トラスティベル ショパンの夢


対応機種Xbox360
発売日2007/06/14
価格6980円
発売元バンダイナムコゲームス

(c)2007 NBGI / TRY-CRESCENDO
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ゲームキューブ「バテンカイトス」シリーズのバトルパート、ならびにトライエースブランド(スターオーシャン、ヴァルキリープロファイルなど)の音響関係を担当したトライクレッシェンド全面制作による完全新作RPG。
もとはサウンド周りのみを制作するメーカーだったようだが、どうやら自社でゲームを作れるまでに会社が成長したようである。

クラシック音楽をベースにしたゲームデザインは、「のだめカンタービレ」ドラマ化のブームに便乗した物ではなく、会社的に音楽関係に造詣が深いからだろう(開発時期から見ても狙って出せたものとは思えない)。

ストーリーは、音楽家ショパンが死ぬ間際に見た夢の世界という一風変わった路線に挑戦している。
なんてことはない、内容的には中世ファンタジーRPGと言って差し支えない。
「テイルズオブ」シリーズのナムコがプロデュースしているせいか、ストーリー性、キャラクター性ともに非常に主張が強く、キャラ色の強いゲームである。

声優も有名どころ勢揃いであり、ナレーションに森本レオを起用するなど、なかなか頑張っている。
しかし、森本レオが朗読するのはオープニングだけ。これは肩すかしと言わざるを得ない。

ストーリーは、ショパンの節々の人生に若干なぞらえたものとなっており、章立て構成で、合間にショパン作の音楽が流れながらその曲が仕上がった成り行きを紹介すると言った小粋な演出を見せる。

開発期間が十分にとれなかったのかはわからないが、シナリオの特に終盤、消化不良なところがやたらと目立つ。
物語とゲームパートとの乖離も激しく、シナリオ的にはほとんど関係のない場所に行くことで話が進んだり、無理矢理ダンジョンへ行かせるようにし向けると言った強引さが気になる。

グラフィックは、Xbox360だからと特別な処理をおこなうこともなく、無茶をすればゲームキューブ、プレイステーション2でも移植出来そうな勢いである。高画質の出力でごまかしているという話もある。
また、その余力を快適性に向けているために、画面の切り替わりなどのディスクアクセスで待たされるということが全くない。これは高く評価していいだろう。

イベントムービーについても、すべてリアルタイム演算でやっていて、むやみやたらと圧縮ムービーに頼ろうとしない姿勢も評価したい。

「バテンカイトス」シリーズで面白いバトルシステムを組み立てた会社が作っているだけに、今作のバトルパートも塩味の聞いた面白いものを持ってきている。
かいつまんで書くと、「スターオーシャン」シリーズのようなバトルフィールド徘徊型のタイプだが、(アクティブ)ターン制となっている。
与えられた秒数の時間だけ行動出来て、ヒット数を蓄積させると必殺技で出るダメージが大きくなるというもの。

敵の攻撃モーション中にガードボタンを押すと、防御してダメージを大きく軽減出来たり、まれに反撃出来るチャンスもある。
ゲームバランスを調整するために、この防御出来るタイミングは、ロールプレイングゲームとして考えると結構シビアである。

パーティレベルというものがあり、一定のところまでゲームを進めると、バトル時の戦闘ルールが変化していくという仕組みもある。

このゲームで想定しているのは、そもそもはリアルタイム性の非常に強い戦闘システムであろう。
パーティレベルが高くなってくると、常に時間が経過している状態になり、じっくり腰を据えてコマンド決定していくものではなく、めまぐるしく変化する戦況を素早く理解して、どのように動かすかということを考える忙しいゲームだ。

序盤から、そこまでハードルをあげてしまうとついてこれないという配慮からだろう、パーティレベルが低い段階では、キャラを動かしている間だけ時間がすすむとか、シンキングタイムという考える間を与えてくれたりする。
その代わり、必殺技の連携など面白味のある要素は使えないようにしてある。

経験値の与え方も良く、エンカウントはシンボル方式だが、ほとんど戦わなくても、やり方次第で十分ボスを切り抜けられたりする。
「バテンカイトス」ほど戦略性はないが、その代わり反射神経が求められているゲームとして考えると納得のいく構成だと思う。

反面、敵キャラの当たり判定がわかりづらかったり、物陰に隠れるとキャラがどういう状態になっているのかがわからないなど雑な面も目立つ。

お金の与え方も良くない。通常だと全然お金は手に入らないのだが、ビートというキャラのみが使える戦闘中に写真を撮るという技があるのだが、この写真が適当にやっていても異常に高く売却出来るので、お金の存在感はあってないようなものである。

仲間になるキャラクタも多すぎる気がする。戦闘参加人数3人に対して、最大9人である。加入タイミングもイマイチ良くないので、一回も使われずに終わってしまうキャラもいた。
逆にイベント戦闘で、強制的にパーティメンバーを入れ替えられてしまう強引さも気になった。何とかして欲しい。

ゲームの構造としては、イベント→ダンジョンの繰り返しで、ワールドマップのようなものはない。フィールドマップのカメラは固定方式で、有名どころだと「ファイナルファンタジー10」に近い方式である。
ダンジョンのギミックは面倒くさい物が多く、構造も長い道が枝分かれしてるようなタイプばかりで、探索が少々面倒である。
カメラが全体的に引いたものばかりで、迷いにくい反面、敵が見えにくかったり自キャラを見失ったりすることがある。
グラフィックの描き込みが凄すぎて、歩ける場所や歩けない場所、宝箱といった構造を把握しづらくなっている。頑張りすぎ。
絵的には行けるのに、透明の壁で遮られて行けない場所が多いのもなんだかねぇ。通れないようにしたいのなら、柵などを置いて見た目で行けないように示して欲しい。ちょっとこのゲームはひどいところが多かったので敢えて書いた。

サウンド関係のメーカーだけあって、音響周りのクオリティの高さには感嘆する。グラフィックも全体的に淡く繊細な物で、なかなかクオリティが高い。
メニュー画面なんかを見ると顕著だが、開発に関わった「バテンカイトス」を参考にしているというのが良くわかる。
スコアピースといういわゆるサブイベントなんかも充実しているが、ストーリーに自由度が奪われてしまっているので、今ひとつ機能していない印象があるのは残念だ。

斬新な試みが多く、丁寧に作られていて評価出来る点も多いのだが、開発期間が十分とれなかったのか、しっかり整合できなかったように見える面も目立ち、全体の評価としては今ひとつ。惜しいゲームであるのは確か。
それよりなにより、Xbox360で、バリバリ和風RPGを送り出した点自体が凄いと思う。

未完成くさいところも多いけど、やって損はない佳作。





[2007/06/18]
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