テイルズオブベルセリア


対応機種プレイステーション4
発売日2016/08/18
価格8200円
発売元バンダイナムコエンターテインメント

(c)2016 BANDAI NAMCO Entertainment / いのまたむつみ / 藤島康介
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シリーズとしては珍しい女性主人公、簡単操作で痛快な気分を味わえるアクションバトルシステム。長寿シリーズながら、前衛的な挑戦が目立つ作品。それが「テイルズオブベルセリア」だ。
前作「テイルズオブゼスティリア」の世界観を継承したものとなっているが、遊んでいなくても全く問題ない内容となっている。
(個人的にも、前作はプレイ済みではあったが、内容は殆ど忘れているなかでプレイしていった。関連性はほとんどなく、わからなくても十分楽しめる独立したストーリーとなっている)

内容的には「テイルズオブゼスティリア」のゲームエンジンをベースに、ゲームシステムにさらなる改良を施したといった位置にあると言って良い。
ただ前作と異なり、PS3とPS4のマルチプラットフォームとなっており、当然ながらPS4で遊ぶと、高画質になり良い環境でプレイできる。

ゲームシステムは「テイルズオブ」シリーズの基本を抑えたものとなっているものの、細部は遊びやすく調整が施されており、その細やかな配慮が素晴らしい。

まず、バトルシステム。
前作で導入されたフィールドがそのままバトルフィールドとなるシームレス仕様も引き継がれているが、これのせいで前作では気になったカメラワークの不便さは今作ではあまりに気にならなくなった。

また、特技や奥義を出す際の、コマンド操作の割当が、○、×、□、△ボタンになり、ワンボタンで簡単に様々な特技を出せるように簡略化されている。
(これまでは、方向キーとボタンの組み合わせだった)
それだけではなく、それぞれのボタンに4つ、特技、奥義を制限なく好きなように登録できる。
1つのボタンに、4コンボ目までのアクションを登録できて、戦闘時には、○→○→×→×、×→□→□→△といったように、状況に応じて登録した16個の技を簡単操作でコンボを使い分けることが出来る。
これまでは基本的に、通常攻撃から特技・奥義へと連携をつなげていく形だったが、これによって初段を奥義から入って、特技でつなげるといった型にはまらない柔軟なコンボを組み立てることが出来る。
(1セットでも十分すぎるほど自由度が高いかもしれないが、個人的には用途別に4セットぐらい術技の設定を記憶できるとありがたかった)

それから、SG(ソウルゲージ)という行動力ポイントのルールもなかなか面白い。
特技や奥義を出す際に、このSGを消費して出すことが出来るのだが、このシステムの仕組み自体は前作とあまり変わらない。

ただ、今作で大きく変わっているのは、SGを敵から奪ったり奪われたり、という遊びが追加されている点だ。
敵を倒したり状態異常にする、などの行為を行うことで、SGの最大値が増加する。ソウルゲージは塊で表示されており、通常時は3で、最大5つまで持つことが出来る。
逆に、敵からこのような攻撃を受けることで、自分のSGを敵に奪われてしまうといったことも起こる。

SGを一つ消費して出せる「ブレイクソウル」という、いわゆるオーバーリミッツ化出来るアクションもあり、SGを溜めてブレイクソウルという循環を上手く回すことがこのゲームの肝となっている。
(これ以外に、もちろんシリーズおなじみの秘奥義のシステムもある)

反対に、上手く立ち回れないと敵にSGを奪われ続けて、SGが1の最低状態のまま、何も出来ないという停滞した状態に陥ることもある。
この場合は、控えのパーティメンバーと入れ替わるスイッチブラストというアクションを使うことで、停滞した状態を乗りきれるようになっている。

ゲームが上達すれば、敵からSGをどんどん奪って、どんどんブレイクソウルを出すという、メリハリの付いたド派手なバトル展開を堪能できる実に面白いものとなっていて、この辺のルール付けはかなり感心してしまった。

どの辺が新しいのかというと、やはり行動力ゲージを、敵から奪って行く(あるいは奪われる)という部分だろう。
これまで、いわゆる2Dテイルズと呼ばれている作品で、「テイルズオブデスティニー2」「テイルズオブリバース」「テイルズオブハーツ」などでは、行動力ゲージのコンディションを自分で調節するという遊びが主流だった。
自分で攻撃頻度を調節してゲージを管理するのではなく、敵相手に行動して、その結果でコンディションが変化するというのは、少なくともテイルズシリーズとしては初ではないかと思う。
この発想は、なかなか新しく、そして、ブレイクソウルや秘奥義といったデコレーションによって、さらにおもしろく昇華されていると言えないだろうか。

テイルズオブシリーズは、もう20年を超える長寿シリーズで、その間に沢山の作品が発売されたことで、一つのゲームシリーズとしては色々なシステムをやり尽くしてしまい、マンネリ化の極みとなっていた。
毎回、新しいことをやろうとするのであるが、なかなか抜本的な面白さというものは生み出すことは出来なかった。
断っておくと「テイルズオブ」シリーズのバトルシステムは、特別新しいことをしなくても土台がしっかり出来上がっていて、それだけでもクオリティが高く面白いものではある。
だが、そんな状態でも何本も新作を出し続けていると、やはり飽きが来るというものだろう。プレイヤーは贅沢なのである。

ゲームバランスも適度で、複雑さはあるものの、難易度ノーマルであれば、それほど高いプレイスキルを求められることはない。システムをしっかり理解して動いていれば余裕でクリアできるくらいの難易度に収まっているのも良い。
敵の弱点属性や特性さえちゃんと把握しておけば、即死級の攻撃というものはほとんどないので、一見さんお断りな作りではないのも個人的にはポイントが高い。
個人的にはこの辺のバランスの付け方がかなり気を使っている感じがして、非常に高く評価できる部分だ。

次にストーリー、イベント周りについて。

気合の裏返しだとは思うのだが、RPGとしては全体的に長広舌で、非常にテンポが悪い。
内容自体は決して悪くないし、テイルズシリーズらしく、豪華声優陣によるフルボイスによるやりすぎなぐらい丹念な心理描写が素晴らしい。
だけども、もうちょっと台詞をまとめられなかっただろうか。

今作ではちょっとしたサブイベントも含め、すべてボイスがあてがわれている。
そんなところまで!?と言いたくなるほどの本当にちょっとしたシーンにまで声が付けられている。

リアルタイムポリゴンのカットシーンを入れるほどのものではない部分も、シリーズ恒例のスキットチャットシステムで、表情豊かな立ち絵と演出で、盛り上げてくれる。
2Dの立ち絵+ボイスという貧弱さを感じさせないほど、スキットチャットの演出は凝っていて、ここ手を抜いたな...と感じさせないクオリティで見せてくれる。

イベントシーンの見せ方、種類としては、3Dフィールドでポリゴンキャラとカメラワークで見せていくカットシーン、今述べた2Dセル画とボイスのスキットチャット形式。
もう一つが、これもシリーズ恒例となっているのだが、見せ場のシーンでは、セルアニメのムービーが挿入される。

これも毎度毎度言っているのだが、ここまでリアルタイムポリゴンの質が高くなって、表現力があがっているのだから、わざわざセルアニメのムービーを入れる必要はないだろう。
...とは長年指摘し続けてきたのだが、年々3Dポリゴンのトゥーンシェード技術も、2Dのセルアニメと大差ないほど距離が縮まってきており、無理に統一させるべきという持論も違うように思えてきた。

ただでさえ、スキットチャットのイベント数も膨大で、セルアニメのキャラクターを眺めている時間も長い。となると、見せ場のセルアニメムービーもそれほど違和感を感じさせない。

サブイベントや、やり込み要素も、かつてのこのシリーズでは、過剰すぎるほど色んな物を放り込んできたが、今作では一個一個が洗練されていて、出来が良い。
ストーリーを進めてしまうと消滅してしまうものは基本なく、マップを開くとどこでイベントが起こるかも一緒に表示されるので、見てみようという気持ちになる。
その他だと、強敵モンスターの討伐と、豊富なミニゲーム。放置系の異界探索、ねこにん探し等。
過去作品のバリエーションとボリュームを比べると、一段落ちてしまっているように思えるかもしれないが、どれもコンセプトが明確なので、嫌らしさがない。遊ぼうという気持ちにさせてくれる。

ボリュームがシリーズの中では落ちているように感じるかもしれないとはいえ、クリアまでかかった時間だけでも55時間で、それからやり残しや恒例の2周目以降などを考えると、
一本のゲームソフトとして考えれば、十分すぎるぐらいのボリュームと作りこみと言えるが。
(というか、ここまで普通に1周クリアするだけで長かったのは、シリーズの中でも「テイルズオブレジェンディア」ぐらいだったと思う。寧ろボリューム過多と言えるかもしれない)

マップのグラフィックについて。
やはり、戦闘のシームレス化が足を引っ張っているのか、マップ構造は今作においてもワンパターンで単調なところがある。何もない一本道の空間をただ走らされてるだけだったり、グラフィックの水準もHDマシンのゲームとしてみると、やや厳しい部類。
単純構造にしているのは、ダンジョンのギミックも含めて、敢えてこのラインに狙って作ったという気もするが、RPGとしては物足りなさは否めない。

特に洞窟などダンジョンでは、通路と部屋を組み合わせたコピペマップが顕著で、退屈な構造なのは正直否定出来ない。
ただ、野外マップは、広さやマップのバリエーションが見直され、劇的にクオリティが向上している。
また、昔のRPGのように、世界全土を舞台としているような雰囲気をきちんと出すような努力もあり、広大な世界を冒険している感覚を味わえるのも細かいことだが良い。

それから、前作で極端に不便にされてしまったワープ機能が、ダンジョンを脱出するアイテム、町へ瞬時に移動するアイテムなど、消費型アイテムが追加されたことで、不便さが解消されている。
その他にもダンジョン内ワープ装置も追加され、無駄な移動で時間を使わされるなどということはかなり減っただろう。

前作と比べると、無駄に複雑だった部分がシンプルになり、簡略化され、合理的なゲームシステムとなって俄然遊びやすくなっている。
がしかし、それでもまだ、複雑かつ過剰過ぎるゲームシステムが残っており、そのへんの煩雑さが気になってしまったところだ。

まずバトルシステムのルールの複雑さについて。
これは、既にある程度語っているので割愛するが、仕方のないことだと思う。
説明やアプローチの仕方をもっと単純化すれば、グッととっつき良くなるぐらいのものではないだろうか。
独特なバトルシステムの面白さを維持するには、これぐらいの複雑さ、煩雑さを残さざるを得なかった結果だろう。
少なくとも、操作性についてはだいぶ単純化されて、押すボタンの組み合わせでコンボが多彩に分岐できる今作の操作形態はそれだけでかなり評価できる点だ。

一方、見なおして欲しいと感じたのは、装備品の強化・分解システムだ。
これは前作「ゼスティリア」にもあったシステムなのだが、前作と比べると、かなり簡素化されてはいる。
装備品を強化する際には、特定の素材が必要なのだが、フィールドに落ちているのを拾ったり、不要な装備品を分解することでそれが手に入る。
そうやって、装備品を強化していくのだが、強化することで数値強化以外に特別な効果を持ったスキルが装備品に付く。
また、装備品には予めマスタースキルというものが1つあり、これは装備品を使い込むことでそのスキルを習得することが出来る(FF9や「テイルズオブヴェスペリア」で同様のシステムが採用されている)

このように、ここで説明しているぶんには、構造自体は至ってシンプルなのではあるが、装備画面のごちゃごちゃした表示や、スキルの有用性がパッと見ても判断しにくいようなラインナップになっており、
直感的に優先順位を付けて、装備品の価値を判断できないマニアックな作りになっている。

この、価値が曖昧というのが非常に問題なのだ。

装備品をビルドしていく上で、何をどうすればどうなるのかっていう明快さがないと、やっていても面白くないし、よくわからないけど素材を消費してとりあえず強化しているという面白みのない作業と化す。

この辺は、ここに至るまでかなりシステムを弄くったとは思うのだが、まだ装備強化の要素を導入するほどの面白さが表現できてないように思う。単純にしすぎればまたつまらないし実に難しい題材だ。

据え置きHDマシンのテイルズといえば「テイルズオブエクシリア」「テイルズオブゼスティリア」と2本続けて、大失態を演じてしまい、期待できないシリーズ物に一気に転落してしまったが、
今作は、シリーズ全盛期ほどの勢いは取り戻せないかもしれないが、それでもかなり細部まで考え抜かれた作りで、個人的にはポイントがかなり高い。
苦悩の末に作り上げられた力作であると断言したい。

大作RPGともなると、どうしても複雑なシステムを放り込みたくなるだろうが、今作においては、一度無駄だと思われる要素をバッサリ切り捨てて綺麗に整えたあとが見られ、無駄なく遊びやすくなってるように思う。
個人的には戦闘システムの操作形態の大改革で、まだまだこのシリーズは可能性があると存分に希望を見出させてくれた(昨今のコンシューマ事情を見ると次があるか本当に心配になるが)。そこで結論。

丁寧な配慮と、停滞したバトルシステムに新しい可能性を見出してくれた快作!!





[2016/08/31]
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