テイルズオブハーツ


対応機種ニンテンドーDS
発売日2008/12/18
価格6650円
発売元バンダイナムコゲームス

(c)2008 NBGI / NAMCO TALES STUDIO / いのまたむつみ
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テイルズオブシリーズのニンテンドーDS向け新作第三弾がこの「テイルズオブハーツ」である。
今作は、ムービーが従来のアニメバージョンのものと、CGで描かれたものの2種類に分けて発売された。

価格が6650円と携帯型ゲームにしてはかなり割高であるが、これには理由がある。
2Gロムを使い、据え置き用ゲームソフトと同等のボリュームを出そうとした結果、コストがふくれあがったのである。

テイルズシリーズは、良く動き、良く喋る豪快な作り方をされているゲームである。納得のいくものを出そうとすれば、それなりにお金がかかる。
「テイルズオブイノセンス」のレビューで、このシリーズをDSで出すのはそもそも不向きと指摘したのだが、よほどDSの市場がおいしいらしい。

ジャケットには、「ムービーと音声を据え置き機と同等のボリュームで収録!」と書かれちゃっているが、重要なのは量ではない。質である。
容量に限りもあり、ハード性能にも制約が多いDSでは、とうぜんそれらのデーターは圧縮されることになる。
たしかに、イベント音声はかなり喋る(量だけなら下手をするとGC「テイルズオブシンフォニア」以上かもしれない)が、ギリギリまで圧縮しているので、音質はかなり悪い。
ムービーは、そもそも2パターンにわけるほど、沢山入っているわけではない。
(据え置きの作品の時から、このゲームはむやみやたらにムービーに頼ってたゲームでは無い)

CGバージョンを作ったのは、海外市場を意識したと言うのが一説としてある。が、ここに異を唱えたい。日本のアニメーション技術をなめるなと。
アニメに特化し続けてきたシリーズだけはある、アニメーションムービーの腕だけは、確かである。
発売当時、プレイステーション1の「テイルズオブデスティニー」のオープニングムービーには腰を抜かした物である。
それをいきなり、他の会社のRPGと同じように、CGムービーに挑戦したところで、今更と言わざるを得ない。
むしろ、シリーズ独自の特色として持っていた強い武器を自ら捨てているような物だ。
ましてや、画質に期待出来ないDSでそれをやるなんて、言語道断である。

ゲーム内容は、なんとも、いつも通りのテイルズと言う他無い。
システム周りは、制作が「テイルズオブリバース」などを手がけてきた(いわゆる2D路線テイルズのチームだ)人間がやっているだけあって、
戦闘システムや挙動などは、それらの作品と同じだったり、テイストが似通っている。

グラフィックは、フィールドがポリゴン、キャラクタがスプライトという手法だ。プレイステーション、セガサターン時代に良く見られたタイプの物だ(DSではあまり珍しくもないが)。
「テイルズオブイノセンス」では、キャラクタもポリゴンだった。DS程度の水準では、まだキャラクタのポリゴン描画は厳しいので、賢明な判断と言える。キャラパターンも多く、立体感を出そうとカメラワークも頑張っている。

しかし、フィールドを3Dにしてしまったことで、造形に制約が多くかかっているところが目に付く。
「テイルズオブイノセンス」も容量の関係でマップチップのつなぎ合わせによる使い回しがひどかったものだが、今作でもそういったところはまだ見られる。
ただ、容量が2倍になったことで余裕が出たのか、バリエーションは遙かに増えた。
しかし、汎用的なマップはまだまだ使い回しが目立つ。DSは画面が小さいので仕方なかったのか、いたずらに迷わせない配慮から、細い一本道がやたら多い(下画面にオートマッピング機能がついているがそれでも怪しい)。

さすが大容量カートリッジを採用しているだけあって、ゲームボリュームは申し分ない。勿論台詞も良く喋る。

ストーリーは、タイトルの「ハーツ」=「心」がテーマだ。
スピリア(スピリットの造語か、そのまんまだ)や、ゼロムといった固有名詞が相変わらず多い。もうちょっと何とかならないのか。

これに関連して、スピルメイズという自動生成式+時限式のダンジョンがあり、ゲーム進行上かならず通らなければならなかったりもするが、はっきりいって違和感バリバリである。
どちらかというと、サブイベントなどやり込み要素を充実させるために、少ない容量で作るにはどうすればいいかという理由からこういう仕様のダンジョンを入れたのだと思う。
それならば、一切本編に絡ませなければいい。実際、ゲーム後半はほとんどこのダンジョンに入る機会が無くなっている。

戦闘シーンは、「テイルズオブデスティニー2」などと同様の、2Dタイプのもので、RPGで言うMPが無く、代わりに、エモーショナルゲージ(EG)を消費する。
攻撃や特技、魔法を使う際に必ず消費する物で、待機状態の時に自動的に一定値回復し、敵から攻撃を受けることでも増加する。
増加しすぎると、敵から受けるダメージが増える。しかし、ゲージが溜まっている分、たたみかけるように攻撃が出来るというメリットもある。

行動に必要なEGがあればあるだけ、通常攻撃、特技にかかわらずコンボをつなぎ放題なため、実質Aボタンで出る通常攻撃の存在意義が全くなくなっている。
こういった特質上、隙のない技が極端に強い傾向にあり、ボタン連打のごり押しでのプレイが有利になってしまっている。
これは、ゲームとしての敷居が下がったともとれるが、底が浅い、シリーズの戦闘システムを良くわかってないともとらえることが出来る。

格闘アクションゲームとしての腕はあまり求められなくなり、その代わり、装備品や技を出す順番、連携を決めるタイミングといった戦略性を重視しているともとれる。ある意味、RPG要素が強くなったとも言える。

DSはハード性能上、あまり込み入った複雑なゲームシステムを組み込むことが出来ない。据え置き機ではかなり複雑なシステムを入れてゲームおたくも満足出来る濃いゲーム性を追求していたが、本作では、あらゆる面で浅い作りになっている。
これを遊びやすくなった、間口が広いゲームと言うことも出来るが、個人的にこのシリーズは、ライトユーザーもヘビーユーザーも満足に遊べる懐の広さがバランス良く取られているシリーズだと感じていたので、その面が弱くなってしまった印象がありマイナスポイントに感じた。

戦闘システムで唯一感心したのは、ボスクラスのキャラクタが、攻撃をしたにもかかわらず、その攻撃をほぼ無効化していることに対してしっかり、理由付けをしているところだった。
鋼というパラメータを表示し、この数値を0にすることで、こちらの攻撃が当たるという視覚的にプレイヤーにそういう情報を与えることで、理不尽さをグッと払拭させているのである。

メニューインターフェイスは、Xbox360「テイルズオブヴェスペリア」のものを継承している。このシリーズは一見乱造しているように見えて、結構こういっためざとい一面も見せる。
しかし、個人的にはアイコン重視のメニュー操作は、使いづらくてあまり好きにはなれない。

基本的にボタン操作で遊ぶゲームだが、ソーサラーリングの切り替えや、コネクトパネルの操作など、タッチパネルに直接タッチする操作もある。不便である、素直にボタンだけで全操作をできるように作っておいて欲しかった。
「テイルズオブイノセンス」でもこういった問題点があった。終始せわしいゲームなので、考えて設計して欲しい。

これは、今に始まったことではないが、テイルズシリーズも手を変え、品を変え、出し続けているのだが、
そろそろ戦闘システムがマンネリになってきた気がする。
結局戦闘で、特にボス戦闘では、やっていることが似通ってきて、そろそろ抜本的な面から斬新な何かを体験したいものである。
まあこれは、RPGというジャンルそのものを否定しかねない話にもなるので、深くは言わないが、もうちょっと新しい何かが遊んでみたいと言う心境を感じてきているのもまた事実なのだ。

まとめると、やはり無理にDSで作る必然性は感じられず、これならばPSP用に制作すべきゲームだということである。あまりにデメリットが多すぎる。
今作においては、量だけは据え置き機に迫る分量なのではあるが、DSのスペックは、どんなに頑張っても、高いクオリティをはき出すことは出来ないのだ。
PSPで作れば、容量の問題は緩和され、安い値段で売ることが出来るし、DS版より遙かに高いクオリティでゲームを出せたと思う。
あの横長の画面だって、今作の戦闘システムと相性がバッチリ良いと思うんだが。

DSのゲームの中では、高いクラスのゲームと言うことは言えるのだけど...。そこで結論。

大人の事情がプンプン匂ってくるゲーム。





[2009/01/06]
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