シアトリズム ファイナルファンタジー


対応機種ニンテンドー3DS
発売日2012/02/16
価格5800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2012 SQUARE ENIX / indieszero / SAS ENTERTAINMENT PRODUCT
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ファイナルファンタジーシリーズが始めての音ゲー化。
「しゃべる!DSお料理ナビ」「ゲームセンターCX 有野の挑戦状」のインディーズゼロが開発。

簡潔にゲーム内容を説明すると、タッチパネルを使った音楽アクションゲーム。
上画面にリングアイコンが表示されており、流れてくる譜面がリングと重なった瞬間に、譜面のアイコンに合わせた操作をする。
アイコンは大きく分けて、タッチ、ホールド、スライドの3種類。
譜面にはフィールド、バトル、イベントと3種類があり、それぞれゲームルール(譜面の流れ方など)に多少の違いはあるが、基本的な部分は今説明したことが共通していて、いたってシンプルに出来ている。
個別に説明すると面倒くさいことになるので、ここでは省略する。

実は、発表された時のプロモーション動画を見た時、任天堂「押忍!闘え!応援団」のように、下画面で操作するものだと思ってしまって、だとしたらかなり難しいゲームになるんじゃないのかなあと言う印象だった(映像を見た印象では位置をあわせてタッチしたり、なぞったりしなきゃならない操作がかなり複雑で大変そうだった)。
なので、上画面に譜面やゲーム画面を表示して、それを見ながら、タッチパネルで操作するだけという遊びやすさに拍子抜けしてしまった。
他にも、開発中の映像では、タッチするたびに剣で斬る音が出て耳障りだったり(実際は音量調節が出来て、初期設定では小さめになっている)、これは詳しく後で触れるが、キャラクターデザインのイマイチさとか、見た目でだいぶ損してるところが多いと思う。

発売前に配信された体験版では、究極譜面(ハードモード)の難易度の高さが大変に話題となった。
ただ、操作性の間口の広さと、判定の甘さもあって、コナミの本格的な音ゲーなんかと比べると、「やってられねぇよ!こんなモン!」ってレベルのものがなく、なかなか良心的な味付けだと感じた。
それに加えて、パーティキャラクタのレベルを上げて、回復魔法のアビリティを付けてやると、かなりトチっても、とりあえずクリアはできるので、かなり遊びやすいゲームだ。
FFシリーズが元々ロールプレイングゲームというのもあって、アクションが苦手な人にも楽しめるように意識しているのだろう。

個人的には、レベルデザインが結構いいと思った。
最初遊ぶことになる普通譜面は、簡単すぎて退屈だったのだが、熟練(ノーマル)譜面のバトルミュージックからだんだんと手こずる曲が出てくる。
究極譜面のバトル曲なんかは、最初やってみると早すぎて絶対無理!って感触なのだが、ランダム生成の闇の楽譜モードを遊んで、高速譜面に慣れてきて、そろそろいけるかな?と思った頃に、また戻ってみると、だいぶ上達していることに気がつく(レベルが上がってて死ににくくなってたのもあるのだろう)。

自分のやり方では、「ビッグブリッヂの死闘」を最初にクリアしようと15,6回挑戦してクリアした後、それ以外の究極譜面のバトル曲をなし崩し的にクリアーしてしまったので、最初以外はあまり手こずった印象がない。
それでも、一番難しいと思ったのが「ゴルベーザ四天王とのバトル」。全員LV99で、適当だったアビリティをちょっといじらないと、クリア出来なかった(終盤のホールドのあとすぐスライド、またホールドの譜面がどうしてもうまくこなせなかった)。

ちなみに、フィールド曲、イベント曲にかんしては、フルコンボ取るのがちときついぐらいで、クリアするだけなら簡単に出来る。

なんだかんだで結構熱中したゲームなのだが、不満点がかなり目について、あまりいい印象を持てなかったゲームだ。

まず、ゲームとしてはぜい肉が多くまとまりの悪いゲームだと感じた。

音ゲーのわりに、チュートリアルの説明がやたらに多い。
初プレイ時に、ゲームの説明をしてくれるのは親切なのだが、ゲーム全体の構造が独特かつ複雑で、わかりにくい。
こういうジャンルのゲームは、一発で仕組みを理解できるようにしてくれないと、とっつきが悪い印象を与える。

FFということでRPGっぽさを出したくて、やりこみ要素を膨大に仕込んだのだろうが、それが裏目に出てしまって、無駄な要素が乱立している。

歴代シリーズの主人公からパーティメンバーを4人選択して、ゲームをはじめるんだけど、参加させたキャラクタには経験値が入って、レベルアップする要素がある。
さらに、アビリティを覚えて、装着させたり出来るんだが、カスタマイズの画面がごちゃごちゃしててインターフェイスの出来が最悪。とにかく使いたいと思わない。

ちから、すばやさ、とか普通のRPGのように様々なパラメータがあるが、具体的にどう影響を及ぼすかが、わかりづらい。
フィールド曲の時はすばやさの高いキャラがいいとか、バトル曲は戦闘能力の高いキャラがいいというのはわかるんだけど、いちいちそんな曲ごとにステータスを気にしなきゃいけないってのは煩わしいし、やりたくない。
ただ曲を演奏するだけでなく、フィールド曲では良いアイテムを拾うことがあったり、バトル曲では出現する敵を倒して経験値やアイテムをゲットというような、RPGらしいシステムが付けられている。
はっきりいって、そのへんのルールは覚える必要がないし(やりこみのコンプリートを気にしない限りは)、そもそもプレイヤーが直接関与出来る余地がほとんどないので、あってないようなシステムとも言える。
戦闘シーンでは、倒しても倒しても敵がどんどん出てきて、曲が終わっても敵が出てきたりして、演出的にはなんか音楽と噛み合ってなくてすっきりしないし、バックで戦ってる戦闘シーンのルールも、まるでわからなくてどうにもつまらない。

やりこみ要素がかなり多いのだが、プレイ時間引き伸ばし工作が露骨に垣間見える作りで、あんまり面白いものとは言えない。
曲を演奏するたびに手に入るリズポというポイントを集めることで、サウンドテストの曲目、ムービーの項目、隠し曲、隠しキャラなどの要素が増えていく。
だが、1つの特典を手に入れるのに500ポイント必要で、大体慣れてきても普通にやってると1曲100ポイント程度しか手に入らない。
せめて収録曲を全部出すぐらいまではやりたかったのだが、かなりやったのだが、これがちっとも手に入らない。

隠しキャラにいたっては、同じ色のクリスタルのかけらが1回につき1つ手に入って、全部で8つ集めないと、出現しない。
これについては、救済措置があって、闇の楽譜モードで演奏中に戦える敵を倒すことで、手に入ることがあるという、別の入手手段が用意されている。
この闇の楽譜は、すれちがい通信を使って、選んだ1つだけをすれ違った相手に配ることができる。
具体的な説明はややこしくなるので省くが、何を言いたいのかというと、一時期大流行した「ドラゴンクエスト9」の宝の地図と全く同じシステムである。
楽譜は完全ランダム生成で、フィールド曲とバトル曲の2つが入っていて(同じ曲でも譜面の難易度まで異なる)、バトル曲で出てくるボスキャラがレアアイテムを落とす場合、価値のある楽譜となる。
ついでにいうと、より簡単にクリアできる楽譜で、レアアイテムが取りやすいものであればあるほど価値が出るだろう。

それから、コレカというキャラクターカード収集。ちゃんとカードファイルに収納されてて、カード自体を眺め回すことができて、裏には解説文まであって、非常に凝った作りなのだが、
絵柄が、このゲームのキャラクターデザインで描かれているせいで、全く魅力がない。
まだ、天野喜孝など原画を直接使っていたら、集めたくもなったのだが、あのデフォルメされたほとんど原型をとどめていない絵柄では、手に入れてもはっきり言って嬉しくない。

これは、最初にも述べたが、このゲーム最大の汚点だと思う。
最近のはやりを意識した、ゆるかわなデザインなんだけど、なんというか、もうちょっとセンスのいいデザインには出来なかったものだろうか?
なんか、どこかのソーシャルサイトのアバターかなんかがコスプレをしている感じで、存在感がさっぱりない。
FF11のシャントットなんか、そもそも等身が合ってないし。
あの顔で、吹き出しに台詞が付いている姿を見せられた時、慣れるまで毎回吹き出しそうになってしまっていたぐらいシュールだ。

結局、新要素が小出しにされているせいで、特に新曲がなかなか出てこない(闇の楽譜で運が良ければ遊ぶこともできるけど)ために、最初から遊べる39曲を究極譜面をクリア出来るまで遊んだ時点で、急激に飽きてしまった。
本当はその倍近い77曲収録されているようなのだが、かなりやったつもりだが、フリーモードには全44曲しかまだない。
こんなはずはないと思って、説明書や公式サイトを何度も見たのだが、自分の知らないやり方は書いていなかった。
あとはもう、闇の楽譜モードで、ひたすらポイントを稼ぎながら、ついでにクリスタル集めるぐらいなのかと思うと、急につまらなくなった。

それから、シリーズモード(決められた3曲を連続でプレイする、音ゲーで言えばアーケードモードみたいなものに近い)で高難易度の譜面を遊べるようにするには、チャレンジモード(フリーモード)で該当する3曲をクリアしなければならないというのも駄目だ。
なぜ同じ曲を2回、しかも同じ難易度でやらせようとするのだろう。

実際の音ゲーパートについては、基本的に文句のない出来上がりなのだが、最初はホールドとスライドの操作に違和感があった。
ホールドは譜面に示されたタイミングの間、タッチパネルを押し続ける操作で、スライドは矢印の方向になぞる操作をする。
まあ独特で面白くはある(ホールドは特にフィールド曲で上下にスライドさせる操作が面白い)が、スライドは入力判定を甘くせざるをえなかったせいか、ミスった!と思っても成功判定だったり、逆に誤認というか手元がブレてミス判定になってしまうことが目立った。
上画面に譜面を表示して、タッチパネルで操作するリズムアクションゲームにしたために、バリエーションを持たせるためにこういうふうにせざるを得なかったのだろう。

もう一つ。譜面分岐の場面に入ると、譜面の色が統一される。一応アイコンの模様も変えているのだが、せっかく色分けしているのに、見づらくされてしまって不便であった。配慮不足である。

やはり、一発目ということもあってか、まだ細部の爪が甘いところが見受けられた。スコアの桁数も1桁多いように思う。

かなり長くなってしまった。野村哲也が関わってるせいか、やり込み要素とかツボをしっかり抑えていてソツのない仕上がりなのだが、良くも悪くもこの会社のクセが出てしまっていて、なんとも微妙なところだ。

最後になるが、肝心の収録楽曲の音源は、すべて原曲そのままを収録している。これを手抜きと思う人もいるかもしれないが、こういうのは版権を持っている会社だからこそ出来る荒業である。
ゲーム音楽なんて価値がないなんて思われるかもしれないが、ボーカル曲まで原曲のまま流せるのは凄いといえる。FF8のフェイウォンはさすがに版権を持ってないのか入っていないが...

逆を言えば、変にアレンジしてしまったほうが、価値がなくなる、と、自分は感じている。
おそらくこのあたりどうするか「新作ゲーム」として売り出す以上、相当悩んだと思われる。

ファミコンで出したFF1・2・3なんて見栄えのいいリメイク版を使わず、わざわざファミコン版の音源を使っている。
ついでにいえば、イベント曲のバックに流れるムービーでも、ファミコン版のプレイ映像を流しているこだわりっぷりである。

こうやって、当時使っていたゲームのBGMがそのまま流れ、背景には各シリーズの名場面がダイジェストで挿入される(さすがにラスボスやらエンディングまで見せちゃうのはどうかと思ったのだが)。
元ネタを知っている人には、これはとてつもなく“刺さる”演出となっている。個人的には、FF5のビッグブリッヂはいろんな所で使われて飽きていたので、FF11まできちんと扱われていることに感動したほうだ。
ただ、ムービー映像が、ゲームと全く関係ない初代FF11に付いてきたプリレンダムービーだったのが悲しかった。ちゃんとプレイ映像を流して欲しかった所だ。

さて、そんな音と映像で感激するのも、実は最初の1回2回である。
慣れてきちゃうと、言い方が悪いがそんなものには騙されなくなってくる。

つまり、楽しいのは最初だけで、あとに残っているものは、ゲームに対するシビアな目線である。
そもそものゲームコンセプトが、思い出を売り物にしている以上、これはしょうがないことと言える。

だが、そういったものを抜きにすれば、フィールド曲やバトル曲の背景のポリゴン演出は安っぽいし、全体的に「低予算で安く仕上げようとしたな…」というのが透けて見えてくる悲しい出来である。
決して、金や手間をかけたものを無条件に良いと言うつもりはない。
さっきも書いたように、卒なく仕上がってるところもあるだけに、ちゃんと手をかければ、もっと出来がよくなったような気がしてならないのだ。

また、ニンテンドー3DSソフトとしては初めて、有料の追加ダウンロードコンテンツに対応していることでも話題になった。任天堂のゲーム機ではすでにWiiでやっているからあまり凄いことでもない。
こちらの方も本格的で、発売前から50曲以上配信すると公表された。
音ゲーで、追加楽曲をダウンロード販売するのは珍しくもない時代だから、自分が時代に順応してないだけなのかもしれないが、あまり賢いやり方とは思わなかった。
最初から、それだけネタを持っているのだったら、間を空けて続編として出したほうがまとまった金も手に入るし、色々都合がいいと感じた。

任天堂もこれから、有料コンテンツを配信することを計画している。
今回の件、スクエニはちょっと、任天堂の実験材料にされてしまっている気がするぞ!!そこで結論。

やっぱり見た目通りのゲーム(ちなみに、立体視をONにしたままプレイすると、目押しゲーということもあって、ダブルパンチを食らって短時間でも恐ろしく目をやられるので注意)。





[2012/02/18]
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