聖剣伝説 ファイナルファンタジー外伝


対応機種プレイステーションVita(PlayStation Store)
発売日2016/02/04
価格1400円
発売元スクウェアエニックス

(c)2016 SQUARE ENIX
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初代ゲームボーイ向けに発売された「聖剣伝説」第1作目を、25年の時を経てフルリメイク移植。
vitaだけでなく、スマートフォンにも同時移植された(こんなこと言っちゃナンだが、主戦場はスマフォでvitaは次いでといった感じなのだろう)。

この「聖剣伝説」一作目は、何度かリメイク移植されている。

まず有名なのは、ゲームボーイアドバンスでリメイクされた「新約・聖剣伝説」。
こちらは、オリジナル版から内容がだいぶかけ離れたものになってしまったため、その点から不評の声も大きかった(ファンの気持ちがわかってない等)。
当時の新作ゲームとしては、決して悪くない水準ではあったものの、何をしたかったのかちょっととっちらかっていたゲームになってしまっていた。

次に、ケータイアプリでもリリースされていた。
スマフォ普及前で、今より携帯電話のスペックも遥かに低い時代の代物だ。
こちらは、オリジナルのGB版に極力忠実な作りとなっていたようだ。グラフィックに色が付くなどのパワーアップも施されている。

さて、それを踏まえると今回は実に3度目のリメイク移植となる。

内容的には、GB版を最大限に再現、尊重した作りでありつつも、グラフィックはすべてフルポリゴンで綺麗に3D化され、音楽も派手にアレンジされるというリッチで豪華な内容になっている。

便宜上リメイクとは書いているが、実質的には“移植”と考えてもらっていい。それぐらい、プレイ感覚は良くも悪くもGB版を忠実に再現されている。

フルポリゴンの3Dアクションゲームとしては、チープに感じる部分は正直多い。
そもそも、価格が1400円なので、予算的にもがっつり出ているはずもなく、それを考えると、逆に綺麗にまとまってるなあと感じてしまうほどなのだ。

プレイ開始して最初の数分こそ、律儀に一画面切り替えの仕様まで再現してることからくるプレイのしづらさや独特さ、なんかが気になってしまう。
ただ、これは、意図してやっていることなのだ。

もちろん、少ない予算でやりくりしなければならない事情もある。
だが、その事情を「限りなくGB版にプレイ感覚を近づける」ことで、解決を図っているのだ。

元のゲームは、白黒のゲームボーイで、2Dのドット絵のゲームだ。
それを、イメージを崩さないようにカラーで3Dのフルポリゴンにしておきながら、一方で、手触り感は敢えてGB版のチープなものにする。
本当なら、もっと見栄えのいいゲームに出来たはずだろうが、それは絶対にやらず、GB版の感覚を再優先に作られている。
ここまで割り切りの良い方針には、逆に潔ささえ感じてしまう。

例えば、イベントシーンは、多少演出が強化されている部分はあるものの、基本的にはGB版そのままなので、かなりあっさりとしたテキストでイベントが描写される。
鍵を開けたり、ヒビの入った壁を壊したフラグ管理もちゃんとやれるはずだろうに、敢えてGB版のままにしてある。
テキストなどほとんど手を加えてない(というか多分そのまま)ので、進行上のヒントなんかが、ちょっと厳しいんじゃないかという部分すらも、当時のままになっている。勇気ある決断だ。

見た目は変えているのに、プレイ感覚だけは崩さずそのまま再現するというのは、簡単にやれるようだが、おそらくかなり難しいはずなので、素直に凄いと言わざるをえない。

そして、こんな風にこだわって作っても、喜ぶのはごく一部のオリジナル版をプレイしたプレイヤー(それも、その中でも好みが分かれる可能性が高い)ぐらいだろう。
良くここまで忠実に、GB版を“移植”したものである。

GB版そのままとは書いてきたが、インターフェイス周りだけはvitaに合わせたものに完全に変わっている。

「聖剣伝説」シリーズお馴染みのリングコマンドを基調としたメニューコマンドで、画面右にリングが半分だけ表示されてそれを回して、というUIなのだが、
通常のウィンドウタイプのものと比べると、若干見づらくて使いづらい。

また、○ボタンに武器、×ボタンにアイテム(魔法)を装備する他に、
LボタンorRボタン+△、○、×にショートカットコマンドを置いていて、そこにアイテムを装着させられるのだが、これが便利でありながらも微妙に使いづらい!!

まず、メニュー画面でセットする際の操作がそもそもやりにくい。キー操作の場合、LボタンorRボタンを押しながら十字キーで操作となっているが、L,R押しながらじゃなくて、そのままセットできるような操作も欲しかった所だ。

3つまでショートカット枠があるのは良いのだが、元々装備の使い分けが多いゲームのせいもあって、微妙に枠が足りない!!
もう一つあればなあ...と思う局面がかなり多いのだが、□ボタンは、仲間との「相談」コマンドに割り当てられてしまっている。
ダンジョンでは、鍵はわざわざ装備してなくてもアイテムで持っていたら自動で使ってくれるだけで、かなり使い勝手が良くなったのだが。

それから、一画面切り替え方式を再現していると書いているが、今作はプレイに適切な距離にカメラを置いているために、厳密には一画面切り替え式ではない。
若干、視界の狭さが気になるのと、特にフィールド上で、どこが切り替え位置かわからず、混乱することがある。
切り替え位置に近づくとカメラのスクロールが止まるので、それで感覚的に把握して欲しいということなのだろうが、やはりわかりづらい(ダンジョンでは一部屋なので分かりやすいが)。

後は、バグやフリーズがチト目立つ。BGMが鳴らなくなったり、フリーズして強制終了、また、ブラックアウトして操作不能になり一旦ソフトを終了させないとダメな状態に陥るなど。
画面がカクついたり、処理落ちが多く、動作が安定しない。低価格だからしょうがないとは思うが、頑張って欲しかった。

フォローするつもりではないけども、1400円という価格を考えると、なかなかクオリティは高い方だとは思う。

今の時代、普通にリメイクしようとすると、膨大な開発費がかかり、よほど売れるタイトルでないとリメイクすら難しい時代になっている。
そんな中、みんなが望むような、フルプライスの高画質なリメイク作は出来なくても、このようなやり方もアリなのだなと感じさせられた一本だった。

...なんてことを、長々と書いていたら、そういえばワンダースワンカラーに移植したファイナルファンタジーの1,2も、見た目だけ新しく、中身は忠実移植だった。
この会社の伝統なのかと思ったが、その後GBA「ファイナルファンタジー1・2」では、思いっきり中身に手を入れだしたので、場当たり的にやっただけで特に強いこだわりは無かったのだろう、と思われる。
今作は、見た目は思い切り変えつつも、中身はGB版を再現することをかなり意識してやっている。その辺が大きな見所の一つだろう。

そこで結論。

このリメイク移植は手抜きではない。ベタ移植風リメイクだ!





[2016/02/06]
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