テイルズオブイノセンスR


対応機種プレイステーションVita
発売日2012/01/26
価格5980円(カード)/5380円(PlayStation Store)
発売元バンダイナムコゲームス

(c)2012 NAMCO BANDAI Games / いのまたむつみ
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2007年12月、ニンテンドーDSタイトルとして開発された「テイルズオブイノセンス」を、プレイステーションVitaでフルリメイクした作品。
ハードスペックの向上に伴って、どのようにパワーアップしたのか見所だ。DS版は「アルファシステム」制作だが、今作は「ケロロRPG」の開発実績を持つ「セブンスコード」が制作している。

フルリメイクというだけあって、細部のゲームシステムに至るまで大胆に変更され、ダンジョンマップの刷新など、ゲームとしては完全に別物となっている。
キャラクターやストーリー、世界設定を借りてきた程度で、それすらも新しく書き直され、構成がずいぶんと変わっている。

DS版は、ニンテンドーDSというスペック、かつ、1Gbitという容量制限がついた厳しい環境のなかで作られた。
そのような制約があった割には、バトルプログラムは良く出来ていたし、イベントシーンは声付きで喋るのが当たり前のシリーズなので、容量を圧迫するため見せ場を厳選する必要があり、とてもまとまった作品であった。
勿論、ところどころ苦し紛れな感は否めなかったのだが。良く頑張ったゲームといえる。

ギルドシステムとか、気に入らない部分も多かったんだけど、(良い意味で)テイルズらしくないところも含めて、DSのテイルズの中では一番好きかもしれない。
(もっとも、操作性とかシステムの練り込みとか、後発の「テイルズオブハーツ」の方が圧倒的に出来が良いのだけど)

さて、そんな外注先が好き勝手作った変わり種のテイルズだったが、リメイク版では良くも悪くもマニュアル通りに作られたいつものテイルズって感じでとってもガッカリ。しかし、制作を外に投げたせいか、基本的な部分がきちんと作れていない。
エンカウントがランダム方式っていうだけで「エーッ!!」って代物だったのだが(DS版ではシンボル方式)、それ以外にもこのシリーズのこと「わかってねぇなぁ」って言う部分がとても多く目に付いた。

まず戦闘周り。バトルフィールドが妙に広い印象。それが駄目って言う意味ではないのだけど。違和感を覚えるぐらい広い。

通常攻撃が繋がる回数が厳格に定められているが、そのルールを壊してしまっている仕様がある。
それは、フリーランの状態で敵に攻撃を当てると、そのまま攻撃がつながっていくのだが、フリーラン状態で当てた最初の一撃はコンボの回数に含まれない。
つまり、本来3回まで通常攻撃が繋がるキャラが、フリーランから攻撃に入ると、最初の一回は計算に入らないので、4回攻撃が繋がることになる。
たとえ、ターゲットと密着していたとしても、普通に攻撃するよりも、スティックを敵に向けて倒しっぱなしで走りながら攻撃に入ると、1回多く通常攻撃を当てることが出来るのだ。

このシリーズを知っている人ならば、これが意味するところの重大さが理解できると思う。これは、駄目だろう。
スキルでコンボの回数を増やしたり出来るぐらい、厳格に定められてるアクションの定義を、簡単に壊しているのである。
例えば、このゲームには鋼体というパラメータがある。鋼体というのはいわゆるバリアみたいなもので、ダメージは与えられるんだけど、鋼体の回数分は攻撃を受けても、のけぞったりダウンしたりしない。つまり、攻撃を当てづらい。
ボスキャラや強敵との戦闘では、いかにこの鋼体を破壊して大ダメージを叩きこむかという戦略を要求される。
そういうゲームなのに、コンボの繋がる回数の設定を、こんな初歩的な部分で壊していておざなりなのはいかがなものか?と感じた。

他には、必殺技を出すとき、十字キーだけじゃなくて、スティックでも反応して欲しかった。上押しながら×とか下押しながら×に設定した技を出すとき、わざわざ十字キーで操作してやらないと技を出せないのは不便。

新システムのレイブシステムもとってつけただけでつまらない。
攻撃を当てたり、敵を倒すとゲージが溜まっていって、反対に、ダメージを受けたりするとこのゲージは減っていってしまう。
ゲージが一定値まで溜まっていると、レイブアビリティの効果が発揮され、装着したアビリティの効果、攻撃力アップとかHP回復などの恩恵が得られる。
しかし、そんなのいちいち意識するほどでかい効果があるわけでもないしカスタマイズの自由度もなさすぎる。気づいたら勝手にゲージが減ってたり増えてたり、せわしない戦闘で、そんなところまでいちいち気にしてられない。
それどころか、このゲージは、秘奥義の威力に影響を及ぼしており、せっかくオーバーリミッツして秘奥義を出したのに、レイブゲージが溜まってなかったせいで、全然秘奥義らしいダメージが出なかったりする。
これのせいで、秘奥義を出したいときに出せず、せっかくの超必殺技で気持ちよく大ダメージを叩き出したいのに、妙な足かせになってしまっているだけの気がする。
これなら、素直にDS版のインフィニティジャムのシステムをそのまま入れたほうが楽しかったような気が?

システム周りでは、スタイルシステムが気になった所だ。
レベルアップの成長とは別に、戦闘で手に入るアビリティポイントを消費して、スキルを覚えさせていくというシステムだ。
スキルをセットするには、CPが必要で、CPのポイント分しかスキルを装備できないようになっている。「テイルズオブヴェスペリア」辺りから導入されたシステムである。

ところが、スキルを装備させるためのCPが全然増えないので、せっかくスキルを覚えさせても、強化させる楽しさが全然ない。「テイルズオブヴェスペリア」とかではこのCPはガンガン増えていって、沢山スキルをセットできたが、今作では終盤まで行ってやっと10を超える程度しか自由度がない。
おまけに、有用なスキルが決まりきってて、それらをセットしたら、CPは全く残らない。困ったものである。
キャラごとに、覚えるスキルに差があるわけでもなく、習得できる時期が早いか遅いかって言うだけ。
しょうがないので、溜まったポイントを消費させるために、定期的に、仕方なく使えそうなスキルを覚えさせるだけ。しかもどちらかというと、習得時のステータスボーナスが目当てになってしまう有様。
また、習得できるスキルリストの表示も下手くそで、覚えられるスキルが多くなってくる後半になると、大量に敷き詰められたアイコンから、覚えたいスキルを探しだすだけで一苦労になり、面倒くささに拍車をかけてくる。
これは、はっきりいって練り込み不足でしかないだろう。

ストーリーは、容量を気にせず喋らせられるようになったためか、饒舌でダラダラ長いフルボイスのイベントシーンが異様に増えてしまって、テンポが悪くなってしまっている。ただ見ているだけのシーンが多すぎるのである。
このあたり、容量を気にしなければならなかったDS版の方がよく出来てたと思う。しかし、いたずらにDS版を神格化するつもりはない。
なぜなら、そうせざるを得ないから台詞の数を削ったり構成を端折ったりしただけで、これがPSPやPS2で作っていたら、やっぱりダラダラ長めのイベントシーンが沢山作られていたことだと思う。

シナリオが饒舌になったぶん、見せ場も増えたし話も理解しやすくなったのは良い。

だが、今回新キャラが2人登場し仲間になってくれるが、この2人の新キャラのエピソードが消化不良で、最後まですっきりしなかったのは駄目だ。何をやりたかったのかわからない。
パーティメンバーが3人から4人になったことで、ただ頭数を合わせるために無理矢理作った感が否めない(さすがにこれは言い過ぎか)。

それ以外の総合的な部分について。
このゲーム、おそらく最初はPSP向けにでも作っていたものを途中でVitaに切り替えたのだと思う。グラフィックが、Vita用にしては貧弱で決して性能を使いこなしているとは言えない。
しかし、ハード立ち上げ期で、しかもサードパーティのタイトルである。まあ、ハード立ち上げ期のソフトなんて、こんなモンだ。期待しすぎるのも良くない。

フォントの書体が固い。もっとRPGに合ったフォントに変えて欲しかった。
こういう細かいところにこだわってないゲームというものは、それだけで地雷臭を感じてしまう。反射的に力が入ってないゲームに見えてしまうからである。

戦闘はヌルいし、ダンジョンの構造もありきたりのオンパレード、過剰過ぎるフルボイスのイベントシーンの挿入など。展開が全体的に単調で、ひたすらつまらないゲームであった。
ストーリー的にはサプライズがあったり、アニメムービーを盛り込んだり、豪華に作っているのは伝わってくるのだが、ただ見た目を綺麗に取り繕っただけで、中身に関しては投げやりというか適当で、面白味が全然ない。

色々不便な面も多いDS版をすすめるほどではないが、わざわざ過去作を引っ張り出してきたリメイクなのだから、もっと力を入れて作り込んで欲しかったのが正直な所だ。
この出来では、手間かけずに作れそうな安易なリメイクで金稼ぎをしようと言う魂胆が見え見えで、全然やる気が感じられない。

アルファシステムが作ったDS版の方が、面白いゲームを作ってやろうという情熱が伝わってきただけに、なんだかグレードダウンしている感が否めない。

おそらくテイルズチームのなかでも三流どころが取り仕切ってるだろうから、このゲームだけ見て結論を出すのは間違いだと思うが、もっとテイルズシリーズって意欲的で面白かったはずなのだが…。
確かに上っ面だけみると、必殺技の数も増えてたり、色々豪華に出来上がっているのだが、なんか、色々と見た目ほどの面白さが感じられない。

やり込み要素とか、シリーズ恒例のお決まりを踏襲しすぎてて、マンネリになりつつある。もっと冒険して欲しい。これでは駄目だ。そこで結論。

もっと面白いテイルズは他にある。





[2012/01/30]
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