新桃太郎伝説


対応機種スーパーファミコン
発売日1993/12/24
価格9800円
発売元ハドソン

(c)1993 HUDSON SOFT / SUMMER PROJECT
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ハドソンの看板シリーズの一つ「桃太郎伝説」のスーパーファミコン版。
第1作がファミコンで出されたものの、その後PCエンジンで知名度を上げながら、大きく発展を遂げたシリーズである。

どうやら、初代ファミコン版「桃太郎伝説」の続編と言う立ち位置であり、PCエンジンの「桃太郎伝説2」は、“無かった事”にされているようだ。

ゲームとしては、これといった特徴の無いオーソドックスなスタイルのRPGで、ドラクエを丁寧に真似した(褒め言葉である)RPGといった例えがしっくりくる作りであった。
しかし、回を重ねるごとにオリジナリティを確立していき、今回のスーパーファミコン版では、まさにシリーズ集大成の完成型といっても言い過ぎでない高いクオリティを発揮している。

全く、スーパーファミコン持ちのユーザーは、最初からこの水準のゲームを遊べるのだから、本当に羨ましいものである。

何やら、初期は1と2をカップリングして、なおかつ、スーパーファミコン用にパワーアップ移植する予定だったらしい。
だが、容量が足りないなどの事情により、完全新作で作られることとなった。

そういった経緯があったためなのか、全体的にPC-E「桃伝2」を踏襲した構成となっており、そうでありながらも、要所要所のダンジョンが新しく、ストーリーも新しく、と、豪華な作りとなっている。
「桃伝2」をやっていると、先が読める展開になっていながら、しっかりと先が気になる作りになっているという、実に不思議な感覚を味わえる。
また、PCエンジンは持っておらず(あるいはPCエンジンでの存在自体知らない層)、ファミコン版以来といったプレイヤーからしても、正統な続編として遊べるようになっているのは、絶妙と言わざるをえない。
勿論、ファミコン版をやってない人に向けても、シリーズお約束のネタもちゃんとフォローされてるので、しっかり楽しめる。

ドラクエタイプのコマンドRPGのお約束を守りつつ、随所でのネタが満載で、とても密度の濃いRPGとなっている(普通、ここまで作るか?という部分まで作りこまれている)。

挙げていくとキリがないのだが...

フィールドマップでのエンカウントに限り、天候が設定された戦闘。天候によって、ちゃんと背景が変わり、雨になると活性化して強くなる敵や、術の威力が変わるなどの仕掛けがある。
町、フィールドマップだけだが、仲間たちはプレイヤーの後ろをついてくるのではなく、キャラの性格に合わせて好き勝手に動く(これは実現がかなり大変そうだ...)。
ゲーム後半になると自分専用の城が持てるようになり、沢山のキャラクターが仲間になり、その城で自由にメンバーを入れ替えることが出来る。普通にやってるとわからないような隠れキャラ的なメンバーもいて、探す楽しみがある。
その他、地上マップだけでなく、海底マップがあり、豊富すぎるほどのミニゲーム、といった所だ。

和を基調とした格式高いグラフィック、良い音質で奏でられるサウンドは、「天外魔境」シリーズを作り上げてきた、まさにハドソンの十八番とも言うべき路線で、和風RPGをここまで本格的に作り上げる事ができるのは、この会社しか無いだろう。

ゲームバランスも丁度良い。「桃伝2」では、まだシビアすぎるかな?と感じていたが、簡単すぎず難しすぎずという非常にいい位置にあり、気持ち良くプレイ出来る。
(金太郎のすもう技が強すぎるような気もしないでもないが、こんなものだろう)

だが、気合を入れて手広くやり過ぎた反動なのか、不満点というか粗も目立っていて。

結構色んな処理を走らせてるせいなのか、全体的に画面が重く、レスポンスが悪い。

フィールドでは、パーティメンバーが散らばってあっちこっち動くし、ダンジョンではエフェクトかけてるマップも多かったりする。
戦闘では、モンスターが動き、背景も止め絵にしとけばいいものを、場所によっては動かしていて、フィールドでのエンカウントだと天候システムの関係上、雲を動かしたり雨降らしたりして、凝っている。
画面下にはパーティメンバーのステータスが表示されるが、キャラも一緒に表示されてて、動いたりダメージ食らったりのアニメーションを一々させている。
そんなわけで、全体的にゲームが重い。

元々のスーパーファミコンの性能的な問題もあるのだが、ソフト側でも結構無茶やってるなあという印象だ。
ハドソン自体が、PCエンジンメインでやっていて、スーパーファミコンのゲーム開発に慣れてない節も見受けられ、まさに手探りで作り上げていったせいなのかもしれない。

これはシリーズ恒例になりつつあるが、エンカウント率が高い。
このエンカウントの高さは計算づくの上なのだろうが、今回はダンジョンマップも結構広く作れているので、その広大さを考慮すると、やはり辛い。
ゲーム終盤になると、ダンジョン探索が続くために、この極端なエンカウントの高さのせいで、長丁場を強いられ、結構タルかった。正直な所、「ああ、もうウゼー!」って思う位。

道具の管理が煩雑。
「桃伝2」では、道具袋はパーティ共通で、仲間の人数が増えると、持てる数が増えるようになる(枠が増える)作りだった。

しかし今回は、パーティ入れ替えが自由なので、道具袋は個人個人で、一人8個までとなった。

ここまでは何も問題はない。が。
所持できる道具の数に比べて、溢れるぐらいにドカドカとアイテムが手に入るため、あっという間に持ちきれなくなってしまう。
といち屋に預けられる数も少なく、やむなく売ったり捨てたり、それでも足りない時は、控えの仲間にまで預けるということになるのだが、この、道具の交換がとにかく面倒。
メニュー周りの処理が重くてレスポンスも悪いので、ただでさえ面倒な作業が、苦痛にまで感じてしまう。ぶっちゃけると、ゲーム終盤、お金もカンストするぐらいに余る。
この辺は、本当にもったいないところだった。

時期柄、しょうがないとは思うのだが、半端にファイナルファンタジーの影響を受けているところがあること。この、“半端に”というところが問題なのだ。

全滅するとゲームオーバーになってセーブしたところからやり直し、というのは、百歩譲っても良い(「桃伝」っぽくなくなったなあとは思うが)。
だが、ゲームオーバーの条件が、これまでどおりで、桃太郎一人がやられてもダメというのは、チト厳しいのではないか?

これはドラクエのように、全滅するとお金半分で復活地点からというルールだからこそ許せる条件であって、主人公がやられても即終了というのは割にあわない。

それから、セーブポイントについても。
長めのダンジョン、それと、フィールドマップのいたるところに地蔵菩薩というセーブポイントが配置されている。
特にフィールドマップのセーブポイントは、ダンジョンの入り口、また、ゲーム序盤にはやりすぎなぐらい配置されていて、「コレもうフィールドならどこでもセーブ出来てもいいじゃん」と言いたくなるほど。

長いダンジョンでも、セーブポイントがあるのだが、最後にセーブしたところに戻れる「はごろも」という道具を駆使することで、町に戻って回復補給などをして来られる意図も含めている。
だが、ここまでやるならもう、素直にFFを真似して、セーブポイントで全回復できるテントみたいなアイテムを入れて、その場で回復できるようにしてもいいんじゃ?って思ってしまう。
「はごろも」の道具を使える意図に気づけずに、まどろっこしいからとそのままゲームを進めようとする人も出るだろうし、逆にゲーム序盤だと、「はごろも」1つ50両というのは気軽に買える金額ではない。

そこまでやってしまうと「桃太郎伝説」のゲームの世界観にそぐわないということで、だいぶ葛藤した末での結論だったのだとは思う。
ドラクエだとどうしてたかというと、凄く割り切りが良くて、遠慮無くダンジョンの途中に宿屋が開店してたり、教会の神父がいたりする。

このゲームでも、実質上全回復ポイントである敵、「しょうけら」と「黄粉坊」がいて、前者はHPだけだが倒した相手を回復、後者はHPMP全回復してくれる。
こういう敵とエンカウントするようにして、苦しいダンジョンでも乗りきれるようにしてくれている。
たいてい、ゲーム終盤のダンジョンだと、黄粉坊4体が出るようになってて、実質全快してくれる敵パーティでうまく調整している。
ここまで荒っぽい調整するぐらいなら、素直にもうFF方式を導入しても良かったんじゃないかなあとも思う(まあこの作りも決してつまらなくはないのだが)。

後は戦闘シーンでも、FFの飛び出すダメージや、術攻撃にエフェクトが付くなどの視覚的な演出を強化している。
ただ、ここでもドラクエの対面式バトルとの葛藤が残っていて、ダメージも視覚的に見せているのなら、画面上の文章での表示は重複してるしいらないんじゃないかと感じてしまう。
大きいサイズの敵とかだと、表示が被っちゃったりするし、どうにもごちゃごちゃとしている感は拭えない。

実際、裏技扱いではあるが、戦闘メッセージの表示を最小限にすることが出来るようになっている。
この辺も、基本ドラクエタイプのRPGだった「桃太郎伝説」ゆえの葛藤だったのだと思う。
個人的にも、うざってえなあとは感じていたが、戦闘メッセージを少ない設定でプレイしていると違和感があったので、標準設定でプレイした。

後頂けなかったのは、ラストダンジョンに入ってしまうと、後戻りできなくなってしまうことだ。この点だけは許せないとまでは言わないが「桃伝」らしくない配慮の無さだ。
ここまで色々な部分でシリーズらしさを重視してきたのに、このイベントの強制っぷりは、本当にいただけない。なんとかして欲しかった。
(他にも特定のボス戦とかでイベント仕立てになっていて、強引だなあと思わせる演出があったりもしたのだが...)

地蔵菩薩に話しかけないと次のレベルまでに必要な経験値を教えてもらえないとか、表示上の都合だろうがフィールドとそれ以外でメニューウィンドウの表示が違うなど、
細かい部分を突っついていけばいくらかあるのだが、この辺までにする。

要するに何を言いたいのかというと、ゲーム自体が巨大化したために、全体をうまくまとめきれなくなり、細かいところでの整合性がどうにも上手に取れてないなあと感じた。
こればっかりはしょうがないとも思うのだが。

色々、後半は、細かいゲームのコンセプトについて、どうにも浮ついてるなあと感じたことを辛辣に書いてしまったが...。
仮に従来通りドラクエに忠実に作っていたら、ここまでオリジナリティが出た面白さにはならなかったと思うし、逆にFF寄りにしすぎても、また別の問題が出ただろう。
それを考えると、実に絶妙なバランスの上に、このゲームが成り立っているということを実感する。

かつてPC-E「桃伝2」がハドソンの総力を結集したRPGであったように、「新桃」もまた時を経てさらにパワーアップして作られた超大作RPGだという事実だけがそこにある。
悔しいが面白い。
荒削りさは感じるものの、技術レベルも高水準で、見所も多い。凄い。そこで結論。

王道、オーソドックスの殻を抜け出た、桃太郎伝説の完成型!遊べ!!





[2016/01/28]
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