タクティクスオウガ 運命の輪


対応機種プレイステーションポータブル
発売日2010/11/11
価格5980円(UMD)/4980円(PlayStation Store)
発売元スクウェアエニックス

(c)1995 2010 SQUARE ENIX / Basiscape
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15年前、職人的な作り込みと当時としては斬新なゲームシステムが、コアゲーマーを中心に話題となったクエスト「タクティクスオウガ」のフルリメイク版。
当時の制作スタッフが集結し、新しい「タクティクスオウガ」がプレイステーションポータブルで遊べる!

オリジナル版の発売元であるクエストはゲーム事業から撤退して、版権をスクウェアエニックスへ移しており、主要の開発メンバーも大半がここに移籍しているので今回のリメイクが実現した。
会社を移ってからは、ファイナルファンタジータクティクスシリーズを製作していた。

フルリメイクということで、見た目も中身も別物と言っていいほどかなり変わっている。
スーパーファミコン版も、ハードの性能を限界まで引き出していて凄味のある内容であったが、インターフェイスなどこなれていない面も目立っていた。

かいつまんで簡潔に書けば、良い意味でも悪い意味でも今風のゲームになっている。

有名なゲームで例えるなら、「ファイナルファンタジータクティクス」の戦闘ユニット数を増やして、シミュレーション要素を強めた印象を受けた。

グラフィックはフィールドがポリゴン化されたが、キャラクタはスプライトである。
カメラを引いたりズームしたり、真上に動かしたり出来るが、視点を回転させることは出来ない。ポリゴンでありながら、プレイヤーが見れる部分は表側だけだ。つまり、裏データをごまかして処理を軽くしている。

ポリゴンが使えるようになったからといって、見栄えばかりこだわろうとせず、レスポンスや軽快さを重視しているらしく、パッと見た感じだとドット絵かと錯覚してしまうほど、敢えて手を抜いている。
手を抜いているというのは語弊があるのだが、コンピュータへの負担を最小限にしていかに綺麗に見せるか!?ということにこだわっているのだろう。元はスーパーファミコンだったのだし、色数が増えたからってグラデーションバリバリで雰囲気をガラリと変えられてもそれはそれで嫌だ。
この辺のバランス調整はオリジナルスタッフが関わっているからこその仕上がりだろう。

インターフェイスがかなり快適になり、操作性も格段に良くなった。特に戦闘シーンの処理が高速化され、非常にテンポが良い(これは元々SFC版が今の基準で見ると遅かったってのもあるけど)。
システムが複雑なゲームなので、メニュー画面などどうしても欲しい情報を詰め込むとごちゃごちゃしてしまい、煩雑な印象を受けるが、使い勝手は良く非常に練り込まれた設計をしている。
強いて感じた不満点は、ステータス画面を開かない限りユニットの職業が絵のみで示されていて文字で表記されないこと、ユニットのレベルも同時に参照したい時にちょうど別のメニュー枠で隠れてしまうこと、ヘルプメッセージが冗長すぎることが気になった。

特に快適さに関してはかなり気を使っているようで、ディスクアクセスで待たされるところが全くない。これは地味ながら凄いことと言える。バトル開始前にマップを読み込みに行く時にちょっと待つぐらいだが、それも裏データをごまかすなどして、待たせない努力を徹底している。
最近のゲームでここまでディスクアクセスに気を使っているゲームは見たことがない。PSの「ドラゴンクエスト7」以来じゃないだろうか?

バトルシステムが刷新されている。より奥深さや歯ごたえ、スリルを与える方向性に作り替えられている。
大胆だなと思ったのが、経験値の入り方だ。S.RPGでは、なにか行動を取ることで、その行動に応じた経験値が与えられ、ユニットがレベルアップしていくが、本作では戦闘終了後に均等に割り振られるようになった。
特に異彩を放っているのが、ユニット自身にレベルがあるのではなく、ユニットが付いている職業の方にレベルが付いている点。例えば、自分のパーティの中で序盤から戦士としてずっと戦ってきた人がいた場合、他のユニットが戦士にクラスチェンジすると、その戦士と同じレベルに能力値が調整される。
これはつまり、戦力が共有化されているのである。なるべく個々のユニットの格差が出ないようにという配慮だろう。ただし、本作では新しくスキルシステムや熟練度システムが追加されているので、使い込んだキャラクタが強くなるような差別化はきちんと取られている。
このレベルシステムは長所ばかりかと思えばそうでもない。これまで使ったことのない新しい職業が出てきた場合、LV1から育てなおさなければならないのである。また、クラスチェンジのたびに対応する転職証が必要となり、基本職ならばショップで買うことが出来るが、ゲーム後半に登場するような職業の場合、なかなか手に入らないものもある。

経験値だけでなくスキルを覚えるために必要なスキルポイントも同様に、戦闘に勝利しなければポイントが手に入らないので、S.RPGのシステムの裏をかいた、敵を倒す以外の行動(味方を攻撃し続け、それを回復させるといった永久ループ)を繰り返し荒稼ぎするといったズルは出来なくされている。

キャラクタ育成を手軽に行えるように用意されていたトレーニングモードも削除された。「ファイナルファンタジータクティクス」のように、エンカウントバトルで育成するようになった。今作も強制的にエンカウントするが、エンカウントしても戦うか戦わないか選ぶことが出来るように改善され、不快感は無くなった。
トレーニング場の削除は物議をかもすところだろうが、個人的にはこれは製作者の逃げだと感じていたので、なくして正解だと思う。というかリメイクに当たって、真っ先に無くすつもりだったと思う。

キャラ強化がやりづらくなって不便に感じるかもしれないが、このゲームは変にレベル上げをしないぐらいが一番楽しめる。限られたスキルポイントで使えそうなスキルを覚え、自分のやり方にあったパーティ構成を考え、地形や特殊能力を上手に駆使すれば必ずクリアできる。今回も弓が強い気がするが(笑)

基本的に本作はいろいろな要素をじっくり考えて遊んで欲しいように感じた。ゲーム自体の作りは結構硬派である。

リニューアルしたバトルシステムで不満に感じたのは、戦闘が終わってスキルポイントが手に入るたびに、覚えられるスキルをチェックしたり、レベルによって装備できるアイテムが増えていくのでこちらの状況もその都度見てやらなければならず、そのへんの管理が煩雑に感じた。要素が増えた分、やらなければならないことも増えてしまったという感じだ。あと、熟練度上がらなさすぎ!!

さて、このゲームの最大の新システムが、サブタイトルにもなっている「運命の輪」だ。これは、恐らくどこの開発者もやりたがらなかった画期的なシステムだろう。
なんと、戦闘中にいくらでも「待った!」が出来る!!しかも最大50手前まで戻ることが出来る!!しかも、同じ行動をすれば同じ結果になるので、例えば、どうしても当てたい攻撃が当たらなかった場合、当たる乱数(行動)を引けるまで何回でも繰り返し戻すことが出来る。
割と厳しめのゲームだが、このシステムがあるおかげで、辛い局面でもなんとか乗り越えようという気持ちになれるものだ。さすがにインチキすぎると思った人は使わなければ良い。使ったら使ったで使った回数が履歴に残るので、使わずにクリアしても自慢できる仕組みになっている。

「運命の輪」にはもう一つの意味がある。この作品は、ゲーム途中の選択肢やプレイヤーの行動によってシナリオが細かく、時には大きく分岐する。一度エンディングを見たデーターには、過去に戻る事ができる「運命の輪」という機能が追加される。
シナリオもチャート式で表示され、分岐点がどこにあるかなど、全体像が把握できるようになった。もちろん、手塩にかけて育てたパーティはそのまま使える。このため、矛盾が発生しおかしなことになることがあるが、それよりも利便性を追求したのだろう。
スーパーファミコンで出た頃は、恐らく全部のルートを制覇するような遊び方までは想定されてなかっただろう(セーブデータの数が2つしかなかったし)。ストーリーが分岐するということ自体が当時は驚きだったわけで。それが今では便利な機能が追加され、セーブできる数も実質制限がなくなった。これは大きな進歩と言える。

オーケストラサウンドで豪華になったBGMは、サウンドテストモードが追加され、製作者のコメントも掲載され、自由に聴くことができる。クリア後のやり込み要素も大幅に追加され、ダウンロードコンテンツで追加配信(無料)までするという。個人的には最初から全部入れておけよとも思うが、話題作りのためなのだろう。
システムが複雑で歯ごたえのあるゲームだが、「運命の輪」という反則的なシステムや、ゲーム序盤では、S.RPGに不慣れなユーザーを意識したチュートリアルや台詞の挿入など、かなり気配りの効いた作りで、好感が持てる。
全体的なゲームデザインも、かなり考えられていて、非常に良く出来ている。オリジナル版のような技術的な驚きはないが、快適さを追求した作り込みは高い評価を与えられる。そこで結論。

今風の濃さを追求した作品。濃いゲームを求めてる人は是非。





[2010/11/21]
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