テイルズオブイノセンス


対応機種ニンテンドーDS
発売日2007/12/06
価格5800円
発売元バンダイナムコゲームス

(c)2007 NBGI / Alfa System / いのまたむつみ
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テイルズオブシリーズは、ハード性能の底上げによって成り立っている部分の大きい作品である。
イベントはフルボイス、戦闘も活き活きと動く、派手なエフェクト、オープニングムービーをはじめとしたアニメ挿入。
そのため、性能より機能的部分で売っているニンテンドーDSでの開発は、普段通りのクオリティを出すには難しい環境であり、不安感の方が大きく感じられた。

過去にDSでリリースした「テイルズオブザテンペスト」の経験をふまえ、1Gbitの大容量ロムの採用によって、イベントボイスの分量を大幅に増量、戦闘システムも、DSの性能を引き出すべく徹底的に作り込み、厳しい制約の中でも満足出来るラインまで持ってきている。
開発先も老舗ゲームメーカーアルファシステムという力の入れようだ。これまで携帯機向けにテイルズオブ作品を作ってきたメーカーであるし、開発力のあるメーカーとして昔から定評のあるところだ。

据え置き機のRPGさながらに、フィールドもキャラクターもすべてフルポリゴンである。それどころか戦闘シーンも、完全3Dフィールドで展開する。
グラフィックレベルは、なかなかの高水準である。

個々の要素は、往々にして納得ゆく水準まで出来上がっているが、町やダンジョンマップ等、容量の圧迫があったせいか、いくつかのパーツを組み合わせたような簡素なものであり、その点のみ完成度は大幅に低い。
町に関しては、ショップ以外に家屋に入れる場所は無く(例外的にイベントで使用する部分のみ入れる)、ダンジョンも狭い通路と大部屋を組み合わせたような似た地形が延々と続く質素なもので、無駄に広く実につまらない。
いずれも、数は少ないものの特にダンジョンに関しては、火山や密林などバリエーションでその分違いを見せようと頑張っている。
あと、立体感を出すために無理にクォータービューなのもどうかねぇ。十字キー8方向にしか動けないのだから、ほとんどの場面でキーを斜めにいれて移動しないとならないのを強要するのは、いかがなモンか。

エンカウントは敵シンボルに接触することで発生するのだが、携帯機ゆえに視界が狭いうえ、目の前に突然敵がわき出るようなランダムな形式なので、避けきれずにしょうがなく戦闘ということが多い。
狭い通路が多いことや、十字キーの操作で融通が利かないことも拍車をかけている。

キャラクターデザインは多くのシリーズを担当している「いのまたむつみ」であるが、今回彼女っぽさが薄い。ヘソ出しルックもフリルも無い。それどころか渋い親父(といっても30前だが)がいるぐらいだ。
発注の段階で色々注文を付けたんだと思うが、デザイナーが同じでも出来てきたイメージ画がこれまでの路線と全然違うので、マンネリ感を味わうこともないし、新鮮で良い。これからも新路線目指して頑張って欲しい。

ストーリー全般としては、さすがにイベントは全て喋るわけではないし、ボリュームも多くは無いが、制限が多くかかるなかでは、頑張っていると思う。見せ場では沢山喋るし(一番容量を食った部分だと思う)。
シナリオ周りは、容量との戦いが端から見てもわかるような展開の仕方で、一通り世界を巡ったら最後という最近のRPGにしては意外性のないストレートな展開である。

「転生」を取り扱ったもので、前世について断片的に明かされていくシナリオだが、インパクトのある固有名称を名付けられなかったせいか、はたまた自分が歳なのか、なかなか固有名詞を覚えられずにいた。
覚えられないまま(ついて行けないまま)どんどん話が進むので、読解出来ないままとりあえず話だけが進むという結構つらい話であった。

後述する戦闘システムを中心に、シリーズいいとこ取りなシステムがやたら目に付く。

仲間との好感度が設定されており、その好感度によってスキットチャット(フィールドで条件を満たすと発生するパーティおしゃべりシステム)が発生したり、一部のイベントが変化したりする。
スキットチャットの達成率がメニュー画面にも表示される徹底ぶりである。これは「テイルズオブシンフォニア」でもあったシステムだ。

また、ギルドシステムというものがあり、各町のギルドでギルドクエストを請け負い、同じく各町の近くにあるギルドダンジョンで依頼を達成するというものである。
ギルドダンジョン内は自動生成式で、入るたびに構造が変わる仕組みだ。
このギルドの作り込みが甘い。クリアしたクエストに印が付くわけでもなく、依頼内容も画一的で、ただポイントを稼ぐだけの作業ゲーになっている。
わざわざランクまで付けていて、ポイントを集めてギルドランクを上げないと受けれないような仕組みまで組んでいるというのに。
いかにも、本編だけじゃボリューム薄いから、水増しするために入れましたってな感じだ。
それに、一番最初に立ち寄ることになる町のギルドダンジョンが、町からやたら離れているってのはまずい。町の近くに…という触れ込みなのに、なぜあんなにも離れたところに置くのか。

ここでは、グレード(戦闘評価値)を消費して、各種便利アイテムや2周目引き継ぎ権利を買うことが出来るが、従来の作品に比べて引き継ぎアイテムが高すぎる。
周回プレイを想定した作りなら、もっと普通にプレイしただけでも恩恵を受けられるようにして欲しい。
あと、クエストを破棄しただけで、ここでの消費ポイントを10%も値上げされてしまうのはやりすぎだ。最初良くわからず受けて、辞めたくなって辞めたらあまりの値上げにびっくりした。

伐採、採掘という要素もあり、主にギルドダンジョンで、表示されるアイコンの部分を調べると武器強化などに使える素材が手に入ったりする。
この辺りは、PSP「テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー」から拝借してきたシステムだ。
しかし、今作には生産という要素は無く、武器の改造などカスタマイズ性もあるが、あまり複雑なものには出来なかったのだろう、出来うる範囲でなんとか頑張りましたという程度にしか収まっていないのが残念。

カスタマイズといえば、キャラクターの方向性を定めるスタイルシステムもあるが、思ったほどスキルがあるわけでもなく、こちらに関してもおまけ程度(実際は結構恩恵はあるが)の感触しか得られなかったのも惜しい。
よっぽどほうぼうの要素でカツカツの仕様だったのか。

バトル周りが、今回一番頑張ってるなーという印象を受けた。シリーズを重ねるごとにもはや、本職であるアクションゲーム、格闘ゲーム顔負けのクオリティを求められるこのシリーズ作。それに答えるべくよくぞDSでここまでというレベルの物をたたき出している。
3Dフィールドを自由に動いて戦うスタイルは「テイルズオブジアビス」系列のものだが、空中コンボを簡単に出せたりするのは、リメイク版「テイルズオブデスティニー」から引っ張ってきたんだろうし、戦闘の自由度は今のところシリーズ随一だろう。
とにかくコンボがつながりやすく、またコンボ技が多く、適当なプレイでも気持ちよいヒット感を得られる。
処理落ちや操作性も問題なく動作し、キャラクターはきびきび動き、この辺りに特に問題は無い。でかキャラもガンガン出るのも凄い。

戦闘バランスに関しては、特に終盤になると、桁外れに強い敵が出現し、難易度が非常に高い。エンディング見るだけでも、しっかり戦ってレベルを上げておかないと厳しい。

敵を倒すと、お金やアイテム(落とした場合)を戦闘フィールド内にばらまく。それを取らないと入手したことにならない。
なぜこのような一手間かかるものを入れてしまったのかイマイチわからない。

また、作戦で、細かい部分まで指定出来るようになっているのだが、有用な項目は前述したギルドショップでそれなりのポイントを出して買わなければならない。これも出し渋りすぎだと思う。
初期で選択出来る指示項目は実に少なく、使えるものではない。

全体的に「テイルズオブレジェンディア」っぽいなぁ〜、ウィンドウデザイン似てるし、敵のHPゲージ表示されてるし、間の抜けた会話、独特のシュールギャグが多いし、と思っていたがスタッフが重複してるなどの関連性は無いようだ。

しかし、プレイしていて全体的に厳しい仕様のもと、工夫を凝らしてここまでのものに仕上げたのだなあという苦労が身にしみて感じられる作品であった。
DSのシェアウェアを考えると、テイルズという作品を知ってもらう格好の土壌であり、簡単に出すべきではなかったと言う結論を押しつけるのはいささか一方的すぎる気がする。
制作陣が据え置き機以上に苦労するわけであり、勿論次作以降、同等の水準かそれ以上を求められるだけに、もうDSでは出さないような気がしないでもない。
同時期に出たスクウェアエニックス「ファイナルファンタジー4」と、容量の使いどころの違いがかいま見れて面白かった。
そこで結論

DSの性能を考えれば驚異(は、言い過ぎか)。2Gbit使えるようになれば少し楽出来るようになるかも。





[2008/01/09]
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