テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3


対応機種プレイステーションポータブル
発売日2011/02/10
価格5980円(UMD)/5700円(PlayStation Store)
発売元バンダイナムコゲームス

(c)2011 NBGI / Alfa System / NAMCO TALES STUDIO / いのまたむつみ / 藤島康介
戻る

「テイルズオブグレイセス」までの、合計14作品から総勢約80名のキャラクタが登場し戦闘に参加する、テイルズシリーズのオールスター決定版。
テイルズキャラが作品の垣根を超えて集まり、掛け合いを楽しんだり好きなキャラとパーティを組んで冒険に出る事ができる、人気外伝シリーズの3作目。

このシリーズは、起源を辿ると2002年ゲームボーイアドバンスでリリースした「テイルズオブザワールド なりきりダンジョン2」が始まりである。この時まだ扱っていたタイトルはわずか3作のみであった。
その後2年ごとに新作が発売され、2006年末からはPSPにプラットフォームを移しコンセプトを現在のものに一新させた「レディアントマイソロジー」としてリニューアルした。

元々、熱心なシリーズファン相手に小銭稼ぎしていた程度のゲームだった。本編の新作が発売される一ヶ月前後に一緒に出して、ついでに買ってね!程度のゲームであった。
GBAのころは、テキストに声を当てる必要がなく、戦闘ボイスも本編作品から流用すれば良かったし、後はドットのキャラパターンを作れば良い程度の安上がりさだった。
だがPSPになってからは1キャラごとにポリゴンのモデリングやモーションを用意したり、性能が上がったのでわざわざ声優を呼んで台詞に声を当ててもらう必要が出てきて、作りを本格的にせざるを得なくなっていった。

そんな経緯のゲームなので発売元のナムコでは注目度が低かったのか、シリーズ上の位置づけとしては扱いが低く、制作は外注先のアルファシステムが好きに作っている感じだった(この会社は開発力があるので、それなりにいいモンを仕上げてくる)。
しかし、前作のレディアントマイソロジー2が低迷する本編作品を上回る売れ行きを見せたので、今作では開発に本編を手がけるナムコテイルズスタジオががっちりかんで来ることとなった。

おおまかなゲーム内容としては、システムは前作が優秀すぎたためかそのまま踏襲して、不満点や欠点の改善がメイン。
前作までに作った50体の収録キャラをそのままに新たに30体の新キャラを追加。ストーリーは勿論新規のものに差し替えられる。

インターフェイスは徹底して見直され、隙のない完成度に仕上がっている。アジトの構造も利便性を追求した作りになり、アイテム倉庫をクエストカウンタとショップの2つのエリアに設置したり、イベントのフラグが視覚的に確認できる機能が付けられ、アジトマップで逐一確認できる。
前作では伝説の武具を獲得するクエストが分かりにくくサブイベントを見逃しやすかったが、今回はこういう細かな配慮が隙間なく張り巡らされているので、気持ち良く遊ぶことが出来る。
他にも、登場人物の解説が入ったキャラクター図鑑(まぁGBA時代には元々付いていたんだが)が追加されたり、ダンジョンではやりすぎと言わんばかりに案内板の看板をつけるなど、挙げていくとキリがない。
恐らくテスターから意見や要望、改善する点を徹底的に洗い出してもらったんだろう。

本編作品とのゲームシステムの摺り合わせが目的なのか、一方で大きな変更点もいくつか見られる。
ダンジョン内の視点をプレイヤー後方視点(カメラ制御可能)のタイプから、本編と同様の見下ろし型に変更。ソーサラーリングを使ってダンジョンギミックを解いて道を開くといった探索の面白さを重視した作りになった。
生産システムを大幅に簡素化し、シンプルなものに変更(個人的にはネットゲームっぽくて嫌いじゃなかったのだが)。
採取や採掘に必要だった道具が不要になり、プレイヤーの生産レベルは撤廃され、レシピと素材アイテムがあれば、無条件でアイテムを作れる簡単なものになった。装備品の強化はショップにいる鍛冶屋にやってもらうことに。今までつきまとっていた失敗という概念を全て廃している。
武具には特殊効果のスキルが付いていることがあるが、今作では新たに武具を合成させる要素が加わって、性能が低くて不要になった武具でも、使えるスキルを持っていたら、強い装備品に合成という形で継承させることが出来る(合成するのだから消費した武具は当然消滅する)。ただし武具に付けられたスロットの数だけという制限がある。
合成システムの特長である“不要になったり価値のないものに価値を持たせる”ことに見事に成功している。

他にもグレードポイント(バトルの立ち回りの上手さを評価されることで得られるポイント)の扱いを、本編作品と同様クリア後の便利特典を購入する用途に変更された(これまでは素材やNPCの作戦行動、転職権を買うなど大きく意味合いが違っていた)。

細かい不満点の解消を挙げていくとキリがないのだが、かいつまんで気になった点だけでも触れていくと、レア装備品の所持制限が1つだけという制限を無くして集める楽しみを味わえるようになった、戦闘BGMを変更する条件が緩和されて簡単に変更できるようになった、
精霊のかけら集めという面倒くさい要素を廃止し、レアアイテムは宝箱から手に入れる&敵を倒すといったわかりやすい取得条件になっていること、宝箱の鍵を開ける要素の廃止など。

戦闘に参加しないキャラクタにも経験値を与えないと不便でしょうってことで、使わないキャラもしっかりレベルが上がっていく。個人的には、前作のように実際に戦闘に出さないと強くならないというほうがS.RPG的で好きなのだが、なにせ人数が半端じゃない数なので、この判断は正しいだろう。

このシリーズは主人公=プレイヤーで、ゲーム開始直後にアバター(容姿)を決めるのだが、かなり自由度が高まっている。髪の色、肌の色、眼の色、全部自由に変えられる。
カスタマイズのバリエーションも豊富で、初音ミクみたいなキャラ(例えが古いか!?)や、オッドアイのキャラも作成可能。最初のキャラクタークリエイションだけで30分は遊べそうな内容だ(最近のゲームだとこれぐらい自由に出来てもそんなに珍しくはないか)。

これだけ色々な要素を1から見直して、改良されていっているのに、相変わらずゲーム進行はこれまでどおり作業的でだるいクエスト形式である。
割合的に、テイルズキャラからの依頼が増えて、ボイス付きのイベントシーンを挟んだクエストで飽きさせないようにしたり、メインシナリオがスムースに進行するような工夫は見られるのだが、結局は、同じ場所を行ったり来たりして似たような敵との戦闘とアイテム集めの繰り返しである。
手堅く安定感を目指した出来栄えはよくまとまっていてとても評価できるのだが、欲を言えばもっと冒険をして欲しかった。目新しいものがなさすぎるのも問題だ。

不満点も、まぁ、重箱の隅つつきレベルだが結構ある。同じ路線で3作目ということもあって、多少突っ込んで指摘しても良いだろう。

ギルドの中で発生するスキットチャット(テイルズキャラのおしゃべり)は、条件を満たした状態ならすぐポップアップを出して欲しい。あの小さいエリアで数秒待たないと表示されないというのは、ダメとまでは言わないが勿体無い(ボイスつきのヤツはせっかく録り下ろしたのだろうし)。
大体マップを切り替えるタイミングで表示されることが多いので、意識的に待ってやらないと見落とすことが多かった。
ダンジョンが見下ろし型になったが、せっかくポリゴン使ってるんだし立体感を出そうとやたら立体交差しているところが多いが、操作キャラが物陰に隠れてしまってうざったい箇所が多い。物陰に隠れた場所でちょうど敵とぶつかって戦闘になってしまうと実にストレスが溜まる。
また、ダンジョンはかなり広くなり、ギミックも豊富で面白く、長い道のりを何度も無意味に通らせないためにショートカット出来るような構造の配慮などはとても素晴らしいが、容量の関係かマップパーツの使い回しが非常に目立つ。特に奥のほうのエリアと最初のエリアがほとんどそっくりというパターンが多い。慣れれば気にならないが特殊効果(ブラー効果など)も使い過ぎに感じた。
ゲーム開始直後のチュートリアルがうざったい。親切丁寧なのもいいが、やりすぎなのである。悪いがすぐにゲームが遊びたい。もっと投げっぱなしでも良かったと思う。ただでさえシリーズファン向けのゲームなのだし、シリーズのお決まり要素に関してまで一々解説する必要はないだろう。
どうしても不明な点があるなら、メニュー画面のガイドブックにかなり細かく説明文が載ってるからそれを見ればいい。
戦闘シーンは2が優秀すぎたので流用しているが、それじゃ物足りないと思ったのか、オーバーリミッツの他にレディアントドライブ(特技を使い放題)という新要素を取り入れているが、むりやりねじ込んだようにしか思えなかった。どっちか一つでいいだろう。それか、一つにまとめるか、詰め込みすぎは良くない。
主人公=プレイヤーであることに異常に固執しているが、あまり効果的に作用してない感じがする(公式動画でも他のテイルズキャラを操作している始末…)。装備品で見た目が変えられるのは頑張っているが、どうにも数ある割にどれもパッとしない印象。
連動サイトでこのアバターキャラ(主人公キャラ)のやりとりが出来るようにしているが、いちいちタイトル画面に戻って連動サイトにアクセスしないといけない。面倒くさい。ワイヤレス通信(すれちがい通信)が主流になってきているから、そっちでデータのやり取りをした方がいいだろう。
このサイトに登録しないと手に入らない装備とか遊べないクエストとか、運営も大変だろうし、手間かかってる割に仕組みも分かりづらいから辞めたほうがいいと思う。ワイヤレス通信を使って協力プレイでダンジョン攻略とかのほうが、安易に流行りに乗っかる格好になるが、まだ新規プレイヤーを獲得できる要素になったと思う。

ストーリーが雄弁すぎるというか冗長である。特に、説明的な台詞(設定の解説)と固有名詞が多い。この辺はテイルズスタジオが入ってきて力みすぎた反動って感じがする。
また、これまでは外注先に丸投げだったことで逆にオリジナルのBGMがなかなか新鮮で良かったのだが、テイルズスタジオが介入したせいで、いつものおかかえ作曲者をメインに据えたことで、新規の曲がいつもの似たり寄ったりの音楽になってしまっているのも残念。

きついことも多く書いてしまったが、基本的な部分が良く出来ているので面白く遊べるゲームである。目新しい要素が少なくマンネリが激しいことと、ゲームの進行速度がもっと早ければ(特に前半)、楽しく遊べたと思う。

クリア後も大量におまけ要素がこれみよがしに追加され、クリア後でないと登場しないキャラや、ファンサービスに満ちた隠しボスの存在、見せるだけ見せて興味を引かせるだけで到達できなかったダンジョンの奥地へ行けるようになるクエスト、
メイド服といったネタ装備の型紙が入った宝箱を探す、戦闘BGM収集(戦闘の音楽だけでもほとんど流用とはいえなんと60曲!!)など、クリア後も遊ばせるための焚き付け方が非常にうまい。

最後に、新規収録キャラについて軽く触れる。人気作である「テイルズオブヴェスペリア」の追加が多い(前作では時期的におまけでギリギリ追加といった感じだった)。しかし、過去に扱った作品のキャラクターもまんべんなく追加しており、偏りはそれほど無いと感じた。
新規では「ラタトスクの騎士」「テイルズオブハーツ」「テイルズオブグレイセス」から3人ずつ。既存の作品だとよっぽどの不人気キャラ(?)以外は概ね網羅しているのではないだろうか。ここまでやっちゃうと次(続編)が心配になる。そろそろ全部入りは厳しい感じがする。

1作目、2作目の積み重ねがあってこそ、この3作目が出来た。1、2を遊んでいたユーザーにとっては新鮮さに乏しく辛いところも目立つが、いきなり3からプレイする人は、かなり楽しいのではないだろうか。そこで結論。

手堅い続編で、ひとつの完成形。1と2をやってない人こそ手を出してみるべし(テイルズ全く触ったことない人が敢えて入ってみるのもありかもしれない)。





[2011/02/17]
戻る

inserted by FC2 system