テイルズオブグレイセス


対応機種Wii
発売日2009/12/10
価格6980円
発売元バンダイナムコゲームス

(c)2009 NBGI / NAMCO TALES STUDIO / いのまたむつみ
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バンダイナムコが抱える大型RPG「テイルズ」シリーズ。Wii専用タイトルとしては2作目となる。
前作は、リモコン+ヌンチャクスタイルという、無理してWiiのインターフェイスを使おうと背伸びをしていたが、今回はクラシックコントローラ対応で、従来通りの操作感覚で遊べる。

ゲームとしては、なんちゅうか数多く発売されてきている「テイルズ」シリーズの型にはまった作りで、あまり指摘するところが無い。つまりは、新鮮味が薄い。
この看板タイトルで飽きられるまで何十年と稼いでいくつもりなんだろう。

プレイ感覚としては、「テイルズオブリバース」や「テイルズオブデスティニー2」を手がけてきた、いわゆる2Dテイルズのスタッフが開発したんだろう。そっくりである。
個人的な印象としては、藤島康介を使ったいわゆる3Dテイルズのスタッフチーム制作の作品が本流だと思っているので、節々について厳しい点を述べていく。

今回、フィールドマップもバトルシステムも3D化し、2Dテイルズでは“なくなった”が、ゲーム制作のコンセプトに関してははっきり違いが見られる。

まずバトルだが、バトルフィールドが3D化したものの、かなりオリジナリティを追求したゲームデザインで、取っつきは良く無い。
これまでの3Dテイルズでは、自由にフィールドを移動出来て、ボタンを押すと攻撃が出て、簡単に攻撃がつながって技ボタンを押すと強力な必殺技が放てる。という大前提があった。
本作では、これら一連の行動を移動も含め全て基本的に「チェインキャパ」で管理したかったようだ。

「チェインキャパ」とは、「テイルズオブデスティニー」リメイク版で登場したシステムと同一だ。
攻撃を繰り出す時に消費していた。強力な技や術を使う時は、それだけ多くのチェインキャパを消費する、というヤツだ。「テイルズオブヴェスペリア」などでは技を使う際にTP(RPGのMPと同一)を消費していたが、本作ではその概念は無い。

このゲームでは、バトルフィールドの移動速度が遅く、フリーランの要素もあるのだが、スキル扱いであり、フリーランを使うとチェインキャパが減っていく。無くなると移動速度が極端に低下する。
基本的にターゲットした相手と直線上にしか動けない。防御ボタンを押しながらスティックをはじくと、はじいた方向にステップする。このとき、チェインキャパを1消費する。
敵の攻撃を横に回り込んで回避したり、移動速度が速いので、敵との距離を詰める時に使って欲しいようだ。
チェインキャパは、しばらくじっとしていると回復するが、上記アクションをうまく成功させるとボーナスとして回復したりする。が、今ひとつ回復する基準が良くわからない。

攻撃のコンボシステムもややクセがあり、AスタイルとBスタイルに分かれている。
シリーズ経験者向けに書くと、Aスタイルが通常攻撃のコンボ。Bスタイルが従来の術技に近い概念を持つ(回復や攻撃魔法といった物が入る)。
チェインキャパの行動量の許す限り、このAスタイルとBスタイルを好きにコンボに組み入れて戦略的な戦い方をして欲しいという意図だと思う。

おそらく、ここのスタッフ達は理論でゲームを組み立てているのだろうが、正直言って複雑すぎてなじめないのである。
敵の種類や属性が非常に細分化されていて、その弱点にあわせて対応を変えて欲しいってことなんだろうが、はっきり言ってやりすぎだ。
熱心なシリーズのファンならそれで丁度いいってぐらいになるかもしれないが、アクション性の強い「テイルズ」シリーズの戦闘は、それだけで敷居が高いし、あまり遊んでない人ほど、それだけで珍しい。
だからその路線で順当な進化をすればいいのだが、これだけ作っていれば行き着く先が結局マンネリ化してしまうのを意識して作っているのだろう。

だが結局は、そういう工夫も虚しく、この手のゲームを突き詰めると最終的にはどこまでいっても、いかに敵を引きつけ、その間に回復や強力な攻撃魔法を詠唱させる時間を稼ぎ、敵の体力を削っていくゲームになってしまうわけで、
それに至るまでの手段が違っているだけなのである。

このゲームに関して言えば、見た目は他の3D化したテイルズと同じなのに、こちら側の行動を大きく制限してハードルを高めている。
一般的なプレイヤーは、さっき書いたRPG的な戦い方を実践するだけで満足してしまう(と、思う。よほどマニアックな人じゃない限りは)。

確かに、「テイルズオブヴェスペリア」だったか、その辺のレビューで、自分は「このシリーズはマンネリ化が進んでいるのではないか?」という話を書いた。
しかしこれがマンネリを打開する解決方法とは、いかんともしがたい。

どちらかというとこの開発チームの作品は別の方向でマンネリ化していて、味方AIの動きに合わせて一斉に(行動ポイントのある限り)タコ殴りしてダメージを稼ぐゲームになってしまっているので、なんか疲れるゲームだとはずっと思っていた。

何が駄目かというと、やっぱり、遊んでいて気持ちよくない点。システム側で露骨に操作性に制限を加えているのが丸見えなので、不当に感じる。
また、戦闘時のカメラワークとスティックの同期がうまくとれておらず、変な方向に移動してしまう。操作性に独特のクセが残っている。

ゲームバランスが悪い(難しい)。装備品や回復アイテムの値段が高くわざとらしい飢餓感を与えたり、ザコ戦からして数が多くて強くて厳しい。
ザコ敵と戦っていて損をした気分にさせられるRPGはたいてい面白くない。
勘違いしないで欲しいのは、戦闘システムが悪いという意味ではない。バランスがもっと良心的であれば、楽しめたのではないかという話だ。

覚えることが多く、戦闘中に気にかけなくちゃならないことも多く、煩雑である。
3Dになったバトルフィールドで敵味方の状況を判断しつつ、チェインキャパの数値も見ながら、敵の動きと味方の動きに合わせて攻撃する。かなり大変。

状態異常の数もかなり多く、それも対応するアクセサリを装備することで回避出来るので、数が多いだけで無駄である。
そのほとんどが、影響力が強く、戦闘を一定時間継続出来なくさせるだけのものばかりで芸が無い。よって、面白くない。

結局、結論を書けば、営業か広報のその辺に、「戦闘3Dにした方が売れますよ」とでも重圧をかけられ、仕方なし3Dにして、でもシステムの考え方自体は2D的なものなので、違和感が出るのだと思う。

個人的には、この路線のRPGだと、「テイルズオブハーツ」や「テイルズオブリバース」の方が、爽快感があって面白かった。
今作はなんだか爽快感に欠けるできあがりだ。

また、過去作を評価しているが、ゲームデザインやバランス、手触りに進歩が見られないのは決して良いこととは言えない。

もっと、バトルに限らずシナリオにしろ、全体的に成長してて欲しいモンなのだが。

ストーリーに関しては、好き嫌いが入ってしまうので、あまり書けないが、気になった点としては、プロローグに当たる幼少時代が長すぎること。とってつけたような固有名詞があり、それをきちんとゲーム中で設定を解説しないこと。
主にゲーム後半に見られたのだが、コンピュータRPGではさんざん使い古された設定を持ち出して、見てすぐわかることをわざわざ説明的な台詞で喋る所だ。

また、このシリーズは、プレイヤーが早い段階で、主要キャラクタに好感を持ってもらわないといけないと思うのだが、そういった面に気を全く遣っていないことが気になった。
はっきりいって幼少期のあどけないムードの方が全然とけ込めるので、その時間軸で進めて欲しいと思えるぐらいひどい。

10数時間遊ばないと、パーティキャラが心を開かないのは、いくらなんでも引っ張りすぎだろう。それだったら、最初から大人編の時間軸からはじめて、幼少期をモノローグにして、要所要所のシーンで流せば良い。
そのぶん、子供時代の戦闘プログラミングを組まなくて良くなる。

キャラの立て方も下手、お話の流れも冗長でテンポが悪い。同じ場所の行ったり来たりが多くゲーム的に退屈である。
とってつけたようなボス戦ばかり。本流テイルズに比べ圧倒的にシナリオ周りの出来映えが悪い。これだけ作ってきてるのにあまりにセンスがなさすぎる。もっと力量のあるシナリオライター見つけてきてはどうだろうか?

「テイルズ」シリーズの長所だと思っていたのだが、アニメムービーを除いて、本編シナリオはほとんどフルボイスでありながら、メッセージ送りをプレイヤーにゆだねている点だった。
しかし、今作では、一部の見せ場のシーンでは、上下に黒帯で画面下部に字幕を出す良くあるリアルタイムデモムービーのスタイルを取り入れている。
これは、物語の見せ方に統一感がないし、褒められたやり方とは言えない。なにより、映画を意識していて好きになれない。

こういったシーンでは、モーションキャプチャーを取り入れているそうなのだが、Wii「テイルズオブシンフォニア ラタトスクの騎士」では妙に動きが生々しかったので、嫌な予感しかしなかったが、
本作では動きに違和感が無く、良かったと思う。制作効率の点で成功しているのであれば、積極的に取り入れても良いと思う。

「テイルズ」は勝手に王道RPGと思っていたので、いわゆるフィールドマップが無くなってしまったのも残念だ。
NDS「テイルズオブハーツ」のように一本道の街道がフィールドの代わりなのだが、「テイルズオブハーツ」は対応ハードの関係上仕方なしと言う事情を理解できたが、今作は据え置き機での発売である。納得出来なかった。
そして、下手に性能があるからと街道の造形を凝っちゃって、歩ける場所歩けない場所をわかりづらくしてるのもマイナス。

ダンジョンマップはモデリングの使い回しが多いこと、メニュー周りのインターフェイスが悪いこと、ディスクアクセスがやや長く感じることがあること、カーソル操作の効果音が耳障りなど、細かい不満点は尽きない。
称号をセットしてスキルを習得させる(オートで付け替え機能が付いてるとはいえ)、デュアライズという名の合成、装備強化システム、戦闘を有利に進める料理システムを内包したエレポッドなど、どれもこれも手間かけたわりにたいしたことなくて、つまらない。単純に面倒くさい。

やはり最も残念なのは、PS3/Xbox360「テイルズオブヴェスペリア」を見た後で、4年前になるPS2「テイルズオブジアビス」レベルのグラフィックのゲームが新作として出てきた点だ。
どうしても見劣りしてしまう。何が悲しくて4年前のクオリティの作品を新作ゲームとして見なくてはならないのか。そもそもWiiで開発することになった経緯なども気になるところだ。
Wiiでは珍しいダウンロードコンテンツに対応しており、「テイルズオブヴェスペリア」で話題になった便利アイテム(経験値2倍化、最大HP+1000など)の有料ダウンロードを恥ずかしげもなくやってる所を見ると、金儲け第一主義なのだろうけど。
売れなくなるまでやり続けるんだろう。そこで結論。

これはもう開発スタッフのスキルアップに期待するしかない。コアなシリーズ好きなら楽しめるか。





[2009/12/15]
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