このシリーズは、今までギャルゲーというジャンルの中では完成度が高いシリーズだと思っていたが、 3は、そうではない層にも楽しめるほどの完成度を誇っていると言える。 俺はギャルゲーの部類はあまり遊ばない方ではあるが、 このシリーズに関しては、かなり首を突っ込んでいる。 とはいえ、一周目に普通に遊んで純ヒロインエンドを迎えて以降 特定のキャラを狙った2周目はやらないので、 どちらかというと俺的にはこのシリーズはアドベンチャー的な意味合いが強いのだが。 そもそもは、1、2共に、オタク向けの絵柄に、恥ずかしいほどお約束のストーリーであった。 そういう特有のクセが3では、かなり払拭されている。 舞台が日本からパリに移った。それだけでも相当なイメージチェンジになっている。 まず、起動時に流れるオープニングムービーから凄い。 コンテがメカ系アニメを彷彿とさせるクオリティの高さである。 萌えではなく燃えである。かなりカッコイイ。 主題歌も新たなものに差しかわり、これもまた出来が良い。 旧主題歌のゲキテイなんか今やもう時代遅れだ。そう感じるほどだ。 因みにED主題歌のボヤージュもかなりの名曲である(サクラシリーズのED曲が名曲なのは定説になってるけど) 主要キャラクターを5人に絞ったことにより、 各キャラの設定、ストーリーの描き込み、エピソード、演出と かなり練り込まれている。 相変わらず、アニメチックな絵柄と、お約束のストーリーは健在であるが、 流石に3作も作っていると、ここら辺の作り込みは相当レベルが高くなっている。 後半のストーリーの強引さは致し方ないところだが、それを勢いで乗り切るほどのパワーを持っている。 戦闘システムも変わった。 元々戦略性が無い割に、従来のSLGを踏襲したシステムで、このパートだけテンポが悪かった。 3では、独特なシステムに一新させた。 一言で書くと、アクションゲーム的な爽快感をシミュレーションで味わえるといった感じ。 今回は行動ゲージを消費して1ターン動くのだが、 敵が近くにいれば全部攻撃に回してもいいし、HPが少なければ戦線を離脱しても良い。 1ターンで全て攻撃に行動ゲージを回したら、確か4〜5回分になるのだが、 攻撃を連続で当てていけば、格闘ゲームのコンボのように派手な演出になるので、非常に気持ちいい。 こうやってザコを爽快にぶった切っていけるのは、まさにサクラシリーズの世界観にあってると思う。 戦闘パートは全てポリゴンで描かれており、臨場感も増している。 今回の戦闘パートは、全体的にスピード感があり、遊んでいてダレない。 前々から、この戦闘パートの存在は疑問視されていただけに、上手く解決したと言える。 ゲーム中で遊べたミニゲームがいつでも遊べたり、 一度見たムービー、音楽が鑑賞できる 「パリの優雅な一日」は今回も健在。 今回、このモードの作り込みが半端じゃなく凄く、 思わず、本編をやり込みたくなるようなほどしっかり作られている。 例えば、一枚絵を鑑賞できるモードでは、アルバム風の構成にして 空いている部分を思わず埋めたくなるようなものになっていたり、 これに限らず、3の画面デザイン&視覚的部分は非常にセンスが良い。 なかでもシリーズお馴染みのミニゲームは、どれも完成度が高く思わず熱中してしまうものばかり。 特に俺が填ったのが、コクリコのはねつきゲームだ。 これは本当に単純で面白い。 主観視点で、相手が打ってきた球を(これがコントローラ右側の4つのボタンに対応している) タイミング良く打ち返すのだが、 最終的に4つの球が画面狭しと行き交い、ラリーが続くにつれてスピードは上がるわ フェイントで物陰から突然変化球みたいにすっ飛んでくるわ(現実ではあり得ない) それを咄嗟の反射神経で反応して打ち返していくのだ。 いま確認したところ俺のハイスコアは25810点だった。 相当やり込んだのだが、これ以上は俺には無理だ。 他にも、ひたすらマシンガンで敵を撃ちまくるエリカのミニゲームや 一筆書きで全てのマスを踏破するゲームなど、 どれも異常なまでに作り込まれている。 本編以外でのボリュームも相当な物になった。 本作はどちらかというとそれまでのギャルゲー路線よりも キャラゲー的なものに近い。 それぞれのキャラの個性も、RPG的なノリで構築されている。 純ヒロインのエリカのわざとらしいほどの天然っぷりは流石に俺も引いたが キャスティングに日高のり子を当ててくる辺り、 締めるところはしっかり締めていて、分かっているという感じだ。 これは本気で思っていることだが、 個人的に2000-2001年期のセガは最も開発力が高かった時期で 中でもサクラ3はその象徴的な作品に思う。 本当に、それだけ力が入った作りであり、相当に練り込んで作り上げた感が節々に漂う。 それだけに、その後のセガの著しい凋落には萎えざるを得ない。 サクラシリーズに関しても、その後シリーズの乱造化が進んでしまい、 せっかくここまで一般層をも取り込む求心力を高めた作品にまで作り上げたのに、 従来のブランドイメージに甘んじてしまった。 現在本流シリーズ最新作である5は、恐らく相当なレベルまで作り上げないと この3を超えるのは難しい。 今度はニューヨークらしいが、和から洋へ転換させた3と同じ手はもう使えない。 今後のサクラはもっとキャラゲー化を進め、ギャルゲー的な演出をもっともっと抑えてもいいかもしれない。 それはそれで、独特の味が薄れる可能性もあるが、 返ってもうそういう路線が浮いて見え始めている。少なくとも3では。