テイルズオブゼスティリア


対応機種プレイステーション3
発売日2015/01/22
価格8070円
発売元バンダイナムコゲームス

(c)2015 BANDAI NAMCO Games / いのまたむつみ / 藤島康介
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バンダイナムコゲームスの看板RPG「テイルズオブ」シリーズ、据え置き機で久々の完全新作となるのが「テイルズオブゼスティリア」。
全体的に「テイルズオブエクシリア」の路線を受け継いだ作りとなっているが、装備品のスキルシステムと強化合成、戦闘面においても前衛的な挑戦が見られる意欲作だ。

「エクシリア」でHDマシンに合わせて大幅な路線転換を行なったが、こなれていない部分が多くあり、大不評を買う結果となってしまった。
今作では「エクシリア」での失敗を踏まえたところがあり、なおかつ、新要素を積極的に導入するなど、なかなか頑張った仕上がりになっている。

フィールドマップ、グラフィックについて。
野外のマップに関しては、広大で起伏に飛んだ構成になっていて、かなり出来がいい。
しかし、ダンジョンになると一変して、通路と小部屋のパーツを組み合わせた使い回しだらけの画一的なマップになってしまってがっかり。

これには、今作のバトルエンカウントが、専用のフィールドに切り替わるのではなく、エンカウント場所がそのままバトルフィールドになる半シームレス方式を採用したことによる制限も大きく関係しているのだろう。
(個人的には、そこまで無理してシームレスに拘る必要はないと思ったが)

RPGとしては、テイルズとしてはという但し書きがつくが、舞台となる世界はそれほど大きくはない(世界を股にかける大冒険といった感じは無い)。
しかし結構大きめの野外フィールドを端から端まで行ったり来たりさせられることが非常に多い。
そのため、セーブポイント間でワープできる機能が付けられているが、使う際にお金を払わなければならない。この料金が高く、気軽に使うことが出来ない。
「エクシリア」では、好きなときにワープできるようになっていて、かなり便利だったが、利便性が良すぎるということでこのような形にしたのだろうが、もう少し何とかならなかっただろうか。
せめて、金額を固定化するとか(プレイ時間に応じて値段が変動しているっぽい)して欲しかった。

また、わがままな話ではあるのだが、野外マップは大きすぎて探索が面倒だったり、ダンジョンはその逆で、いくつかのパーツをつなぎあわせただけの簡素な構造で、これまた面白みのないものになってしまっている。

グラフィックは、渋目の色調で統一されていて、テイルズらしくない雰囲気を出している。バトルシステムとかも色々変えてきているため、極端な話、教えてもらわないと「テイルズ」とは気づけ無い節もある。

相変わらず、キャラクターのテクスチャー、モーション、表情などは、どれも水準が高く、かなり良く出来ている。
一方で、フィールドマップの造形は平坦でイマイチで、広い割にオブジェも少なく、何もない空間なのが、物足りない。この辺は、残念ながら弱いと言わざるをえない。

バトル周りのシステムについて。

バトルシステムは、意識的にかなり変えてきている。
このシリーズの、リアルタイムのアクションバトルは、一種の伝統文化の域に達していたが、同時に問題点も多く抱えていた(問題点という書き方をしたが、厳密に言えば、変えずにやってきた弊害と言える)。
今回はそこらへんを一新したかったらしく、バトルの枠組みやルールを根本から見なおしてリニューアルをはかっている。

大枠のシステムは好評だった「テイルズオブグレイセス」をベースとしているが、フリーランで自由に動けたり、色々異なる部分も多い。
大雑把には「グレイセス」の戦闘システムを進化させたものといえるかもしれない。

パーティメンバーは人間2人、天族4人の6人で、このうち戦闘に参加できるのは人間2人が固定で、この人間2人にペアを組む形で天族2人の計4人となる。
控えの天族2人は、戦闘中でも自由に入れ替えが可能で、参加していない間はHPが回復したり、時間とともに戦闘不能から立ち直ったりする。

ペアとなった天族と合体する神依化というものがあり、固定の人間キャラが戦闘不能になってもペアの天族が生きていれば、神依化で人間キャラを戦闘不能から復活させることが出来る。
また、2人のHPが低く瀕死の時に神依化すれば、戦闘不能の危険から回避できるなど、それ以外にも恩恵は色々あるのだが、とりあえずこのへんまでにする。

TPが廃止され、かわりにSCと言う行動力ポイントのみで制御するようになった。
これまでのテイルズでもTPを廃止している作品は多々あるので、何ら珍しいことではないが、今作は「いかにSCを切らさないように立ちまわるか?」という部分にスポットを当てた作りとなっていて中々面白い。

これらが何を意味しているのかというと、テイルズの爽快感あふれるバトルを楽しむ際に足を引っ張っていた部分を極力排除して、より派手に楽しめるようなものを目指した結果だと思う。
これまでの、回復役を一人置いて、残りHP/TPを見ながらその都度アイテムで回復させてといった、これまであったRPG的アプローチを思い切ってなくしてしまったことが衝撃的であった。

使わないキャラというのも出したくなかったらしく、敵の弱点属性に合わせて天族をチェンジさせて優位に戦っていく、あるいは瀕死になった天族を下げて、交代させるなど、
メンバーをとっかえひっかえして戦っていく構図が自然と出来上がっているのも、上手いこと考えたといえる。

他にも、バトル関連では、新しい試みとして、エンカウントした場所がそのままバトルフィールドになる半シームレス化を実現している。
完全なシームレスではなく、シンボルとのエンカウント時に、バトル用のプログラムを読み込んだり等、一度画面が暗転する(有名所だとDQ10のバトルエンカウントに近い)。
これは、技術的には頑張ったと思う。イベントバトルで、ムービーからそのまま切り替わること無くバトルに入るなど、最初の数時間はそういう演出に素直に感動したものだ。

しかし、このシームレスバトルをうまく活かせているかというと別問題で、足を引っ張っている部分を数多く感じた。
まず、先にも書いたが、フィールドマップの制作で、多くの制約が出来てしまう点。エンカウントしない(出来ない)場所やマップの大きさなど、そういうことを気にしなければならなくなった(気にすることで画一的なマップにならざるを得なくなる)。
そして戦闘シーンでは、シームレスにこだわったことで、壁や障害物が入ることでカメラワークが安定しなくなる、フレームレートを落とさざるをえないなどで、どうしても大味な作りになってしまうこと。
かなり無茶な要望かもしれないが、せっかくフィールド上でそのままバトル出来るのなら、置かれたオブジェを戦闘に活用できたりすると、この仕様が活きてきてかなり面白くなったように思う(当然考えたと思われる)。

このように、かなり大胆に、バトルシステムを作り替えてきているが、逆に、ここまでやらなければ改革が出来なかったとも言える。
正直な話、バトルのルールは、より独りよがりで複雑化し、プレイヤーが覚えなきゃいけないこともかなり増えた。

システムの説明も、良く言えば丁寧だが、悪く言えば冗長で、序盤からかなり手厚く解説されるのだが、とにかく肥大化しすぎたゲームシステムを理解するまでが大変で、取っ掛かりは確実に悪くなった。
ある意味、これまでのテイルズシリーズ同様「分かる人だけが楽しめれば良い」という割り切った節は感じられるが、すんなり意図を理解して楽しんでいけるのは、熱心なシリーズファンでないと中々厳しいと思われる。
(基本は、敵の弱点属性に合わせてコンボを変えるだけ、なので、それほど難しいことを考える必要はないのだが)

例えば、装備品のスキルシステムなんかも、RPGとしてのツボを抑えた作りで面白いのだが、合成強化したりスキルシートのボーナススキル発生条件など、システムが一々過剰で、ついていくのが大変といった印象を受けた。

シナリオ関係について。

レーダーマップに次行くべき場所をアイコンで示してくれるのはやり過ぎだと思っていたが、このフォローが割と雑で、しばしば目的地がわからなくなることがある。
広いマップから、何の誘導もなく目的地を探そうといった投げっぱなしになってしまう箇所があり、このあたりはちょっといかがなものかと感じた。

ストーリーは、個人的な感想だが、テイルズにしてはおとなしくてどうにも最初から最後まで退屈だった。見せ場らしいシーンがいくつかあって、そういう場面に差し掛かると長めのイベントムービーで拘束されるのがきつかった。
あと、相変わらず見せ場にセルアニメムービーを挿入するのはやめた方がいい。せっかくリアルタイムポリゴンのクオリティが高いのに、ここ一番の見せ場でセルアニメに行ってしまうのは非常に勿体無い。

「エクシリア」の路線が不評なのに、なぜまたこの路線を続けるのかというシリーズファンの声もあると思われる。
「グレイセス」や「ヴェスペリア」の頃のように、昔ながらのRPGの文法を守った作りを敢えて貫き通すのも一つのやり方としてあったと思う。
個人的にも、変に最先端の流行に左右されず、RPGらしさを残した作りがテイルズシリーズの強みの一つだとも思っていた。
だが、やはりもう、デフォルメキャラを見下ろし型マップで動かして、というスタイルをHDマシンで作るというのは、さすがに厳しい。
シリーズファンが納得行く広大な世界を用意することは、物量的に苦難の道だろうが、それでも「エクシリア」の路線を確立させて行かなければならない。
もちろん、現状より良い落とし所というのはあるはずで、そのへんも模索する必要はあるだろう。

テイルズシリーズ自体、「エクシリア」辺りから急速に失速した感もあり、色々と難しいだろうが、次回作がどのようになるか気になる所だ。そこで結論。

ツボを抑えた面白さはあるが、物足りなさも多くある難しい作品。





[2015/02/01]
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