サイレントヒル


対応機種プレイステーション
発売日1999/03/04
価格5800円
発売元コナミ

(c)1999 KONAMI / Konami Computer Entertainment Tokyo
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ストレートに書くと、コナミ版「バイオハザード」といった所だ。
雑誌とかじゃ、大手メーカーってこともあってまろやかに濁されちゃってるが(笑)

正直「バイオハザード」のバッタもんってことで全く期待を持てなかったのだが、これがなかなかどうして、力作である。やはりゲームは実際触ってみないとわからないものだ。

「バイオ」と大きく異なる点が2点ある。マップがフルポリゴンで描かれていること。しかも中小メーカーが適当に猿真似したようなハリボテでなく映像のクオリティがおしなべて高い。
詳しくは後述するとして、もう1点。手持ちのアイテム制限がない点。つまり手に入れたアイテムは全部手元に持っておける。しかも弾丸も回復アイテムも探せば割とドカドカと手に入るので緊張感があまりない。また、そういう意図も含んでいないだろう。
「バイオ」が“サバイバルアドベンチャー”と自称しているのに対し、今作は“ホラーアドベンチャー”と自称している。見た目が似たゲームでありながらアプローチの仕方が根元から違うのだ。

まず映像面。カプコンが「バイオ」で一度断念した(はず。開発中途のフルポリゴンで動いてたバージョンを何かの特典映像で見た記憶がある)フィールドマップのフルポリゴン化を実現している。それも決してプリレンダの一枚絵に引けを取らないクオリティだ。
ちゃんと敵も複数動きまわっても重くなったりせず、軽快に動く(さすがに多少処理落ちや動きが固い印象はあるが)。

さて、フルポリゴンの強みはカメラを自由に動かせることだ。このゲームでは、ある程度カメラ視点を操作できる場所と、部屋の中など敢えてカメラを固定させたいところでは固定させるなど、用途に応じて柔軟にカメラ割りを制御している。
「バイオハザード」の1枚絵方式では仕様上難しかった、巨大な舞台をもフィールドマップとして採用できる利点があり、それを勿論わかっているのか街全体を舞台としている。広い道路から路地裏までかなり細かく作りこまれている。
さらに、フルポリゴンのメリットを生かした光源処理のシステムをゲーム性と絡めている。舞台となる町は、霧と暗闇に包まれた不思議な町としており、遠景のポリゴン処理を設定でうまいことごまかして視界を悪くしている。
暗闇状態では、プレイヤーが装備しているライトが照らした部分しか見ることができない。この光源処理が実に自然で、ホラーゲームの雰囲気作りに一役買っている。
ライトを消せば、敵から見つかりにくくなる。ノーマルモードではヌルいからあまり意識する必要はないが、このゲームの敵は総じて耐久力が高めで全部を相手にしていると大量の弾もあっという間に無くなってしまう。出来ればうまく回避して欲しいというわけだ。
顔の表情も、うまくぼかすことで不自然さを感じさせないようにしている。視界や顔のごまかし方については同社「メタルギアソリッド」と類似しており参考にしたと思われる。

フィールドがポリゴンなので、イベントシーンもカメラ割りを自由に出来てリアルタイム処理が制限なく可能だ。しかし、ここまでやってなお、劇中のイベントを画質イマイチなムービーに頼っている箇所がある。実にガッカリ。せっかくマップを作りこんだのだからそこはリアルタイムで見せるべきだろう!

フルポリゴンのマップを採用したことでマップ切り替えのディスクアクセスが心配になるが、かなり工夫しているようで、快適でほとんど気にならない。強いて言えばロードしに行くのは場所自体が切り替わるとき(町から学校など)ぐらいで、それ以外はこれといった待ち時間はないといって良い。
他にも、メモリーカードへの読み書きも異常に早く、このゲームに慣れちゃうと他のPSゲームができなくなるんでは?ってぐらいやばい(笑)

ここまで褒めちぎっているが、割と不満点というか、ゲーム自体の間口の狭さも気になった所だ。

まず、「バイオ」をパクるからってラジコン操作まで真似する必要は無いだろう。デュアルショックにも対応しているのだから、出来ればスティックを倒した方に素直に動いて欲しいものだ。
フルポリゴンの弊害のせいか、カメラワークが浮ついてたり、いい位置に来なかったりして見づらい場合が目立つことと、キャラクタのレスポンスが重く操作性が良くない。
これに対応する形で、敵が近くにいたら知らせてくれる携帯ラジオをゲーム開始時に渡すことで理不尽さを解消している。しかしこいつが万能過ぎて、ゲーム側で恐怖を煽る演出を入れてもアラームが鳴ってないから敵がいないとバレちゃって台無しにしてしまっている点。これはかなり痛かった。

このゲームも、周回プレイを促す要素を幾つか入れており、プレイ評価システムとマルチエンディングを採用している。
が、グッドエンドの条件がわかりづらい。おまけに2周目は強制的に難易度を上げられるのもちと辛かった。結局2周目でアレコレ探しまわっているうちに飽きてやめてしまった。
この手のジャンルのゲームは、プレイ時間が短いので、周回プレイをしてもらうために色々対応に苦慮しているのが良く伝わってくるのだが、本作はどうかというと正直厳しい。
「バイオ2」では、割り切って2人の主人公を用意してゲーム自体は一本道にしていた。今作は中途半端にマップが広いしゲームも長いしで、さらに条件付きマルチエンドとなると、探し当てるのがしんどくなってバランスが良くない。
「メタルギアソリッド」では、ルート分岐で微妙にストーリーが変化して、最後に異なるスペシャルアイテムを与えることで周回プレイ対策をしていた。これぐらい上手な対策法を入れて欲しかったのが正直な所である。

シナリオとキャラクタが弱い。シナリオは舌っ足らずなのと、序盤の導入部がかなり魅力に乏しい。特にキャラクタはもっと立ててもいいと思う。あまりに淡々としすぎてて、印象に残らない。

世界観の関係上厳しかったと思うが、開けられない(閉まったままの)ドアがあまりに多いのも気になった。同じ建物を表世界と裏世界で使いまわす構造上そうせざるをえないのはわかるのだが、なにか工夫が欲しかったのが正直な感想だ。

最後に些細なことだが個人的にはかなりでかいウエイトを占めていた。文字フォントをもっと凝って欲しかった。おそらくPSの内蔵フォントを使っているのだと思うが、全然ホラーっぽい雰囲気が出ていない。というか雰囲気台なしである。
雑誌記事の字幕が出てる写真を見てプレイ意欲を削がれた一番の要因がこれだった。こういう細かいところをこだわってくれないと、その程度のゲームなんだ…という印象を持たれてしまう。

誤解されやすいが、「バイオハザード」に近いようで遠いゲームだ。それはとっつきの良さにも表れていて、ゲームで大真面目にホラー映画をやったのがこの「サイレントヒル」で、ゲーム的に都合の悪いめんどくさそうなところを全部削って出来上がったのが「バイオハザード」と言える。
つまり、「サイレントヒル」というゲームは、クリーチャー1つとってみてもノロいゾンビばかりだった「バイオハザード」と違い、こっちは最初っから俊敏なバケモノが配置されていて倒すのも一苦労。むしろうまく逃げて下さいというゲーム性だ。
視界も悪く、いちいちライトを照らしてやらないとまわりを見られない面倒くささがつきまとう。プレイヤーに都合の良いマップ構成ではなく、広く入り組んだ独りよがりなマップ構成は世界観を重視しており、それを不条理だとか不親切だと嘆くのは筋違いと言える。
全てにおいてプレイヤー目線で作られていた「バイオ」路線のゲームにもう飽き飽きしていた人にこそ斬新に映るゲームだろう。そこで結論。

これこそ玄人向け“ホラーアドベンチャーゲーム”





[2011/09/07]
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