聖剣伝説 ヒーローズオブマナ


対応機種ニンテンドーDS
発売日2007/03/08
価格4800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2007 SQUARE ENIX / BROWNIE BROWN
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聖剣伝説3の19年前の世界を舞台に、繰り広げられる新たな物語。シリーズ初のリアルタイムストラテジー(以下RTS)に挑戦した意欲作。
どうでもいいことだが、タイトルからDSの冠がはずれている。開発もハードが普及してきたと認知しているようだ。

RTSは、日本ではマイナーなジャンルだが、海外では一つのジャンルとして確立しているのはご存じだと思う。

和製でも最近では、イースなんかがこのジャンルに挑戦しており、徐々に広がりを見せている。

広義に言えば、スクウェア「半熟英雄」もRTSになる。
かなりアレンジが加えられているが任天堂「ピクミン」もRTSを元にしたゲームといえるだろう。

このゲームは、海外作品をなるべく忠実に持ってきたかったらしく、基本ルールは変えていないようだ。
(ただし、それ以外の部分では、アレンジをつけている部分がある)

資源を採取して、それを元にして戦力となるモンスター(MOBと呼称している)を召喚して戦わせる。
MOBには、属性があり、4すくみの法則によって、得意不得意の相手が設定されている。

4すくみに当てはまらないユニットも存在する。

なかでもカリスマユニットと呼ばれるものは、MOBを支援するスキルを持つ人間ユニットである。
装備品で強化したりと汎用のきく存在だが、ストーリーの語り部的な位置づけが大きい。
戦力的には扱いづらく、このユニットの誰かが戦闘不能になるとゲームオーバーとされるマップも多く、あくまでサポート役である。

また、自軍ユニットが実際に歩いていない部分は、敵の位置などの詳細が隠されており、索敵の概念もある。

やりたいことはわかるのだが、聖剣シリーズは(特に最近は)作り込みが非常に甘く、プログラムも雑で荒っぽい作りが印象を最悪にしている。

インターフェイスは、タッチペンでの操作がメインとなっていて、アイコンや画面上のキャラ、グリッドを直接タッチして操作する。
メイン画面とアイコンが下画面に一緒くたに表示されているので、グリッドを指定しようと思ったら、あやまってアイコンを選択してしまったという誤操作も多く起こる。

なにかを選択したとき、別のものを選択したい時に、いったんキャンセルのアイコンをタッチしなくてはならない。
そのままほかのシンボルに切り替えることが出来ない。
これは、誤操作防止のために入れたのだろうが、逆に不便さを生み出している。
解決策はほかにあったはずだ。ダブルクリックすることでほかのシンボルに瞬時に切り替えられる措置を入れるだけで、だいぶ遊びやすくなったろうに。

資源の数が、ユニットを選択してしまうと表示が隠されてしまう。重要な情報なのだから、常に表示していてほしい。

ユニットをまとめて選択して、タスク(仕事)を指定しても、一定の分量(遠距離に移動指定するなど)を超えると、きちんと動いてくれない場合が多い。

RTSにしては珍しい仕様だと思うのだが、グリッド(マス目)方式を採用している。
そして、敵は当然ながら味方同士もすり抜けて移動出来ないため、大量のユニットが存在する場合、詰まって動けなくなったりする。

時間の流れを高速にしてみるとわかるのだが、意外と行動プログラムは良くできている。
これは、上記の仕様に耐えうるルーチンを組むための必死の努力のたまものだと思う。
そもそもは、そこに負担をかける作りにしてしまったことが最大の汚点である。

弓兵など、遠隔攻撃が出来るユニットも、攻撃の指示を出す時には、敵のグリッドを指定しなければならないので、
意図して遠隔攻撃させることが出来ない。
こちら側では、近づいて攻撃するという指示しか出せない。これでは、弓兵のメリットがない。

説明書にも書いてなかったが、敵のグリッドを指定すると、その敵に対して攻撃を仕掛け続けると書いてあるが、どうもそのように動いてくれることの方が少なかった気がする。
敵も当然動く。となると、誰もいないグリッド目指して動いて、そのまま待機。そして近くの敵から攻撃を受け続けるというあほらしい状況が多々見られる。

ただ、ゲーム云々を別にして、ルーチンが複雑ゆえに、突拍子もない挙動を示したりするあたりの反応はなかなか面白いものがある。
だが、基本的にルーチンは馬鹿すぎて、ゲームにならない。

マップもやり始めてみて拍子抜けした。なんと3Dである。
これで視点操作が必要ない配慮があればなんとも思わなかったのだが、物陰に隠れてしまう部分も多く、その都度視点を動かしてやらなければならない。
よせばいいのに、立体的なマップまで作っており、見づらさに拍車をかけている。

キャラクターはドットでマップがポリゴンと言うと、ちょっと古いが、ゲームアーツ「グランディア」、スクウェア「ゼノギアス」と同じタイプである。
視点操作周りの不満点および操作感は、スクウェア「ファイナルファンタジータクティクス」にかなり近い。
視点操作は、斜め45度回転で固定である。この点は割り切りが良いとは思うのだが、どの視点でも物陰になってしまう部分があるのも「ファイナルファンタジータクティクス」と同じ欠陥で、10年前のゲームと同じミスをやらかすのはどうかと思う。

索敵の概念があるが、索敵ユニットは、戦力にならない割に、召喚コストがあり、使えるようになるのも中盤手前と微妙な位置。
それならば、コストゼロの資源ユニットを召喚して動かした方が早い。

やり直すごとに、配置がかわるわけでもないし、一度体で覚えてしまうと隠す必要性がない。

索敵そのものにもっと意味合いを持たせれば、隠す必然性も出てきたはずである。

ステージごとにクリア条件はことなるが、従来のRTSのように、敵軍と拮抗した戦いを強いられるステージは少なく、「特定のボスを倒せ!」的なものが多い。
また、一定の条件を満たしてはじめて敵が侵攻してくるという場合のほうが多く、そのあいだ、資源の調達し放題なために、RTSとしての醍醐味が味わえるかというと微妙である。
むしろ、普通にやってるほうが、敵に押されて負けてしまうことが多かった気がする。

安全に戦力を整えられる時間的猶予があるのならば、そのプロセスはあってもなくても一緒である。
毎回ただただ最初にひたすら稼ぐ作業をさせられるのは、はっきりいってつまらない。

ステージごとのクリアタイムも、まちまちで、どの辺りに平均値を置きたいのかもわからない。
1時間近くかかるものもあったりすれば、10分程度で終わるものもある。

このように、とにかく全体的なコンセプトがちぐはぐで、どうにもおもしろみが感じられなかった。

シナリオは、テキストの台詞一個一個に凝ったような濃い内容で、最近のRPGでは軽視されがちな部分に力が入っており好感が持てる。
ただし、一枚絵とテキストだけで展開する淡々としたもので、牽引力として作用しているかというと怪しい。

ムービーの挿入も結構多い。アニメとCGの2種類だが、CG部分のクオリティが極端に低い。
DS「ファイナルファンタジー3」のアドバタイズムービーで見せた高水準はどこへいってしまったのか?
サターン、プレイステーション初期のようなショボくらかしいムービーを今の時代に見せられても萎えるばかりである。

音楽は、おとなしめのものが多く、退屈である。

ブラウニーブラウン制作ということで、まぁ、インターフェイスやゲームバランスのいい加減さには、今更驚くこともなかったのだが、
それにしたって、予想をさらに下回るクオリティにはがっかりせざるをえない。

しかし、勘違いしないでいただきたいのは、RTSがつまらないのではなく、このゲームが駄目だということだ。

発売前にはイベントを催したり、導入部のシステム解説の丹念さなど、積極的にRTSの面白さを伝える努力は見られたが、
結局のところ、中身の善し悪しが決め手になるのだ。

どうも、最近の聖剣シリーズは、やたらとプロデューサーの石井浩一の名前が出てくるが、そこから察するにプロデューサーのワンマン体質から脱却しないかぎり、いいゲームは生まれないだろう。

そこで結論。

聖剣伝説の今後が心配です(多くの人は普通のアクションRPGが遊びたいと思っていると思われるのだがどうか?)。





[2007/03/13]
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