ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記


対応機種プレイステーション
発売日2001/05/24
価格6800円
発売元エンターブレイン

(c)2001 enterbrain / TIRNANOG
戻る

ファイアーエムブレムの生みの親である加賀昭三が手がけることで話題となった新作シミュレーションRPG。
新作とは言っても、企画初期は「エムブレムサーガ」という名称だった。
ファイアーエムブレムとつながりをもたせた作品として発売する予定だった経緯もあってか、ゲームシステムが酷似している(というかほぼ全く同じである)。

このゲームは、ゲームそのものよりも、任天堂が著作権を理由に裁判を起こした出来事によって有名になったことと思う。

事の発端は、ファイアーエムブレムを企画した加賀昭三が、独立して会社を設立(ティルナノーグ)し、他社(エンターブレイン)で、得意とするシミュレーションRPGを(それもファイアーエムブレムの関連作として)売りだそうとしたことである(あるいはオファーがあったのかも知れない)。
任天堂としては、自社の人気ブランドを他社に持っていかれることに不満を感じ、このような事態へと発展したんだろう。

そもそも、クリエイターが流失した理由があるのだろう。
ファイアーエムブレムは一部にファンが付いたタイトルではあるが、扱いとしては正直芳しくなかった。
「紋章の謎」はヒットしたが、「聖戦の系譜」はSFC末期で売り時を逃してしまったし、その後3年ぶりの新作は、ニンテンドウパワーの販売促進のために使われた。

さらに言うと、ニンテンドウ64発売後は、ポリゴンを駆使した動的なゲームへ傾倒していき、RPG系のゲームは、任天堂自体不得手なジャンルであったため、扱いがぞんざいであった。

ゲームクリエイターといっても、ただの一社員である。好き勝手にゲームを作れる訳じゃなく、会社の方針には従わなければならない。
そういった中で、任天堂ではもう良い条件で思い通りにゲームを作らせてもらえないだろうという懸念もあったのだと思われる(そう思われても仕方のない状態であったのは確かといえる)。

さて、そんな複雑な経緯があって完成にこぎつけた「ティアリングサーガ」であるが、一言で言えば、ファイアーエムブレムシリーズとして売りだしても問題ないほど、踏襲した作りとなっている。

ただ、制作スタッフ全員が離脱したわけではないため、インターフェイスやゲームバランスについては、洗練されておらず荒っぽさを残すところが目立つ。
会社を立ち上げたばかりだったのと、訴訟問題によって、満足に練り込むことが困難だったのだろう。

ハードがプレイステーションになったものの、安易にCGムービーを使うことはなく、かつ、ポリゴンもほぼ全く使っていない。
ステージマップのグラフィックがプリレンダCGである違和感は気になるが、緻密になった戦闘シーンは全てドット絵で描かれていて、そういった面では、しっかり割り切っていて好感が持てる。

基本的には面クリア型のシステムだが、2部隊を編成し、ゲーム進行によって、動かす部隊が変わったり、敵ユニットにモンスターが登場すること、2部隊のうち、ホームズ隊はだいぶ出来ない期間があるもののレベル上げ用の戦闘マップが用意されているなど、
分かる人にだけわかる例え方をするが「ファイアーエムブレム外伝」に近い内容だ。

具体的なゲームの中身について。
ファイアーエムブレムとシステムが似ているため、好きな人には好きだが、合わない人には全く合わない点も同様の内容となっている。
具体例を出すと、死んだユニットは復活しない、タイトなダメージ計算式、回数制のアイテム、特定の敵ユニットを仲間にできる、といった所だ。

メニューインターフェイスや操作性といったたぐいは、こなれていないところが多い。
基本部分は「ファイアーエムブレム」に似ているが、ヘルプ表示や店での売買など、細かい部分で不便さを感じた。
ステージマップの読み込みや、店の中へ入るときの画面切替時のロード時間が長く感じるところがあるものの、全体的に裏読みを使っていたりして、比較的快適な部類に入る。
後、イベントシーンで話者の表示がないのが、なにげに辛かった。

ゲーム構成や中身だが、力み過ぎちゃったのか、非常にボリュームはあるのだが、登場キャラクタが多すぎて覚えきれなかったり、ストーリーが壮大になりすぎてしまっているところにもったいなさを感じた。
キャラ絵は中々魅力的になっているが、キャラクタ、ストーリー共にどことなく無難で、強烈に印象に残るようなシーンがなくてどこか退屈でつまらなかった。
それは膨大な数のキャラクタにも言えることで、いわゆる「強い使えるキャラ」は存在するが、仲間の人数が多すぎるせいなのかどことなく散漫で、感情移入できなかった。

ステージマップも数が多いのだが、イマイチ面白いマップが無い。後半になるほど当たり前の話だが、時間のかかる長丁場なステージが増えてきて、冗長な面が目立ちハマりきれなかった。
それに、マップ自体の使い回しがあり、ただ敵の配置が変わっているだけというマップもあり、手抜き臭く感じてしまった。

特に増援や敵召喚で物量的に攻めてくるステージが多く見受けられたのと、「ファイアーエムブレム外伝」でも脅威だったが、魔女ユニットのワープは、運悪く弱いユニットを狙われるとやられてしまうので、出来ればやめて欲しかったギミックである。
つまり、魔女のワープのどこが気に障るのかというと、マップ上での対策法がほとんどなく、防御系アイテムを駆使するか一定の弱いユニットを出撃させないというぐらいしか効果的な戦術がないことが不満である。
ファミコン版の頃と違って、あまりエグい動きはしてこないのだけが救いである。

一度致命傷を受けても守ってくれる「おまもり」や、防御力をあげる「盾」のアイテムによって、使えないキャラも使いやすく、育てやすくなった点は良いと思うが、弱いが気に入ってるキャラを苦労して育てるカタルシスが薄れた気がした。

また、最大の不満点なのだが、1面が長めなのに、ハードウェアの関係上なのか「中断」機能がなくなり、かわりに回数制限付きの「きおくの杖」を使わないとゲーム中はセーブしたり中断できないというのが不便であった。
このため、1度マップに入ってしまうと、クリアまで抜けることが出来ない。
「きおくの杖」でセーブしたデータは、ロードしても消えないので、長いステージマップの中で、良い中間ポイントを見極める楽しさはある。

ストーリーについては、続編に続くといったような終わり方をしたのはマイナス点。

音楽も豪華になったものの没個性的になり、ありきたりで魅力を感じられなかったのも残念。

質的には納得出来ない面も多いものの、ファイアーエムブレム好きなユーザーはとりあえず遊んでみて損はないレベルの作品にはなっている。そこで結論。

規模が大きいゆえに、散漫で淡白さが気になる作品(裁判など外的要因がなければもうちょっと作り込めただろうに惜しい)





[2013/08/07]
戻る

inserted by FC2 system