スターオーシャン5 Integrity and Faithlessness


対応機種プレイステーション4
発売日2016/03/31
価格7980円
発売元スクウェアエニックス

(c)2016 SQUARE ENIX / tri-Ace / akiman
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トライエースの看板作品、「スターオーシャン」ナンバリング5作目。
前作から実に7年ぶりの登場であり、4リリース時にシリーズ最終作かのような雰囲気をだしていたため、続編の登場には素直に驚いた。

トライエースはその後、スクエニを離れ、セガから作品を出すなど関係を築いていき、最近ではネプロジャパンの子会社になるなど、不安定な立場に先行きが心配になってしまう出来事が起こったが、今回はその話には触れない。
簡潔にまとめるなら、到底スターオーシャンの続編なんか出せそうにない環境になっていったため、こうやって5が発売に至ったことに驚きや感動さえある。

いきなりだが、この会社のRPGは、このシリーズもそうなのだが、前衛的で複雑なゲームシステムと、シビア目なゲームバランスが特徴的だった。
その点から見ると、本作は、トライエースらしからぬ手堅い作りで、誰にでも楽しめるような間口の広さをまず目指した作りになっていて、拍子抜けしたほどだ。

それを踏まえて、シリーズおなじみの要素、リアルタイムのアクションバトルと、多彩なスキル、膨大に用意されたアイテムクリエーションシステム等を、しっかり受け継ぎながらも、
極力シンプルに遊びやすくまとめられており、好感の持てる作りだ。
(それでもまだ、他のRPGと比べると複雑さはあるが、シリーズ物のエッセンスを継承している以上ここらへんが限界点だろう)

特に今回は“シームレス”をテーマに制作していったようだ。
バトルもイベントも、シームレスに処理されていく。
他社のRPGを見るとわかると思うが、画面を切り替えずにシームレスに展開させるというのは、本当に大変なことだ。それをさも当たり前のように良くここまで高い次元で実現させたものだ。
これらの技術が面白さに直結する要素ではないので、軽視されがちだが、本当に凄いと思う。

このシリーズの宿命というか、ある種宿敵というか、そのような存在として「テイルズ」シリーズがある。
「テイルズ」も、元はトライエースのスタッフが生み出したものだが、その後「テイルズ」はシリーズ化され、すっかりナムコのものになり独自の発展を遂げていった。
どちらのシリーズも、リアルタイムのアクション戦闘と、声優のボイスを台詞に多用したイベントシーンといった作風が共通項としてある。
そのせいなのか、最近では進化の方向性も自然と似た方向に向きがちで、本作は、既に一年前に発売された「テイルズオブゼスティリア」に、作りが似ている。

スケールが変わらない等身大のフィールドマップに、シームレスに移行するバトル等。
勿論、それ以外のゲーム部分は全然別物になっているのだけども、やろうとしていることが似通っているためどうしても自然と意識して比べたくなってしまう。

「スターオーシャン4」の時点では、このシリーズは、シリーズ物の強みである正統進化をせず、毎回新しいシステムを取り入れようとしていた。
逆に、その頃の「テイルズ」シリーズは、基盤を固めて確固たる地位を確立しようと言う作り方だった。
その後「テイルズ」シリーズは、その路線が限界に来て「エクシリア」以降、急激に失速してしまう(この失速という意味は、売り上げとか人気ではなく、ゲーム的な中身の話の意味合いが強いものだ)。

だが、当時は「スターオーシャン」の、シリーズの利点を生かそうとしない作りにもったいなさを感じていた。
その点今回は、トコトン保守的で、シリーズ過去作の良い所をしっかりつまみ食いしてきた、まさにシリーズ集大成と言ってもいいやり方で、実に無難にまとまっている。
もう据え置き機で超大作ロールプレイングなんて、いつ作らせてもらえるかわからないから、このはずさない手堅い判断は非常に良いものと思う。

とにかく本作の見所はシームレスなバトル、イベントに尽きる。
マップのクオリティの高さはそのまま維持しながら、ノーアクセスでバトルに入る。
バトルシステムは、「スターオーシャン3」のものをベースにしている。
もう一つの特徴が、パーティーメンバー全員がバトルに参加するということ。最大7人パーティで、時にはゲスト的なNPCがストーリーに応じて加入することもある。
フィールドでも、メンバー全員が主人公の周りをついてくる。
はっきり言って絵面にまぬけさを感じるところは多い。しかし、いわゆるJRPGを現在の据え置き機で省略せず大真面目に表現しようとしたら、このようになってしまうことを体現していると言えないだろうか。
本作は、イベントもシームレスにつながっていくので、操作キャラ1人だけ表示みたいなことは都合が悪い。一瞬暗転したり、イベントに入った時だけ沸いて出てくるようにも出来たと思うが、それだとシームレスにこだわった意味がなくなる。相当葛藤したと思われる。

バトルシーンについても、控えメンバーがいなくて全員が戦闘に参加する。
個人的には、「コールオブデューティ」のような全員で戦っているワラワラ感が楽しかったのだけども、戦闘が大味になってしまったり、ゲームとしては犠牲を被っている部分のほうが多いのかもしれない。
しかし、回復役、魔法使いのキャラは1人ずつと決めているし、一応役割が被らないような工夫はあるので、RPGの戦闘パーティは4人が定石だから4人で、と決めずに7人パーティを押し通したのは評価したい。

戦闘時はカメラが勝手に良い位置に動こうとしてくれるのだが、個人的には余計なお世話だった。やはり理想は引けるところまでカメラを引いて見下ろした形にしてくれたほうが状況を把握しやすく最も操作しやすい。
カメラワークは類似作の「テイルズオブゼスティリア」でも散々言われていたが、本作もカメラワーク自体は、あまりよろしくない。
エフェクトが派手で、どこで誰が何をしているのかわかんなくなったりするし、場所によっては障害物や壁がカメラの邪魔になったりする。
ただ、それでも自分でカメラ操作できるし、バトル自体がそれほど忙しくないので、「ゼスティリア」ほどイライラしなかった(気にならなかった)。
それよりも個人的には、魔法エフェクトで画面いっぱい覆い尽くされてしまうことのほうが気になった。

イベントも暗転せずにシームレスに展開していく。
定位置まで来ると、キャラ同士が会話をはじめて、割り当てられたモーションや動作を行う。
海外産のFPSやTPS等アクションゲームで使われているような手法に近い。そして、見せ場になるとそこから暗転して従来のRPGらしいカットシーンの本格的なイベントが始まる。

このやり方は、イベントに入る度に急に画面を暗転させてムービーに入る流れを変えたかったのだと思うのだが、正直言って成功しているとは言い難いように感じた。

FPSなら自分とカメラが一体化している、TPSでもプレイヤーとカメラが近いために没入感があるが、本作ではプレイヤーとカメラの距離が離れていて、距離を近づけることもできるが、それでもプレイヤーは傍観者的な位置にいる。
プレイヤーとカメラを動かして、なんとか興味のある方向を見ようとしても、うまい位置に来ない。
せっかくモーションを付けて演技しながら喋っているのに、それを微妙なところから見ることになる。
また、会話している間、プレイヤーを動かすことができるが、当然ながらストーリーを成り立たせるために、移動場所はかなり限定される(移動できない位置まで来ると赤色の線で表示される)。
これが曲者で、間が悪い所で移動制限に引っかかることがたまにあり、高い確率で、多くのプレイヤーがもっと前に行きたいだろうに、行けないように設定している場面がいくつかある。

こういうことをやられると、シームレスにこだわるよりも以前に、ゲーム的な仕様に一歩線を引かれている感じになって、冷めてしまう。
シームレスで、自然な流れでストーリーを見せていることに感激するよりも、そこまで無理に自由度を出そうとしなくても良かったんじゃ?と興ざめしてしまうのだ。
プライベートアクションなどのサブイベント系ならまだしも、メインのイベントでは、もっとカットシーンを増やしても良かった気がする。
このままの状態だと、カットシーンの演出つける暇がなくてプレイヤーに投げっぱなしにしてしまったと取られかねない。

イベントに入る時もシームレスで、自由に動けて、というよりも、せっかくモデリングのクオリティは高いし、ちゃんと会話中は演技してるんだから、それをいい位置で見たいのがプレイヤーの真理だと思う。
色々仕様的に難しくてこのような状態になってしまったのだろうが、そこは超大作RPGである、何とか頑張って欲しかった。

また、マップのクオリティを優先したのだろうが、舞台が狭い。
数えるほどしかマップがない。この辺は本当に難しい所だ。質を落として量を増やすか、という風に限られたリソースをどうやりくりするかという話になってしまうのだろう。
今の時代、据え置き機でRPGを作るのが本当に厳しい時代になってしまったものだと痛感する。

それの割を食ったように、メインのストーリーも短い。
最終的にクリアまでのプレイ時間は28時間近くまでにはなったものの、クエストなどで寄り道をしなかったら半分以下のプレイ時間でエンディングを迎えたことと思う。

ゲームプレイの大半を占めるのが、今書いたクエストだ。
町にあるクエスト掲示板から、クエストを受注してクリアしていくのだが、これがなんともつまらない。
指定された敵を規定数倒す、アイテムを指定された数持ってくるといった、ストーリー性のカケラもない画一的なものばかり。
おまけにゲーム終盤にならないと、一切のワープ機能が使えない。徒歩での移動は時間がかかる。しかも、パーティスキルが報酬のクエストが多く、無視できない(クリアしないとパーティスキルが覚えられない)。

結局ダラダラと同じ場所を敵を倒しながら行ったり来たりしてクエストを攻略していく作業になる。クエスト掲示板の内容は町ごとに違い、クリア報告も受注した町ごとに行わなければならない。面倒。ひたすら面倒。

ストーリーは、なんともこれぞスターオーシャンというか、初期のトライエースを思わせるノリ。これには軽く感動を覚えた(個人的には1っぽくて懐かしかった)。
だが、面白いかどうかで言えば話は別。
どうも前作でムービーの時間が長いとか、トンデモ展開で悪い意味で話題になってしまったことを気にしたのか、地味にソツなくやろうとして、つまらなくなってしまっている。
今回もある意味、プレイヤー置いてけぼりのトンデモ展開気味なところはあるのだが、これまでのスターオーシャンシリーズと比べるとインパクトはない。
物語に牽引力がないので、先が一切気にならない。興味がわかない。そんな状態のまま、なんとなくラスボスみたいな敵と出会って、倒して終わりという中身の無い内容だった。

トライエースのRPGは元々ストーリーには期待できないとは言われているものの、ここまで面白みのなかったものは初めてじゃないだろうか?
これまでは、期待できないかもしれないが、ネタになるような部分があって、それが(開発者の意図しないものとはいえ)面白くなっていた。だが今回はそういうのもない。
ゲーム終わらせて一番印象に残っているのが、ウェルチのプライベートアクションのイベントシーンというのは、いかがなものか?(それも別撮りだったのか、他キャラとの音声の絡みが一切ない)

それから、東京ゲームショウで試遊版を出して指摘されてから入れたそうだが、×ボタンでフィールドをダッシュできる機能について。
右スティックでカメラ操作できるゲームで、しかもこのカメラ視点では×ボタン押しながらでダッシュ移動が出来るのは、操作が煩雑になっていけない。
要望としては、基本の移動速度を引き上げて欲しいという意味合いではなかったんだろうか。

町の住人との会話も、話しかけられる相手とそうじゃない相手がひと目ではわからないし、話しかけても画面上のポップアップウィンドウが切り替わるだけ。
というかそもそも、そういう情報収集をしなくてもいいように作られているので、中盤以降は操作のしづらさもあって完全に無視した。

後半は厳しいことばかり指摘してしまった。

ゲーム自体は技術レベルが高く、とても良く出来ている。グラフィックも綺麗だし、キャラのモデリングもなかなかに出来が良い。町では沢山の人が徘徊しており、近づけば吹き出しで台詞が出る。
バトルへのシームレスな移行も違和感なく入り、最大7人パーティというと構えてしまうかもしれないが、そんなに忙しくなく、ボタンを適当に押しているだけで爽快感を得られる戦闘(マニアには物足りないかもしれないが)。
ほとんど処理落ちせず60フレームでなめらかに動くことや、この仕様をマルチプラットフォームでPS3でも動作するように仕様を固めていったのは、PS4オンリーならそこまで苦労はなかった思うが、大変だったと思われる。

小気味良くレベルが上がり、クエストで沢山の目的を提示される。王道だがツボを抑えた作り。プレイ感覚は実に心地よい。

だが、シナリオのつまらなさや物足りなさ、舞台となるフィールドの狭さ、大半がクエストのお使いを強いられるゲーム内容には、肩透かしを食らってしまうのではないだろうか。
主に技術的な面でさすがトライエースと思わせる部分は十分あったのだけれども、待たされた割にはちょっとがっかりな点も多かった。そこで結論。

今の時代、リッチでゴージャスなRPGを作るのがとても大変だと痛感させられる一本。





[2016/04/06]
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