テイルズオブエクシリア


対応機種プレイステーション3
発売日2011/09/08
価格7980円
発売元バンダイナムコゲームス

(c)2011 NAMCO BANDAI Games / NAMCO TALES STUDIO / いのまたむつみ / 藤島康介
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テイルズ生誕15周年記念作品でありながら、意欲的なシステムを盛り込んだテイルズシリーズの新たなる挑戦。それがこの「テイルズオブエクシリア」である。

制作手法が確立した頃から、ずっとこのシリーズに対してマンネリを指摘し続けていた。
現在の戦闘システムのベースを作った「テイルズオブエターニア」、フィールド&バトルマップに積極的に3Dを取り入れた「テイルズオブシンフォニア」といった初期の作品では、画期的な進化を見せてくれていた。
もちろん、シリーズ1作目「テイルズオブファンタジア」のアクション戦闘の功績や当時としては斬新なストーリーも忘れてはならない。

だが、これ以降シリーズとしてのシステムが固まってきてからは保守的となり、似たり寄ったりの作品ばかりになってしまっていた。
ゆえに、このシリーズを知らない人や興味のない人からは毎年2人のキャラデザを交互に入れ替えて似たようなゲームを出している、なんか妙にしぶといシリーズといった印象を持たれていたのではないかと思う。

実際蓋を開けてみても、王道シナリオ&システムは安定感はあるのだが、バトルシステムはちょっとルールが違っているだけで、結局は同じことの繰り返しだった。
これが2,3本で終わっていれば良いのだが慣習化してしまい、何年も金太郎飴のようなゲームが出続けていた。

それは売り上げにも結果として表れており、PS2「テイルズオブジアビス」以降は、供給プラットフォームの迷走やRPG市場の衰退も重なり、だいぶ落ちぶれてきてしまっていた。

今作は、そんな逆境を乗り越えるべく隅々までゲーム内容を精査し練り上げられた意欲作となっている。

制作スタッフは、「テイルズオブヴェスペリア」等作ってきた本流チームが主導となって開発しており、同作品の色が強く出ている。
(テイルズスタジオは主に2ラインの開発を持っていて平行して作品を作っているが、今作の開発チームは比較的恵まれた開発環境を与えられているため、勝手に本流チームと書いている)

まず、主人公。お抱えイラストレーターのいのまたむつみと藤島康介それぞれがデザインした2人から選ぶ選択制を採用している。
はっきりいって、わざわざ2人の絵師を起用するメリットは全くない。キャラデザの統一感が崩れるし、ギャラはその分かかるしでいいことは何も無い。
なぜ敢えてそんなことをしたのかというと、「今回はこれだけ力を入れてますよ」という客寄せ対策だ。これぐらいのサプライズがないと中々興味を持ってもらえないことをわかっているのだ。

主人公が2人いるが、基本的にメインシナリオは1本で、一部別行動をする場面があり、そこを両方見たければ2周プレイする必要がある。が、概略は1周プレイするだけでわかるようにフォローされているので、無理に2周する必要はない。
RPGはプレイ時間の長いジャンルなので、下手に隠して周回プレイを強要する作りにされると辛いものだ。

ゲームシステムやインターフェイスで煩雑な部分を排除しすっきりと洗練されている。
RPGは複雑なシステムを良しとしていた風潮が一時期少なからずあったが、今作では逆に無駄を徹底的に排除し簡略化している。
王道RPGを貫き通してきたこのシリーズでここまで思い切ったことをやってしまうと、賛否両論わかれるだろうが、個人的には英断だと感じた。

主にシリーズ恒例となっている要素を見直して整理している。例えば、スペクタクルズを使わなくても敵のHPや弱点といった情報を見ることができる。厳密にはNDS「テイルズオブハーツ」時点で廃止されたのだが、一々敵の特性を見るのにアイテムを使わなければならない手間はゲームとしての面白さに全く繋がらないと言う判断だろう。
料理システムも素材を消費して調理し、調理する人の熟練度が上がる、レシピを探すといった、一連のプロセスを全て無くし、料理屋で料理を買って使うだけという非常にシンプル極まりないものとなった。
作品によっては、戦闘中ステータスが上がったり戦闘終了時に回復効果が出たりと料理コマンドを使うことが前提のバランス取りをしていて、中々面白い味付けをしているものもあったのだが、それでも面倒くさくて使う気になれないという人が思いの外多かったのだろう。
個人的にはちょっとやり過ぎかなあとも思うが、敢えてバッサリ切り捨てたのだろう。

微妙な立ち位置だった称号システムもテコ入れが入った。装備すると称号ボーナスとしてステータスが上昇したり、はたまたただの収集要素に成り下がっていたり、存在意義が問われる称号システムだったが、今回はしっかり意味をもたせた。
これまではキャラクタごとに称号があって付け替えたりできたが、今回はゲームのやり込み度合いによって称号が与えられるようになっている(PS3本体機能のトロフィー機能のようなもの)。称号にはグレードポイントがついていて、称号を集めることでグレードポイントも溜まっていく。
グレードポイントは、2周目以降のプレイをする際に引継ぎ特典を購入するときに使うポイントで、これまでだと主に戦闘を繰り返して集めていたものだった。このような仕様に変更することで不毛なグレード稼ぎをする必要もなくなった(逆を言えば稼げなくなったとも言える)。

フィールド周りのシステムも一新した。これまでテイルズはマップをポリゴン化したとしても、固定視点にこだわっており、また、縮尺の違ういわゆるフィールドマップがあって、RPGとしては古風なスタイルを守り続けていた(厳密にはテイルズオブグレイセスですでにワールドマップを撤廃してたりするが固定視点のままだったり、プログラム周り等制作の都合上といった感じで意識的になくしたものではなかったため評価できるものではない)。
しかし今回は、「ファイナルファンタジー12」や「ドラゴンクエスト8」のような等身大のマップとプレイヤーを中心にカメラを動かすタイプを採用した。
このスタイルは立体感や迫力といった視覚的効果を強く出すことが出来るが、隅々まで見て回れるのでごまかしが効かないため、マップ制作が大変で、カメラ制御など高度なプログラム処理を求められる。また、プレイヤー側としては、位置を見失いやすい欠点を持つ。多くのゲームではレーダーマップを付けたり全体マップを見ることが出来て位置情報を与えるようにしている。
テイルズはこのへん後発の強みで、フォローがしっかり出来ているためストレスを感じる所がほとんどない。マップの大きさもほどよく、シンボルエンカウントなので探索のストレスも無い。
ストーリー上の制限がなければ、好きなタイミングで行きたい町やダンジョンへ一発でワープできる機能までつけている。

イベントのフラグ情報を全て視覚化している点も良い。大量にサブイベントを仕込まれていても、それがわかりにくいシリーズだった。進行度を目で見えるようにすることで遊びやすくなる。
だが、仕方のないことだと思うが、相変わらずストーリーを進めると消滅してしまうイベントがあるのは残念だった。

こういった前衛的なシステムの刷新には、近年台頭してきた海外ゲームの影響を強く受けているのは間違いない。
海外でもこのゲームを売りたいという意図もあるだろうが、近年の優れた洋ゲーを分析してうまく国産のゲームに還元させる今作のような手法は健全で、褒められるものと言える。
最近は、ここのやり方を間違えて、ワールドワイドを振りかざして、ただ海外ゲームの真似事をやって失敗しているケースが目立っており、和製ゲームの良さを潰して自爆しているゲームが多かった。

素材を納品して自らの手でお店を成長させていくショップビルド、クモの巣のような網の上にステータスアップのマスが配置され自分でキャラクター強化していくリリアルオーブシステムは、先んじて発売されたスクウェアエニックス「ファイナルファンタジー13」を参考に作られたシステムだろう。
女主人公のミラがライトニングと似たキャラをしているのも、少なからず影響を受けていると思われる。昔からこのシリーズは、他の人気シリーズを参考にゲームを作る。今に始まったことではない。
オリジナリティや新鮮さという面では一歩劣るかもしれないが、作られたシステムが優秀で面白ければそれは評価に値する。ここで挙げた2つのシステムは、どちらも無難にまとまっていて出来は良い。

いっぽう、マンネリの極みであったバトルシステムは、自由度を高めた反動で複雑化している。だが、奇を衒った要素はなく、すんなり入ることが出来るだろう。
これまで操作キャラ以外は決まったAIルーチンに則って行動しており、連携を取るにはプレイヤーはコンピュータが動かすキャラに合わせて動かなければならなかった。
今回はリンクシステムによって協力しやすくなった。パーティキャラの1人とリンク状態になることで、ある程度こちらの動きに合わせて動いてくれる。また、リンク状態になることで特別な恩恵を受けることも出来る。キャラクタごとに効果が異なるので状況に応じて使い分けたりもできる。ゲージを貯めた状態で2人技なんかを出したりも出来る。
また、戦闘中に自由にパーティキャラを入れ替えることが出来るのも特徴的だ。

後は、軸ずらし対策が取られている。攻撃判定の狭さを使って、急接近して攻撃を誘った瞬間、フリーランによって軸をずらし空振りさせて後ろに回って攻撃するという戦法が使えなくなった。でも結局ぐるぐるまわって敵の空振りを誘う戦法が有効なのは変わりがないが...。
このように戦闘システム自体を大きく変えるわけにはいかないが、攻撃モーションやアクション、スキルを多彩にすることで、マンネリを解消しようと努力している。

手触り感を変えたりして目新しさを出そうと頑張ってるのはわかるのだが、バトルに関しては根本的な部分でマンネリを解決出来ているかというと厳しいと言わざるを得ない。
リンク攻撃やパーティキャラの戦闘中の入れ替えといったシステムは新しいが、そろそろ4人パーティでエンカウント型3D戦闘シーンという枠組みから脱却しなければマンネリを解消できないのではないかと思う。
控えメンバーという概念を無くし、パーティメンバー全員が戦闘に同時に参加するぐらいの冒険をして欲しかった。バランス調整が大変だったりPS3のハード性能をもってしても未だ処理が厳しいかもしれないが。

事前情報を見てると小難しそうな印象があるかもしれないが、今回は間口を広げたかったのか、難易度はどっぷりぬるま湯で、シリーズファンならほとんど経験値稼ぎすることなく楽にクリアできてしまうほどだろう。
アイテムもお金もたっぷり手に入り、不便する所がない。戦闘自体も反射神経的なものよりも、敵の弱点属性を突いたり、敵の特性を考えて立ちまわるRPG的な立ち回りを重視している。

幾つか不満点も述べる。

とうとうイベントシーンどころか会話シーンが全て、映画の字幕のように画面下に台詞が表示されるものに統一された。
これまでテイルズシリーズは基本的に吹き出しで台詞を表示しており、吹き出しを表示させる位置を意識したコミック的なカット割りが、ゲームでありながら漫画を読んでいるような雰囲気が出ており利点だと思っていた。しかしとうとう今回、それがなくなってしまった。
また、設定で字幕を自動で飛ばしてくれる機能があるが、スペクタクルシーンとかじゃ設定の有無関係なしに勝手に字幕送りされてしまったり統一感が無いので、いっそのこと割り切ってイベントの字幕は全部自動で送るようにしても良かったと思う。
字幕送りをオンにすると、通常の音声なしの街の住民の会話まで勝手に送られてしまうのはどうにかして欲しかった所だ。

それから、「テイルズオブヴェスペリア」の時にも指摘したのだが、キャラCGのクオリティが高まってきてるので、アニメーションムービーを挿入するのはいい加減辞めたほうがいい。違和感バリバリである。
リアルタイム処理じゃあんまり派手なエフェクトを使えないせいなのもあるだろうが、ここまでCGグラフィックの水準が上がってきたのだから、見せ場をわざわざセルアニメにしてしまうのはもったいない。パッケージの裏にウリにまでしているが、逆にセルアニメムービーに差し替えられるたびにがっかりしてしまうほどだ。

フィールドを移動中に、パーティキャラが喋りだすショートチャットというシステムが追加されているが、間の悪いタイミングで喋りだすことが多く聴くためには立ち止まらなければならないことが多かった。
戦闘はエンカウントタイプだし、画面の暗転が多いゲームなので、せっかくの新機能も使いこなせていない感じがした。結局いつも通りのお喋りスキットチャットは別に用意されていて凝ったやりとりは全部そっち任せだ。それを見るためには従来通りゲームの進行を止めてスキットチャットを起動させる必要があり、代わり映えがしない。
今作は色々と改革を行っている作品なので、このへんもうちょっと変えることが出来なかっただろうかと思う。

戦闘シーンでは、戦闘中自由にパーティの入れ替えが出来るとは言うものの、実のところ使う機会は殆ど無い。入れ替えを強要させる作りにされるのも嫌だが、売りにしている割には実質あって無いようなものである。
また、L2ボタンを押しながらでないとフリーラン出来ない操作もいい加減古臭い。PSP「レディアントマイソロジー」ではスティックを入れた方にキャラが動いている。ターゲットの軸に合わせて動くなんてことほとんどしないのだから、この操作も見なおして欲しかった。

セーブポイントでHP/TPが50%まで回復するがいっそのこと全回復でよかっただろう。
移動が便利になっているので、宿屋まで行かせる必然性があまりない。わざわざ回復量をケチケチする意味がないだろう。

マップのバリエーションが乏しい。街道はテクスチャがちょっと違うだけで構造はほとんど同じ。振り返ってみればダンジョンも今一つ物足りない作りであった。港のマップなど使い回しも多い。
HDマシン向けにゲームを作っていると物量的に沢山作るのが難しいという事情はわかるのだが、贅沢かもしれないがもうちょっとこの辺りを頑張って欲しかった。

ちなみにストーリーは、いつものテイルズと比べると短めに感じるかもしれないが、間延びせず個人的には丁度よいボリュームだった。主人公を2人にしたということも考慮するとこんなものだと思う。

全体的にこざっぱりとした作りになって二番煎じのシステムも目立つが、どの要素もソツなくまとめられていて出来が良い。
利便性を重視して切った要素が多く、RPGお決まりの文法を破ったりスリム化を計ったりしている部分は物足りないなど意見がわかれるだろうが、個人的には最近のRPGは肥大化しすぎている節があったので、これぐらいが丁度よい。
シナリオや登場キャラクタも思い切った作りになっていて、王道路線を外せないシリーズだが、ベタな展開に陥ってなくて良く出来ている。

RPGでダルイと感じる部分をうまくまとめて、無駄なくすっきり面白いゲームに仕上げようという狙いは概ね成功していると思う。そこで結論。

シリーズ作品としては挑戦的だが、相変わらず手堅い作りで安定して遊べるRPG。





[2011/09/13]
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