テイルズオブリバース


対応機種プレイステーション2
発売日2004/12/16
価格6800円
発売元ナムコ

(c)2004 NAMCO / NAMCO TALES STUDIO / いのまたむつみ
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ナムコの看板RPG、テイルズオブシリーズの新作が早くも登場。
主題歌にEvery Little Thingを起用し、お馴染みアニメーションムービーはプロダクションI.Gの豪華さで送る渾身の作品。

ゲームキューブで発売された「テイルズオブシンフォニア」とは違い、ハードスペックを考慮に入れたためか
2Dのドット絵を基調としたグラフィックで、このおかげでデータ量が軽く、ディスクアクセスやゲーム展開は軽快さを失われず、スピーディに楽しめる。
以前の「テイルズオブデスティニー2」と比べあまり進歩が見られないのは苦しいところではあるが、
様々な工夫によって立体感や臨場感は飛躍的にアップしている。

「デスティニー2」と随分とテイストが似ていると思っていたら、やはり制作スタッフが同じのようだ。
基本的に、「デスティニー2」での反省点を踏まえたものとなっているが、システムの煩雑さや、ところどころで見られる不親切さ、
全体的なセンスの悪さなどは相変わらずで、良くも悪くもプレイ感覚に大きな違いはなく、相変わらず人を選ぶゲームになっている。
まぁ、それでもデスティニー2よりは幾分かはマシになっている。

イベントシーンがかなり多く、プレイ時間の半分以上はイベント音声を聞いていた気がする。
イベント時の音声がフルボイスなのは良いが、かなり言い回しが雄弁すぎてテンポが悪い。
フルボイスが逆効果となってしまっている。
すっかりお馴染みのキャラ同士が雑談をするスキットチャットシステムも、分量が異常に多く、
画面左下に常に現段階で聞けるチャット内容の題名が表示されるようになったのは良いが、
ちょっと話を進めるだけで、沢山のチャットが聞けるようになって、これが楽しければよいのだが
同じ内容の台詞を違うキャラが喋るだけだったり、キャラクターの魅力に乏しいのでそもそもつまらなかったりと、
余計なものに力を注いでしまったという苦しさを感じさせる。
前作「シンフォニア」では、発動条件が曖昧で、かつ、いつでも聞けるというわけではなく
本当に唐突に歩いている時に表示されるので、まさに雑談感覚で面白かったのだが、
本作では、なんだか機械的で寧ろ、聞かされてる感じがどうにも悪い印象を受けてしまった。

しかし、それにしても良く喋るゲームである。台本の分厚さとか、声優の人たちが一体どれほど時間をかけて苦労しながら成し遂げたのか、などという余計なことを思わず気にしてしまう。

このシリーズは、ターゲット層の関係か、シナリオが結構青臭かったりするのだが、
前作「シンフォニア」では、そんな作風でもなかなかの面白味を見せ、楽しめた。
が、本作は非常にありきたりで、中身が無く、つまらない。こうも、シリーズ内で落差を見せつけられると、さすがに辛い。
あと、少々脚本が独りよがりなところも見受けられた。ゲームのシナリオとしても出来はかなり悪い方だろう。
大半が物語をなぞっていく内容になっているのだから、この辺りもっとしっかり作れなかったものか?
いのまたむつみのキャラクターデザインも、いい加減飽きたというか、押しつけがましく感じられる。夢見る乙女系の少女漫画じゃないんだから。

また、このシリーズはクリアまでのプレイ時間も割と長めなのも特徴的で、本作も例に漏れず結構かかるのだが、
どうも、他シリーズに比べ無理矢理引き延ばしている節が強く見られる。
露骨なたらい回しなフラグ立てが多く、最初にも述べたとおり、イベントを進行させるための部類のものが大半を占めるため、
RPGとしてのボリュームはプレイ時間に対してかなり薄く、物足りない。

特にゲーム後半では、一度訪れた町やダンジョンをフラグ立てのためだけに、またうろつかなくてはならないという構成は苦痛極まりない。
基本的に次にやるべきことを教えてくれるのだが、敢えて突き放してかかってくるところもあり、ストレスが溜まるばかり。
暗号の答えの入力を求められるような考えさせる局面を用意しておきながら、一方では似たような状況下で親切に答えを教えてしまう箇所もあったりして、
どうしたいのかがはっきりしない。

戦闘周りのシステムはおおむね面白いものになっている。
3ライン用意されたバトルフィールドは、無駄に派手で爽快感も自由度もあり、なかなか楽しめる。
特にTPを廃止したのは、正解だろう。詳しい説明は省くが、必殺技がかなり使いやすく改良が施され、だいぶ遊びやすくなった。
また、ヒットポイントに一般のRPGと比べ、だいぶ重みを持たせており、この辺りの概念も面白いところだ。
スタミナのような意味合いを持たせていて、直接的な回復手段を減らし、代わりに戦闘中に端っこで休むなどすることで回復したり、
回復アイテムは少々高めの値段設定にしており、非戦闘時では料理での回復が絶大な威力を誇る。この辺の仕組みは良く出来ていると思う。

ラッシュゲージというテンションの高まり具合によって攻撃力や防御力のパラメータが変動するシステムも上手い。
テンションが高いと、攻撃を防御する敵や、逆に高い状態でないと攻撃が入りにくい相手など、考えて戦うことで優位にことが運ぶように作っている辺りは評価出来る。
しかし、ラッシュゲージの上げ下げの操作がしづらいのは一考の余地があったろう。
攻撃しているだけであがっていくゲージに対し、下げる場合は、防御+↓なのは、咄嗟な操作ができず困る。
防御するだけでゲージは下がっても良かっただろう。

ただ、複雑なシステムなのに、バランスが少々厳しめで、敷居が高いのはマズイだろう。
せめて、ザコ戦はもうちょっと易しめにしても良かったのではないかと思う。
また、戦闘の目まぐるしい速さに対応しきれず、思い通りに動かせない、また、CPUが操作するパーティキャラが
このシステムについてこれない程度の知能しか無く(断っておくが、決して馬鹿ではなくCPUとしては賢い方である)、シビアな局面ではただただ足を引っ張るだけになってしまってるのも苦しい。
戦闘のみ、マルチタップを使用しての最大4人での協力プレイが出来るようで、どうもそれ前提の作りにしてる気がする。

チュートリアルが充実しているが、この他とは一線を画した戦闘スタイルに対する戦術に関しては全く触れられてないので、
とっかかりがつかめなかった人には辛いものとなろう。この辺りの配慮をもっとあっても良かったのではないか?
また、説明文が冗長な言い回しでかえってわかりにくいのも何とか出来ないのか。
妙に小難しい言葉を使っていたり、最近のゲームに見られる頭でっかちさや無機質さが鼻に付く。

戦闘で得られるポイントを使って武具を強化するというカスタマイズの要素があるのだが、
バランス崩壊を防ぐためか制限が厳しい上に自由度に乏しく、特殊能力の発現は運任せなので、思った通りに強化出来ない。
これでは、凝って自分好みの武具を作ってやろうという気になれない。
結局、溜まったポイントを適当に割り振って…という作業になってしまう。
新たな武具へ、強化した武具を継承させる要素もあるが、これもたいした恩恵が受けられず面白くない。
戦闘バランスが、やや厳しめなのだから、この辺りで自分風にこだわったカスタマイズを施すことで、楽に進めるようになるような自由度を与えてくれれば
だいぶ面白くなったろうに、実に勿体ない。

他にも必殺技の熟練度を消費して覚える奥義や、フォルスキューブの成長などがあるが、どちらも意味が分かりにくく一考の余地があったのではないか。
フォルスキューブに関しては、なにもいじらなくても問題なくクリア出来てしまうし。

割と、全体的に丁寧に作っている印象はあるが、それが過剰すぎてかえって過保護になってしまっていて、
がっつり一本道な内容になってしまっている。物語的にもゲームバランス的にも。これではただ、制作者の想定されたプレイスタイルをなぞらされているだけで面白くない。

音楽が全体的にマイルドで、特にバトル音楽がださいのもなんだかねぇ。
ある種、このシリーズで戦闘シーンは大きなウエイトを占めているのだから、もっとパンチの効いたものを流して欲しかった。

獲得したグレードを消費して各種特典を購入した状態で始められる2周目も、すっかりお馴染みとなった要素だが、
「シンフォニア」と違って、ここで消費したグレードは、戻ってこない理不尽さもどうにかしてほしいところだ。
普通、2周目を遊ぶのに、1周目と違ってある程度のメリットが欲しいのに、それすらも躊躇させる仕様は「デスティニー2」で不評だったはずなのだが、
敢えてまた戻したというのに、制作者のエゴを感じざるを得ない。

ストーリーは駄目、キャラクターも駄目、結局はよりストイックに作り込まれた戦闘を楽しむゲームなわけだ。
相変わらず「デスティニー2」のように、戦闘は一回の戦いだけで相当疲弊する忙しさはどうかとも思うが、
叩きつけるほど悪いものでもない。が、人を選ぶとんがったゲームなのも事実。

格闘ゲームの忙しさを合わせ持つクセの強い戦闘大好き人間に送る、それ以外の人にはとことん無愛想なゲーム。





[2005/08/24]
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