テイルズオブファンタジア なりきりダンジョンX


対応機種プレイステーションポータブル
発売日2010/08/05
価格5480円
発売元バンダイナムコゲームス

(c)1994-2010 NBGI / NAMCO TALES STUDIO / 藤島康介
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10年前にゲームボーイで発売された「テイルズオブファンタジア なりきりダンジョン」をフルリメイクした作品である。
関連作品として、「テイルズオブファンタジア」も同時収録する太っ腹な内容となっている。

「なりきりダンジョン」は、ゲームボーイというハードスペックもあり、戦闘シーンがいつものリアルタイムのアクションシーンから、ただのコマンド選択式になっていたり、
色々な面で辛いゲームであったが、今作でリメイクされるにあたって、従来のテイルズシリーズと同様の感覚で遊べるよう、ほとんどの要素がリニューアルされている。
元作とはほとんど別物の内容になっているため、原作は、ストーリーや世界観周りの骨格となる部分を引用した程度の、下地的な立ち位置にあるように認識したほうが良い。
ゲームボーイ版も、意外と練り込まれたシナリオなど評価できる点もあるが、原作の内容を尊重しても、それを新作ゲームとして売り出せるほど、ゲームシステム周りが良く出来ていたわけではない。稚拙な点が多かった。
大幅な内容改訂について賛否あるだろうが、はっきりいって、思い切り割り切って、テイルズシリーズのマニュアルに沿った形に作り替えたのは正解と言える。

フィールドマップがポリゴンで、キャラクタがスプライトだが、無理してポリゴンを採用しなくても、「テイルズオブリバース」などのように一枚絵を使ったほうが整合性が取れていたと思う。
固定カメラだし、ポリゴンを使わなければならない立体感のあるマップを作っているわけでもなし、必然性を感じなかった。

戦闘システムは、NDS「テイルズオブハーツ」と同様のシステムで、エモーショナルゲージを使用し、問題点などを改善したものである。
「テイルズオブハーツ」では、技が出し放題で通常攻撃の意味合いが薄くなっていたが、本作では、特技を出すのに、エモーショナルゲージを消費するため、出し放題というわけにはいかなくなった。
めんどくさくなった印象を受けるかもしれないが、ゲージの溜まり方や減り方のバランスが割とよく出来ているので、気持よく遊ぶことが出来る。

それに加えて主人公2人の「なりきり士」の設定を生かした、幅の広いバトルが楽しい。戦士や忍者、侍に着替えることで、キャラクタ性能がガラッと変わり、操作性も全く異なってくる。
気に入った職業だけで戦っていくこともできるが、それだと職業をマスターした際に手に入るスキルが集まらない。やはりいつまでも極めた職業に拘らず、積極的に様々な職業に変えてプレイしてみるべきだ。
マンネリになりがちな戦闘シーンが、だいぶ面白く感じられるだろう。

4人パーティ制だが、GB版だとデュオ、メル、クルール(ペット)の3人しかいなかった。その足りない穴は、「テイルズオブファンタジア」のキャラクタがメンバーに入ることで補ってくれる。
また、ロンドリーネという新キャラクターも仲間になってくれる。

これらのキャラはゲストキャラというわけではなく、装備品なども自由に変えられるし、自分で操作キャラに出来る。クルールはメンバーから外すことができるが、デュオとメルは主人公という関係上外すことが出来ない。
こうなってくると、人気も存在感もある「テイルズオブファンタジア」のキャラが、主人公の存在を食ってしまう危険性である。
スキットチャットや、フルボイスのイベントシーンなどで、デュオとメル2人の魅力を大きくアピールしているのはわかるのだが、13歳という若さや、なりきり士で色々な職業に変身して戦うという特性上、ゲーム的にこれといった個性をつけづらい。
結果、この2人が主人公という設定が形骸化してしまって、影の薄い存在となってしまう。

ゲームとしては、バトル周りの力の入れっぷりが凄いと感じた。システム自体は使い回しだが、キャラクタのグラフィックが非常に精細で、特に「なりきり士」で職業ごとに当然服装が変わるが単なる色替えでなく、しっかり新規にグラフィックを起こして描いている。
また、レベルアップも小気味良く、職業ごとに熟練度があり、一定値溜めるとスキルが手に入る。職業をマスターしてしまうと、それ以上スキルが手に入らないので、積極的に着替えて色々なコスチュームで戦うように促している。
ゲーム自体もサクサク進み、難易度もいつものテイルズと比べると低めで、アクションが苦手な人でも臆することなく楽しめる。

ただし、不満点も多い。「なりきりダンジョン」というタイトル通り、ダンジョン探索が大半を占める。元々GB版でも、そんな感じで、さらにダンジョンは自動生成式であった(だから「なりきりダンジョン」というタイトルだったわけだが)。
本作では、合間にイベントを挟んで飽きさせない工夫をしたり、ダンジョン構造を固定して、凝ったギミックで単調さを払拭するような努力の跡が垣間見える。
しかし相変わらずゲーム後半になると、似た地形と複雑かつ広大なダンジョンばかりになってくる。行き止まりに宝箱を置いているが、珍しいアイテムが入っていることが少なく、隅々までぞうきん掛けする気が失せてしまう。
肝心の戦闘も、敵の種類が少なく似た敵ばかりで、バトルバランスもぬるま湯なために、作業的になってしまう。しかも、このゲームは、テイルズシリーズでは珍しくランダムエンカウント方式を採用している。

コスチュームを着替えて、バリエーション豊かな戦いが楽しめるのは確かなのだが、特定のコンボ攻撃が強力で、それらを見付け出してしまうと、その繰り返しになるだけで、敵キャラクターが弱いことも合わせて、かなりつまらない。
一応職業や特技には属性が設定されており、ダンジョンの特性に合わせた職業で戦いに出れば優位に進められるといった仕掛けを付け足しているが、そもそもゲーム自体がヌルいので、そこまで考慮する必要がない。

魔物使いというコスチュームがあり、特定のモンスターを仲間に出来て、自分で操作まで出来るが、その力の入れっぷりは評価したいが、モンスターは可愛くないから愛着もわかないし、仲間にできるモンスターも決まっているので、よほど狙ってやらなければ仲間が増えていかない。
ここまで苦労しても、ゲーム的に楽になるなどのメリットがあまり見られないのが難点。メンバー不足に陥ることもないので、蛇足的要素と言える。

ストーリーも、もっと深みがあってエグい描写があった気がするが、昨今のテイルズシリーズの作風に合わせてライト化している。これはこれで仕方のないことだと思う。

勲章というシステムがあり、条件を満たすと入手出来るが、これがXbox360の実績システムそっくりだ。項目ごとにポイントが設定されており、最大1000ポイント。
主にゲーム上のやり込み要素を極めていくことで、勲章が入手されていくが、さすがにここまで一緒だと意識していると言わざるをえない。各項目別にアイコンまであるし。
そもそも、このシリーズには、似たシステムで称号というものがあるのだから、敢えて勲章システムまで作らなくても良いのではないか。開発者の自己満足といった印象が強い。

さて、このゲームにはもう一本、「テイルズオブファンタジア」が丸々一本収録されている。「テイルズオブファンタジア クロスエディション」だ。
本編は勿論「なりきりダンジョンX」で、どうせ以前発売したPSP「フルボイスエディション」をお得感を出すために入れただけだろうと思っていたのだが、これ一本で別にパッケージとして売り出せるほど色々手を入れている。
「フルボイスエディション」をベースに、戦闘プログラムを強化。具体的には、戦闘のテンポアップや、魔法を発動した際に一々時間が止まらなくなるなど、ゲームバランスにも手を加えている。内容的には、「テイルズオブエターニア」に近くした感じだ。

「なりきりダンジョンX」を遊んだあとだと、見た目が古臭く辛いかもしれないが、中身は断然こっちの方が面白い(見た目は慣れれば気にならなくなる)。金や人手をかけて作られた「なりきりダンジョンX」より、半ばおまけで付けられた「クロスエディション」の方が面白いというのは、なんとも皮肉な話だ。
ぶっちゃけ、これ目当てで買っても良いぐらいだ。それぐらい、完成度が高い。
「なりきりダンジョンX」に登場したロンドリーネという新キャラクタがこっちにも登場し、仲間になって一緒に戦ってもくれる。それに伴って、イベントシーンが追加されている。が、後付けで入れているので、当然後付け感が強く、しかも本来の作品と内容をかけ離れさせるわけにもいかないという配慮からか、頻繁に離脱する。
しかし、せっかくのオリジナルキャラクターなのに最終的にパーティから外れてしまうというのはなんとも…。

気になった点と言えば、敵の名前が戦闘時に表示されなくなったというぐらいで、敵名を表示していた領域には代わりにレーダーが表示され敵味方の位置が一目でわかるようになっている。また、容量の都合からか、オープニングムービーも削除されている(歌のデーターは入っている)
あと、敵味方合わせて魔法を一斉に発動すると、若干挙動がおかしくなる(UMDに読み込みに行く)。致命的なエラーは出ないが、かなり無理をしているようだ。

以前この会社は、「R4 リッジレーサータイプ4」を出した時も、昔のゲーム(初代リッジレーサーを60フレームにして収録)をブラッシュアップしておまけディスクとして収録したら、そっちの出来の方が良かったという目も当てられない出来事があった。
本作も、その悲劇を繰り返してしまっただけに感じた。最近はこのシリーズも売れなくなってきて、なりふり構っていられなくなったのだろう。なぜ、このような事態になってしまったのか、しっかり研究すればシリーズマンネリを打破できるかもしれない。

とりあえず個人的に感じたのは、バトルシステムの自己主張が強くなってきて、RPGとしての戦闘シーンというよりは、戦闘シーンのためのRPGになってきてしまっている感じがする。派手なコンボ攻撃で敵をハメ殺して倒すのも爽快で華やかかもしれないが、RPGとしてはくどくて疲れてしまうのだ。今の若い子にはこういう路線の方が受けるのかもしれないが…。
そんなコンボゲーではなく、総合的なテンポを意識したゲーム構成を、もう少し考えたほうがいいかもしれない(これはこのRPGに限ったことではないのだが)。各要素は非常に作り込まれていても、全体的にごってりとしたステーキのようなゲームになってしまっていて、色々な要素を見直して、枝葉を切り落とすべき段階に来ているのかもしれない。そこで結論。

本編がおまけに勝てなかった残念な作品。





[2010/08/15]
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