天外魔境ZERO


対応機種スーパーファミコン
発売日1995/12/22
価格9980円
発売元ハドソン

(c)1989 1995 HUDSON SOFT / RED
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PCエンジンの代表的RPG「天外魔境」スーパーファミコン版。
完全新作だが、外伝的作品なので「火の一族」など天外魔境ならではのコンセプトを借りてきた程度で、世界観は本編作品とは繋がりがなく全くの別物である。

大作RPGということで、様々な部分に力が入っていて、見所がたくさんあるゲームなのだが、
まず目につくのが、スーパーファミコンのゲームにしては、驚異的なマップパターンの豊富さである。

SFCのロールプレイングではスクウェアもグラフィックに関しては高水準で頑張っていたが、それを遥かに凌ぐぐらいのバリエーションだ。
町、ダンジョン問わず、パーツの使い回しがほぼ皆無といっていい。
ハドソンはPCエンジンのCD-ROMで容量を気にしなくていい環境で開発してきたからか、このゲームのように他社ではまず考えないような人海戦術の力業を平気でやる。
それにしても、ROMカセットにどうやってこれだけの容量を詰め込んでいるのか気になってくるところだ。
ただ、欠点としては、マップごとに歩ける場所歩けない場所の決まりごとが定まってないため統一感がないことと、タイル方式を採用しているので障害物に引っかかりやすくストレスが溜まってしまう点だ。

戦闘画面は、手前に味方、奥に背景と敵モンスターを表示する形式の、同社「大貝獣物語」のビジュアルバトルを改良してそのまま使っているっぽい(処理の仕方がかなり似てる)。
戦闘時の演出は全て視覚的に表現されており、なおかつ、処理が早いので非常にテンポが良い。ただ、補助魔法だけは全体にかけても1体ずつの演出なので、その場合のみ極端にテンポをそがれてしまうのが残念。
大貝獣のときは弱いと思ったのか、味方キャラのアニメパターンがかなり豊富になっていて、存在感が出ているのもポイント。

PLGS(パーソナルライブゲームシステム)を新機軸としてかなり全面に出して売り出していた。
これは、ROMカセットに時計機能を付けて、ゲーム上でも現実と同じ時間が流れることを利用したシステムの名称である。

画期的なものではあるのだが、ストーリー重視型RPGに、このシステムの面白さを絡めることが難しく、手間かけて苦労してる割に、報われてない感じだ。
例えば、月毎にお祭りイベントが作られてたり、定期船が実際の時間と連動して行き先が変わるとか、訪れてから1時間後にオープンする商店、ペットの飼育、出会いの茶屋で女の子と遊ぶ等、
時計機能を活用したサブイベントがかなり力を入れていっぱい作られているのだが、どれも目を引くほどのものじゃなく、「これは...」と思うほどのものがない。
一番面白いのが、メニュー画面から見れる「こよみ」で「今日は何の日?」の項目だったのが悲しい。

SFCのRPGとしてみたら、結構頑張っているし天外魔境らしい派手なイベントも多い。一国一マップ(ステージ)という作り方も、天外魔境を知らない人にとっては目新しくて面白いだろう。
しかし、PCエンジンの天外魔境を知っていると、このくらいの完成度では満足できないのが正直なところだ。

当たり前だけど、イベントシーンで声優のボイスで喋ったりしないし、PCエンジンのように頻繁にビジュアルシーンを挿入して豪快に見せていくという手法も取れない(スプライト処理でそれなりに見所のあるシーンは入ってはいるが)。
結局、「天外魔境」としてみると、台詞をしゃべっている人間の顔グラすら表示されない、ひたすら地味さが目立つゲームとなってしまっている。勿論これはSFCで出すことを選んでしまったことのデメリットである。
「天外魔境」というRPGが、いかにCD-ROMの恩恵を受けたゲームであったかというのが、露呈される結果となってしまった。

シナリオは、おちゃらけ路線が強くて、緊迫感やシリアスさが足りない。SFCということもあってガキ向けを意識しすぎたのがかえって悪い方向に作用した気がしてならない。
作風も、全体的に間の抜けたセンスの悪さが目立っていて、魅力的でないのも苦しい。

ゲームバランスもイマイチだ。
全体的にヌルくて、いやらしい敵が出てくるのがゲーム終盤。エンカウント率も高めで、自然と淡々とした作業的なものになってしまう。
パーティメンバーを好きなキャラと入れ替えて遊ぶRPGが当たり前になってきた時代に、実質メンバー3人固定というのも、あまりに物足りないというか、寂しすぎる気がする。

アイテムの「しおり」の機能や、装備品の飾り(アクセサリ)4つ装備させるシステムとか、微妙にRPGとして洗練されてない部分があって、他社製RPGと比べるとどことなく一歩遅れてるところがあって惜しい。
あと、容量の都合だろうが、ストーリーがボリューム不足で、一個一個のシナリオが短すぎてあっけなかったのも残念。あっさりしすぎてて物語に厚みがないのだ。

ゲームの品質としては、大作RPGということもあって、レベルの高いところに収まっていて、色々目新しいこともやっているのに、やり終えてみると、満足感とか歯ごたえ、やりごたえといった最もゲームとして大事な部分が物足りなくて、イマイチな感想を持ってしまう。
サクサク進めて、親切丁寧でユーザーフレンドリーなバランスのRPGが、必ずしも良くできたRPGかというと、そうじゃないと思う(この当たり前にできてなきゃいけない部分すら出来ていないゲームが多いのは確かだが)。そこら辺をハドソンはチト勘違いしている気がする。
後、全滅したらゲームオーバーになるところとか、FFの影響受けすぎ。

ハドソンはPCエンジンではハードを引っ張るほどのものを作っていたのに、スーパーファミコンではどうにも力量を発揮できていない印象がある。
もう「新桃太郎伝説」みたいなうならせるRPGは作れないのかと勘ぐってしまう。そこで結論。

万人受けを狙いすぎて失敗している凡作。





[2012/06/10]
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