シアトリズム ドラゴンクエスト


対応機種ニンテンドー3DS
発売日2015/03/26
価格5800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2015 SQUARE ENIX / ARMOR PROJECT / BIRD STUDIO / SUGIYAMA KOBO / indieszero / SAS ENTERTAINMENT PRODUCT
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なんと、ドラゴンクエストが「シアトリズム」に参戦!!
FFに続き、シリーズ初の音ゲーに挑戦する今作の出来栄えを探る。

「シアトリズム ファイナルファンタジー」が好評だったこともあり、双璧をなすドラクエ版の発売にも強い期待が寄せられていたと思われる。
同じ会社の作品なのだから、簡単にできるだろうと思われるだろうが、個人的には厳しいと感じていた。

なぜなら、スクウェアとエニックスの合併後も、どこかしらDQとFFには埋められない深い溝のようなものがあり、
FF側で企画された「シアトリズム」を使ってドラクエのゲームを作ることは困難に見受けられたからだ。

理由としてはそれだけではない。
DQシリーズの音楽の版権は、すぎやまこういち個人が所有しており、FFシリーズと違って気軽に音楽を使えない事情もあった。

これらの事情を考えると、「シアトリズム ドラゴンクエスト」が実現する可能性は限りなく低いと言う結論だった。

なので、発売が決定した時は、結構驚いたものだった(色々なしがらみをよく乗り越えたと言う感想を持った)。

「シアトリズム」側とDQ側の、どちらがこの話を持ちかけたのか、大いに気になる所だ。

さて、ゲームとしては、「シアトリズム ファイナルファンタジー カーテンコール」の出来が非常に良かったこともあり、
「カーテンコール」を土台として、それを元に上手にドラゴンクエスト風にアレンジした作品となっている。

収録曲数はシリーズナンバリング10タイトルから全60曲。
「カーテンコール」の26作品221曲に比べると、大幅にショボくなってしまっているが、そもそも「カーテンコール」が凄すぎただけとも言える。
それに、FFシリーズと比べると、DQシリーズは圧倒的にネタが少ない。
ボリュームを気にして、知ってる人が少ないマニアックな外伝作品まで無理にかき集めるよりは、原点に立ち返って、誰もが知ってる名曲を厳選して収録することが重要と思える。

ただ、基本的に定番曲はほぼ網羅されているのだが、一部で「これ、追加コンテンツに回したな...」と感じさせるところもあり、残念に感じた。
そもそも、最初に書いたように、DQシリーズは、FFシリーズと比べ、使えるネタが少ない。
だから追加コンテンツ配信のことも考えると、製品化は難しいのではないかと書いた。
特に「カーテンコール」では、間に空白期間をはさみつつも、一年間に渡って追加コンテンツを配信(有料)し続けた。
さすがにFF一辺倒では厳しいため、サガシリーズや聖剣シリーズなど、スクウェア人気タイトルに頼りつつの追加ではあったが、
DQ版で同じようなことをやろうとすると、なかなかむずかしそうだった。
追加コンテンツありきで展開してきたシリーズだから仕方のないことなのだろうが、だからといって本編の手を抜いていい理由にはならない。
実際に手を抜いていたかどうかはともかく、それを悟られるのがマズイのだ。

楽曲は原曲を収録しているところが特徴的だったが、今回はオーケストラ風の打ち込み音源となっている。
そのため、オーケストラと比べるとチープに聴こえるし、原曲と比べるとまた違和感の出る曲もあったりする、という困った位置にある。
しかし、おおむね雰囲気は再現出来ており、いちいち気にするほどのことでは無い。

「シアトリズム ファイナルファンタジー カーテンコール」と、内容的にはあまり違いが無いため、これといって書くことはないのだが、
今作においての変更点やウリなんかを書いて終わる。

譜面の流れ方など、細かい部分が色々変わっている(基本的にプレイヤーがやることは変わっていない)。

EMSでは、リングのほうが移動して譜面の上を通過していく形だったが、出現した位置に固定になり、そこへ不規則に譜面が流れてくる形になった。
リングの位置は完全固定ではなく、パートごとに右下、左下といった風に場所が切り替わる。
FFシリーズの時もそうだったが、バックに流れる作品ごとのダイジェストムービーの編集が非常にうまくて、ドラクエシリーズをプレイしてきた人は、やりながら思わず感動する出来になっている。
ちなみに、映像素材はリメイク版ではなく、オリジナル版を使っている(DQ4までファミコン、DQ7はPS1版といった具合)。

BMSは、大きく変わっている。
従来は横4列で左から譜面が流れてくる形だったが、縦4列で上から下に譜面が流れてくる形に変更された。
DQの対面式バトルに合わせたのだと思われるが、プレイ前に最も不安にさせる要素だった。

上から下にというよりは、奥から手前に流れてくる感じで、譜面の幅もわかりにくいし、横4列の時より、縦4列の幅も広くて、確かに見づらくなったように思う。
しかし、ゲームにならないほどひどいというわけでもない。確かに、慣れは必要だが、慣れればちゃんとプレイできる。
激ムズのフルクリティカルを狙うプレイなんかをすると、最初は中々ストレスの溜まる作りかもしれないが、遊べない程でもない。

個人的にはそれよりも、タッチ成功時のエフェクトが派手になったせいで、リングの場所を見失いやすくなり、それが見づらさの最たる原因になっているように感じた。
譜面が敷き詰まった箇所だと、エフェクトが過剰過ぎて、リング位置がわからなくなり、音やリズム感に頼らざるをえなくなってしまうことが多くあった。
エフェクトが過剰なのは、BMSに限らないが、インターフェイスの関係上、BMSが一番見づらい影響を受けてしまっている。

FMSに関しては、変更点はなくほぼそのままとなっている。

譜面の後ろでやっているバトル、フィールド探索などが、わかりやすく改良されている。
具体的には、「なにやっているかわかる」ようになっていて、特にバトルに関しては、かなり参加している感覚が味わえる作りになっている。
ボス戦の前には推奨レベルを表示してくれたり、「カーテンコール」の時は1体ずつだった敵が、グループで複数体出現するようになっている。

これは世界観をなるべく統一させてやってきたドラクエならではの強みだが、敵を見るだけで、だいたいどれぐらいの強さなのか想像できてしまうところが良い。
小さい敵は弱く、大きい敵は強いといったような法則を守ってきたというのもあるのだろうが、なんにせよ、戦う相手の強さやこちらもどういうふうに戦っているのかわかるように配慮されているのはやりがいが出て良い。

パーティメンバーの切り替えや、セッティングは煩雑さがかなり解消されたが、それでもまだ面倒臭さが残ってしまっている。
あっというまにLV99になってしまうゲームだが、「カーテンコール」ではレベル初期化というシステムで対応していた。
初期化を繰り返す利点として装備出来るアビリティのコスト数が若干増えるのだが、そんなメリットがあってもやはりLV1から育成し直すのは精神的につらいものがあった。
今作では、ダーマ神殿で転職させるシステムを取り入れることで、職業ごとにLV1から育て直しが出来るが、好きなときに育てた職業に戻れることで、だいぶ遊びやすくなった。
それでいて、複数の職業を育てていると、転職しても効果が継続するステータスを底上げするスキルを獲得して、転職を繰り返すことで強くなっていく「ドラゴンクエスト10」で使われている成長要素を活用している。

アビリティをコストを見ながらセットするシステムは無くなり、覚えたスキルはそのまま自動的に使ってくれるようになり、消費型の道具1個とアクセサリ1つを装備させる程度に留まった。

主にやれることはパーティメンバーの入れ替え、アクセサリ装備の切り替え、転職の3つぐらいだが、作業量としては大幅に軽減されたのだが、メニュー周りの操作性のもたつきっぷりが相変わらずで、とにかくストレスが溜まる。
一画面上で、サクサクと変更できるのなら何も面倒に感じるほどのものではないのだが、何か変更しようとすると一々画面が切り替わってそのたびに頻繁に待たされる。
転職なんかは、一々ダーマ神殿の画面に移動して転職の演出を見なければならないため、それが鬱陶しく感じさせる要因となっている。
ステータスのインターフェイスなんかは、まだごちゃごちゃとしている印象はあるが、だいぶ見やすく操作しやすく改善されたように思う。

譜面周りの変更点としては、シンプルモードが搭載されている点が挙げられる。
スライドの譜面が取り除かれ、タッチとホールドのみの譜面になるモードだ。
(FMSでは上下にスライドさせる操作も無くなり、純粋にホールドとタッチ操作だけになる)

このシリーズに慣れたプレイヤーなら、シンプルモードは正直言って物足りなくてかなりつまらないだろう。
だが、今回が初めてというユーザーがいることも考慮に入れると、これぐらい手厚い配慮は妥当だと思っている。
個人的にも、初代シアトリズムをプレイした時、スライドトリガーにはかなり戸惑ったし、慣れるまで操作が習熟するまで「なんだこれ!!」という辛い難しい印象を受けたものだ。
今でこそ、タッチ、ホールド、スライドの操作形態が受け入れられているが、ついて来られない人への入り口を広く持つというのは非常に重要だ。

不満を述べるならば、シンプルモードと通常モードのスコア集計が完全に別になっている所。
つまり、実績を取ったりするときに、シンプルモードをプレイしている条件や通常モードの条件が入っていてそれぞれが別々になっていて、コンプリートするには両方やらなければならないが、これが非常に面倒くさい。
通常モードでプレイした場合、シンプルモードのスコアも兼ねる作りでもいいかと思ったのだが、そういうことはあまりやりたくなかったのだろうと思われる。

ちなみに、入力判定は、特にスライドの判定がかなり甘くなっていて、譜面の矢印の逆方向に入れなければ成功として認識するんじゃないか?というぐらい緩くなっている。
「カーテンコール」や初代の時によくあった、「今入力したはずなのに!!」という判定ミスがまず今回は起こらない。

ゲームモードは、「ミュージック」「チャレンジ」「すごろく場」の3つ。

「ミュージック」は、好きな曲を選んでプレイしていくオーソドックスなモード。

「チャレンジ」は、用意されたミッション(1つにつき1曲演奏する)をクリアしていくモード。
クリアすると「ミュージック」で選べる曲が増えたり、アイテムがもらえたりする。

「すごろく場」は、文字通りすごろくのミニゲームをプレイして、報酬のオーブを集めていくモード。
6つのオーブを集めると、仲間を一人選んでパーティに加える事が出来る。
この、仲間を揃えるためのオーブ集めは、従来のシアトリズムFFで言うクリスタルのかけら集めに位置してるものだが、こちらはかなり集めやすくなっており、
「すごろく場」とリズポを貯めていくだけで、それほど苦労すること無くすべてのキャラクターを仲間に入れることが出来るだろう。

しかし、「すごろく場」のミニゲーム自体が、本当につまらなくて、(丁寧に作ってあるのに申し訳ないが)全く面白くなかった。
ゴールしたら、報酬のオーブをかけて、ボスとBMSで勝負して、勝ったら2倍の報酬がもらえるとか、マスの中にミュージックマスというのがあり、クリアするとショートカットできる等、
一応、音ゲーを絡めているところもあるのだが、基本的にはただのすごろくである。
「すごろく場」で使えるお金が増減したりするが、お金の価値があまりないので、減っても増えてもあんまり嬉しくない(よろず屋マスで、お金でオーブやコレカ(カード)を買ったり、6しか出ないサイコロみたいなのを買ったり出来るのだが)。
結局、ゴールしたらもらえるオーブ欲しさに仕方なくサイコロ振っているという感じで、なんとも非常に退屈なのだ。

「すごろく場」のミュージックマスは、経験値が事前に振ったサイコロの数だけ倍になる(1〜6倍)など、経験値的にも美味しい作りにしているが、狙って止まることがなかなか難しく、機会も少ない。
どっちみちオーブが揃ってしまうと遊ぶ意味も薄れ、その上、後半の「すごろく場」になると、ボスもかなり強くてLV99でも勝てるか勝てないかぐらいになってくるので、経験値をおいしく設定されても使いづらい(オーブが不要だと戦わなければよいことなのだが)。

個人的には「カーテンコール」の「クエストメドレー」のほうが音ゲーのミニゲームとしては面白かった。
アレはアレで、自動生成で作られたマップで設定された曲を連続でプレイするのだが、攻略性はあったが、一番短いショートマップでも結構な時間が掛かるマゾっぷりだったので、今回は敢えて没にしたのだろう。

ネット対戦に対応した「バーサスモード」も削除された。対戦モード自体が、今作には入っていない。
ネットにつないで対戦することでプロフィールカードの交換ができて、すれ違い通信の代わりに使えたのだが、今回はそういうことはできなくなっている。
相変わらず、すれ違い通信を使った遊びが入っていて、“魔物の石版のカケラ集め”というものがあるのだが、そろそろ時代的に無理にすれ違い通信を使うのもどうなのだろうという気もしている。
すれ違い通信が成立しなくても、歩いた歩数でNPCが石版を持ってくる救済措置があるようなのだが、最初の一枚ぐらいはチュートリアルで完成させて、どういうメリットがあるのか、何が出来るのか体験させるぐらいしてもいいように思う。
まあ無理に“魔物の石版”を遊ぶ必要はないので不自由するほどではないのだが、本当に遊ばせる気があるのか…と勘ぐってしまう。

後は細かいことだが、立体視非対応であること(ドラクエモンスターズ2でも非対応にしていたし、堀井氏が不要だと言ったのかもしれない)、サウンドテストモードがなくなってしまったのが不便に感じたこと、が気になった点としてあげられる。

思いのほか、長くなってしまった。

今回一つ感じたのは、なにげにドラゴンクエストのサウンドは、ゲームミュージックにしておくのが勿体無いといえるほど豪華で上質なものだということだった。
毎回、ドラクエのゲーム音楽は、BGMとしてはマンネリだとか、イマイチださいとか物足りないと言われてしまうことがあるのだが、
曲単体で聴けば、曲自体の魅力や力強さが、とても伝わってくる。音ゲーとしても、曲調が統一されてて作曲者も同じではっきりとしたリズムになっているので、この上なく使いやすい素材だったのではないだろうか。

なんにせよ、前作の時点では、シリーズ展開に不安を残す感想で終わったのだが、ファイナルファンタジーの足かせから外れたことで、今後に期待できる。
単体で作品化出来るほどのものじゃないからと、自社人気シリーズのサガシリーズや聖剣シリーズを出し惜しみなく使ってしまったのは少々やり過ぎたかもしれない(過小評価していたかもしれない)。

コーエーテクモゲームス「無双シリーズ」のように、ガンガン他社の人気シリーズとのコラボレーションに走ってもいい。
パッと思い浮かぶのは任天堂「スーパーマリオ」や、セガ「シャイニングシリーズ」「ソニックシリーズ」など、音楽が魅力的な人気シリーズはたくさんある(コラボできるかどうかは置いといて)。
そこで結論。

完成された器に、ドラゴンクエストの冠を乗っけた、贅沢な作品。





[2015/03/31]
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