シュタインズゲート


対応機種Xbox360
発売日2009/10/15
価格6800円
発売元5pb.

(c)2009 5pb. / Nitroplus
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「カオスヘッド」のスタッフが送る科学アドベンチャー第二弾がこの「シュタインズゲート」だ。
ストーリーは独立しているが、「カオスヘッド」と世界観は同一で、節々に「カオスヘッド」との関連を匂わせる描写があり、そちらを先に遊んでいるとニヤリと出来る。

「カオスヘッド」では陰気なオタクが主役で、キャラデザインもギャルゲーを地で行く絵柄で、人を選ぶところがあったが、今回はコンシューマ機向けに開発されたこともあってか、一般向けに間口を広めようとした節がある。
例えば、イラストレーターをささきむつみから、「ブラックロックシューター」のhukeに変更している。どちらかというと写実的な画風で、この手のゲーム特有の臭みをなくそうとしている。
全体的なゲームの雰囲気も、秋葉原に集まる陽気なオタク(若者)たちといった感じで、嫌悪感を感じさせること無く、オタク文化を表現しており、オタクでもオタクでない人でも楽しい。
また、舞台が秋葉原ということで、舞台背景の細かな描写にも余念が無い。スタッフロールを見ると地元商店街や大手家電店に協力してもらってるようだ。

キャラクタの出来が良く、伏線の張り方がや構成が上手い。シナリオ展開にも無理がなく(良い意味で期待を裏切らない)、地の文も簡潔で読み易く(てにをはの使い方を間違えてるところがあったが誤字だろうか)、全体的にノベルゲーとしての完成度はかなり高い。
中でも、オリジナリティを高め、ゲームを面白くしているのが、語り部たる主人公の異彩を放つ独特な性格にあるといっても過言ではない。
終始ハイテンションで、周りを自分のペースに巻き込み悦に浸るナルシストっぷりを発揮し、物語を引っ張っていく。良くあるギャルゲーの純朴で無個性なただの語り部に過ぎないキャラクターとは全く異なる。
自分に酔っていて、我を通す時には道理に合わない屁理屈を息を吐くようにまくし立てて、自分のペースに持っていく。こういうキャラは作る方は大変だろうが、ハマれば最高に面白い。
特に、主人公とヒロイン(余談だが、自分はこのゲームに正規のヒロインが設定されてるとは思っていなかったし、そもそも相手を間違えていた)のやりとりは、ドラマ「TRICK」のそれに酷似しているのは、多くの人が感じたことだろう。

ストーリーは、2000年に実際にアメリカのインターネット掲示板に降臨したジョンタイターが実在したとしたら?をスポットに当てたタイムトラベルものだ。個人的にはこれだけでも目の付け所が良く、夢とロマンを与えていると感じたが、タイムトラベルものは、当たれば面白いが外せば上滑りを起こす扱いの難しいジャンルだ。
今作では、説明のつかない部分が若干あるものの、安易に時間旅行物にしましたという作りではなく、細かい設定や科学的説明など割と真っ向から作りこんでいて、クオリティは高い。

家庭用ゲームで開発されることもあって、開発費が多く出たのか、声優陣も一線級の有名所ばかりを起用していて贅沢なつくりだ。演出周りも一部のキャラ絵が作られてない以外は、問題がなく、良く出来ている。
音楽も種類が多く、どれもかなりいい。特にメインテーマ曲が熱い!熱すぎる!!悲しげなシーンでもピアノソロでメインテーマが流れると気持ちが燃えたぎってくるのは素晴らしい。

一方で気になった点をいくつか述べる。

プレイヤーがゲームに干渉できるのは、特定の場面で他のゲームで言えば選択肢を選ぶシーンに相当するのだが、携帯電話を出して、電話をかけたりメールを出したり返信したりする。これはフォーントリガーシステムと名付けられている。
画面上に出てくる選択肢を選ぶのではなく、プレイヤーは携帯をいじることしか出来ず、そこから選択肢を決定する試みはなかなか面白い。だが、ゲームとあまりに溶け込みすぎていて、構造がその分わかりにくくなったとも言える。つまり、どうコマンドを入力すれば、何が起こるのかが(原因と結果)わかりづらい。

また、メールの返事を書くときは送られてきたメール本文にハイパーリンクがいくつか張っており、選んだキーワードによって返事の内容が肯定的だったり否定的になったり変化する。その内容は選択してみないとわからない上に、選んでしまうと戻れない。どうせクイックセーブ出来るんだし、キャンセル出来ても良かったと思うが?

メールのやり取りは種類が豊富だが、本筋のシナリオはほとんど一本道で、選択肢が沢山あって試行錯誤してみても、展開が変わらない。ただ実績を取得するだけの取ってつけたようなやり込み要素になってしまっている。

主人公の性格が面白いと書いた。しかし、ゲーム後半のシリアスシーンになってくると、良くあるギャルゲーの無個性な主人公になってしまう。これによって前半のハリのある展開が薄れ、ただでさえハードなストーリーになって暗くなっていくのに、そこのバランスを取る人物がいない。ぜひとも主人公にはこの雰囲気を中和する役割をはたして欲しかったものだ。

大作ソフトとしてかなり力を入れて作った反動なのか、ゲームが長い。未読状態で一周目を終えるだけでも30時間は余裕で超える。

一部のエンディング分岐条件が分かりづらい。前述のように、フォーントリガーのわかりにくさが如実に現れてしまった部分だ。特に、真のエンディングを自力で見つけるのは辛いと思う。
実績項目である程度のヒントを与えてはいるのだが、それでもミスリードしてしまう可能性が高い構造になっているので、ドツボにはまってしまうとかなりの確率で自力での到達が困難になる。
一度でもエンディングを見たデータだと、フォーントリガーが発生(選択肢を選ぶ)する場面でヒントマークが出るようになるが、あまり役に立たない。一昔前のこの手のジャンルの非道さに比べれば全然良心的ではあるのだが...

自分はここでかなり時間を費やしてしまった。フォーントリガーの発生場所と条件を表に作り、10時間以上かけ潰していった結果到達できた。
だが、ゲームが面白くなければ、ここまでの情熱を傾けられないということでもある。ジャンルが異なるが、スクウェア「ファイナルファンタジー10-2」も、攻略本を見ないとまず分からないようなトゥルーエンドの発生条件について批判を浴びたが、個人的にはあのゲームのトゥルーエンドなどどうでも良かった。

シナリオ、キャラクタ、音楽、どの要素も高いレベルでまとまっていて、かつ、この手のジャンルにみられがちな独特の臭みも排除して、誰にでも楽しめるよう配慮された素晴らしいゲームと言える。一部の描写(キスシーンの一枚絵が無駄にエロいのと、一部のグロい描写)は一般向けを考えるともうちょっと抑えても良かったかもしれない。まあささいなことだ。そこで結論。

極上のビジュアルノベル。体験してない人は今すぐ遊べ!!





[2010/10/23]
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