テイルズオブエターニア


対応機種プレイステーション
発売日2000/11/30
価格6800円
発売元ナムコ

(c)2000 NAMCO / いのまたむつみ
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RPGに弱いナムコが、何とか自社の主力シリーズとして確立させるべく売り出しているのがこの「テイルズ」シリーズだ。
今作もプロモーションに力が入っており、ディスク3枚組の超大作になっている。さて肝心の出来はどうか!?

「テイルズオブデスティニー」は、DEENを起用した主題歌など、大々的な宣伝とは裏腹に、肩すかしな内容にがっくり来たものだ。
ナムコは元々RPGに弱いメーカーで、ファミコン時代から外注で出したりしていたが、どうにもシリーズ化するほどのものがなかった。
(女神転生みたいに、規模が大きくなりすぎて独立しちゃったのもあるが...)

そんな時に、「テイルズオブファンタジア」のヒットである。まあこれも元々外部の持ち込み企画だったのだが。
今度ばかりは逃すまいと、躍起になってシリーズ化させている。
が、「ファンタジア」を作ったスタッフとはいざこざがあったうえに独立して別のゲーム作り出しちゃって再度集めるのが難しい状況(トライエースを設立しスターオーシャンなどを既に作っていた)。
そんな折、ゴタゴタの状態で発売を強行したのが「テイルズオブデスティニー」であった。

ドット絵の古き良きRPGとは聞こえがいいが、スクウェア「ファイナルファンタジー7」を皮切りに、ポリゴンやCGを使ったRPGが珍しくない時期に、
スーパーファミコンを彷彿とさせる2Dでドット絵の見下ろし型RPGという何の捻りもない古臭い内容(フィールドは一応ポリゴンだが視点を動かしたり出来ない何らポリゴンにした意味のない代物)に「ファンタジア」のような革新的なものを期待していた人達は失望したものだった。

さて、そんな苦い経験があるだけに、今回は売れ筋のRPGを研究して作ってきたようだ。
主にスクウェア製のRPG、特に「ファイナルファンタジー7」に強い影響をうけている印象がある。ミニゲームが異様に多いところとか(ナムコ気合入ってんなぁ!!)。おまけにポケットステーションにまで対応している。
ダンジョンで頻繁にキャンプをするシーンなんかはサターン「グランディア」も参考にしている感じがする。

フィールドマップはフルポリゴンになり、カメラで視点を回転させることが出来るようになった。
町やダンジョンでは2Dのドット絵だが、古くさいマス目方式ではなく、人海戦術で描かれた一枚絵になっている。
ただ、この方式だと、描き方が下手くそだと、歩ける場所と歩けない場所、マップの切り替わりの場所、調べられる物調べられない物などの絵が表していることが記号的でないためわかりづらくなるデメリットがある。
本作では、とりあえず見た目はよくなったものの、こういったデメリットばかり目立つ作りになっている感じがする。
やたらマップにひっかかるし、ダンジョンでは特に調べられるものやマップの切り替わる場所がわかりにくく、気づかなかったといったことが目立つ。
それを逆手にとったレンズ集め(ドラゴンクエストのちいさなメダル集めがモデル)があるが、やたらマップが曲線的でごちゃごちゃしてるし、当たり判定もシビアだったりして、やる気が起きない(落ちている場所がわかるレミラーマのようなものもない)。

また、ダンジョンのギミックがどれもナムコ的というか、抽象的で申し訳ないが悪い意味でRPGっぽくない。
反射神経を要求する場面が多かったり、ネタバレになるのであまり具体例は書けないが、一言で言うと疲れる、野暮ったい代物が多い。

プレイステーション後期のゲームなのだから、この辺はもう少し研究してこなれたものを出してきて欲しかった。

このシリーズの見所であるアクション性の強い戦闘シーンは、文句なしに進化している。
まず、下段のステータスを表示していたウィンドウをとっぱらって、画面を広く使えるようにした。すっきりしてていい。
戦闘バランスを大幅に調整した上でキャラクターの動きもスピーディになり、より2D格闘アクションっぽいシステムになっている。

魔法を使うと時間が止まり、避けることが出来ず食らい続けるという非常に強力なものだったが、今回は魔法エフェクトが展開しても時間が止まらないので、冗長なエフェクトで頻繁に待たされるということがなくなった。非常に良い改善と言える。

不満点といえば、バトルは非常にスリリングな内容で軽快に動かせて面白いのだが、効果音が弱いせいなのか今一つ爽快感に乏しい印象があったことと、
戦闘システムが複雑化して、本格的になったために、覚えることが増えてしまったことが、とっかかりを悪くしてしまった気がする。

例えば、特技の覚え方が分かりづらくなったり、精霊を付け替えて、使える魔法を変化させる要素など、一気に新システムを入れすぎた印象がある。

アクション性が強くなり色々バトル上のルールも変化しているが(敵をすり抜けられたり)、相変わらず「ハメたもの勝ち」なところがあり、操作性など含め、独自性が非常に強いもののまだまだ完成形とは言いがたい煮詰まってないバトルシステムだ。
ただ、前作からここまでのものを持ってきたと言う点では評価できると言える。

戦闘グラフィックは、統一感の無さが気になる。
背景はポリゴンで、キャラクタはスプライトなのだが、どうせサイドビューの2D戦闘なのだから、無理にポリゴンを使う必要はなかった気が?

「テイルズオブデスティニー」に引き続き、キャラクターデザイナーにいのまたむつみを起用し、登場人物も豪華声優陣を集めて声を当てていて、見せ場のイベントシーンでは台詞を喋らせたりする。
そして、力の入ったCGムービーも要所要所に挿入される。
これだけ気合いの入ったゲームなのに、肝心のストーリーがどうにも全体的に退屈で、これといった盛り上がりがないまま終わってしまったのが非常に残念。
シナリオにも力を入れたRPGなのだったら、もっと押しが必要なプロットだったと思う。
なんというか、やたらとキャラクタの自己主張が強いだけの淡々としたRPGにしか見えなかった。

多くの優秀なRPGを教本にしてマンパワーで作られただけに、一定以上のクオリティで出来上がっているのだが、一番重要となってくる本作独自の魅力に乏しい。
多分、固有名詞が凄く沢山台詞に出てくるので世界設定とか凝ってると思うのだが、その割にそれほど世界観に面白味を感じなかったし、
妙に昔のテイルズ作品のキャラが出張ってくるのも、キャラ人気に頼っているって言う悪い印象しか持てなかった。それに、こういうネタを多用すると、世界観がそれだけで薄っぺらくなってしまう。クリア後の隠し要素程度に収めておくのが丁度良い。

一つ長所を書くと。
これだけ凝ったゲームなのに、ディスクアクセスが非常に早い。「いつ読み込んでるの?」っていうぐらい早い。
エニックス「ドラゴンクエスト7」ではアクセスが早くてもフリーズに泣かされたものだが、そういったバグも見当たらない。これは単純に凄いと言える。

商品としては良く出来たRPGなんだけど、作品として見た場合、重厚さがどこか足りないというか(そういう作風ともちょっと違う)、ペラいところが目立つ惜しいゲームだ。そこで結論。

魅力的なRPGを生み出すのは難しい。





[2004/03/18-2011/05/09]
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