テイルズオブレジェンディア


対応機種プレイステーション2
発売日2005/08/25
価格6800円
発売元ナムコ

(c)2005 NAMCO
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ハイペースで発売を続けるテイルズオブシリーズの最新作。気付けばもうシリーズ通算7作目である。
キャラクターデザインに中澤一登を起用し、今までとは違う新しい風を吹き込んだことがどう影響したのかも見所の一つだ。

これまでのシリーズ作品と比べ、随分と手触り感が違うのだが、どうやらあまりテイルズシリーズに携わったことのないチームが制作しているのが原因のようだ。
それが新鮮さとなって良い面に作用してるところもあれば、悪い面に作用しているところもある。

グラフィックは、飛び抜けた綺麗さは無いが、繊細な色遣いは鮮やかに画面を彩っている。
音楽も、新日本フィルハーモニー交響楽団による演奏で、幻想的なサウンドが耳に心地良く響く。
どちらも、これまでのシリーズ作品では見られなかった芸術性があり、高く評価したい。

しかし、音楽は素晴らしいのだが、このシリーズは、イベント時での音楽の使い方が下手くそで、
突然無音にしたり、場にそぐわない音楽を流し出すのは勿体ない。
あと、イベントボイスの音量が小さくて、音楽にかぶさってしまい、聞き取りにくいのも気になった。
これまで、このシリーズではそういうことがなかっただけに、らしくない配慮の無さである。

ゲーム全体としては、分かってない箇所が多く、違和感を覚えるところが多い。
メニュー画面のコマンドをわかりにくいアイコン表示にしてしまったり、モンスター図鑑が入ってないなど、
指摘し始めればキリがないのだが、とにかく、いつものキレや迫力が無いのである。

特に酷いのは戦闘での操作性の悪さだ。
戦闘時に呼び出せるメニュー画面の使い勝手の悪さや、キャラ操作の融通のきかなさ、セミオート照準の馬鹿さ加減にはあきれかえる。
必殺技は暴発するし、思った通りの位置取りは出来ない、視点は勝手にズームアウト、インするわ、
ただでさえ、キャラクターがポリゴン表示で、状況が掴みにくいと言うのに、この仕打ちはないだろう。
セミオート照準は、目の前の敵をターゲットにするが、自分の倒したい相手を攻撃している時に別の敵から攻撃を受けると、
なぜかそっちに照準をうつしてしまうので、ボタン連打していると、別方向の相手に向かってしまうというしょうもなさ。
システム自体も、エターニア辺りに先祖返りしており、簡略化されて取っつきは良くなったが、底が浅すぎてただのぼこりあいになってしまっている。
とにかく、つまらない。無駄に敵のHPも多く長期戦を強いられるのも面倒。

戦闘に限らず、成長システムなど、全体的なシステムが簡素なものになっているため、ゲーム性が希薄になり、
ただストーリーを見るだけのゲームになってしまっている。
キャラクターを装備品などでカスタマイズしたり、アクション操作の腕を生かして工夫を施す自由度すら無く、
だらだらレベルを上げて単調な戦闘を乗り切るだけのゲームになってしまった。

相変わらず膨大なイベント量で、さらにそれを全てフルボイスで喋ってくれる凄さである。
とにかく、見ている時間が長く、ボイスを聴きながらイベントを追っていくと、それだけで20分近く過ぎてしまうことも珍しくない。
ここまでストーリーを眺めている時間が長いと、なんだかギャルゲー(テキストタイプのアドベンチャーゲーム)を遊んでいるようなプレイ感覚に陥るほど。
敢えて、見せ場以外のイベントシーンは音声を切って文章だけにする英断も必要だったように思う。
展開が冗長でスピード感が無く退屈になってくるのだ。

物語は章立てで構成されており、さらに前後編と分けられていて、前編を終わらせると一端スタッフロールが流れる。
イベント発生のタイミング、ダンジョンの広さ、エンカウントの頻度など、なかなかしっかり出来ていてストレスを感じることなく進めることが出来るが、
ゲーム中盤以降、極端にイベントを見ている時間が長くなり、逆に露骨にプレイ時間を引き延ばす行為が出始めて来るのは、がっかり。

シナリオの出来自体はなかなか良く、特にパーティキャラに焦点が当てられる後編のキャラクタークエストは楽しめる。
このシリーズは、キャラクターの魅力に寄りかかっている部分もあり、通常のRPGのように、大筋の物語に引っ張られて
キャラの魅力を十分に引き出せずに終わってしまうことが多かったなかで、この割り切った構成は絶妙といえるだろう。

ただし、ゲーム的には一つの章でダンジョン3つ+それぞれ奥でボス戦という流れで固定されてるので、ある程度先が読めてしまうのと
前編で全てのダンジョンをまわってしまうので、それをまた使い回して踏破させられるのは作業感が非常に強く苦痛であった。
ご丁寧に、行きだけでなく帰りも歩かさせるひどさには参ったものだ。

ようするに、後編は、体の良い使い回しで全てが作られているわけで、色を変えただけの(こちらの強さに合わせた)敵や
膨大なHPを持つボスキャラクターとの戦闘は辛いだけで、終盤の時間稼ぎとしか思えないボス戦闘の連続や、長大なダンジョンの再踏破は、しんどいどころではなかった。

イベント演出は、SFC時代の見下ろしタイプのRPGのスタイルを踏襲した古くささで、
イラスト表示などで頑張っているが、テキストとボイスに頼った演出はさすがに苦しいものがある。
キャラクターのデフォルメ具合や、オーバーなモーションで演技するところも、ドットキャラに近いものがあり、
割り切って昔風のスタイルで勝負することを決め込んだようにも感じられた。

視点も、ダンジョンや町では、かなり引いたところにあり、ポリゴンマップの意味が薄い感じはするが、すっきりとしていいものと思う。
だから、いっそのことフィールドも見下ろし型を引き継ぐべきで、カメラ操作もできないようにして、もっと見やすい視点にすればよかった。
無駄に広い割に面白くないマップ構成は、探索する気がしないというものだ。
寄り道をしてみても、宝箱が置いてあるぐらいでたいした恩恵もなく、勿体ない。

ダンジョンでは、パズルブースというエリアがあり、ここではブロックを引いたり押したりして、
ゴールまでの道を作っていくという、倉庫番に毛が生えたようなものが用意されている(最近ので例えるとワイルドアームズシリーズのミレニアムパズルに似ているか)。
これは、導入設定が不自然だし、クリア出来ない人の救済策としてコンピュータにクリアしてもらう配慮があり、存在意義が不明。
難易度も中途半端なので面白くなかったから、こういうのは本編ではなく、脇道に置いて、もっと本格的なパズル要素として遊ばせて欲しかった。

ひどいことを沢山書いたが、システム面でのもうちょっとした踏み込みや、露骨なプレイ時間引き延ばし工作といった辺りを改善すれば、そう悪いゲームではない。
シナリオや世界観なんかはレベルの高い作品なので、この辺りについては好感が持てた。
最近はゲームだからと、ちょっとした登場人物の心情の変化や掛け合いを省略してサボってしまうRPGが標準になりつつあるなかで、
手抜きせずにしっかり丹念に描写している本作は、ある意味貴重である(もうちょっとゲームである以上スリムにして欲しかったが)。

とはいえ、敢えてこう書かせてもらう。

シリーズ作品の上辺だけを真似た模造品。





[2005/09/02]
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