう。このゲーム密度の濃さを考えると、プレイ時間は長すぎるように感じる。
続いて、ゲームの流れについて。
プレイヤーは、ワールドマップを移動して、町や洞窟といったシンボルの上に行って、そこを調べることでイベントが発生する。
イベントには戦闘が発生するもの、途中で選択肢が表示されて選択を迫られるもの、など、様々な内容がある。
町の中では、指定された素材を使って装備品を強化できる。また、洞窟シンボルなど、パーティ強化用のバトルが繰り返し行える場所も各地に用意されている。
(これらの強化用バトルは、通常のものと違って、戦闘回数による敵の強化も緩やかになるように抑えられている)
ワールドマップはエリアごとに区切られており、ゲームの進行によっては移動箇所が限定されている場合もあるが、世界各地を巡って様々なイベントを体験し、ゲームが進んでいく。
次に、バトルシステムについて。
よくあるRPGの戦闘システムとは、システムの作りが抜本から異なっている。
どちらかと言うと、カードゲームのようなルールに近いと言っていいかもしれない。
敵味方ともに、コマンド(技・術)の使用にはバトルコストが必要で、強力な大技ほど必要コストが多く設定されている。
初回ターンではコスト4つ分のコマンドを選択できる。1ターン経過するごとにコストは全回復し、コスト最大値が1つずつ増えていく(ただし、陣形によってはコスト上昇の条件が異なるものもある)。
何もコマンドを選択しなかった(コスト不足で選択できなかった)キャラは、自動的に防御する。
また、コマンド選択時には、そのターンの行動順がタイムラインという形で表示されており、敵が何をやってくるのかも事前にわかるようになっている。
選ぶコマンドによっては、行動順が早くなったり遅くなったりもするが、その影響もコマンド決定前に参照できる。
技にもいろいろな種類があり、強力だが詠唱時間を必要とする術、味方をかばうプロテクト技、特定の技に反応してタイムラインを無視して発動するカウンタータイプの技などがあり、
当然これらは敵も使ってくるので(その場合、敵側の行動は???となり伏せられる)、敵の行動を読み合う面白さがある。
他に特徴的な要素として、サガではすっかりおなじみとなった「連撃」というものがある。
これは技同士がつながって、より強力になる「連携」とは、また異なるものである。
行動順が表示されているタイムラインで、敵1体の両側を味方が挟み込んでいる状態で、その敵を倒すと(タイムライン上から消すと)、タイムライン上で繋がった(並んだ)味方同士が「連撃」する。
「連撃」に参加した味方が麻痺や眠り状態だと、それが解除される。
また、「連撃」で敵を倒したとき、また「連撃」発生条件を満たすと、連続して「連撃」が発生する。
「連撃」にはそれ以外のメリットもあり、参加したキャラは次のターンで行動に必要になるコストが減るボーナスが付く。
これは、何かアクションを起こす際に、必ず決められたコストが必要となる、今作のバトルシステムにおいて、大きなウエイトを占めている。
「連撃」は敵も使ってくるため、起こさせないように考える必要がある。
それから、長々と説明した、バトルコストの概念は、敵にもそのまま通用しているので、敵の強力な技をいかに無力化しながら、戦うかということを意識しなければならない。
最初は覚えることも多く、とっつきづらい作りだが、コツを掴んでくると、非常に面白くなってくる。
パズル的な戦闘と書いたが、ガチガチなパズルバトルというわけでもない。
例えば、一つの技を使い込んでいくと、技自体が成長してランクアップする。ランクアップすると、必要コストが下がる上に、威力(効果)もアップする(最大はランク3)。
同じキャラクタを愛着を持って使い込んでいくと、強力な技も成長して低いコストで出すことができるようになる。
自分なりの戦略が確立してくると、大技をぶっ放して、爽快に敵を蹴散らしていく感覚がしっかり味わえるようになっている。
次に、不満点というか気になった点について述べる。
大半はUnity使ってVitaソフトを開発という部分に集約しているかと思う。
例えば、戦闘突入時のロード時間。TGS以降、改善されたとはいえ、まだ長く感じる。
それから、バトル中、コマンド選択後のターン開始時にエフェクトの読み込みがあること。
開幕「レディーゴー!」の演出で上手くごまかしているとはいえ、普通はすぐ戦闘に入るものだと思うから、いちいち毎ターン読み込みで待たされるのは、慣れれば気にならなくなるとはいえ、厳しいところだろう。
だいぶ、動作の最適化は図ったようなのだが、特に戦闘中に、コマンド選択時にカクついて重くなったり、特定の技ではどうしても解消できなかったのか処理落ちが起こる。
これでも相当、改善を頑張った成果なのだろう。技のエフェクトの処理落ちはあまり気にならないのだが、コマンド選択時のカクつきは、やはり辛い。どうしても慣れることができなかった。
不満点というか、気になったところになるが。
ゲームシステムの説明と言うか、導入が実にサガらしい突き放しっぷりで、序盤から中盤手前あたりが、遊んでいて結構きついかもしれない。
一応、TIPSでゲームシステムの説明は丹念になされているのだが、今時のゲームのように、手厚くチューターが横について、遊び方をレクチャーしてくれるといった甘い要素はこのゲームには無い。
逆に、サガシリーズということを考えると、まだ随分とこの辺の配慮が丁寧になったなと思うほどで、いわゆる今風のゲームに慣れた人には、投げ出されかねない暴挙に出たノリは相変わらずといったところだ。
(もう、新規客というか、そういうのはあまり考えてないんだろう)
サブイベントの遊びで「特産品開発」というものがある。これがもう、壊滅的につまらない。
要は、特産品を別の町に持っていって、別のものに加工してもらい、それで文化を発展させるというもの。
...なのだが、流通の起点(アイテム変化)が、藁に固定されており、これをもとに別アイテムに物々交換していくといった形なので、完全に決まった作業になってしまっている。
もしかすると、当初4人主人公ではなく8人だったらしいので、そのうちの一人が特産品開発を軸にしたシナリオにする予定だったのかもしれない。
いずれにしても、このままの状態では、本編から独立したミニゲームとしても全く面白さがない。各マップの移動も時間がかかって面倒。
徹底的に要素を削ぎ落として必要最低限に絞っている割に、なぜ入れたのか、残っているのか疑問になってしまう位。
14年ぶりという、実に久しぶりのサガ完全新作ということで、期待したものの、蓋を開けてみれば低予算で仕上げた(ように見える)規模の作品でがっかりの人も多いかと思う。
だが、実際にプレイしてみると、不思議なことに、びっくりするぐらい、あのスーパーファミコン時代の「ロマサガ」にプレイ感覚は近いのである。
自由にどこへでも行けるところ、重大な局面で選択を迫られる所、技を閃く快感、使い込んだキャラが強くなっていく感覚、
その全てが、明らかに少ない素材で、限られた制約の中で、作られた貧相なゲームとはいっても、その中にはしっかりサガの血が込められている。
余談にはなるが、DSでサガ2、サガ3がリメイク移植された際、「なんか違うなー、でもロマサガじゃなく、GBのサガのリメイクだしなー」という感じで、ちょっとがっかり感は正直な所、あった(作風がブレているというか、手触りがいまいち違う感があった)。
しかし、今回サガの完全新作が、長い沈黙を破り登場して、うまく言葉では表せない、納得の行く面白さが戻ってきたことで、非常に安心した。
サガも歴史あるシリーズだから、多くのファンの全員を満足させるものを作ることは出来ないだろう。だが、これは間違いなくサガの正統な新作だと胸を張って言える。
そこで結論。
サガイズムはまだ生き続けていた!!ファンは迷わず遊べ!!