聖剣伝説 ライズオブマナ


対応機種プレイステーションVita(PlayStation Store)
発売日2015/05/14
価格0円
発売元スクウェアエニックス

(c)2015 SQUARE ENIX
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聖剣伝説が久々にコンシューマーゲーム機で登場。
スマートフォン向けに一年前から先行展開している基本無料のアクションRPGの移植作だ。

コンシューマーでは2007年3月の「聖剣伝説 ヒーローズオブマナ」以来、8年ぶりというご無沙汰っぷりとなる。
以前は“ワールドオブマナ”というプロジェクトで、ニンテンドーDSで2本、PS2で1本聖剣シリーズを派手に作っていたが、
本命だろうPS2の「聖剣伝説4」で盛大にコケてからは、ケータイアプリで細々とシリーズが続くなど、だいぶ落ちぶれた待遇になっていた。

今回、満を持して登場となる新作は、基本プレイ無料のフォーマットでありながら、フルポリゴンの3DアクションRPGと言うファン待望の豪華な内容だ。

ちなみに、あまり徹底して知らされてないが、Vita版は、既にサービスしているスマフォ版とはサーバーが別なので、データに互換性は無い。期間限定イベントや実装バージョンも微妙に違う。
Vita版配信時は、シナリオは15章まで(正確には16章直前まで)で、レイドバトル機能もチュートリアルが存在するだけで、実際には入っていない。
インタビュー記事によると、Vita版では、物理コントローラーで遊べるためにスマフォ版と比べ、ゲームバランスを厳しめに設定しているとのことだ。

大まかなゲーム内容は、スタミナ制ではあるものの、シナリオに沿ってクエストが発生し、スタミナを消費して、発生したクエストを選択しクリアしていく形。
しかし、普通のコンシューマーゲームのアクションRPGのようなノリで、ストーリーだけをどんどん進めていくと、敵が急激に強くなって進めるのが困難になる。

これは、意図的なものだ。

いわゆる基本無料のソーシャルカードゲームのように、装備する武器と魔ペットを集めて、それらを強化素材や進化素材で合成し、しっかりステータス強化を図らなければならないようになっている。
武器と魔ペットは、自分で使うものの他にサポートとして装備できるものもあり、これは要するに、カードゲームのデッキを組むプロセスを踏襲している。

結局は、基本無料のゲームにならった作りになっているのだが、一番の問題点は、チュートリアルでしっかり説明していない点だ。
とにかく、どうやって遊べばいいのかが投げっぱなしで、説明がない。
売り切り型のコンシューマゲームなら、こんなノリでも許されるだろう。
だが、このゲームは基本無料でスタミナを消費して行動するので、体で覚えろという作りは実に酷なものだ。

ストーリー進めるのがきつくなるのも、ゲーム側で教えてくれないし、武器や魔ペットを揃えて強化するゲームであることも教えてくれない。
ましてや、一番肝心なのが、“どうやって強化していくのか”という方法に一切触れてくれない。
なんというか、「今どきこれぐらい知ってますよね?」という前提でゲームが進んでいくのだ。

これは、聖剣伝説という大看板を背負った作品としてはいかがなものだろうか?
そういう有名ブランドを背負ってないゲームなら、ある程度不親切でもしょうがないと言う結論に達する。
だが、いっときは落ちぶれたとはいえ、かつて人気シリーズと謳われた作品を持ち出してきて、この不親切さはダメだろう。
それこそ、こういった作品だからこそ、知らない人が入ってくることを想定して、開発者的視点ではやり過ぎなぐらいチュートリアルを盛り込まないとならない。

合成システムも、この手のゲームに慣れた人からしても一見して全て把握できるようなものではなく、結構煩雑な部類に入っている。

基本的に、強化素材のアビリティが付いた素材武器(魔ペット)で、鍛えたい武器(魔ペット)のレベルを上げていく。
使わないノーマルの武器(魔ペット)を強化素材にしても、経験値はほとんど得られない。
その代わり、ノーマル武器(魔ペット)でも、同じアビリティ(スキル)を持っている場合、低確率でそのアビリティのレベルが上がる場合がある。
逆に言うと、武器(魔ペット)の中にあるアビリティレベルを上昇させるためには、基本的な手段はそれしかない。

武器(魔ペット)は一度だけ進化素材を使って進化合成が出来る。上位の武器にクラスチェンジできるのだ。
これは、進化させたい武器(魔ペット)のレベルが高い状態で進化させると、進化前のステータスを引き継ぐことが出来る。
いわゆる、ダブり(同じ武器or魔ペット)を合成するとレベルを4回まで限界突破出来るシステムも入っており、最強を目指す場合は進化前に4回限界突破して、進化後にも4回の、合計8回の限界突破を必要とする。
というか、この手のゲームは普通、より強くすることそのものが楽しさの肝になっているので、8回限界突破させるのがセオリーで、そこを省略することはストレスになる。

それだけ限界突破させる(させなきゃならない)機会があるので、期間限定イベントで配布されるSR武器(魔ペット)の排出率は結構高い。
この仕様の利点は、SR武器(魔ペット)でも、ちょっとやれば簡単に手に入る点だろう。

だが、実際合成強化の段階になると、短い期間に9枚(本命の1枚と限界突破用の8枚)集めなければならない苦行と化す。
おまけに、進化用、強化用の素材まで集める必要があり(これらは曜日限定で取れるアイテムが日替わりで入れ替わるため微妙に不便)、
ただでさえ持てるアイテムの上限が少なく不便なのに、この辺をこだわりはじめると、とてもじゃないが頭はこんがらがるしキープできるアイテムの少なさに頭を悩まされるハメになる。
(この辺りは、課金でアイテム所持枠を拡張させようという狙いもあるのだろう)

このように、合成ルートは自由度があって色々やれることが多くバリエーションがあって面白いという考えなのだろうが、ひたすらにマゾでウンザリする部類と思う。
やはり一番の問題は、アイテムの所持枠が少なくて、どちらかと言うと倉庫のやりくりに頭を使う事のほうが多いということだ。
完璧に合成をこなそうとするとお金も足りなくなるし、週末限定(土日月)で、お金稼ぎの出来るクエストが発生するが、一週間のうち3日間はひたすらお金稼ぎというのも、やはりマゾい。
(強化する際に、それ相応のお金を必要とするため、素材の他に資金も調達しなければ強化できない)

せめて、強化(進化)用素材は5個単位でもいいからスタック可能ぐらいしてくれれば、だいぶ遊びやすくなるのだが...。

今作の目玉である3Dアクションのパートについて語る。
基本無料のゲームとしては非常にリッチな作りだが、コンシューマの本職の3Dアクションと比べるとさすがに見劣りする。
「ディアブロ3」を手本としているようで、プレイ感覚は聖剣伝説というよりは「ディアブロ3」に似ている。

Vita版では、UnityのVita版が劣悪な開発ツールだったせいか、肝心のアクションパートでは処理落ちが激しく、肝心な所でカクカクしたり、フレームレートがガタ落ちになったりと、非常に動作が不安定である。
そのせいで、まるでゲームにならない!と悲鳴を上げるほどのレベルで、そんな環境だから、アクションゲームとしてパッと触った印象もどうしても悪く映ってしまう。
ストーリーだけ進めていると、突然敵が強くなっていくので、ステータスを強化してボタン連打でゴリ押しするようなゲームという印象をもたれやすい(そういう側面があることも否定出来ない)。
だが、ちゃんとプレイしてみると、敵の弱点武器&弱点属性を意識した装備の切り替え(あるいは事前のセッティング)や、転身のタイミング、必殺技や魔ペットの魔法を出す戦略性など、実は割と本格派である。
まあ、擁護するほど出来の良いってほどでは正直ないのだが...。だが、ステータス強化してボタン連打だけで終わるようなゲームではないということだけは指摘しておきたい。

ちょっと書いたが、このゲーム独特のシステムとして、天使と悪魔という2人の宿敵が1つの身体に合体して戦うというものになっていて、バトル中も転身して(キャラを切り替えて)うまく立ちまわる必要のある作りになっている。
転身するメリットは、天使と悪魔で1つずつ武器を装備するので、2つの武器を切り替えられること。
これが一番大きなメリットだが、このゲームでは敵から攻撃を食らってダメージを受けても一部を除いて仮のダメージとなり、転身することで仮のダメージの部分は回復する。
セガ「エンドオブエタニティ」のスクラッチダメージや、格闘ゲームで使われるヴァイタルソース(リカバリアブルダメージ)のようなものに近い。
転身しなければ仮のダメージの部分は、仮と言っても“ダメージを受けた状態”なので、そのまま戦い続けてHPを0にされるとやられてしまう。
このように、転身せざるを得ない仕組みにしているところも、なかなかアツイ作りとなっている。

全体的に、非常に凝った作りなのだが、どうせここまで本格的に作ったのなら、コンシューマーゲームの売り切り型で出したほうが良かったのでは?と同時に感じる。
下村陽子、伊藤賢治、菊田裕樹、関戸剛という豪華なだけじゃない、ちゃんと聖剣伝説にゆかりのあるコンポーザーを集めているのも、基本無料とは思えないほどだ。

基本無料としたことで、ひたすらにマゾい装備品集めと強化を繰り返す膨大な作業をやらせることになったし、過去の聖剣シリーズやサガなどの安直で安っぽいコラボレーションで客を有料ガチャに惹きつけようとする。
コラボや過去の思い出を売り物にするようなやり方は嬉しくもあるし楽しいんだけど、典型的な基本無料の悪い部分を丸出しにしてしまっている感じもする。
そもそもここまで行くと、基本無料であることが最良だったのか?という不毛な議論に発展する。

ゲーム全体の雰囲気は、かなりPS1の「聖剣伝説 レジェンドオブマナ」に近い。シュールなテキストと世界観、サボテン日記など。
ただストーリーはどうにも陳腐なところがあり、もうちょっと力を入れて欲しかった気がする。

全体的にUIがごっちゃりしてて、合成屋では画面の切替が多すぎて不便だったり(強化合成と進化合成は同じ画面でやらせて欲しかった)、この会社特有の見た目重視なところが強く出てて画面の過剰演出が気になる。
Vita版では、ボタン操作に対応しているが、対応していないものもあり(イベントスキップやショートカット機能など)、そういう細かい部分が荒っぽさが気になった。

基本無料でスタミナ制だがレベルが比較的上がりやすく、アイテムの所持数と行動力はレベルが上がることでどんどん上限が上がっていくため、レベルをあげることで不便さは多少解消される。
スタミナ制が嫌われる原因として、全回復まで待って空いた時間に頻繁にプレイする必要がある引き伸ばし感、やらされ感がつきまとう不便さがある。
だが、このゲームでは、スタミナのキャパが大きくて3時間4時間分貯められるぐらいスタミナ上限が広がっていく。
また、プレイヤーが強くなって、同じクエストでも難易度の高い中級、上級をクリアできると、その分大量にたまったスタミナも一度に沢山消費できるようになるので、時間的負担も比較的軽い。
ただし、問題なのは、スタミナを消費して遊ぶ3Dアクションゲームが繰り返し遊ぶには、全く面白くない単なる作業に成り果てている点にある。
ここを、繰り返し遊んで楽しめるようなものにして欲しかったというのが欲求としてある。

基本無料にしないと予算が出ないとか、色々会社的な事情があったのだろうが、聖剣シリーズをこんな過去作品の同窓会みたいなぬるま湯的ゲームとしてしまうのは非常に勿体無い。
商業的に成功する公算が薄いとしても、もっと大きくチャレンジをして欲しかった。そこで結論。

なんでも基本無料のゲームにしてしまえば良いというものではない。





[2015/06/03]
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