The 3rd Birthday


対応機種プレイステーションポータブル
発売日2010/12/22
価格5800円(UMD)/4980円(PlayStation Store)
発売元スクウェアエニックス

(c)2010 SQUARE ENIX / HEXA DRIVE
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かつて映画化された「パラサイトイヴ」の名前を借りてゲーム化したシリーズ(内容は小説版などとは全く異なる)で、前作から実に11年ぶりのリリースとなった。
発表当初は携帯アプリ用に開発されていたが、制作体制が整いだすと同時に携帯ゲーム機向けへとシフトした経緯がある。

ジャンルはアクションRPGと定義しているが、ロールプレイングの要素をつけたサードパーソンシューティングに近い。
だが、基本的に敵をロックオンして攻撃していくので、照準を合わせて撃つ射撃能力は求められない。それよりも敵の攻撃を避けたり、優位な位置取りを取るなどの立ち回りを重視している。

グラフィックがPSPでは最高画質と自称するだけあってかなり綺麗。この辺りは開発者自身が強気に発言していたので、言うだけのことはある。
TPSなので勿論フルポリゴンで描かれているが、巨大なクリーチャーに加え、味方キャラも最大5人ぐらいがマップ上を動きまわり加勢してくれる。
これだけのことをやっておきながら処理落ちなども一切無く、軽々と動かして見せる。プログラムレベルはかなり高いと言える。データインストール機能を使えばロード時間も全く気にならない。

イベントシーンも全てプリレンダCGムービーで豪華に魅せていく。マップパーツの使い回しがほとんど無いことや、ムービー使いまくりなので、とんでもなく容量を食うわけで、ゲーム自体のボリュームが寂しいのは察することが出来る(このシリーズは今作に限らず元々ムービーばかりのゲームであった)。
それでも初回プレイでは10時間程度はかかる。そのかわり周回プレイが楽しめるように工夫されている。

「ファイナルファンタジー13」の主力スタッフが開発を担当しており、RPGべったりのメーカーだが、全般的に透けて見えるのが、世界的に受けの良い戦争ものの海外製FPSを参考にしながら頑張って作りましたという感じ。
インターフェイスをビジュアル化してわかりやすくしたり、戦闘機に乗って派手な空中戦を繰り広げたり、PSPの性能では限界もあるが、スペクタクルシーンを出来る限り入れて爽快感を出すなど頑張っている。

ただ真似ただけは終わらないのがこのゲームのしたたかなところで、「ウチらが面白いシューターゲームを作るとしたらこうなる」という独自の味付けを行っている。

ゲームシステムの見所となるのが、一緒に戦ってくれている味方に乗り移りながら戦っていく部分。
敵に狙われてしまったら、そいつはもう囮にして、離れたところにいる強力な武器を持った兵士にオーバーダイブ(乗り移る)しながら戦っていく。

「コールオブデューティー」のように、自分一人ではなく多数の味方が一緒に戦ってくれるゲームを見て、操作するキャラを入れ替えてオイシイ部分だけ持っていけたら絶対面白くなる!!という考えがあったのだろう。実際この発想は日本人的で面白いと言える。
初プレイでわけもわからずやられてしまっても、他のNPCにダイブしてゲームオーバーを回避できる点も魅力的だ。このシステムのおかげで、ゲームオーバーになりにくいので、ストレスになることが少ない。じっくり対処法を考える猶予がある点も優れていると言える。

難易度選択出来るが最初はイージーで遊んで欲しいとのことだが、ノーマルモードが適度に歯ごたえがあって丁度良い。発売前の雑誌レビューなどでは「ノーマルでは難易度が高い」なんて書かれていたが、あれはスタッフの言葉を鵜呑みにしてちゃんとプレイしてないだろう。

ロールプレイングの要素も組み込んでいるが、敵を倒してレベルアップ!!というのはなんか違う気がする。レベルが上がって具体的にどこが強くなったのかわかりづらいし、敵が落とすDNAを合成してキャラ強化していくボードシステムも、仕組みが分かりづらく、手間暇をかけたからって必ず強くなる保証がないので、つまらない。
拳銃を改造して強化するのは面白いが、種類が少なくすぐお金の使い道がなくなってしまうのは惜しかった。

重火器のバランスに関してだが、ハンドガン、アサルトライフル、ショットガン、スナイパーライフルなどシューターゲームではひと通りのカテゴリが揃っているが、ロックオン出来るシステム上、アサルトライフルが極端に強く、それ以外はほとんど使いものにならない。あと、ハンドグレネードが異常に強い。

ストーリーが壊滅的につまらない。この会社はせっかく見栄えのいいものは作れるのに、プロットを書く人間がこれでは台無しだ。「ファイナルファンタジー13」でも評判が良くなかった。同じ人間を起用しているようだ。
降ろせとまでは言わない。沢山のゲームのシナリオを担当した経験があるのだから。ただ、今後もライターとしてやっていくのなら、本や映画をもっと見て勉強するべきだ。シナリオライターという肩書きにしては引き出しが少なすぎる。

あと、主役のアヤ・ブレアというキャラクターの扱いが好きになれない。前作まではもっと気丈で強さを持った女性だったはず。「メトロイド Other M」でもそうだったが、最近は弱い女の子でも流行っているのか、本作では一転して気の小さい女の子になってしまっている。違和感バリバリである。
それから、コスプレをさせることが出来たり、その服がダメージを受けるたびに破れていったり、シャワーシーンのムービーといったエロ要素を全面に押し出して売りにする辺りが、低俗すぎて心底がっかり。エロい演出でゲームの出来をごまかして客を釣っている感じで逆効果になっている。
ゲーム自体は悪くない出来栄えなのに、こういった安易な路線を取り入れることでつまらなそうなゲームに見える。このシステムを入れたおかげで、ムービーシーンとの衣装の摺り合わせも出来ていない。はっきりいって不要。

最後になるが、こういうゲームはPSPよりもPS3で出したほうが良かった気が?エフェクトも寂しい仕上がりになるし、ボタン数が足りなく操作性も不自由である。UMDの容量が小さく豪快にゲームが作れない。
今作が当たればシリーズ化したいとのことだが、ゲームのコンセプトとしては間違いなく据え置き機向きである。限られた性能で綺麗に魅せる能力が高い会社としてはPSP路線もありかもしれないが。そこで結論。

力作だが物足りなさも目立つ作品。





[2010/12/24]
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