天外魔境3 NAMIDA


対応機種プレイステーション2
発売日2005/04/14
価格7800円
発売元ハドソン

(c)2005 HUDSON SOFT / RED
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PCエンジンの化け物RPGとして未だに根強いファンを持つ天外魔境シリーズの3作目。
1994年6月東京おもちゃショーでのデモ出展以来、すっかり情報が途絶えていたなか、11年の歳月を経て遂に発売が実現した。

PC-FXからPS2にプラットフォームが変わったり、当時制作されていた内容を大幅に変更せざるをえなかったりと
時代の流れには逆らえず、昔のままの作品ではなく、まったくの別物となっている。

しかし、天外シリーズのあの豪華さは本作でも健在で、豪華声優陣に加え、主題歌をサラ・ブライトマン、
音楽制作を加藤和彦という、どれくらい凄いのか分からないところもあるが、スケールの大きさは相変わらずである。

ゲームボリュームも相当なもので、本筋を追うだけでもクリアまで72時間もかかってしまった。
ゲームのテンポが悪いとか、自分が効率的なプレイをしてなかったという別の理由もあるが、
体感的にも、イベント、マップ、バトルそれぞれ分量としてはかなりの巨大さを感じた。
これだけエンディングまで長いと、途中で飽きられてしまう可能性がある。実際、購入者の何割がクリア画面まで行き着いたか思わず気になってしまうほどだ。
ゲームは決して安い買い物ではないので、ある程度のボリュームは求められるが、長すぎてもその分途中で飽きられるというリスクを背負うだけであり、作りすぎもあまり褒められることではない。
そして、このゲームではプレイ時間に見合った内容が詰まっているかというと、ダラダラ長いだけで否定せざるを得ない。

このシリーズは、勢いのあるストーリーを力業でグイグイ見せていくのがウリであったが、3は寧ろゲームシステムを楽しむ作品である。
勿論、本作も力を入れて物語を作ったのだろうが、良く言えば王道、悪く言えば薄味な内容なのである。
恐らく、両方を満面無く作り込んだのだろうが、結果的にサブイベントやキャラクター成長が楽しいゲームになってしまった。
逆を言えば、天外のあのシナリオを期待して買うと辛いということに繋がってくる。
町の住人なんかは他のRPGに比べて面白いことを喋るので、もうちょっと何とかならなかったものか?

でも、イベントであまりベラベラと一人語りに入らず、プレイヤー主導のシナリオ構成は潔く、この辺りはもっと評価して良い。

とにかくゲームが長いので、戦闘の繰り返しを飽きさせないよう工夫が施されている。
通常攻撃に組み込める技や、術をそれぞれ規定された回数使い込むとそれを習得することが出来て、
覚えた技は他キャラに伝授出来たり、さらに新しい技を覚えたり、ゲージ満タンの時にそれを消費して使える強力な奥義を覚えたりもする。
ただ、同じキャラをちょっと使っていると、すぐに自力で覚えられるものを全部覚えてしまい、いまいち物足りない。
あと、他のキャラに技を伝授するときに消費するアイテムが非売品なので、やり込もうとすると足りなくなってしまうのも何とかして欲しい。
ゲーム終盤であれば、購入出来るようにしても良かったように思う。
術も巻物を装備して使い込むことで覚え、習得すると巻物を外しても使えるようになり、効果アップや消費MPが下がるなどの恩恵があるが、技に比べ地味な印象が拭えない。
まず、術を覚えることでさらに新しいものを覚えるということがないので、覚えさせる楽しみが薄い。
また、使う巻物はごく一部に限られており、通常攻撃のコンボにも組み込めないのでつまらない。
それ相応の威力や効果はあるのだが、それはMPを消費しているのだから当然であって、もっと使い勝手を良くすべきであった。

大多数の敵を一度になぎ倒す爽快感をテーマに作られた戦闘は、一度に沢山の敵と戦わされる。
そのため、一匹一匹は基本的に弱くすぐ倒せるのだが、それではゲームにならないので、それなりにしぶとい強敵も出てくるようになっていて、
敵パーティによっては、戦闘が長引くことも珍しくなく、かつ、場所によって高めの遭遇率は何とかして欲しかった。
ただ、沢山の敵を一振りで倒すのはそれなりに気持ちいい。
しかし、前述の育成システムを楽しむには効率的な戦いを捨てなくてはならないジレンマ。なんとも悩ましいところである。

戦闘システムやバランス調整に穴が多いのも終始気になるところだ。
戦闘のルール付けが古くさく(状態異常の効果や行動順の決まり方など)、浅い。バランスの大味さと相まって出来の悪い印象を与えている。
ボス戦では大概、強力な攻撃をしのげるかどうかにかかっており、無駄に多いHPによって要求される単調な長期戦は苦痛でしかない。
育成システムを楽しむように作られているようなので、基本的に緩いバランスなのだが、そういうボス戦で唐突に引っ掛かるとその理不尽さにストレスを溜めさせられた。

本作は当初、プレイステーション2とゲームキューブで発売される予定だったが、諸事情によりGC版は開発中止となってしまった。
そういう経緯からか、GCの性能に合わせて制作されていたっぽく、読み込みなどのレスポンス関係が破滅的に悪い。
マップ&戦闘切り替えなどのたびに頻繁に発生する上に長めのロード時間。右下に「読み込み中」の表示はかえって長い印象を与えるだけであった。
町では民家一つ出入りするだけでも一々マップを読みに行くので探索が非常に億劫になってしまう。
せっかくサブイベントの仕込みを沢山入れているのにこれではやる気になれない。もっと、読み込み回数を減らす工夫ぐらいして欲しい。

このテンポの悪さを分かっているのか、マップの構造が大抵一本道で広がりが無い狭さなのは手抜き臭いが、逆に釣り合いが取れたのではないかと思う。

戦闘システム以外にも、楽座という住人お助けイベントや、謎のアイテムを鑑定してもらったり、材料を合成して飾り(アクセサリ)を作るなど今風のものが取り入れられている。
ただちょっとこれは欲張りすぎに思う。特にアイテムの鑑定は、ただ鑑定屋に持っていくだけで必然性を感じないし、楽座は情報(クエスト)が膨大な割にメニューでは閲覧出来ず、その場所に行かなくては見られない。
合成はレシピ情報が実際に作るまで記録されなかったりと、サブ要素を楽しむにはメモ必須なところの煩わしさはどうにかして欲しかった。これでは楽しむどころでない。

アイテムはちょっと種類が多すぎて、馴染めない。消費アイテム、装備品、各地の特産品、材料、とチト多すぎる。
特産品は各地の特色を生かすものとして面白いが、やはりここでも材料はかさばる余計モンである。
さらに、鑑定屋に鑑定してもらわなければならない?アイテムまである始末。手に入れるものがどれも見たことがないものばかりというのもやりすぎに思う。
結局、ゲーム終了まで回復アイテムすらろくに覚えられずに終えてしまった。

音楽は加藤和彦によるフルオーケストラ仕様という豪華さである。最近は他のゲームでも流行りなのかオーケストラな音楽を取り入れることが多いが、
やはり大御所がやるとひと味もふた味も違う。オケ特有の壮大さや優美さが凄く上手く引き出されていて、とても聴き応えがある。
しかし、この人ゲーム音楽は初めてというだけあって、分かってない箇所も残っており、惜しいところである。
とはいえ、まるで実際の舞台を見ているような雰囲気を音楽だけでここまで引き出しているというのは凄いことだ。

声優はなかなかの豪華さなのだが、プレイ時間に対してイベント挿入が少なかったせいか、いまいち凄さが伝わってこないのが残念。
容量の関係で切ったのか喋らないシーンも多く、せっかくこれだけの人たちを集めたのに惜しいものがある。
それから、主人公のナミダは戦闘でのかけ声以外は殆ど喋らないが、せっかく声優を当ててるのだから、1や2のように重要イベントでの台詞をもっと用意してやるべきだった。
あと、豪華なのは豪華だが、キャスティングが少々年寄り臭い気がする。

グラフィックは、独特の綺麗さを醸し出している。
テクスチャ一つ一つの描き込みやモデリングの緻密さを追求したものとは違い、アニメーションを立体に起こしたような、技術の最先端を目指したものでないが、なかなかの綺麗さである。
ムービー時のモデリングとの差(といってもOP、ED以外は流用しているのだが…)も気にならないほどであり、飾らない綺麗さは好感を持った。

あまり、こういうことに文句を付けない人間なのだが、重要なパーティキャラが終盤で外れてそのまま戻ってこないのはどうにかして欲しかった。
下手に成長システムなどで思い入れを付けさせてるので、外れるのが終盤でしかも戻ってこないというのは精神的にかなり辛い。
最終的に仲間になるパーティ人数は結構な数になるが、外れるキャラのパラメータはそこそこ高く使える人材なだけに、それ以外にも立場的に一軍として活用していた人は多いだろう。
今時のゲームで、この辺りのフォローがないのは如何な物か?

あらゆる面で制作者の意気込みを感じるゲームではあるが、決め手となるものがなく、特別これといった面白さを感じられない惜しい作品である。
加えて、長いロード処理、レスポンスの悪さが足を引っ張ってしまっており、非常に残念。

全ての面に於いて時代遅れなゲーム。





[2005/08/02]
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