テイルズオブファンタジア なりきりダンジョン


対応機種ゲームボーイ(カラー両対応)
発売日2000/11/10
価格4500円
発売元ナムコ

(c)2000 NAMCO / 藤島康介
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直接的なゲームの内容とは話が逸れるが、当時ナムコは、このゲームともう一本、ドルアーガの塔の新作だったかを、ゲームボーイ用のソフトとして発表していた。
それまでこの会社は、絶好調のプレイステーションにべったりで、ゲームボーイの開発ラインなんて早々に打ち切っていたはずだった。

ポケモンブームが無視できないほど広がったことと、ゲームボーイの後継機種「ゲームボーイアドバンス」の発売が迫っていた。2点を踏まえると、任天堂にご機嫌取りをしておかないとマズイという事情から、端から見ると急ごしらえで企画されたような政治的色合いの強いタイトル群であった。

発表から発売まで急だったし、宣伝にもあまり力が入ってない(自社枠のコマーシャルでは明らかにやる気のなさそうなのをやたら流していたが)。カラー専用ならともかく、今更初代GBにも対応したゲームである。
そして、取ってつけたような低年齢層を意識したゲーム内容が、当時他社でも大量に投入されていたGBタイトル群に埋もれ、注目度としてははっきりいって高くなかった。

そんなわけで、期待値はあまり高くないゲームだったが、蓋を開けてみれば、なかなか良くまとまったゲームである。

ゲームボーイ向けソフトということで、小学生あたりを意識したテキストや、若い主人公、コスチュームを集めて着替えて戦うという、定番のありふれた要素が並ぶが、丁寧に作られており、完成度が高い。

テキストのレベルが非常に高い。まず、小さい子がプレイすることを意識して文章を書いてることや、GBということで容量を気にしないといけないことが、良い方向に作用したんだと思う。
簡潔かつ分かりやすい文章で、伝えたいことを表現している。本来ゲームとはこうあるべきなのである。これを目指すことで、ゲームがグッと引き締まる。
また、一見子供向けにマイルドな作風で作ってるかと思いきや、ゲーム中盤以降は大人も満足できる深みのあるハードなシナリオが展開する。
サブイベント「たのまれごと」も、クオリティが高いだけでなく、なりきりしの力を使って困っている人を助けるという全体のゲームシステムと非常にマッチしている。
ちょっとプレイしていくと、所詮子供向けのゲームと馬鹿に出来ない、結構残酷なシーンや、深いイベントシーンなどがふんだんに盛り込まれており、シナリオの完成度は実は非常に高い。

プログラムレベルも高く、良く出来ており、まずGBというゲーム機の限界をよくわかった上で作っているので、同時期のゲームによく見られた無理矢理感が無い。
処理も軽快で、ストレスになる部分はほとんど無く、操縦性やインターフェイスに関しては十分及第点を与えられる。

戦闘システムは、テイルズは本来フルリアルタイムのサイドビューアクションだが、本作はGBでとてもじゃないが無理なのでコマンド入力型を採用している。
グレードダウンした印象をうけるかもしれないが、その分グラフィックやシステム面で、従来のものに近い風に再現しようという努力はしている。

ここまでかなり褒めてきたが、総合的にこのゲームは結構辛いゲームである。
評価を非常に下げた要因が、自動生成式を採用したダンジョンと、ゲームバランスのチューニングの悪さである。

ダンジョンを自動生成式にしたのは、はっきりいって開発期間が足りなかったからだろう。エンカウントタイプのオーソドックスなRPGで、この方式を取って面白くなったためしがない。
後半になればなるほど、深い階層まで潜らなければならず、やっていてダレるばかり。序盤のダンジョンの長さですらもう退屈さがにじみ出ていたというのに。
取ってつけたようなトラップもうざったいだけであった。ローグの満腹度とは逆を行くシステム、フードサック(食料を使うとポイントが増えていき、残りポイントぶんだけ歩いたときに、消耗したHPやTPを回復させる。つまり食料を切らすと自動回復しなくなり探索が厳しくなる)があるから面白くなるだろうと思ったふしもあるが、
そもそも、作業的なゲームなので、あまりフォロー出来ていない。下手にローグの面白さをいれてみて失敗した例である。開発期間が最初から厳しかったからそもそもこのシステムを採用したという向きもある。
いずれにせよ、絶対にダンジョンは固定式にして、ギミックや宝箱の中身などでバランスを取って、探索を面白味のあるものにすべきだった。

それに合わせたように、ゲームバランスもやや厳しい。服を合成して上位のコスチュームを作ったり、ゲーム中の行動で性格が変化する、ペットのクルールが主人公双子の性格に合わせて形態変化を起こすなど、手の込んだシステムが入っていて、女神転生あたりでやると受けがよさそうなものだが、子供向けを意識したゲームでここまで複雑なパラメータ管理を要求させるのはいくらなんでもやりすぎだろう。
実際には意識してプレイする必要はあまりないが、説明を聞いた段階で「やってられねえよ!」と感じた人多数と予想。

戦闘バランス自体も、特にボス戦が極端に難しく、しっかりバランスが取れていない印象を受けた。自動生成式を採用するからダンジョンで手に入るアイテムやゲーム進行に応じて入手するだろう経験値の平均値などを全く活用できず、ゲームバランスのコントロールが出来ていない。
しかもペットのクルールは、プレイヤーの性格に応じて勝手に能力変化する。「サガ」シリーズのように、肉を食べて変化するかどうか自分で選んでいくなら理不尽さがないのだが、勝手に変化されては、戦略が立てづらい。困ったものだ。

このように、チューニングの甘さと、自動生成式のダンジョンのかったるさが合わさって、ゲーム本編を進めるのが非常に億劫になるゲームである。
作りは非常に丁寧で、全体的に見ると、綺麗にまとまったゲームなのに、もう一歩のところで外してしまっている。きちんとつくり込む前に、発売してしまったようにも見える。なんにせよ非常に惜しいゲームなのは違いない。そこで結論。

面白いのにつまらない!なんとも辛いゲーム。





[2010/08/23]
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