テイルズオブジアビス


対応機種プレイステーション2
発売日2005/12/15
価格6800円
発売元ナムコ

(c)2005 NAMCO / NAMCO TALES STUDIO / 藤島康介
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SFCで始まったテイルズオブシリーズも、もう10年の歴史を持つ長寿シリーズとなった。
それを記念して送る、藤島テイルズ&GCテイルズオブシンフォニアの制作チームが送る本命中の本命。果たして出来映えは!?

シンフォニアのスタッフが作ってると言うことで、あの作品をベースにして作られているのだが、
もともとゲームキューブ用でやっていたシステムをPS2でやっているのでどうにも無理矢理感が強い。
ポリゴンマップやシンボルエンカウントなど、シンフォニアから取り立てて新しい要素は無いが、スペック上やはりかなり強引に処理をこなしてるらしく、
快適性については、劣悪と言わざるを得ない。マップ切り替えのディスクアクセスの長さはあの天外魔境3に匹敵する酷さ。
それでも、戦闘の切り替わりはスムースに移行させたり、60フレームで滑らかに動かしてたりとなかなか頑張っている。

ただ、これらの事情を分かっているのか、敵シンボルの数が少なく配置されてたり、戦闘バランスをゆるめにしてテンポを優先させると言った配慮がゲーム性を希薄なものにしている。
たいした戦闘をしなくてもクリア出来てしまうので緊張感もなく、どうにも退屈。

アディショナルスキルやキャパシティコアといったカスタマイズ要素を例に漏れず用意しているのだが、意外に自由度は低く、ただあるだけといった感じ。無いよりマシと言った程度。
この辺り、もうちょっと詰めて作って欲しかったように思う。

キャラクターの等身を上げることで、イベントシーンのクオリティは一段上がった感じで、表情の変化や派手な動きのカット割り、モーションなど、結構見応えがある。
DQ8ほどとまではいかないが、藤島絵を再現しようと言う努力も評価出来る。
ここまでリアルタイムで出来るようになったのだから、希に挿入されるムービーシーンが逆に浮いてしまっていて、なんとか全部のシーンをムービーを使わずにやって欲しかったと思う。

マップは立体感を出そうと、構造やカメラワークがだいぶん凝っているが、それがかえって探索の障害となっている。
オブジェも懲りすぎてしまって、調べられるものがわかりにくく、積極的に探す気になれない。
宝箱も目立たない色合いにしてしまっていて、見落としそうになることも結構あった。

それにしても毎度毎度、よくもまあ長大なストーリーを作ってくるものだ。
最近、このシリーズは粗製濫造気味で、スケジュール的にかなり厳しいはずと思うのだが、年々プレイ時間はのびるばかりである。
ただ、上手い具合に手を抜くことも覚えたらしく、本作も中盤までに大体の町とダンジョンを巡ってしまうので、後半はそれらを行ったり来たりするだけの展開になりがちで、はっきりいって退屈。
ゲームの大半は、おそらくイベントを見てるだけだったのではないだろうか。とにかく強制イベントの挿入が頻繁で、プレイ時間に対するイベント視聴の割合が高まっている。
まあ、ストーリーやキャラクタといった部分の出来はなかなか良いと思うが、しかしRPGをしている感覚に乏しいのはどうにも問題な気がするのだが。

ストーリーについては、独自の固有名詞がやたら多く、話が見えづらい。
色々凝っているが結局は、ありきたりのライトファンタジーの設定を置き換えただけであって、イマイチ必然性を感じない。
魔法使いを譜術士(フォニマー)と言っていたり、それ以外にも固有名詞が怒濤の勢いで使われるので、何がなにやら分からない。
せめて、メニューでそれらの言葉の意味を調べられる機能や、図書館といったものは欲しかったところである。
最初、こういった設定を知った時に、魔法使いは唱える時に歌を歌ったり楽器を弾いたりするのかと思ったのだが、
歌を歌うのはティアだけで、それ以外は普通に魔法を唱えてる。意味ねー!!
パーティキャラは、相変わらず魅力的だが、ヒロインのティアだけ主張が弱いのはマズイ。完全に他のキャラたちに食われてる。

テイルズオブデスティニー2やテイルズオブシンフォニアを作っていた頃は、まだゲームとしての作り込みにも精力的だったはずだ。
それがここ最近のこのシリーズは、どーもシナリオやキャラクタにウエイトを置きすぎていて、本来のRPGとしての意味合いをはき違え出してる感じがする。
この手法は、恐らくそろそろ通用しなくなってくる気がするのだが。それにしたってシリーズ全部をプレイしている自分としては今作で既に飽き気味になっているのだから。

PS2で容量を気にしなくて良いせいか、やたら饒舌な台詞(しかもフルボイス)や、スキットチャットの頻度の多さなど、ただ声優に喋らせるのを良しとするような風潮は良くない。
GC「テイルズオブシンフォニア」程度の発生頻度が理想的だった。
あと、むやみやたらと漢字で台詞を記述しているのも気になる。

発売日を10周年記念日に合わせるためか、未完成のままの箇所が随分と目立つ。
例えば、キャパシティコアは、それを売ってる店があるのに、そこで購入は出来ず入手リストの閲覧に留まっていたり、
意味ありげな割に何も無い部屋や、扉の絵が描いてあるのに入れないところが多くあったりと、そういう出来上がってない部分がやたらあって、どーも気になる。
プレイに支障はないが、表示がおかしくなるバグが残ったままだったり、イベントシーンの演出で面倒そうなところはバッサリ端折られてたり…。

あと、シリーズお馴染みのモンスター図鑑も恐らく用意していたのだろうが、発売まで間に合わなかったと見え、製品版には入っていない。
他にも、ダンジョンのギミックが少なく、ミュウのアクションも蓋を開けてみれば最大3つ(普通にクリアする分には2つ)までという少なさ。
おまけにそれを駆使するところは全然無い。これは如何な物か?

インターフェースについても、アイテムで、凄く便利だった新規入手アイテムを確認出来るカテゴリがあったのが無くなっていたり、
戦闘シーンで、HPやTPの表示を過去作よりも何故か小さくしてしまってたり、疑問符を浮かべてしまう箇所が多くある。

戦闘は、自由に3Dフィールドを動き回れるようになり、シンフォニアでの不自然さが無くなり、遊びやすくなっている。
ただ、ボスキャラクターがのけぞらないというのが余程不満点としてあったらしく、今回はある程度攻撃を集中して当てるとのけぞるようになっている。
これによって大幅に難易度は下がった。もう少し厳しくても良かったのではないか?複数で袋だたきにすればほとんど攻撃を食らわないのだから。

どうもサブイベントもかなり用意されているようだが、自発的に探さないと気付くことすら出来ずに終わってしまうというのは問題。
問題というよりは、せっかく作ったのに気付かれにくいというのは報われないだろうに。

RPGとしてではなく、ADVやアニメ、コミックといった類なら、素直に楽しんでいたと思うので、それほどひどいものではないが、
シンフォニアの評判の良さにあぐらをかかず、もっとゲーム部分を作り込んでいって欲しい。この内容ではRPGとはとてもじゃないが言い難い。
苦労せずに物語をバシバシ見たい人にとっては、これもアリなのかもしれないが。まず、RPGとして売っていることを制作者は忘れないで欲しい。

じっくり作れば絶対に面白くなるはずなのに…。





[2005/12/31]
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