天外魔境 ZIRIA


対応機種PCエンジン(CD-ROM2)
発売日1989/06/30
価格7200円
発売元ハドソン

(c)1989 HUDSON SOFT / RED
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外国人から見た日本を舞台にした、PCエンジンCD-ROM向けに初めて制作されたオリジナルのロールプレイングゲーム。
レッドカンパニーの広井王子原作、音楽に坂本龍一を迎え、キラータイトルとして世に送り出された。

CD-ROMにより、従来のカートリッジのものより、大容量の環境で作られるため、台詞を声優に喋らせて音声で聞かせたり、
セル画を取り込んだ派手なビジュアルシーンなど、これまででは考えられない常識破りのゲームとして広く有名になった。

ほかにもCD-ROMの利点で言えば、メッセージに漢字を入れられるようになり、内蔵されているフォントで、大きく見やすく表示出来る。
一部シーンで、トラック再生のBGMが流れる。但し、まだポテンシャルを引き出すには開発側が追いついていないためか、オープニング、ゲーム中盤のイベントシーン、エンディング以外では使われていない。
また、音楽制作に坂本龍一とクレジットされているが、実際はこのトラック再生の3曲だけであり、ゲーム中に流れる音楽は違う人間の手によるものである。

これはPCエンジンの元の性能に寄るところが大きいが、でかいボスキャラクタに複数のアニメパターンを付け、迫力ある動きで魅せれる点などなど。

その代わり、CD-ROMへの読み込み時間がその都度発生することになる。マップチェンジや戦闘の切り替わりなど。
カセット媒体と比べ、画面の切り替わりが遅くはあるが気になるほどではない。

CD-ROMハードの立ち上がり期と同時に作られた作品ということもあってか、全体的にはまだまだ既存のロールプレイングの枠組みを大きくはずれるほどのものは作れていない。
内蔵音源のサウンドの稚拙さや、マップチップのバリエーションもそれほどなく、ドット自体も、ハドソン「桃太郎伝説」のような古いタッチで描かれている。

しかし、2ボタンでダッシュが出来るなど、インターフェイスはきわめて優秀で(1989にしては)、預かり所で預けれる数を超えて預けてしまった場合その道具が消滅することを除けば、気になるところはない。

システムは、エニックス「ドラゴンクエスト2」を参考にしたような、3人パーティ制のオーソドックスなものだが、
魔法はレベルアップで覚えるのではなく、各地に封印されている神獣から巻物を受け取るといった、独自性のある要素にもチャレンジしている。

戦闘シーンは対面式で、背景はセル画を取り込み、敵キャラも全体的に大きく描かれ、大容量なのも手伝って、色変えもほとんど使われていない。
魔法や特殊攻撃ではきちんとアニメーションするなど、非常に頑張っており、素晴らしい。

このように見た目はドラゴンクエストだが、パラメータでこれほど「素早さ」を重視している作品は珍しく、素早ければ敵の攻撃は食らわないし、
逆に攻撃力だけ高くても、素早さが低いとこっちの攻撃も当たらないという、風変わりな味付けも面白い。
ただ、後半になると、素早さを倍にする魔法が登場する辺りから、難易度が目に見えて下がってしまうほど、重点に置いているのは、行きすぎだと感じたが。

バランス取りや全体的な面ではまだまだ雑なところは気になるが、個性的な敵キャラクターや脇役の多さ、面白さなどは当時としてはかなり飛び抜けていたと思う。
見た目に劣らず、基本的に出来はいい。
実験的なゲームソフトでありながら、ゲームとしても遊べる品質に出来たのは、早い段階からやれることやれないことをバッサリ切り分けられたからだろう(説明書を見るとかなり迷走していたようだが、その苦労も含めると相当な物だ)。そこで結論。

PCエンジンCD-ROM2の方向性を示したエポックメイキング的作品。触っておいて損はない。





[2008/08/06]
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